今日から更新再開。
そして、最終話までノンストップ連続更新。
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そして、全て予約投稿しているため、あえて終了するまで感想には返信しません。
それでは、GOD編、家族を救う戦いの始まり。
――決戦前夜。
――
――新暦66年
―――――第97管理外世界 惑星『地球』、海鳴市上空
―――――――次元航行艦『アースラ』ブリーフィングルーム
そこには、今、総勢30名近い人数が一堂に介していた。
そのメンバーの視線を受けながら、前方の檀上に立つのはアースラのNo2.クロノ・ハラオウン執務官。
「皆、急な招集に応じ、この短時間で声をかけた全員が集まってもらったことに、まず感謝の言葉を」
そういってクロノは一礼し、すぐさま頭をあげ話を続ける。
「我々アースラスタッフは現在、ロード・ディアーチェ他二名からの要請により、システムU-D、ユーリ・エーベルヴァインの対策のため出動および情報収集を繰り返してきた。
今回こうしてその件に関わるメンバーを集めさせてもらったのは他でもない。先ほど、我らがアースラの優秀な情報官、管制官が今回の作戦対象U-Dを発見した」
クロノのその言葉と共に、脇にいるエイミィが端末を操作し、クロノの背後にある巨大スクリーンに映像が映し出される。
クロノの言葉、その映像を見てブリーフィングルームはざわつく。
「現在流れている映像は、今も管制官が必死に対象にばれないよう、追跡させているサーチャーから送られているリアルタイム映像だ。見てわかる通り、対象は現在、低速ではあるもののランダムに移動を続けている。
ディアーチェから協力要請を受けて今日で5日目、今まで血眼になって探しても見つからなかった対象をやっと見つけられた千載一遇のチャンスだ。
この場に居る面々にはすでに対象を見つけた後の作戦行動については伝えてある通り、このチャンスに失敗は許されない。絶対に掴まなければいけないチャンスである。
各員はすでに承知のことと思うが、我々はこの世界の、引いては次元世界の平和のため、このチャンスを必ずモノにしなくてはならない!」
喋っているうちにテンションが上がったのか、演出なのかは定かではないが、クロノの語りは徐々に声が大きくなり語尾が強くなる。
そして、クロノにしては珍しく、断言するように力強く言い放った言葉は、ブリーフィングルームに居る面々全員に鳥肌を浮かばせるほどの気迫に満ち溢れていた。
クロノはあえて、目線を下し、自分の強く握り締めた拳を見つめる。
「辛い作戦になる。苦しい戦いになる。もしかしたら、明日はこの場にいる全員とは顔を合わせることができないかもしれない」
そして言葉を切り、深く息を吸い込むと、強く握りしめた拳を台に叩きつけ叫ぶ
「しかし! それでも我々は勝たなくてはならない! 無辜の民を守るために! 平和な日常を守るために!! なにより! 望まぬ戦いに身を捧げる、一人の少女を救うために!!
平和の守護者としての誇りと矜持を胸に、挑まなくてはならない! 究極の闇に、闇の書の真なる闇に!
我々の手で取り戻す! いたいけな少女を! 我々の手で終わらせる! 闇の書の悲劇を!」
叫ぶとクロノは叩きつけた拳を振り上げ、大声で叫ぶ。
「
クロノから発せられる熱狂は、情熱はその言葉と共に、ブリーフィングルーム中へ伝播する。
「これより、最終作戦『エヘリディ・ドゥンケルハイト』を発令する! 各員! 奮闘努力せよ!!」
クロノが言い終わるとともに、部屋中が拍手と雄叫びに包まれる。
万雷の拍手に送られながら、クロノが壇上から降りると共に、暗かった室内は明るくなり、出入り口から近い者たちから部屋を後にする。
檀上から降りたクロノの元にはエイミィのほかに数名の人影が集まっていた。
「すごかったよクロノくん!」
そのうちの一人である高町なのはは両拳を握りしめ、振り回しながら、先ほどのクロノの演説を褒め称える。
「せやなぁ。さすが現役の執務官さまさまやね」
はやても先ほどのクロノを素直に絶賛していた。
「さっき言ったことはすべて本当だ。辛い戦いになる。それでも、気持ちで負けていては、成すべき事も成す事はできない。なら部下が気持ちよく戦えるよう、気持ちを盛り上げるのも、上官の役目というわけだ」
クロノの言葉に感心したようにうなづくはやてとなのは。
その二人に対しクロノは言葉にできない感情が胸に湧き上がるのをグッとこらえ、いつもの真面目な顔を作り出す。
「さぁ、時間はない。二人も作戦に取って重要な戦力だ。万全を整えていてくれ」
「うん! 調子は十分! さっきのクロノくんの言葉で、気持ちも十二分!」
「今なら、だれが相手でも負けるせえへんな!」
クロノの言葉に、なのはとはやては笑顔で答える。
クロノ達以外にもブリーフィングルームだけではなく、アースラ中で特に仲の良い者同士で言葉を交わしあいながら、出撃の準備が着々と進められていた。
「さーて! いっちょやっちゃりましょうかねぇ!」
「あまり調子にのって空回りしないでくださいよ。ヴィヴィオさんはどうにも調子に乗りたがりますからね」
「ぶー! アインハルトさんは足引っ張んないでくださいね!」
「ちょっと、ヴィヴィオにアインハルト、二人ともこんな時まで口喧嘩はよそうよ……」
『大丈夫だよ、トーマ。これが二人の平常運転、だもんね』
あるところでは、未来からの来訪者たちが。
「闇の書の真なる闇、か」
「誰が相手だろうと関係ねぇ! 全部ぶち壊してやるよ!」
「私、現場に行って役に立てるかしら……」
「……」
「――――夜天の守護騎士達よ、共に主のために力を尽くそう」
『あぁ/おうよ!/えぇ/もちろんだ』
あるところでは、守護騎士たちが。
そして――
「レヴィ、レヴィ!」
「なんだい? フェイト」
同じ顔をした二人も、生まれてからこの時までほとんどの時間を共に過ごした二人も。
「絶対に、ユーリを助けようね」
「うん。絶対に助けよう」
言葉少ないが、それでも誰よりも共に過ごした二人だから、二人だけには、言葉にしなくても伝わる物がある。
そんなレヴィとフェイトの二人を遠目に見つめ、シュテルは表情を引き締める。
「ついに時間だな」
そんなシュテルにディアーチェが声をかける。
「えぇ」
「最後のピースは、見つかったか?」
「見つかりませんでした」
ディアーチェの質問に何でもないかのよう平然とシュテルが答える。
「そうか、それにしては。成功率の高くない作戦に挑むというのに、貴様にしては清々しい顔をしているではないか」
「そうですね。覚悟を、決めましたから。もう後は奇跡を祈るしかありませんので。ですので、その奇跡を手繰り寄せる覚悟を、決めました」
決してディアーチェとは視線を合わせず、シュテルの視線はもう一人の家族に、レヴィにのみ注がれていた。
まるで、美しい光景を目に焼き付けるかのように。
「……死ぬなよ」
そんなシュテルの様子になにかを感じ取ったのか、ディアーチェは真面目な表情をさらに引き締めながら、言葉をこぼす。
「もちろんです。死にませんし、死ねませんから。我らが一基でも欠ければ、ユーリを救う手立てはなくなりますので。王こそ、御身を大事にして下さい。我々がどれだけ努力しても、奇跡をつかみ取っても、最後に彼女を救えるのは王のお力だけですので」
「それこそ、誰にモノを言っている。我は王の中の王、全ての闇を統べる究極の王『
その言葉を聞き、シュテルは少しだけ口角を合げ、柔らかい笑顔を浮かべディアーチェを見つめる。
「流石です、我らが王。出過ぎた発言をお許しください」
「許す。先ほどの執務官の言葉ではないが、貴様も奮闘努力しろ。『為すべき事を為せ』。すべて、我がすべて許す」
「はい。ご配慮のお言葉、感謝いたします」
そうして、皆が自然と部屋を立ち去る。
ブリーフィングルームに誰一人として残らず、部屋の明かりが消える。
決戦の時は、すぐそこまで迫っていた――――――――――――。
悲しむ少女がいる。
彼女の悲しみを救いたい人がいる。
嘆く少女がいる。
彼女の嘆きを止めたい人がいる。
問答無用で最高で完全無欠なハッピーエンドを求める少女がいる。
だから、戦おう。
次回、「魔法少女リリカルなのはL×F= 『Start of [the Combat]』
それは、ハッピーエンドのための戦い。