無色の加速能力者《バーストリンカー》   作:チャレンジャー

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Phase12

五感が切断され、対戦フィールドが再構成されていく。それはユウスケの自宅マンションには似ても似つかない、ボロボロのコンクリートの打ちっ放しとなった建物だった。

そして、2人の身体が《デュエルアバター》に変身し始める。

 

「ふぅ......」

 

リアルとはさして変わらない身長と体格。頭の左右から後ろに伸びた2本のツノのような突起。そして、輝く透明の装甲。クリスタル・スパロウにユウスケは変身した。

 

目の前を見ると、そこには緋色の装甲を備えた、身長がせいぜい130ちょいくらいしかないアバターが目に入った。

頭部には、まるでツインテールともとれるアンテナらしきものがついている。

 

「スカーレット・レイン..........?」

 

誰だっけ?覚えてない。

 

ユウスケは首を傾げながらチラッと相手のレベルを確認した。

そこに刻まれていた数字は──9。

 

一瞬、目を疑った。レベル9、それはつまりこの加速世界では最強の7人に入る者のレベル。王である。

 

「おい、お前!!一体誰だ!!」

 

数字を見て、間髪入れずユウスケは尋ねた。

 

「あぁん?うっせーよ。

知りたきゃ教えてやる。あたしは《プロミネンス》、二代目レギオンマスター《不動要塞》《スカーレット・レイン》だよ!!」

 

「な..........!?」

 

正直に驚いた。流石にユウスケも王がリアルアタックなどしてくるわけがないと思っていたが、そもそもあんな小学生が王の1人だとはもっと思えなかった。

 

「どうした?怖じ気づいたのかよ?アンタだって王のくせに。」

 

「はあ?王?冗談よせよ。俺はまだレベルはベテラン級じゃないんだぜ。」

 

ユウスケはわざと挑発するような口調で言い返した。ついでに白々しく。

 

「下手な芝居はやめろよ。あたしも結構本気でいかせて貰うからよ、アンタも弁えろよ。」

 

「へいへい。」

 

ユウスケはまたもや挑発に出る。相手が王であるならば、精神年齢はそんなに低くはないので気遣いも薄れるのだ。

 

「いくぜ......」

 

突如、レインの周りの空間が歪み巨大な緋色の火力コンテナが出現する。それらはレインのアバターを包み、最後に巨大な2本の砲身が現れる。もはやその姿は砲台、戦車、または要塞と形容すべきものだ。

 

「おいおい、やりすぎじゃねーのかよ。武器っつーか、こっちの装甲のが本体じゃないのか?」

 

「いーんだよ、細けーことは。さっさと始めようぜ。」

 

「..........ああ。」

 

後は会話は不要だ。対戦は戦って語る。

 

ユウスケは前方にダッシュ。巨大な砲身の真下に回る。砲身の発射口は真下までは向けられない。ユウスケはレインの装甲に拳を打ちつけた。しかし、当然の如く装甲には大した傷は付かず、体力ゲージは減らない。

 

「効かねえよっ!!」

 

突如、殴った装甲が開き、大量の黒い円が現れた。

ユウスケは直感的に攻撃を察知し、ジャンプして空中で一回転してから、背後の装甲の接続部を落下しながら蹴りで狙う。見事に直撃し、レインの 装甲に傷が付く。いける!

そう思ったのも束の間、レインのコンテナが開き大量の小型ミサイルが発射される。

ユウスケは走って振り切ろうとするが、ミサイルは軌道を変え全てがこちらに向かってくる。

 

だが、ユウスケは数メートルほど離れていた距離を縮めるかのようにスピードを緩めた。そして、近くの最も大きい鉄柱の側面の辺りで止める。あと、3メートル、2メートル、1メートル、そして、0──となるほんの少し前にユウスケのアバターの装甲が、白いマントを纏いシュンッと横に凄まじい速さでスライドした。

ミサイルは、突然の攻撃対象の位置の変化に対応できず全てその鉄柱に衝突、爆発した。

 

「この程度かよ?《赤の王》。こんなんじゃ、スライムも倒せねえよ。」

 

「うるせえ!《ヒートブラスト・サチュレーション》!!」

 

技名発声。必殺技だ。砲身から真紅の火線が放たれ、ユウスケを襲った。ユウスケはなんとかその攻撃範囲を逃れようと横移動をするが、遅れた左腕がその砲撃に呑み込まれ消滅。体力ゲージは2割も削られる。

 

「ちいっ!!」

 

ユウスケは加速スピードを高めて狭い建物内から脱出した。これで障害物を気にせずに回避、攻撃ができる。

ユウスケは様子を見ようと空中をゆっくりと上昇する。

 

すると、ドガガガッ!!と強烈な爆発音が響き自宅マンションを模したビルが半壊し、先程レインがいた座標の上にあるコンクリートが吹き飛ばされ、その巨大な要塞アバターが姿を見せた。

 

「へぇ、そいつが《加速アビリティ》──王の力かあ。噂は聞いてたけど、やっぱホンモノ見んのが一番だよなー。」

 

まったくの余裕だ。確かにこのままでは防戦一方、あの砲撃をマトモに喰らえば体力ゲージはゼロになるか、危険域に持っていかれる。

 

「..........王の力なんて言うなよ。俺みたいな一介のバーストリンカーには似合わないだろ?」

 

「だーから、知らばっくれんなってんだよ!!

《ヘイルストーム・ドミネーション》!!」

 

主砲、ミサイル、機銃、全ての遠距離火力の複合技だ。さっきの必殺技も大概だったが、これは本当に洒落にならない。

 

「......っ!!」

 

まずは主砲のビーム。これは直線攻撃なのでタイミングを計り、完璧にかわす。

 

次にミサイル。これはユウスケを追尾してくることはわかる。しかし、先ほどのように引きつけてから壁や柱にぶつける技は使えない。

しかし、遠距離射撃の対策をユウスケは怠っていなかった。

 

1本のミサイルを、他の十数個のミサイルが密集し、迫ってくる集団に右足で蹴って衝突、爆破させた。さらにミサイルを脚で蹴り飛ばしてレインの装甲に激突させ削りダメージを与える。

しかし、ミサイルはまだ大量にユウスケを襲い、機銃の弾丸は捌ききれず肩、脚、腹に撃ち込まれる。

 

数が多すぎる!!

 

ユウスケは全てを捌くのを諦め、ただ回避に専念した。たとえ赤の王の攻撃だろうと、高速移動物体に全弾命中は難しいだろう。

わずかにできた隙間をかいくぐり、ユウスケは真上から全体重と加速アビリティでの速度を合わせた踵落としを装甲の薄い部分に見舞おうとした。

したのだが、

 

「なっ......!!」

 

レインの武装が分解され、中から本体が現れ、とんっと後ろに一歩跳んだ。

バキイイイッ!!とユウスケの踵は空を斬り、地面に激突した。

目の前には満足そうにレインが腰から拳銃を引き抜き、ユウスケの額に向けていた。

退避を試みたが、必殺技ゲージは底を突いている。退路は無い。

 

「..........降参。」

 

ユウスケは右手を挙げて(左手はもう無い)降参の意を示した。

 

「聞き分けいーのは誉めてやるよ。んじゃ、負けた代償としてあたしの頼みを聞いて貰おうか。」

 

「頼み?」

 

その少女は強く言い放った。

 

「アンタの《親》──黒の王と会わせな。

お互いにリアルでな。」




ふぅ、戦闘描写って難しいですね。
なんか今回は地の文が結構占めてる。
多分次回は会話が結構多いです。

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