俺が、”ザ・ワールド”だあっ!!    作:阿久間嬉嬉

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”ザ・ワールド”の出番は、もうちょっと待ってください


それじゃ……本戦開幕だぁ! ―――あと俺の出番無し

トレーニングと最終調整はばっちりだな……さーて、いよいよだ。

遅れないよう早めに本戦会場へ行っとくか。というか、早めに来いって放送があったからな……

 

そいじゃ行きますか!

 

 

 

 

 

と、ここが選手控室みたいだな。……ネギ少年たちはまだいないか。

 

やることも無いので、俺は突っ立ったまま、集まった人たちを見渡した。

 

俺並みにでかい奴から、戦の低い奴、魔法使いみたいなローブ来てる奴もいるのか。……女と男の比率は同じくらいか? 目元しか出してない二人組は分からんが。

 

「え~っと……し、失礼しま~す」

 

お、ネギ少年達来たみたいだな。何か先生っぽいおっちゃんと話してるけど……ま、何話してるか聞こうとするのは野暮か。

お? あのオレンジ髪の頬の染めよう……あのおっちゃんにコイでもしてんのか? 好みは人それぞれというけれど、あの人親父好きか~。あ、京都で気絶させた羽のある剣士もいるんだな。

 

「えー…選手のみなさん、ようこそお集まり頂きました! 第一試合は今より三十分後に行います……が、その前に本選のルールをご説明いたします!」

 

そりゃそうか。本選と予選じゃ違うもんな。

 

「本選は十五メートル四方の能舞台で行われる、制限時間十五分の一本勝負です! 負けとなる条件は、『ダウン十秒』、『リングアウト十秒』、『気絶』、『ギブアップ』の四つ、もし時間内に決着がつかなかった場合は、観客の皆さまによるメール投票となります! なお、反則である『重火器、刃物の使用』等は予選と同様となります!」

 

今思ったけど刃物はだめってことは、裏を返せば刃物じゃなかったら何でもいいってことになるぞ、コレ。大丈夫か?

 

「質問がありますがいいでしょうか!」

「はいどうぞ」

「呪文どうこうとかよく分からないんですが、技名は叫んでいいのですか?」

「技名はOKネ」

「よっしゃあ!」

 

そんなに大事か、それ? まぁ俺の場合、技名が無いだけなんだけどな。

 

 

 

 

折角だし、選手席で試合見てくか。二日目の学園祭の出し物巡りは終わってからでもいいしな。

 

『ご来場の皆さま! そして選手の皆さま、お待たせいたしました! 只今より、まほら武道会第一試合へと移らせていただきます! ―――――それでは、村上小太郎選手、佐倉愛依選手の入場です!』

 

お、小太郎少年が一番最初か。……あの目元しか出してない奴の小柄なほう、女だったのか。

 

「あ、あの子は!?」

 

ネギ少年、何を驚いてるんだ? ひょっとして女の子の方知りあいだったりするのか?

 

「ネギ先生、お早うございます」

「あんた、昨日の魔法生徒!? なんで!?」

「ふふ……何でですか。そんなの決まっているでしょう? ―――ネギ先生、あなたをこらしめるためです!」

「え……えぇっ!?」

 

何か聞いてもつまんなそうな会話だな……。試合が始まるまでぼーっと――――

 

「こんなくだらない大会などさっさと優勝し、一千万円は寄付させていただきます!」

 

へぇ、寄付の為もあるのか。以外と筋通った理由も含まれてんだな。……でも、さっさと優勝するのは無理じゃないか?

 

『それでは第一試合――――ready Fight!!』

 

試合開始と同時に、女の子の手にまるで手品のごとく箒が現れた。

 

魔法って、無詠唱の呪文もあるのかよ!?

 

「おらぁ!」

「わ、わあぁぁ!?」

 

『こ、小太郎選手、信じられないスピードで距離を詰め……佐倉選手の体を十メートルほど打ち上げたーっ! 今のは掌底でのアッパーでしょうか!? 』 

 

 

凄いな小太郎少年! 一気に距離詰めて、アッパーで吹っ飛ばしたのか!

 

『あーっと、佐倉選手溺れている! ―――ここで十カウント、小太郎選手の勝利ーっ! 

おっと小太郎選手、カウントが終わると同時に飛びこんで手を差し伸べています』

 

やさしいんだな、小太郎少年。

 

 

結論から言うと第二、第三試合はすぐ終わってしまった。

 

第二試合は押されぎみに見えたクウネル・サンダースとかいう、変てこな名前の奴が右手の掌底一発を、大豪院の急所にたたき込んでの勝利。

第三試合は中村という男が予選でも話題だったらしい『遠当て』を見せるが、これまた手刀一発で沈められた。

 

次は第四試合か。

 

『お聞きください、この待ちわびていたと言わんばかりの歓声を! その歓声を向けられている人物こそ、前年度”ウルティマホラ”チャンピオン………本日の大本命、古 菲選手だーっ!!』

 

「「「「ワアアァァァーーーッ!!!」」」」

 

すげえ歓声だな、オイ。 そんなに人気なのか、あのクーフェイって少女。

 

『対するはこの神社、龍宮神社の一人娘……、実力は未知数、龍宮真名選手ーっ!!』

 

そういや、苗字に”龍宮”って入ってるな。

 

「第四試合のトトカルチョ、締め切るよーっ!」

「まってくれ! 古 菲部長に五十枚だ!」

 

トトカルチョなんてモノもやってるのかよ……。

 

『それでは……大四試合ready Fight!』

 

ん? 龍宮って奴、なんか手に握ってるな。

 

『情報によると、龍宮選手はライフルの名手! しかし、重火器の使用が禁止されているこの大会で、果たしてどう戦――――』

 

!! 今握ってたものを指ではじいて飛ばしたのか!? クーフェイ少女が打っ飛んだぞ!?

 

『な、何が起こったんだーっ!? 開始早々古 菲選手が、後ろに吹き飛んだ―っ!』

 

ありゃ………コインか?

 

『今のはどうやら”羅漢銭”のようですね』

『羅漢銭……とはどういうモノなのでしょうか? 解説の豪徳寺さん』

 

解説付きか! 

 

『至極簡単に言うなら、何処にでもあるコインを飛ばすだけの技です。……しかし、達人は一息に五打撃つと聞きます。それに、今古 菲選手が吹っ飛んだように、威力も侮れません』

『なるほど……。―――以上解説席からでした』

 

そして、やたら本格的!

 

『優勝候補であり、トトカルチョの人気も№1の古 菲選手からあっさりダウンを奪い取った、無名の”羅漢銭”使い龍宮選手強いです!』

 

と、実況が言い終わると同時にクーフェイ少女が、ブレイクダンスのような動きで起き上がった。頭に喰らったのにタフだな~。……衝撃を受け流したのか?

 

俺がそう考察した、まさにその瞬間――――

 

バチュッ! という音と共に、まるでマシンガンの如くコインが連発された。解説でもあったように威力はバカにならないらしく、能舞台の木材をガリガリ削り、跳ね飛ばしていく。

クーフェイ少女も、掠ってはいるものの段々と慣れてきたらしく、次第に避けられるコインの数が増えてゆく。

 

凄すぎるだろ、アレ!? 人間業とは思えないぜ、どっちも!

 

そして僅かなコインの装填の隙を突き、クーフェイ少女が攻撃の間合いまで踏み込み攻撃態勢を取った。

 

いけるかっ!? ―――――って龍宮選手、上向きにコインを飛ばして迎撃した!? 苦手な距離とか無いのかよ!?

 

そして龍宮選手はクーフェイ少女が立つ時間を与えず、次々とコインを飛ばしダメージを積み重ねて行く。

 

むごいな~……。勝負だから仕方ないけどよ……。でもこれで勝負は決まっ――――

 

『く、古 菲選手、布でコインを弾きながら立ち上がったーっ!!』

『あれは”布槍術”!! 古 菲選手のあの尻尾の様なものは、”布槍術”の為のものだったようです!』

 

ふそう……布の槍か、珍しいもん使うんだなあいつ! …そしてよく知ってるな、解説。

 

『捕らえた、捕らえました古 菲選手! 強者である龍宮選手を捕らえましたーっ!!』

 

良しこのまま……って、いとも簡単にコインで外されたし!?

 

『これは凄い、お互いに猛烈な連打に次ぐ連打!! ”羅漢銭”VS”布槍術”のぶつかり合いだーっ!! ――――っと! 左腕を犠牲にし、古 菲選手再び龍宮選手を捕らえた! このままいけるかーっ!』

 

そして、クーフェイ少女は龍宮選手を引き寄せ、ズシン、という音と共に一撃を打ち込んだ。……が、その直後、膝を突いてしまう。しかし――――

 

突如、龍宮選手の服の背中側がはじけ飛び、そのまま倒れた。

 

『ダ、ダウーン! 龍宮選手ダウンだーっ!! カウントを取ります。 1、2、3、4、5、6、7、8、9、―――10!! 古 菲の勝利だーっ!!』

 

「「「「ワアアアァァァーーッ!!」」」」

 

おぉ……! 勝っちまったよ。……にしても凄い戦いだったな~今の。

―――なんか座りすぎて体が固まった気がするな……。俺の試合は一番後だし、ちょっと外に行ってくるか。

 

 

 

 

 

 

会場の傍でもフランクフルト売ってたよ……。とりあえず十七本買ってと。……ん? 何か会場の盛り上がり方が妙だな。何があったんだ?

 

「お、あんた惜しかったな~! もう少し早く戻って来てたらいいものが見れたのにな~!」

 

何ニヤケてんだ、この兄ちゃん。 何があったかは聞かない様にしとくか。

 

「って、あんたフランクフルト買いすぎだ!? 体でかいからって何本食うんだよ!?」

 

後ろから突っ込みなんて、聞こえてへんもんね~。

そんな事より、次はネギ少年の試合か。どうなるんだろうな、コレ。

 


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