とある一等空尉の日常   作:オパール

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番外編は二つと言ったな、あれは嘘だ

時間軸は男子会、その裏で行われてた女子会になります


酒は混沌の隷也 byフェイト

「ユーノくんのばかぁぁぁぁっ。にぶちん、ショタ顔フェレットぉぉぉぉぉ………!」

 

「せやな、ユーノくんほどの甲斐性無しもおらんな。もっと飲む?」

 

「飲むぅ、飲み尽くすぅ………」

 

 

友人や後輩達との飲み会にちょっと遅れた私が目撃したもの。

親友が真っ赤な顔でお酒の入ったグラスを片手に管を巻いているところだった。

 

 

「あ、フェイトさん。お疲れさまです」

 

「すいません、お先に始めちゃってました」

 

「ああ、うん。お疲れ、スバル。ティアナも、気にしないで。………もう出来上がっちゃってるの、なのは?」

 

「二杯目辺りから怪しかったんですけど」

 

「気付いたら、もう………」

 

「そ、そう………」

 

 

ビールやらボトルで運ばれてきているワインやらをどんどん空にしていくなのは。

帰ったらヴィヴィオもいるのに、自棄酒呷るのはどうなんだろう。

 

 

「仕事はともかく、スクライア司書長絡みのストレスだけはどうにもならんのだろう」

 

「あ、シグナム。お疲れさまです」

 

「ああ。お前も座ったらどうだ?」

 

「そうですね。失礼します」

 

 

シグナムに促されるまま、なのはの隣、はやてとは反対の位置に腰を下ろす。

 

 

「フェイトちゃぁぁぁぁん………」

 

「はいはい。飲むのはいいけど程々にね?急性アルコール中毒になんてなったら目も当てられないんだから」

 

「わかってるよぅ………」

 

 

わかってると言いながらグラスを呷る手は止まらない。

一つ嘆息して、私もお酒を注文する。

 

 

「いやー、にしてもこんな人数で集まるなんて久々やない?」

 

「そうですね。なのはは教導、スバルは特急隊で、テスタロッサとティアナは執務官。ここ数ヶ月は集まる機会もあまり無かったかと」

 

「にひひ。まぁ、今はこの時を楽しもうやん。んじゃ、フェイトちゃんも来たことやし、改めて乾杯!」

 

『『乾杯!』』

 

「ぱーい………」

 

 

お酒が回ってぐでんぐでんななのはを含めた全員のグラスがぶつかる。

飲む量は程々に。スバルやティアナはともかく、はやては間違い無くかなりの量飲むだろうから。

 

 

「んぐっ、んぐ………ぷはぁー!」

 

「うぅ、やっぱあたしビール苦手………」

 

「すみません、シーザーサラダとアヒージョを二人前お願いします」

 

「あ、あとバターソテーも追加で」

 

「フェイトちゃぁん、ゆーのくんさぁー」

 

 

グラスのお酒を一気に呷るはやて、ビールに顔をしかめるスバルと料理を注文するシグナムとティアナ。

そして私に絡んでくるなのは。

真っ赤な顔で涙を溜めながらしなだれかかってくるなのはに苦笑しながら、耳を傾ける。

 

 

「ユーノがどうしたの?」

 

「わたしぃ、すっごいゆうき出したんだよぉ?ゆーのくんのきゅーけいみはからってぇ、むなもとあけてまでせまったのにぃー」

 

「ちょっと待って」

 

 

しかも休憩中ということは場所は無限書庫なはず。

………何をやっているんだろう、この親友は

 

 

「はずかしいのがまんしたのにぃ、ぜんぜんはんのうしてくれなかったのぉー」

 

「………」

 

「ゆーのくんのへたれぇー!」

 

 

そう叫んで、ひたすらグラスを空ける作業に戻る。

………そんな行動に出るなのはも大概だけど、それで受け入れようとしないユーノもユーノだと思う。

私も言っておこう。このヘタレ。

 

 

「なんや、シグナムー。やっぱ胸大きくなってんのとちゃうん?」

 

「あ、主はやて。まさかもう酔ったのですか?」

 

「いやいや、まだまだこれからやで。それよりも、どうなん?」

 

「な、何がでしょうか?」

 

「わかっとるくせにー!ヴァイスくんとヨロシクやっとるんやろー?」

 

「ぶっ!」

 

 

………あそこに入るのはやめておこう。

今まさに恋をしている身としては経験談くらい聞きたいけど今は盗み聞くくらいにしよう。

 

 

「ティア!これもおいしい!」

「あーもうがっつかない!」

 

 

………あぁ、やっぱりあの二人見てると和むなぁ

 

 

「別に料理は逃げないよ、スバル」

 

「あ、フェイトさん」

 

「なのはさんはいいんですか?」

 

「今は飲みたいだろうしね。酷くなるようなら止めにいくから大丈夫」

 

 

そう言って、ティアナの隣に腰を降ろす。

既にお皿を空にしているスバルを横目で見ながら、そっとティアナに話しかける。

 

 

「どう?仕事の方は」

 

「そうですね………執務官になってそれなりに経ちますけど、まだまだ学ぶことばかりです。今でもデュークさんに色々伺ったりしてますし」

 

「………へぇ」

 

 

………流し目で見ながら言ってくれるティアナ。

なのは達のデートの監視した日、ライバル認定した時から、ティアナは多少なりとも積極的だ。

しかもデュークさんの性格上、間違いなく困った顔もイヤな顔もせずに色々教えてティアナの好感度上げてるはず。

 

まぁ、デュークさんの好感度も上がってるかどうかは別の話だけど

 

 

「そっか。まぁ、それは私も通った道だからね。デュークさんも懐かしんだんじゃないかな。私、ティアナよりも小さかったとはいえ年は言うほど離れてないしね」

 

「ふふっ。まぁ、私は私なりのやり方で頑張っていますから、フェイトさんほどデュークさんには頼りません。甘えたがりと思われたくないですし」

 

「あははっ。それじゃあデュークさん寂しがっちゃうんじゃない?妹みたいに思ってる後輩に頼られないなんて」

 

「ふふっ、ふふふふ………」

 

「あはははは………」

 

「………ふたりとも怖い………」

 

 

表面だけ笑って目が笑ってないティアナ。きっと私も同じ顔。

二人でグラスを持ち上げて、やや乱暴にぶつけあって、一気に呷る。

………だめだ。やっぱりデュークさん絡みになると平静を保っていられない。

 

ふと見れば、はやてがシグナムの胸を掴んだままいやらしい笑みを浮かべてこちらを見ていた。

それにしてもあの絵面は完全に女としてアウトだと思う。

 

 

「………どうかしたの、はやて?」

 

「いやいや、恋する乙女は怖いもの知らずやなー、思うて」

 

「そうっ、ですね。んっ、あそこまでティアナがっ、噛みつく、とはっ、くぅっ。あの、主はやて、そろそろ、胸から手を」

 

「ふふん。やっぱこの状況やったらやるしかないんやない?」

 

「無視ですかそうですか」

 

 

泣かない………騎士は泣かない………と、顔を伏せながらそう漏らすシグナム。

うん、普通の人なら涙目になってもおかしくな………あれ、泣いてる?

 

 

「八神指令、やるしかない、というのは?」

 

「んー?決まっとるやん」

 

 

そう言うと、はやては立ち上がって左手をスカートのポケットに入れて、胸を必要以上に張りながら右手の一指し指を明後日の方向に向けて叫んだ。

 

 

恋バナ(ガールズトーク)!!」

 

 

場が沈黙に支配される中、スバルの「ふぇ?」という間の抜けた声が響く。

それに目聡く反応したはやての矛先が向けられた。

 

 

「ほな、スバル。何かある?」

 

「あ、あたしですか!?い、いやー、あたしはそういうのは別に………」

 

「なんや、まだ花の十代やろ?言い寄ってくる男くらいいたんとちゃうん?何せこのおっぱいやしー」

 

「ひゃんっ!?」

 

 

シグナムの隣にいたと思ったらいつの間にかスバルの胸を揉みしだいていた。

本当、この胸に対するはやてのスペックの高さは何なんだろう

 

 

「あ、あの………確かに、付き合ってくださいとか、そういうのは言われたことありますけど………」

 

「けど?」

 

「あたし、今は仕事に打ち込みたいんで、そういうのは考えないようにしてるっていうか………あの、手離してもらえますか?」

 

「ふんふむ………よし、わかった。予言したる」

 

「はい?」

 

「スバルは数年以内に年下の男と付き合って結婚する、間違いないわ」

 

「えっ、と………根拠は?」

 

「わたしの勘や!以上!」

 

 

そう言ってスバルから離れたはやては、今度は私とティアナに目を付けた。

 

 

「さぁ、どないやお二人さん!」

 

「デュークさんが好きです」

 

「同じく」

 

「お、おう………」

 

 

しれっと言い放った私達にはやてがたじろぐ。

 

 

「少なくとも………意識はされてる、はず」

 

「そうですね。デュークさんも、その、男性ですから」

 

 

贔屓目に見ても、私もティアナも容姿は整ってる方だと思う。

それにスタイルにも気を遣ってるから………悪くない、よね?

 

 

「な、なんや。ずいぶんあっさり話すやん」

 

「それは………まぁ」

 

「別に恥ずかしいだなんて思ってないですし」

 

 

ティアナと目線を合わせながらそう答える。

恋敵ではあるけど、そこまでギスギスしてない私達。思うところは一緒だから考えも一致する。

じゃあそろそろ私のターンといこう

 

 

「はやてはどうなの?」

 

「へ?」

 

「そうですね、私も聞きたいです」

 

「い、いや、そのー」

 

「人に聞くだけ聞いておいて」

 

「自分は話さない、なんてことないよね、はやて?」

 

「な、なのはちゃんやシグナムは」

 

「なのははもう潰れる手前だし」

 

「シグナムさんはだいたい想像つきますし」

 

「えーと………」

 

 

二人で徐々に迫っていたようで気付けばはやては壁際。

ティアナと二人で正面から見つめながら言葉を紡ぐ。

 

「さぁ」

 

「さぁ」

 

「かっ、堪忍してぇぇぇぇ………!」

 

 

 

 

 

 

 

『ふっ、ふーんだ!処女に処女なんて言われても悔しくあらへんもんねー!こうなったらこうや!』

『へっ?なんでうぐぅっ!』

 

 

追いつめられたはやてが取った行動、何を思ったかスバルを酔わせるというものだった。

 

 

「んんっ、ちょっ、やめなさいってスバル………ばっ、なに脱がせようとしてんのよ!」

 

「ハァハァ………てぃあ………てぃあぁ………」

 

 

その結果がこれだよ………

 

 

「フェイトちゃんがいじめてきたんよシグナムぅー」

 

「主はやて………もう、お開きにしましょう………!」

 

「うへへへぇ………もー、ゆーのくんったらはつじょーきなのぉー?」

 

 

あぁ、なんてカオス………

 

そしてそんな混沌とした時間は、私以外の全員が酔い潰れ、ザフィーラが迎えに来たことで終息した。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「はぁ………」

 

 

私が家に着いたのは朝方。

今日は休日、シャワーを浴び終えて、眠りにつこうとしていた時に、ふと別れ際のはやての言葉が思い浮かんだ。

 

 

『日が昇ったらデューク一尉の家に行き。ええもん見れると思うで?』

 

 

いつものにやにやとした笑み。

嫌いではないし、よくする顔だけれど、今回はどうにも気になった。

 

 

「………ちょっと、行ってみようか、バルディッシュ」

 

 

そう告げると、相棒は僅かに明滅して応えてくれる。

 

………そしてこの日、私達の物語は新しいステージに進むことになる




以上

とりあえず番外編は全部です
次回からはEDに入っていきます

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