(FE紋章の謎の世界に転生したので)海賊王に俺はなる!   作:大目玉

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NAISEIパートの始まり。


「ファイアーエムブレム」1

 目が覚めたら宴会が終わってた。

 目が覚めたら宴会が終わってた(とっても大事なことなので2回言いました)。

 

 待って。ちょっと待って。

 おかしくない? 俺、総指揮官だよ総指揮官。

 胴上げなんかされちゃったり、ビールかけとかやったりさ、ねぎらってもらってさ、いたわってもらってさ、女たちがよってたかってパフパフしてくれたりさ。

 目隠ししてたくさんのおっぱいにさわって、誰の乳かを手触りだけで当てるゲームとかさ。俺が中心になって、あぶない水着だけを着けた女たちと押しくら饅頭でくんずほぐれつとかさ。

 今ならシーダにレナにミネルバにリンダに、まあニーナも入れて6Pも可能なわけじゃん? マリアは、うーん、もうちょっと先のこととしてさ。

「あの戦場でのあなたの采配はまこと見事でありました。ぜひ来シーズンの我がチームで監督をやっていただけませんか」みたいな話が来たりさ。

「一番激しい戦いはどこでした? やはりレフカンディですか?」みたいなインタビューに「いや、ベッドの上だね。毎晩さ」みたいな小粋なジョークを返すとかさ。

 あとアレ。雑誌の裏表紙にある、札束風呂に女二人ぐらいはべらせて入るプレイ。勝ちまくりモテまくり! この世界には札束ないから金貨風呂かな? 金物の匂いがうつりそうな風呂だけど。

 そういう楽しい楽しいイベントはどこに行ったの? ねえ。

 俺はいったい何のために戦ってきたの?

 

 

 ニーナの演説が終わると同時に、俺は倒れて意識を失ったらしい。

 アカネイア勢との戦いで流した血の量が多すぎたしなあ……。その後、ろくに手当てもしないでミディアを婦女暴行するわ、ボーゼンを倒すまでの指揮を執るわ、スナイパーの攻撃を受けるわと、いろいろやったからな。

 

 で、倒れた俺は空いてた客室の一つに担ぎ込まれて、手当てをされた。

 俺を診てくれたのはウェンデルのジジイだったんだが、目覚めた後で「あと少し傷が深かったら内臓が飛びだしていたかもしれん」と言われてさすがに青くなった。だって、ウェンデルが二本の指で教えてくれた「あと少し」って2センチなかったんだぜ。下手すりゃ腹からモツがこんにちはしたわけで。俺、よく生き延びたな。

 

 話を戻すと、その後、ニーナはアカネイア国旗を王宮の目立つところに掲げるよう指示を出し、シーダとミネルバは城下町に飛んでいってパレス奪還が成功したことを告げた。城下町の盛り上がりようといったらそれはそれは大変なものだったらしい。

 王宮にはボーゼンが備蓄していた食糧や物資が大量にあったわけだが、ニーナはためらうことなくそれらを王宮にも城下町にもばらまいて、勝利を祝う宴がはじまった。

 宴は三日間続いたらしい。勝利のでかさを考えればこれって滅茶苦茶短いんだが、ニーナが演説で言ったように、戦いはまだ終わってねえ。また、民衆の心情を考えて宴を優先したこともあって、王宮の掃除もとりあえず的な処置だった。だから三日間が限度だったわけだ。

 

 俺はその三日間眠り続けていた……というのは俺が思っていただけで、みんなから話を聞いてみると、どうも俺が覚えてないってだけらしい。

 昼間はぐーすかいびきをかきながら、夜になるといつのまにか部屋から抜け出して、手下たちと酒を飲んでいたそうだ。

 覚えてない。全然覚えてない。というか腹の傷がアレだったのに、なんで俺は動きまわることができたんだ。誰か止めろよ。

 で、その時の詳しい話を聞くために、廊下で見かけた何人かに声をかけてみたんだが。

 シーダは、顔を合わせるなり、顔を真っ赤にして言った。

 

「もう、知りません!」

 

 レナは、やはり顔を赤く染めてうつむきながら言った。

 

「あんなことは、その、人前でやるのはやめてください……」

 

 ミネルバは、苦笑を浮かべて言った。

 

「なかなか挑戦的な試みだったな。嫌いでは、ない。慣れるのに時間がかかりそうだが」

 

 ねえ。俺、何をやったの? どうして何も覚えてないの? 斜め四十五度ぐらいで頭を叩いたら思いだせるのかな?

 マリアは楽しそうに笑って、割と具体的に説明してくれた。

 

「あのね、いきなりどこかから現れたかと思ったら、わたしの手を取って「お嬢さん、一曲踊っていただけませんか」って。わたしが「はい」って言ったら、こう、ガザック様の手下さんたちに囲まれながら、ぐるぐるーって回ってすごい楽しかったよ。おたがいほっぺたにキスをしたりね。あ、そういえば、踊りながら「とりぷるあくせる」とか言ってた」

 

 俺、何をやってたの? しかもそれダンスじゃねえ。フィギュアだ。あと、ほっぺにチューって、何だ、それ。子供か。

 リンダは、俺を怪しげなものを見る目で見ながら言った。

 

「あんたさ、本当に何者なの? あたしの肩をばんばん叩きながら「リザイアがあればお前を敵陣に放りこんで屍の山一丁あがりなのに」とか「メティオなんて贅沢はいわないからウォームが欲しい」とか……。リザイアなんて扱いが特殊すぎて知っている人がほとんどいない魔法じゃない。メティオやウォームにいたっては禁呪といっていいものだし……」

 

 げっ、やべえ。何を口走ってんだ俺。

 

「俺、それ以外に何か言ってたか?」

 

「あたしの体をまさぐりながら「もっと肉をつけろ」とか失礼なことを言ったぐらいね!」

 

「うん、俺としてはもっとお前に肉をつけてほしい。いや、いまの体も悪くはないが」

 

 脇腹の傷を殴られた。お前、モツが飛びでたらどうしてくれるんだ。

 ちなみに、ニーナには会ってねえ。総大将として忙しいらしい。

 アイルトンたちやカシム、マチス、リカードなんかからも話を聞いたが、俺はいろんなところに顔を出しては肉を食い、酒を飲み、騒ぎ、歌い、踊り、笑い、女と見ればセクハラをしまくったらしいが、部屋に連れこんだりはしなかったようだ。

 ただ、みんなの話が全部本当だったとすると、俺は同じ時間帯に三つの場所に出現していたことになるんだが。ドッペルゲンガーかな?

 

 ウェンデルとバヌトゥのジジイコンビは、挨拶程度に宴の場を回り、ほどほどに飲み食いして、その後は交替で俺を診ていたそうだ。「賑やかなのは嫌いではないが、少し離れたところから見ている方が落ち着くのでな」ということだった。このジジイらしいとは思うが、ありがたいと同時に申し訳ねえとも思う。

 バヌトゥは竜族だから遠慮したのと、すげえって目で見られてあれこれ話しかけられるのがはじめてでうろたえて、疲れたってのが実情らしい。これまで目立たないように旅してたんだろうし、まあ疲れるわな。

 エステベスも、傭兵なりに楽しんだらしい。

 

「俺たちみたいな傭兵も酒の席に加えてくれるとはね。エイブラハムの奴はもったいねえことをしたよ」

 

 こいつは今後も従ってくれるそうだ。ただし、契約金の交渉はしっかりするとさ。仕方ねえな。こいつの能力上がった感じが全然しねえけどな!

 とにかく、宴の終わった翌日の朝に、俺は王宮の一室で目を覚ました。

 で、痛む体を引きずりながら王宮内を歩きまわって話を聞いていたら一日が終わった。

 何か……むなしいというか不安に襲われた一日だった。酒は飲んでも呑まれるなとはいったもんだ。お酒はほどほどにね。

 だが、まだその日の出来事がすべて終わったわけじゃなかった。

 夜になって、俺の部屋を一人の男が訪ねてきたんだ。

 

「お初にお目にかかる、ガザック殿。わしは、先王陛下よりアドリア侯爵の地位と領地を賜りしラングと申す」


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