とある一等空尉の日常   作:オパール

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年内中に間に合った!

というわけで、フェイト追憶編、どぞ!


一途な恋(追憶:フェイト編)

───それはもう、遠い昔のこと

 

───けど、鮮明に思い出すことができる

 

───貴方は、覚えていますか?

 

───私は、あの頃からずっと───

 

 

 

 

「指導、係?」

 

「ああ。僕と同期の局員で、今ちょうどこの艦に来ているんだ」

 

 

私が正式に管理局に入り、アースラ所属となったばかりの頃、クロノからそんな報告を受けた。

 

 

「でも、それだったらクロ………お義兄ちゃんでもいいんじゃ………」

 

「い、いや………彼はそういう事に関しては信用も信頼もできるし、僕も色々とやることがあるから、あまり時間が取れないんだ」

 

「そう、なんだ………」

 

 

正直、気乗りはしなかった。

執務官志望の身としては、現役の執務官であるクロノに指導してもらった方が効率がいいと思っていた。

 

こういう言い方はアレだが、一般局員でしかない人間の指導を受ける必要はあるのか、とさえ思っていた。

 

 

「………それで、その人は?」

 

「ああ、彼なら………」

 

 

「呼ばれて飛び出る俺、参上!」

 

 

言って、部屋に飛び込んできたのは一人の男性。

 

特撮ヒーローのようなポーズを取り、子供のような笑みを浮かべていた。

 

 

「やぁやぁ話は聞いてるぜテスタロッサ執務官候補生。俺はデューク・ディノア。そこの妹萌えの友人やってるもんだ。これから半年、よろしく頼む」

 

 

言って、私に手を差し出してくる。

 

今にして思えば、その屈託の無い笑顔を見たその時から、私は貴方に惹かれていたんだと………そう、思うんです。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「………と、まぁ、そんな感じだな。何か質問は?」

 

「いえ、大丈夫です………」

 

 

自己紹介の後、私はデュークさんから執務官や次元航行部隊に関しての簡単な説明を受けていた。

 

なんでも、クロノが執務官試験を受ける時にも色々手伝ったりしていたため、知識量はあるらしかった。

 

 

「聞いてた通り、優秀だな。さて、一息入れるか」

 

「え?」

 

「何飲む?持ってくるケド」

 

「え、いや、でも」

 

「遠慮すんなって」

 

「ちがっ、今さっき、始めたばかり………」

 

「半年あるんだぜ?俺から教えられる事なんて数えるほどしか無ぇんだから、ゆっくりじっくりやってこうや」

 

「ですが………!」

 

「はいはい、いいから座って待ってろって。んじゃ」

 

 

気付いた時には、私はアースラの休憩スペースのテーブルに着かされていた。

 

カップを手に呆然とする私の向かいには、コーヒーを啜るデュークさんの姿。

 

 

「………あの、こんなゆっくりしてて、本当にいいんですか?」

 

「無問題。別に急ぐ必要があるわけでもなし、今は親睦深めといた方がいいだろ」

 

「………」

 

「不服か?」

 

「………いえ」

 

「そりゃよかった。んじゃ、まずは………」

 

 

そう言って、楽しげに話し始めるデュークさん。

 

自分が普段、どんなことをやっているのか、次元世界で見たもの、聞いたこと、体験したことを本当に、楽しそうに。

 

気づけば、私も自分から進んで話していた。

なのはやはやて、海鳴のみんなとの話を。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「………」

 

「………あー、大丈夫か?」

 

「はい………」

 

 

私が初めてデュークさんと模擬戦を行った時、私は見事に敗北を喫していた。

 

 

「何で負けたかわからない、って顔だな」

 

「………」

 

「ま、言っちまえば経験の差と………後はまぁ、俺が今までに戦った事のないタイプだったってくらいだな」

 

 

デュークさんの戦法は、こちらの動きを先読みして、そこへ効果的な攻撃を行う策略型。

その上、彼自身も近接戦の心得があるようで、私は途中から完全に攻め倦ねていた。

 

 

「まぁ、俺は本来前衛型じゃあねぇからな。あと二、三回もやれば今度からは俺が負けるよ」

 

 

クロノには負け越してるしなー、と、苦笑混じりに話す。

 

………素直に、嫌だと思った。

 

その時はまだ理由はわからなかったけど、この人が負ける姿というのは、想像したくなかった。

 

 

「………さて。いい時間だな。行こうぜ」

 

「あ、はい」

 

 

『………終わったか、テスタロッサ?ではディノア空曹。次は私と』

 

「だが断る!行くぞテスタロッサ!」

 

「ふぇ?ひゃあ!?」

 

 

シグナムからの申し出を二秒で却下した彼は、私の手を引いて訓練場を後にする。

 

私に比べて大きく、力強いその掌。

私の心臓は、知らない内に大きく鼓動を刻んでいた。

 

 

「はぁ、はぁ………と、悪い」

 

「ぁ………い、いえ、私こそ………」

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

クロノのような真面目なタイプとも、ユーノのような控え目なタイプとも違う。

 

 

「今日で最後だな。なんかあっという間だったな、半年なんて」

 

「はい………」

 

「後はまぁ、クロノや他の執務官に世話になるなり、どっかで過去問探すなり何なりしてくれ」

 

「………」

 

「………どうした?」

 

「………あの、デュークさん」

 

「?」

 

「よかったら、その………もっと、お話、聞かせてもらえますか?これからも………」

 

「これからも、って………」

 

「だめ、ですか………?」

 

「………」

 

「………」

 

「………別にいいぜ。お前がそうしたいなら、な」

 

「あ………ありがとうございますっ」

 

 

 

優しくて、子供っぽいのにどこか飄々としてて………

 

 

 

「………なぁ、あの二人、本当に付き合ってないのか?」

 

「えっと………なのはと、ユーノのこと、ですか?」

 

「ああ。なんていうか、あれだ。クロノとエイミィさんに通じるものを感じる」

 

「まぁ………仲はすごくいいですけど、そういう話は聞いたこと………」

 

「あれで付き合ってねぇとか………まだガキなことをさっ引いてもありえねぇだろ………」

 

「私に言われましても………」

 

「………」ニヤリ

 

「?」

 

「よし決めた。あの二人くっつけるぞ」

 

「え」

 

「メンバー集めろ!ユーなのCP成立作戦、状況開始だ!」

 

「え、えぇ!?」

 

 

 

私の手を引いて、私を引っ張っていってくれそうで………

 

 

 

「聞いたぜテスタロッサ!合格おめでとう!」

 

「え、だ、誰から………」

 

「誰でもいいって!ともかく、ようやくだな!」

 

「あ、ありがとうございます………でも、そんな自分のことみたいに………」

 

「嬉しいに決まってんだろ?可愛い後輩がやっと目標達成したんだ。喜ばずにいられるかって」

 

「か、かわいいって………」

 

「?まぁいいや。んじゃ、打ち上げでも………」

 

「あ、私、今日はみんなと………」

 

「っと………そっか」

 

「………あの」

 

「んぁ?」

 

「よければ、その………今度、二人で………」

 

「?」

 

「ふ、二人だけで、打ち上げやり直してもらえますか?」

 

「二人、って………」

 

「………」

 

「………わかった。俺でいいなら」

 

 

 

だから、もっと貴方を知りたくて。

貴方のそばに、もっといたくて───

 

 

 

「この子が?」

 

「はい。ほら、エリオ」

 

「エ、エリオ・モンディアル、です」

 

「エリオ、だな。俺はデューク・ディノア。そこのテスタロッサの先輩だ。よろしくな」

 

「は、はい………」

 

「………何か暗いな」

 

「この子、まだあまり外に慣れてなくて………」

 

「ふーん………なぁ、エリオ君」

 

「っ………はい」

 

「同じだよな、髪の色」

 

「え………あ、はい。そう、ですね」

 

「どうだ?俺のことお兄ちゃんとでも呼んでみるか?」

 

「え………」

 

「あら、素の驚き。ボケにそんな反応されると辛いわー」

 

「え、あ、そんな………す、すみません」

 

「………お前といいテスタロッサといい」

 

「?わぁっ!?」

 

「ガキが余計な気ぃ使わなくていいんだよ!黙って大人しく甘えとけ!」

 

「で、でも………」

 

「俺の半分も生きてないガキだろ?社会も知らないくせに知った風なこと言うなっての」

 

「………」

 

「そうだよ、エリオ。私もデュークさんも、迷惑なんて思わないから」

 

「………はい………!」

 

「………やっべ、マジ父性に目覚めそう」

 

「え………?」

 

「………何でお前が反応するんだよ」

 

 

 

そして、あの時───

 

 

 

「あ、デュークさ………」

 

「悪いな。俺、あんまりそういうこと考えないようにしてるんだ」

 

 

ある日のこと、私はデュークさんが女性局員に告白されているところに出くわした。

 

 

「そう………ですか………」

 

「あんたの気持ちは嬉しいけどな」

 

「………ほんとは」

 

「?」

 

「本当は、あの執務官と………」

 

「………?」

 

「何故!いつまでもあの小娘を気にかけているんですか!」

 

「は?」

 

「貴方は知らないんです!彼女が何者か!」

 

「そんなん言われてもなぁ………」

 

「………私は知ってます。彼女は………!」

 

(まさか………!)

 

「彼女は、あのプロジェクトFの………!」

 

「ダメッ!やめてぇっ!!」

 

「テスタロッサ!?」

 

 

その言葉を聞いた瞬間、私はデュークさんの手を引いてその場から離れていた。

 

 

「………どうした?」

 

「あ、い、いえ、あの、その………こ、告白されてたんですね………」

 

「………ああ」

 

「デュークさん、素敵な人ですから、仕方ないですよね、あははは………」

 

「………プロジェクトF」

 

「!!」

 

「………なぁ、テスタロッサ」

 

「………いや」

 

「テスタロッサ………?」

 

「いや………いやぁ!」

 

「ちょ、おい!」

 

「ごめんなさい!わた、わたし!ちがう………ちがうの!!」

 

「テスタロッサ!!」

 

「いや………わたし、わたし………おねがいです、嫌いに、ならないで………離れないで、ください………」

 

「知ってる!!」

 

「………え?」

 

「全部、知ってる………お前がどういう存在なのか、全部知ってるから………」

 

「デューク、さん………?」

 

「悪いとは思ったけど、全部調べた………だから、知ってる」

 

「………じゃあ、今まで………全部知ってて、わたしを………?」

 

「………ああ」

 

「わたし………アリシアのクローンで………普通じゃないのに………?」

 

「………それでも」

 

「どう、して………」

 

「………お前の友達は、お前がクローンだからって嫌うやつらか?」

 

「っ………違います!なのは達はそんな………」

 

「それと同じだよ」

 

「あ………」

 

「お前は、お前でしかないだろ」

 

「………」

 

「俺はアリシアなんて知らない。俺が知ってるのは、寂しがりやで過保護で心配性でどこか脆い………フェイト・T・ハラオウン。俺の大事な教え子だ」

 

「デュークさん………!」

 

「だから、俺はお前を嫌わない。お前の味方をやめるつもりも無い」

 

「………うっ、うぁぁぁぁ………!」

 

 

その言葉が、その嘘偽り無い想いが嬉しくて、私はずっと、その胸を借りて泣き続けた。

 

 

「おうおう、泣け泣け。素直に感情出せるのは人間の長所さ」

 

 

 

 

 

この時、私の貴方への想いが確かなものになったんです。

 

私を支えてくれる人。

私の全てを受け入れてくれる人。

私に、暖かな気持ちをくれる人。

 

だから、デュークさん。

 

私は、貴方が好きです。

 

なのはよりも、クロノや義母さんよりも………複雑だけど、ヴィヴィオやエリオ、キャロよりも。

 

誰よりも………貴方を愛しています。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「フェイトちゃん?」

 

「………ん?あぁ、ごめんなのは。どうかした?」

 

「ううん。ただ、ボッーとしてたから」

 

「そっか………ごめんね」

 

「いいよ、別に。それより、これからデュークさんとデートでしょ?がんばってね!」

 

「頑張れフェイトママー!」

 

「あはは。ありがと、二人とも。………でも、なのはは人のことばかり気にしてられないでしょ?」

 

「あぅ………」

 

「なのはママも頑張れ!」

 

「あうぅ………」

 

「ふふっ………じゃあ、私行くね」

 

「「いってらっしゃーい」」

 

 

 

デュークさん。

 

貴方がそうしてくれたように、貴方の全てを、私は受け入れます。

 

たとえ何年経っても、私の恋心は貴方だけのものです。

 

だって………

 

私は、一途さが取り柄なんですからっ




以上です。

仕事の合間に細々と、マジ辛かった………

間もなく新年、来年もこの作品をよろしくお願いします!

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