(FE紋章の謎の世界に転生したので)海賊王に俺はなる!   作:大目玉

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「ガルダの海賊」2

 タリスを奪ってからの何日か、俺は手下どもの馬鹿騒ぎにはつきあわなかった。戦後処理に忙しかったわけじゃない。そんなものは全部タリス王に押しつけた。

 俺は考え続けていた。マルスが死んだあと、この世界はどうなるか。

 

 結論。メディウスとガーネフがアカネイア大陸を完全支配する。

 

 だって、この二人を何とかできるやつがいねえんだよ。

 

 カミュ? あいつ、結局最後の最後まで優柔不断で何もできずに、グラディウス持ってグルニア城に立てこもることしかできなかったじゃん。

 あいつのあの行動のせいでニーナは未練たらたらで第二部の何やかんやが起きたし、ユベロとユミナはやばくなるまで放っておかれるし。

 オグマとロレンスに助けてもらわなかったら、ユベロもユミナもラングの肉奴隷コースだぜ。

 

 ミシェイル? あいつもミネルバ一派に背かれたとはいえ、結局マケドニアに攻めこまれるまで何もできてねえし。

 アイオテの盾があっても魔防がドラゴンナイトなんで司祭にクラスチェンジしたマリクやリンダのファイアーでゴミクズだし。

 

 ハーディン? あいつ、アリティア軍がいなかったら四章で全滅してるだろ。

 

 ミネルバ? マリアを自力で助けだせない時点で詰んでる。

 

 ガトー? あいつそもそもやる気あんの? ないだろ。というか、こいつにはいろいろと思うところがあるんだよな。

 

 そう、いろいろ考えてみたけど止められるやつがいない。

 となると、タリスを献上品にしてドルーアに取り入り、支配者側に立ってラングとかみたいに好き勝手やるのがひとつの手なんだが。

 

 そうした場合、ぶっちゃけガルダの海賊である俺には後ろ盾がない。新参者、下っ端として扱われる可能性が大だ。ラングあたりの下につくことになったら、たまったもんじゃない。

 

 あと、個人的に、ガーネフをのさばらせておくのは気にくわない。あいつ、このまま何もなければエリスとチキの両手に花で人生を謳歌するんだぜ。ゆ”る”さ”ん”!

 なので、ドルーアにつく手はなし。

 となれば、やつらとやりあうしかねえ。

 そのためには軍隊がいる。手強いシミュレーション(BGM)を切り抜けるだけの軍隊が。荒くれ者の寄せ集めじゃ、どこかで限界がきて詰む。

 このガルダから、俺がそれをはじめてやる。

 なに、失敗すれば死ぬだけだ。

 

 

 俺に従ったのは海賊が4ユニット。それからハンターが2ユニット。

 ハンターの一人はあの詐欺師カシムだ。

 シーダはカシムを見つけて説得し、自分の金を渡して帰らせようとしたらしいが、カシムは感激して従うと言ってきたそうだ。

 その話をシーダから聞いたとき、俺はカシムをどうするか迷った。

 

 あいつはどこまで俺に従うだろうか。

 プレイヤーとしての俺の感想だが、カシムはシーダには忠誠を誓っていても、マルスには距離をとっていたように見える。

 シーダのときとまったく同じ行動をとったのは、マルスを試していたんじゃないかと思うのだ。それでも本編では、シーダがマルスを信頼しきっていたので問題はなかった。

 

 カシムは、金ほしさに海賊に雇われた男だ。金のためにあるていど割り切りができるんだろう。金をしっかりやって、あまり非道なことに参加させなければ、大丈夫か? 正直人手は欲しいし、名前ありキャラのカシムは有望株だ。

 

 結局、俺は様子を見ることにした。

 敵にまわったのが海賊5ユニット。ハンター1ユニット。盗賊2ユニット。盗賊はちと惜しいが経験値になると思えばいい。

 

 叛乱分子との戦いに先立って、俺はアイアンサイドに命じて、一ユニット分の手下を処刑した。タリスでエンジョイ&エキサイティングをやりすぎた連中の首をまとめてはねたのだ。

 そして、タリスにおける略奪を一切禁じ、女が欲しければ娼館を借りてやると告げた。それに合わせて、タリス王に言っていくつかの娼館を貸し切りにした。

 これはタリスの治安回復のためであると同時に、軍隊化の下準備を狙ったものだ。

 

 シーダに約束した通り、俺はタリスの統治をタリス王に任せることにした。もちろん、シーダは俺の妾妃なので返しはしない。人質としても大事に使わせてもらう。ようするに、タリス王に俺は約束を守ると行動で示してみせたわけだ。

 

 俺が城の自分の部屋で軍の編成について考えていると、シーダが会いに来た。シーダは、俺がタリス王に自治を任せたことの礼を、まず言った。このあたり、王女らしく礼儀正しい。

 それからシーダは本題に入った。

 

「オグマと、彼の部下であるサジ、マジ、バーツの処刑を撤回してもらえませんか」

 

「駄目だ」

 

 俺はにべもなく断った。シーダは食い下がった。

 

「彼らにタリスの守りを任せれば、きっといい結果が出ます。ガザック様にもいいことだと」

 

「駄目だ。タリスが大事なら、これ以上言わせるな」

 

 俺は苛立って、シーダを睨みつけた。

 

「下がれ」

 

 シーダは諦めたのか、おとなしく部屋から去った。今夜は今までよりも激しくしてやる。

 サジ、マジ、バーツはともかく、オグマだけは駄目だ。

 やつは確実に殺す。

 というのも、シーダをものにしてから気づいたんだが、オグマにチャンスを与えちまった気がするんだ。

 シーダと相思相愛だったマルスは死んだ。つまり恋敵はいない。いまシーダは汚い海賊(俺のことだ)に力ずくでものにされている。オグマは昔からシーダに惚れている。支援効果があるぐらいに。

 

 これ、オグマが俺を殺してシーダを助けだして次のタリス王になる流れじゃね?

 王道ファンタジーじゃん。あいつ、タリス王を通じてグルニアのロレンスと縁があるし、俺よりよっぽど後ろ盾はあるんだよな。

 しかも、あいつには実行力がある。

 二部一章でロレンスと話して、ラングを葬ると言って去ったあと、そのラングがさらっていったユベロとユミナを、オグマは助けだしている。ラングのすぐ近くまで迫ったってことだ。二人の救出にこだわらなかったらラングを殺せてたんじゃね?

 そういったことを考えると、俺の安全のためにオグマにはなるべく早く死んでもらうべきだ。助けるなんて無理無理無理。

 

 

 叛乱分子の討伐は、あっさり終わった。

 こっちは武器屋を抑えて手斧を必要なだけ調達したからな。適度に前進したあと、村の南の草原までやつらを引きずりこんだら囲んでめった打ちだ。

 グルニアのソシアルナイト2ユニットは、こっちがグルニアには逆らいませんという態度をとると、去っていった。いまはこれでいい。

 

 それよりも、オグマとサジ、マジ、バーツに逃げられたという報告の方が俺にはショックだった。

 念のため、タリス王には「全力でオグマたちを探せ。もしもかくまったら、シーダの首を送りつけてやる」と脅しておいた。奴らが見つかるまで待っている余裕はない。

 村で軍資金を調達する。レナの情報はくれなかった。海賊はシスターを助けないと思っているんだろう。その通りだけどな。

 軍備を整えた俺たちは、デビルマウンテンに向かった。




ガザック軍編成
ガザック        シーダ  アイアンサイド(海賊)
アイルトン(ハンター) カシム  ハンター
海賊          海賊   海賊
海賊          海賊   海賊

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