とある一等空尉の日常   作:オパール

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間が空いてしまいました。

そしてその間にお気に入り登録数が700越えという。
登録してくださった方々、ありがとうございました。


意地があんのよ、男には byデューク

一直線にこちらに向かってくる一筋の閃光。

視認した時には、既にその刃が振るわれていた。

 

「チッ」

 

右手に張ったシールドでそれを捌く。

逆の手に握った(スピア)状の杖を突き出すが、その頃には相手はこちらの射程圏外まで離脱していた。

その上、その手には無数に分かたれた剣。

 

 

「飛竜」

 

 

発射を待たず即時接近。

どっかの魔王系女子(ヒロイン)の砲撃と違い、その攻撃軌道は複雑極まりない。

故に、近づいた方が避けやすかったりする。

 

 

「一閃!!」

 

 

発射直後、軌道が変わり始める瞬間を狙って身体を左に回す。

そのまま突っ込み、擦れ違い様にその背中に軽く触れる。

 

「爆ぜろ」

『Blast』

 

宣言。

爆音。

触れたと同時に背中に張り付けておいたスフィアが爆裂、その甲冑の上からダメージ判定を与える。

 

 

「流石だ………!」

 

「お褒めに預かり光栄だがね………!」

 

 

怯むことなく突っ込んで来る女騎士を視界に捉えつつ、思考の片隅で次の手を練る。

 

「レヴァンティン!」

『Explosion』

 

吐き出されるは弾丸。その刀身が焔に包まれる。

 

 

「紫電一閃!」

 

 

「ウィドウ!」

『Load Cartridge』

 

それに対し、こちらもカートリッジを排出。

高まった魔力を感じつつ、杖を振るう。

 

『Riot Stake』

「ぜぇぇぇぇぇいっ!!」

 

一撃決殺。

それに相当する威力を誇る刺突と斬撃が衝突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………そう易々と攻めさせてはくれませんか」

 

「させたら負けだからな」

 

 

再び距離を置き、憮然とした顔の女………烈火の将ことシグナムにそう返す。

 

今行っている模擬戦は1on1。

ユーノが張った結界の中で、俺とシグナムが行っている。

 

 

「正面からの戦闘は苦手なはずでは?」

 

「苦手なだけでできないわけじゃあないんでね」

 

「策士が聞いて呆れます」

 

「本分がそれってだけさ。指揮官タイプも、近接戦の技能なんて必修科目だぜ?今時」

 

「で。こうして話している今この瞬間も、私に勝利するための策を練っている、と」

 

「それは想像に任せるよ」

 

 

………とは言っても、有力な一手が浮かばないというのが現状。

 

 

「………では、少々ギアを上げさせていただく」

 

「ギャグだろ」

 

「本気です」

 

 

空気が裂ける音。

反応できた自分を心から賞賛してやりたい。

 

 

「っぶねぇ!」

 

「相変わらず反応速度は一流ですなぁ!」

 

「嬉々として喋んな、殴りたいその笑顔!」

 

 

距離を離せば詰められ、牽制しようにも、発動前に潰される。

 

「ウィドウ!」

『Flash Impact』

 

シグナムに向けた杖の先端に魔力が溜まり、一拍遅れて弾ける。

その余波を受けたシグナムの動きが止まる。

 

「これで!」

『Chain Bind』

 

手の先から魔力で編んだ鎖を放つ。

 

 

「狙いは、いい」

 

………それすらも、その剣の一閃で砕け散る。

 

 

「………俺のバインド構成、そこまで甘くないはずなん だけどな………」

 

「いかに堅いバインドだろうと、頭を潰せば問題ではありますまい」

 

「言ってみてぇ、そういうセリフ………!」

 

「レヴァンティン」

『Ja』

 

閃。

神速の一撃が俺の胴を薙ぐ。

 

 

「ぎっ………!」

 

「これにて、幕引きとしましょう!」

 

 

下がった俺に、その剣を振りかぶって突っ込んでくるシグナム。

 

 

 

 

 

 

 

「だが断る」

 

───そしてその身体は、無数の鎖で絡め取られていた。

 

「!?」

 

「ふぅ………何とか引っかかってくれたか」

 

「ディレイド………まさか、一カ所にこれだけの数を………!」

 

「強い奴ってのは、格下相手だと無意識ながら油断とか慢心とかが生まれるもんでな。アンタもそうだったとは意外だったが」

 

「………そのようなつもりは」

 

「いや、責めてるわけじゃねぇよ。俺が格下なのは本当だし。それに無意識だって言ったろ?」

 

『Load Cartridge』

 

言いつつ、カートリッジを二発吐き出させる。

 

 

『Straight Strike』

 

「一瞬でも止まればこっちのもんだ」

 

「………」

 

「The ENDだ!」

 

 

 

 

 

 

「レヴァンティン」

『Ja』

 

 

弾け飛ぶバインド。

 

突き出した杖が弾かれ、左手の鞘が脇腹に食い込む。

 

 

「はっ………!」

 

「紫電………」

 

───そして、振り上げられた焔の剣。

 

「一閃!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………結局、俺の負けか」

 

「ですが、お見それしました。まさか、あそこまでの対人戦のスキルをお持ちとは」

 

「………まぁ、経験だけは積んでるからな」

 

 

訓練場から上がり、そんな言葉を交わす俺達。

 

………あのディレイドバインドにはかなりの自信があった。

それでも、解除された。そして負けた。

 

 

「悔しいな………」

 

 

 

 

「お疲れさまです、デュークさん」

 

「シグナムも、見事でした」

 

 

 

 

「っ………」

 

かけられる声。

見れば、フェイトとティアナの姿がそこにあった。

後方には、ユーノの姿も見える。

 

「久しいな、テスタロッサ。それにティアナも」

 

「ご無沙汰してます」

 

「お久しぶりです、シグナムさん」

 

 

 

 

 

「お疲れさまです、デューク」

 

「ユーノか。悪かったな、こんな事に引っ張り出しちまって」

 

「いえ。こっちの練習にもなりましたし」

 

「そうか」

 

「………どうかしましたか?」

 

「………別に」

 

シグナムと親しげに話す二人を見る。

 

 

 

 

 

 

「無様な負け姿を晒して屈辱かしら、デューク?」

 

 

 

 

 

「」

 

「え………」

 

 

背後からかけられた声に硬直。

背中一面に冷や汗が滲むのがわかった。

 

「ユミル一佐………」

 

「こんにちはユーノ君」

 

「お、お久しぶりです、ユミルさん。え、でも、どうして?」

 

ひらひらと手を振りながら俺とユーノに笑いかける女性。

 

ユミル・ディノア。

 

管理局の一等空佐で、かつては武装隊随一の結界魔導師。俺の義姉でもある。

 

………過去にユーノ、それと高町に何かしらのトラウマを植え付けたらしい。又聞きだが。

それに、短期間だがユーノの指導もしていたらしい。主に結界魔法の。

 

 

「我が愛する愚弟の戦い振りを一目拝もうかと思っ て」

 

「ぬぐっ………」

 

「それと、愛弟子の様子と………未来の義妹候補を、ね」

 

「「」」ギラッ

 

ユミルが言った瞬間向けられる、W執務官の視線。

 

怖っ!目ぇ怖っ!

 

 

「義妹って、あんたな………」

 

「あら。貴方も良い歳なんだから、そろそろ身を固めても問題は無いでしょう?幸い、あんな見目麗しい女性達から好かれてるのだし」

 

「………」

 

「………何か理由でもあるの?」

 

「それは………」

 

 

 

 

「そこまでにしなさい、ユミル」

 

 

 

 

「!」

 

「………ローエン将軍」

 

 

管理局将校の制服に身を包み、杖をついて歩く初老の男性。

 

 

「ロ………」

 

「「「ローエン・ディノア将軍!?」」」

 

 

俺とユミルの父、ローエン・ディノアその人だった。

 

 

「ローエン、って………」

 

「ああ、そっか。ティアナは初対面だったっけ。あの方は………」

 

「ああ、構わないよテスタロッサ執務官。自己紹介くらいできる」

 

 

言うと、親父はティアナの方に向かっていく。

 

 

「初めまして、ティアナ・ランスター執務官。私はローエン・ディノア。一応………大将の階級に就いている」

 

「は、はいっ!ティアナ・ランスターです。将軍のお話はデュークさ………いえ、デューク一尉より伺っております」

 

 

ガチガチのティアナを見て、少しだけ苦笑の表情を見せる。

 

 

「ははっ。そこまで畏まらなくても構わないよ。私よりも君の経歴の方が賞賛されるべきだろうから」

 

「い、いえ、そんな。私なんかが将軍よりも………」

 

「ふむ………まぁ、いいか。今後とも、お見知り置きを」

 

「は、はいっ」

 

「さて………デューク」

 

「………はい」

 

「先の模擬戦、私も見させてもらった。残念だったな」

 

「………はい」

 

「お前の事だ。既に負けた理由や次への改善点なども考えているとは思う」

 

「………」

 

「それは別にいい。………だが、「情けない姿を見せた」などという下らん思考に囚われるなよ?」

 

「!?」

 

 

………やっぱり、気付いて………

 

 

「それだけだ。精進するように」

 

「………助言、肝に銘じておきます」

 

 

そうして、立ち去ろうとする親父。

 

 

「………ああ、そうだデューク」

 

「っ………はい」

 

 

 

 

 

「たまには家に顔を出しなさい。母さんも………無論、私も嬉しいからな」

 

 

 

 

 

「………」

 

「ではな」

 

 

そう言い残し、親父はその場から去っていった。

 

 

「………デュークさん」

 

「情けねぇところ、見せちまったな」

 

「い、いえ………」

 

 

心配そうに声をかけてくるフェイトに、僅かに笑みを作って応える。

 

 

「ごめんな。格好悪い男で」

 

「そんな事………」

 

「………悪い。ちょっと一人にしてくれ」

 

「あ………」

 

「デューク」

 

 

部屋から出ようとする俺に、ユミルが声をかける。

 

 

「父さんが言ったこと、理解できてるわよね?」

 

「………ああ。囚われはしねぇよ。でも………反省会くらいはさせてくれ」

 

 

そう言い残して、俺は部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………わかってる。わかってるよ、親父。

 

でも、やっぱり情けないと思う。

 

こんな俺に惚れてくれた二人に、大した手傷も負わせられないまま負けた姿を見せちまったんだ。

 

悔しくて、悔しくてたまらない。

 

嫌になるよ、畜生………




戦闘描写なんて嫌いだっ

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