魔法少女リリカルなのは L×F=   作:花水姫

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あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

本日はモバゲーアプリのなのはINNOCENTの終了日だったようです。
大分前に引退自体はしていたものの、なにやら感慨深いものがありますね。

そんな中の今回の話も、ちょっとした小休止てきな話。設定の一部がちょこちょこ公開される。そんな回となっております。

それでは




GOD編第6話 「Take of [Rest]」

 会議が解散となった直後、フェイトとレヴィはシュテル達と共にアースラ技術部に足を運んでいた。

 

 

「~~♪」

 

 そんなフェイトの隣には、なにやら楽しそうに鼻歌を歌い、スキップしながら並走するヴィヴィオの姿。

 

 

 なのはとはやて、クロノは闇の欠片の対処のため出動し、フェイトだけはレヴィがヴィヴィオのデータを確認する関係上シュテルやヴィヴィオと共に技術部へと向かっていた。

 そのように行動を分けると決定した後、ヴィヴィオは急に上機嫌になりフェイトの周りをウロチョロしながら、物珍しそうに観察していた。

 

 

「えっと~~、ヴィヴィオ、ちゃん?」

「はいヴィヴィオです! ヴィヴィオって呼んでくださいな!」

 

 あまりにも周囲をウロチョロとするハイテンションガールに我慢できず、フェイト自らが声をかけると、やたらと大きな声を廊下に響かせ元気な返事が返ってくる。

 

「あ、うん」

 

 これには流石のフェイトも若干引き気味になりつつも、会議室からこれまでのヴィヴィオの視線の意を問う。

 

「えっと、じゃぁヴィヴィオ」

「はいヴィヴィオです!」

「……さっきから私のこと物珍しそうに観察してるけど、なにか気になることでもあるのかな」

「はい! えっとえっと、今フェイトm、さんとレヴィ……さんは一つになってるんだ、ですよね!」

「え、うん。そうだけどそれも未来のレヴィから聞いてたりするの?」

「はい! そういう能力があるって小さい頃はずっとそうだったって聞いてたんですけど、私自身は全然目にしたことが無かったので! レアです! SRキャラですよ!」

 

 若干鼻息あらく顔の距離も近づくヴィヴィオの圧力に負け、フェイトは引きながらもなんとか愛想笑いを浮かべる。

 

「あ、あはは。そうなんだ」

「そうなのです!」

「ちょっとヴィヴィオさん」

 

 そんなヴィヴィオのテンションについていけてないフェイトを見かね、フェイトとヴィヴィオの後ろを歩いていたアインハルトが声をかける。

 

「さっきからそのうざいテンションなんなんですか。うざいのでどうにかしてください。流石のフェイトさんも困って(うざがって)ますよ」

 

 そのアインハルトのちょっと毒の入った助け舟も何のその、ヴィヴィオはハイテンションのままアインハルトの方へ詰め寄る。

 

「いやいやいや、何言ってるんですかアインハルトさん! フェイトま、さんとレヴィp、さんのユニゾン! ほとんど人間のプログラム生命体と人間のユニゾンですよ! 実際レア! 学会で発表すれば大人気間違いなし! 知る人ぞ知る『黄色い死神』フェイト・テストタロッサの全力全開本気の本気、『雷神フェイト』ですよ!」

「えぇ、なにその恥ずかしい名前……」

『えーいいじゃん雷神。カッコいいじゃん』

 

 ヴィヴィオから飛び出たトンデモな二つ名に未来の自分が心配になるフェイト。そんなフェイトとは裏腹にレヴィはヴィヴィオの発言を受け止めるどころか、レヴィのセンスと合致したのか大層気に入っていた。

 しまいには二人合わさったときの通称『最強モード』を『雷神モード』に正式決定しようとすらするほどに。

 

 

「たしかにゴシック記事などではその噂はよく耳にしますが、誰が流したのかわからない眉唾もんじゃないですか」

「いやいや、アインハルトさんもまだまだですね。なんせ、私は名付け親本人から聞いていますので! 確実性は高いですよ!」

「おや、そうなんですか」

「はい! なんせ『雷神フェイト』の名付け親はレヴィパパですからね! なのはママやフェイトママの勇姿とともに寝物語によく聞いたものです」

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 レヴィと『最強モード』の正式名称について脳内会議に熱が入っていたフェイトですら、聞き逃せない単語がわらわらとヴィヴィオからあふれ出る。

 

「ちょっ、ちょっとヴィヴィオ?」

「はいヴィヴィオです! なに!? フェイトママ!」

 

 もうテンションも上がりまくって敬語すらとりつくろわなくなったヴィヴィオは、自分が今まで(一応)隠していた事実を暴露したことにも気づかず、アインハルトからフェイトに向き直る。

 

「今の話」「その話、詳しく聞かせてもらいましょうか」

 

 フェイトが話を聞き出そうとした瞬間、マリーとともに先頭を歩いていたはずのシュテルが爆速Uターンを決め、ヴィヴィオの肩を強く握りながら声をかける。

 

「え、えっと何のお話でしょうか……」

「あなたの父親がレヴィで? あなたの母親がフェイトだというお話です」

 

 ヴィヴィオの肩を握りながら詰め寄るシュテルは、背中に紅蓮の炎を幻視するほどの圧力を放っていた。

 その圧力と熱量にはさすがのヴィヴィオも冷や水を被せたかのように冷静になり、自分の失言を思い出す。

 

「いいいいいいやいいやいやいや、ななっななにをいっているんでででしししよう」

 

 その目線はプロの水泳選手が25mプールでバタフライを泳ぐかの如く激しくいったり来たり。目が泳ぐってレベルでない動揺を表していた。

 

 

「今更言い逃れはできませんよ。なぜ、レヴィが、あなたの、父に、なるのか、キチン教えていただきましょうか」

「うむ、それは我も興味があるな。今のところ我らの躯体には『そういう性能』は詰め込む予定はないはずだが」

 

 いつの間にかディアーチェまでもが話に入ってきて、一行の足は止まっている。唯一関係のなさそうなマリーも、技術官としての興味からか一先ず止める気はなさそうであり、ヴィヴィオは気づいたら一同に囲まれていた。

 

「あ、アインハルトさん! この眉目秀麗、才色兼備、実は文系魔法少女のヴィヴィオちゃんがそんな失態を犯すわけないですよね! ほら弁護人! 弁護を!」

 

 ヴィヴィオは苦し紛れに自分の後ろにいる同胞に助けを求める。

 ヴィヴィオとアインハルトには切っても切れぬ因縁がそりゃ前世の時代からあると言っても過言ではない、多生の縁である。ここはズバッと断空拳バリの一撃必殺な一言で解決してくれるに違いない。

 

 

「Levi's your father.(いや、めっちゃ言ってましたからね)」

「Nooooooooooooooooooooooooooooo!!!!!!!!!」

 

 

 

 そんなヴィヴィオの一縷の望みは淡泊な対応と共に切り捨てられる。

 頼られた当の本人であるアインハルトなんかは呆れのあまり半眼になるほどであり、ヴィヴィオを白い目で見ていた。

 

「さぁ、もう言い逃れはできません、キリキリ吐くもん吐いて楽になりなさい」

「くっ! 殺せっ!」

 

 まるでどこぞのジャンルの女騎士のように悔しそうな表情を浮かべ抵抗の意を示すヴィヴィオだったが、一連の流れでヴィヴィオの性質をなんとなく掴んだのか、周りの面々は無言でヴィヴィオを見つめ続ける。

 その無言の圧力に屈し、ヴィヴィオは両手をあげ降参の意を示すと自分の身の上を語り始めた。

 

 

 

 ***

 

 

 ***

 

 

 ***

 

 

 

 

「ほほう、で、そのあと高町なのはがあなたの里親に、保護責任者になった、と」

「……はい」

 

 なんか流れで正座をさせられ(場所はアースラの会議室から技術部へ向かう廊下の端)、身の上をある程度語らされたヴィヴィオは意気消沈、といった形でうなだれていた。

 尋問官は主にシュテル。たまにフェイト。

 それ以外は邪魔にならない程度に離れて話を聞いていた。

 

「それで、なんでレヴィがお父さんになったの?」

「いや、それが私にもハッキリとしなくて……、なんか引き取られた当初の精神年齢の相当幼かった私が、なんかレヴィパパを一目見たときに『パパ!』って呼んだらしく……」

「ほう」

「それで、気づいたらパパ呼びが定着していたというか」

「なるほどね」

 

 ヴィヴィオの様子から嘘はついていないだろうと判断したフェイトは、なんとなくだが納得していた。

 まぁ幼い子供の言うことだからと好きにさせていたのだろう。今のフェイトでもそう判断してしまうだろうし、未来で年齢も重ねた自分であったらそう判断するのだろうと、一人納得していた。

 

 

「それで、私はなんと呼んでいたのです?」

 

 

 しかし何が納得できないのかシュテルはヴィヴィオの尋問を続ける。

 

 

「え?」

 

 

 今までと関係のなさそうな質問に、質問された本人であるヴィヴィオも思わず聞き返してしまう。

 

「だから、あなたは私のことをどのような呼び方をしていたのです? レヴィを父と呼び慕っていたのですから当然私とも交流はあったでしょう」

「え、まぁそうですねぇ」

 

 シュテルの質問に面食らうヴィヴィオ、ヴィヴィオ以外にも面食らったのか後ろから「おーい、そこは『私達』だろ、我を仲間外れにするな」とかいう言葉が聞こえた気がするがシュテルはこれを華麗にスルー。

 

「で? 何と呼んでいたのですか?」

「いやぁ、その件もまた複雑というかめんどくさい事情がありまして」

「はい」

「シュテルさん、と人前では呼んでいます」

「人前で、とは」

「えっと、実はパパをパパって呼び始めた頃にシュテルさんからは『シュテルママ』と呼ぶように教わったのですが……。なにやらなのはママが良い顔をしなかったというか、私の保護責任者になってからはよりその傾向が増したと言いますか。ですので人前、特になのはママの前では『シュテルさん』と、ちょっと他人行儀な感じで、パパやディアーチェさん、シュテルママだけの時は『シュテルママ』とちょっとフランクな感じでこう、使い分けるようになりまして」

「なるほどなるほど」

「えーっと、これでご満足いただけたでしょうか……」

「はい。特に聞くことはないでしょう」

「ぐえぇ」

 

 

 シュテルからの了承を経た瞬間、もう語るものは語りつくしたと言わんばかりに、ヴィヴィオは足を崩し廊下であろうがお構いなしに崩れ落ちる。

 

 

「ちょっと、ヴィヴィオ汚いよ」

 

 そんなヴィヴィオを流石に見咎めたのかフェイトが慌てて近寄り立たせようとするが――

 

 

 

「あー! フェイトママいけません! いけませんフェイトママ! 足がしびれてあー!! いけません!」

 

 フェイトに腕を引っ張られたせいで足に刺激が走ったのか、涙目になりながら悲鳴を上げ始める。

 

「あわわ。ごめんね、足しびれてたんだね……」

「はい、そうなのです、ヴィヴィオはもう動けないのです。なので、フェイトママにおんぶを要求するのです。足がしびれて動けないので」

 

 割とガチで半泣きになりながらも、自分のキャラを見失わずフェイトに無茶振りをするヴィヴィオ。その要求はさすがに優しさの化身、大天使フェイトといえど(物理的な意味で)叶えることは無理であった。

 さすがにそんな無茶な要求をしたヴィヴィオが目に余ったのか、脇で静観していたアインハルトがヴィヴィオに注意する。

 

「こら、ヴィヴィオさん。さすがに今のフェイトさんにその要求は無茶無謀ってもんですよ。自分の体重考えてください」

 

 そんなアインハルトの言葉もまた、相も変わらず毒が多分に含まれていた。

 常日頃ならスルーもできるアインハルトの毒だったが、さすがに女子としては聞き逃せないワードが入っていたため、ヴィヴィオも抗議を返す。

 

「なんと! アインハルトさんは今女子に入ってはならないワード堂々の第一位を言いましたね! これは戦争ですよ!」

「なーにが、戦争ですか。足がしびれて動けない軟弱者が。ウリウリ」

「あっ! ダメっ! ダメです! そこは今はダメぇ!」

 

 容赦なくヴィヴィオの足をつつくアインハルトの猛攻に耐え切れず、足に衝撃が入らない程度に身体を捩じるヴィヴィオ。

 そんなヴィヴィオの反応が面白いのか、それとも今までの憂さ晴らしかアインハルトは執拗にヴィヴィオの足へ刺激を与え続け、ヴィヴィオの反応を楽しんでいた。

 

 

「おい、シュテルにフェイト、さすがに収拾がつかん。どうにかせよ」

 

 そんな二人を眺めながら、現在ヴィヴィオが足をしびれさせる原因を作りだした二人に、ディアーチェが王命を下す。

 

「む、まぁそうですね、たしかに無駄な時間を使わせてしまいました」

「あ、そうだよね、今は時間が無いんだもんね」

 

 ディアーチェの言葉で現在のアースラの状況を思い出した二人は、とりあえずはしゃいでるヴィヴィオとアインハルトをどうにかしようと近づく。

 

「とりあえずヴィヴィオ、行きますよ。抱えられなくても二人がかりで担いで飛行でもすれば問題ないでしょう」

「うーん、ちょっと乱暴な気もしなくもないけど仕方ないかなぁ」

 

 そう相談しながらシュテルとフェイトは、ヴィヴィオを両方から抱えようとヴィヴィオを挟む位置に移動すると、それを拒むようにヴィヴィオが丸まり、防御態勢をとる。

 

「ヴィヴィオはアインハルトさんにけがされて傷心なのです。そんな荷物みたいに扱われるくらいなら、元気が戻るまでここでうずくまってるのです」

「えーっと」

「むぅ、どうしましょうか」

 

 駄々っ子そのものの対応をするヴィヴィオ(なお、フェイトは9歳、ヴィヴィオは11歳)の対応に困り、シュテルとフェイトの手は差し出された状態で虚空をさまよう。

 

 

「まったく――」

 

 

 流石に我がままが過ぎるし、自分も遊びすぎたと反省したのか、一息つくまにアインハルトの空気が変わりかけた瞬間――

 

 

『フェイト、しばらく体借りるよ』

 

 

 ――レヴィの念話が一同に届く。

 

 

 その念話を区切りにフェイトの雰囲気が変わる。

 柔和な雰囲気は凛とした雰囲気へと激変し、虚空へと差し出された手は確固たる意志を持ってヴィヴィオへと伸ばされる。

 そしてそのままヴィヴィオの首の下と太ももへと腕を差し込み、ヴィヴィオを軽々と持ち上げる。

 

 

 いわゆるお姫様抱っこの体勢であった。

 

「全く、お痛がすぎるよ、ヴィヴィオ」

「ふぇ」

 

 

 急に与えられた浮遊感に驚き目を開くと、ヴィヴィオの眼前には凛々しい表情の青色の瞳をしたフェイトの姿。

 

「フェ……レヴィパパ?」

「うん、そうだよ、ヴィヴィオ」

 

 その雰囲気が、自分を見つめるその表情が、ヴィヴィオの幼かったころの懐かしい記憶を呼び起こす。

 

「ほら、今回だけは特別にこのまま連れて行ってあげるから、危ないからボクの首に手をまわして」

「うん」

 

 さっきまでとは打って変わって、まるで借りてきた猫のように大人しくなったヴィヴィオは、素直にレヴィの言うことを聞きレヴィの首へと腕を回す。

 

「さ、行こうか。ごめんね王様、マリーさん。無駄な時間使わせちゃったね」

「いや、よい。面白い話であったしな」

「はい。未来のフェイトちゃんになのはちゃんねぇ。大層立派になっちゃうみたいじゃない」

 

 レヴィの言葉にディアーチェとマリーは笑って許し、たいして時間を使った張本人たちは、少々申し訳なさそうであった。

 

「すみません、レヴィさん。少々おふざけが過ぎました」

「そうですね、あなたに手をかけさせてしまい申し訳ありません」

『ごめんね、レヴィ』

 

 アインハルト、シュテル、フェイトの順に、三者三様にレヴィに向かって謝る。

 その謝罪をレヴィは笑いながら受け止めていた。

 

「あはは、ボクも止めはしなかったからね、謝られるほどじゃないよ」

 

 そう言って朗らかに笑うレヴィの首元から微かにレヴィにのみ聞き取れる声が聞こえる。

 

 「……パパ」

 「ん? なんだい、ヴィヴィオ」

 「……ごめんなさい」

 

 

 レヴィの首元に顔を埋めたまま、小さく謝るヴィヴィオ。

 その謝罪の言葉を聞くと、レヴィは慈愛を感じさせる穏やかな微笑を浮かべ――――

 

 「ん、良い子だね。ヴィヴィオ」

 

 ――――ヴィヴィオにだけ聞き取れるよう囁いた。

 

 

 ***

 

 ***

 

 ***

 

 

 

 ひと悶着あり時間はかかったが、レヴィ達はみなアースラの技術部へとたどり着く。

 

 

「はい、もう足も大丈夫でしょ」

 

 技術部へとたどり着くとレヴィはここまで抱えてきたヴィヴィオを優しく地面に立たせる。

 

 

「うん。ありがとう、パパ」

「どういたしまして」

 

 

 事情がバレてしまっては仕方ないとばかりに、ヴィヴィオからレヴィとフェイトに対しての呼び方は『パパ』、『フェイトママ』といった、ヴィヴィオの慣れた呼び方へと変わっていた。

 

「それじゃぁヴィヴィオちゃん、ついて早々で悪いんだけど件のもの確認させてもらえないかな」

「はい、大丈夫です。クリス、お願い」

 

 マリーの頼みに快く頷きながらヴィヴィオはクリスに呼びかける。

 ヴィヴィオの呼びかけにクリスは頷くと、マリーの下へ行き、どこからともなく(クリスにとっては)一抱えある記録媒体を取り出した。

 

「あ、外部ストレージかなにかにまとめてあるのね、助かるわ」

 

 クリスが抱える媒体を受け取りつつ、マリーはクリスの頭をなでながらお礼を言うと受け取った媒体を端末に接続した。

 

 

「うん、特に危険なものとかもなさそう。これかな」

 

 

 端末を操作しながら媒体の中身を吸い出していくマリー。

 

 他の面子は思い思いの場所に座り、マリーの作業の様子を眺めていた。

 

 

「なんか、すごいね。操作が早すぎて何が何だかわからないや」

 

 ヴィヴィオを下した後に身体の操作権を返してもらったフェイトは、高速で動く画面に目を右往左往させながらポツリとつぶやく。

 

「レヴィはなにしてるかわかる?」

『うんにゃ、全然。そういうのはシュテるんとか王様の役目だから』

「そっかー」

 

「あ、はは。まぁ今は危険なものが無いかの調査中なのよ。ヴィヴィオちゃんや未来のレヴィちゃんを信じてないわけじゃないんだけど、外部の物だから、一応ね」

 

 天然娘とアホの子の会話を聞き、マリーは苦笑いしつつ二人に向かって言う。

 

 

「ん、終わったようですね」

 

 そうこうしているうちに、マリーのチェックは終わり、吸い出したファイルが開かれる。

 

「うーん、たしかに。プログラムそのものみたいね」

「はい、私達が作成しようとしていた攻勢プログラムの完成系、と言えるでしょうね」

 

 シュテルとマリーは与えられたファイルを眺めていく。

 

 

「これが未来のレヴィちゃんが言っていた<F.O.R.M.U.L.A.(フォーミュラ)>システム関連みたいね。これディアーチェちゃんとシュテルちゃんにも送信するわね」

「はい。ありがとうございます」

「うむ、助かる」

 

 

 言うが早いか行うが早いかというタイミングでシュテルとディアーチェにマリーからファイルが転送され、二人は手元でそれを開き、食い入るように眺める。

 

 

「論文も入っていますね」

「あぁ、『Force Obstructive Rule Material Unified Lyrical Ability』の頭文字をとりFORMULA。『力を妨害する支配物質を統一した叙情的な技能』――。…………全くもって意味が分からんな。名称もいまいち文章というより単語を並べただけのように感じられる」

「王、フォーミュラの命名はレヴィのようですね。注釈に書いてあります」

「そのようだな。『Lyrical』はせっかくだから盛り込んだ(※命名者談)だと……。全くもって意味が分からん……」

 

 

 フォーミュラに関してのあまりにトンでもな命名理由を読み、ディアーチェは頭痛がしてきたのか眉間を揉み解しながら、読み進めていく。

 

 

「とりあえず、こっちは正常に動かせそうだよ」

 

 

 ディアーチェとシュテルがフォーミュラの論文、設計図を読み進めるのに夢中になっている最中、端末を操作してたマリーが顔を上げ、二人に向かって声をかける。

 

「そうですか。それは良かった」

「うん、こっちの予測結果も十分満たしてるし、見たところ問題はなさそう。あとは皆のデバイスを借りれればすぐにでもインストールできるよ」

「それは重畳よ」

『あ、ならさ、せっかくだしフェイトのバルディッシュに先にインストールしてもらいなよ。今日はボクと一緒だから出撃予定無いしさ』

「うん、そうね。なるべくずらして作業した方が出動の事とか考えると必要よね。うん、フェイトちゃんが良いならそうしましょう」

 

 レヴィの申し出を少し考えたのち、マリーは快くうなづきフェイトへ伺う。

 

「えっと、どのくらいかかりそうですか?」

「うーんそうね」

 

 フェイトの質問に対しマリーは少し考え答える。

 

「ほとんど完品だからインストールは10分くらいかしらね。そのあとは訓練室で動作確認してもらった方が良いから、出動できるようになるまで1時間ももらえれば十分かな」

「それなら、はい。大丈夫です」

 

 今日はフェイトは待機任務であるため、よほどの事がない限りは出撃する予定はなく。その中でも1時間程度であるなら何の問題もないと判断し、バルディッシュをマリーへと託す。

 

「バルディッシュのこと、よろしくお願いします」

「はい。バルディッシュ、たしかに預かりました」

 

 その様子を見ながら思案にふけっていたディアーチェは、マリーがバルディッシュを端末につなぐのを見ると、マリーに声をかけた。

 

「アテンザ技師」

「はい? どうしたの? ディアーチェちゃん」

「せっかくの機会だ。我――いや、ここにいる面子全員分のインストールを任せてもよいだろうか」

 

 その言葉に驚いたのは、『ここにいる面子』であるヴィヴィオとアインハルト。

 特にアインハルトははたから見てもわかりにくいが、大層驚いていた。

 

「すみませんディアーチェさん。まさか、私達の分も用意されているのですか?」

「ん? あぁ。そのようだ。アインハルトはアスティオン、ヴィヴィオはコールブランド用とわざわざデバイス名まで指定されているぞ」

「なんと……」

「おー。まさか私達の分まであるだなんて。流石パパ、先見の明といいますかよく昔のこと覚えているといいますか」

 

 アインハルトとヴィヴィオが未来のレヴィの準備の良さに驚いている中、マリーはディアーチェの提案を脳内で検討していた。

 

「そう、ねぇ。さっきの会議の結論としてシュテルちゃんとディアーチェちゃんはレヴィちゃんの躯体作成を優先するんだったよね」

「えぇ。そうなります」

「うん、ならそうだね。せっかくだし一緒に預かっちゃおっか」

「あぁ、よろしく頼む」

 

 そういいながらディアーチェは自身の杖であるエルシニアクロイツをマリーへと渡す。

 ディアーチェを皮切りにシュテル、アインハルト、ヴィヴィオも自身のデバイスをマリーへと預けていく。

 

「はい、エルシニアクロイツに、ルシフェリオン。アスティオンにコールブランド、ね。確かにあずかりました」

『王様~。ボクの分はどうするの?』

 

 皆がマリーへとデバイスを預ける中、レヴィの念話が届く。

 躯体の完全廃棄と同時にバルニフィカスも廃棄したレヴィは、現状預けようにも預けるものが無い状態であった。

 

「レヴィの分は躯体構築と同時にバルニフィカスにも手を加える予定だ、その時にこちらで同時に組み込む事にした」

『あ、そうなんだ。了解。それなら大丈夫!』

「うん。それじゃぁ皆は私が責任をもって預かるから、ちょっと待っててね。せっかくだし出撃組が返ってくるまでに皆の分動作確認まですませちゃおう」

 

 

 マリーの言葉に全員挨拶を返し、全員分のデバイスにプログラムのインストールが終了するまで、しばしの休憩時間を取ることとなった。

 

 

 




と、いうわけで、ヴィヴィオのパパはレヴィでした。
捻りもなにもなく大変面白みも無い設定でした。

しかし、レヴィがそんなヴィヴィオに対して何もしないわけもなく……?


現状StS以降の執筆要素もないため、ヴィヴィオに関してはこの小説の中で一番手が入っているというか、作者の厨二病が炸裂した裏設定の数々の集大成となってしまっております。
それに釣られてハルにゃんも結構テコ入れされてます。

それとフォーミュラに関しては完全に当て字ですし、パンフレットから読み取れた情報から勝手に妄想した能力です。
この小説のフォーミュラは名前が似てるだけの別物だと思います。

その辺とか一応自分用のメモにまとめてるので、多分完結後に設定集みたいなので投稿するかも、ですね。



それでは、今後もよろしくお願いします。


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