詳しくはそちらをご覧ください。
一つ……驚いた事を話します。
確かに忘れたんだ……ローブを忘れてしまったはずなんだ……”ザ・ワールド”の姿で出歩いてしまったはずなんだ……なのに―――――
「おぉ! あの仮装、すげえ筋肉じゃん!?」
「アメコミのヒーローかな?」
「ロボットじゃない? 肌が灰色だし」
「でも滑らか過ぎる動きだよ~…?」
「あの人の仮装、見たこと無いけどかっこいいな!!」
「そうか? まぁ、かっこ悪いわけではないけどさぁ…」
何で騒ぎにならない!? っていうか、この格好が仮装としてとらえられているし! ……化装じゃねぇンだよ……マジもんの体なんだよ、素っ裸なんだよ一応……格好のおかげで恥ずかしくないけど。
……いいか、別に。 よく見たら周りも仮装者だらけだし、転生してから久しぶりに(修行時を除き)ローブ無しで動けるんだからな。
…そういえば、ローブを脱いだだけでこんなに体が軽くなるものなのか? 確かにローブは意外と動きにくかったけど……ここまで動きを制限していたのか? ……駄目だ、頭痛くなった来た。
ん?何か旨そうな匂い……おお! 路面電車の中華料理屋台か! 別に腹減ってないけど、そういう時に食っても大丈夫ってことは前に試したし、食ってくかな。
「うおぉ……!? あの人でか……!」
「結構派手な仮装だね」
「どこの部だ? アメコミクラブってあったっけ?」
「ある。俺がアメコミクラブだぜ。……俺が知る限りあんなヒーローはいない筈だ」
他にも仮装してるやつはいっぱいいんだろ!? 何で俺ばっかり……体格か? 体格のせいか?
「ご注文をお伺いするアル」
お? ……それじゃ簡単に頼んどくか。
『点心セットの………A、B、Cセットを』
「(うひゃー結構食うアルね)……承りました!」
あ、ローラーブレード履いてんのか。じゃなけりゃスムーズには回れないよな。というかあんな無茶な注文も受けてくれるんだな。
さて……注文の品が来るまで待つか―――
「へぇ~、超さん達の舞台ですか……」
「そ。チャオ一味の点心はめちゃ美味しいから、毎年大人気なのよ」
「ウチらも毎年、学祭のこの時は早起きして食べに来るんよ」
ぐ!? 聞き覚えのある声が聞こえてきた……!? ―――――うぇ…やっぱりあいつ等かい。
まぁ大丈夫だろ、いつもあいつ等の前に現れる時はローブだし。
「わぁ、あの人の仮装すごいですね! 体もおっきいし!」
「どうせ、中に人が入ってるんでしょ」
「でも、ウチあんな仮装今まで見たこと無いけどな~?」
俺の事じゃない! 故に反応しない!
「お待たせしましたアル! A、B、Cセットあるよ!」
お、来た来た~…。さてと、いただきまーす!
「めっちゃ食うわねあいつ!? どんな胃袋してんのよ!?」
「アスナさん!? あの人ちゃんと口から食べてます、中に人が入ってるんじゃないんですか!?」
「そ、咀嚼までしていますね……」
「どうなっとんのやろか……。それともあれ、本物の体かなー?」
なにも聞こえん……! 点心がうますぎて幻聴が聞こえるだけだ!
■
あ~食った食った……。 つっても腹が膨れる感覚じゃなくて、なんかこう…満たされた感覚がするだけなんだがな。
「さあ! そこの君も、参加してみないか!? 『まほら武道会』に! 強い奴に興味があるならぜひ参加するべきだよ~!!」
まほら武道会? どらどら……
「おお、参加するのかい? アメコミ風のお兄さん!」
う~ん……一般の部でも優勝賞金は十万か……、腕試しになるのか?
「おっちゃん、おっちゃん! 参加の紙くれや!」
お! 小太郎少年か……彼が参加するなら俺も出てみるか。
「お、お兄さん参加してくれるのか! あとそこの少年、俺はおじさんじゃないぞー!」
そこ、大事なのか? まぁ、いいか。
それに一般人でも弱いとは限らないし、いい経験も詰めるだろ……経験不足の解消だ!
そう思い俺は、エントリーシートに名前を書いた―――――
”ブランドー”と……やっぱ偽名じゃないと色々とまずいしね。