翌日、梅郷中ラウンジ
「居たよ......」
ユウスケは昨日のは冗談、または人違い、もしくは有り得ないだろうが幻覚でも見ていたのだろうと考えていたが、それは全て外れた。
彼女は、黒雪姫はラウンジの最奥の窓際のテーブルにいた。
腰近くまである漆黒の髪にスカートから覗く脚も黒いストッキングに包まれている。
「......マジか」
ユウスケは溜め息をついてラウンジの入口から中に入った。周りの2、3年生は物珍しそうな目でこちらを見ている。確かにユウスケは昨日ここに転校してきたのだし、彼の髪の色や平均よりもやや高い身長のせいで不思議がられてもおかしくはない。
「......! 来たな、ユウスケ君。」
「ああ、とりあえずは久し振りだな。」
「うん、実に2年ぶりかな。君が引っ越してから。また会えて嬉しいよ。あ、そうだ。」
すると、彼女はポケットから長さ2メートルの1本のケーブルを出した。それは両端に小さなプラグがついている。彼女は右手でそれを首のニューロリンカーに挿した。そして、もう片方をユウスケに差し出す。
「......は、はい?」
「何を素っ頓狂な声を出しているんだキミは?早くこれを挿してくれ。」
「え......でもこれって......」
ユウスケは驚きで状況が整理できていない。ラウンジにいた周りの生徒は嘘だろ、とかいやああ、とかこんなの夢だ......とか絶望や悲鳴の声を出している。
これは“有線直結通信”、通称“直結”
ニューロリンカーには何重ものセキュリティが介在しているが、直結を行えばその防壁を9割まで無力化するのだ。ゆえに、基本的にはこれを行うのは家族や恋人に限られる。つまりは公共の場で直結している男女の殆どは付き合っていることになるのだ。
「......どうしてもか?」
ユウスケは最後の抵抗と言わんばかりに溜め息プラス呆れ顔で尋ねると、
「あ、た、り、ま、え、だ」
「ハイ、ワカリマシタ......」
黒雪姫の圧力に屈してしまい、ユウスケはプラグのもう片方を自分のニューロリンカーに挿した。
『うむ、ありがとう。思考発声はできるかい?』
『できるけど......で?何の用だよ?あんたがわざわざこんな手の込んだことしてるってことは何かあるんじゃないのか?』
『ふむ......確かにそうだな。ユウスケ君。感動の再会に浸っていたい気分でもあるが、それはまた今度にしよう。
単刀直入に聞くが、まだ《ブレイン・バースト》はまだ持っているかい?』
『持ってるけど......』
『よかった。なら今日の放課後ちょっと付き合ってもらえないかな。』
『は?』
『引っ越し先で対戦はしていたかい?』
『.......してない。』
『ならまずは対戦をして、対戦の感覚を取り戻して貰わねばな。』
『わかったよ。でもその前に予行練習くらいはさせてくれ。』
『予行練習?』
『ああ。 バースト・リンク』
バシィィィッという音とともに、初期加速空間に入りユウスケはマッチングリストから自分と黒雪姫のアバターの名前を選んだ。
すると、周りの景色が一変し、周りの生徒たちは消えて、空がオレンジ色の夕焼けに包まれた。
「ほう......黄昏ステージか。レアなのを引いたな。」
そこには学内ローカルネットのアバターと全く同じ黒雪姫の姿と、一つのデュエルアバターの姿があった。
「いや、黄昏ステージよりお前の姿に驚いたんだけど......前のアバター使ってないのか?」
「ああ、今は封印しているよ。」
「にしても、この姿は久し振りだな。」
「ああ、私もキミのその姿をまた見ることができるとは思ってもいなかったよ。
おかえり、Crystal Sparrow《クリスタル スパロウ》」
まだ名前だけですが、容姿の描写も次回からしていきます。でも描写があまり上手くないと思うので、足りないところは推測でお願いします。特徴やアビリティも次回から書いていきます。