魔法少女リリカルなのは L×F=   作:花水姫

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遅くなりましたがなんとか前投稿より半年以内に投稿できました。
今回はヴィヴィオが持ってきた未来からのメッセージの話になります。



GOD編第5話 「Message of [Future]」

 

 後にどのような名でも呼ばれない、公的な記録に残らない事件。

 

 ユーリ・エーベルヴァイン(システムU-D)が目覚め、永遠結晶エグザミアに纏わる事件―言うならば『エグザミア事件』―が始まった夜の次の朝。

 

 

 

 アースラに保護された高町ヴィヴィオは自分が父と呼び慕う人物から託された頼み事をこなすため、アースラを歩き回っていた。

 

 

「いや~、それにしてもアースラがアースラで助かりましたねぇ」

「そうですね、八神さんのお陰でどこに何があるのか、大体わかりますしね」

 

 アインハルト本人には特に用事はないのだが、一人でいても何もすることがないためヴィヴィオと共にアースラを散策していた。

 ヴィヴィオもアインハルトも自分の時代、今からすると未来の世界ではある理由により補修されたアースラに何度か乗った事があったため、現在の補修前のアースラでもどこに何があるのかが把握できていた。

 そのため二人の足取りには不安などは欠片もなく、しっかりとした足取りで艦内を進んでいく。

 

 

「あ、ありました。第1作戦会議室。パパの情報によると王様は大抵ここに居るらしいので、早速お邪魔しちゃいましょう」

 

 

 第1作戦会議室とプレートに書かれた部屋を前にしてヴィヴィオは扉を手の甲で叩き、声をかけながら扉を開ける。

 

「すみませ~ん、高町ヴィヴィオです~。ディアーチェ・K・クローディアさんはいらっしゃいますか~」

「む?」

「あら」

 

 会議室の扉を開くとそこにはアースラの館長であるリンディと執務官のクロノ、それにヴィヴィオの目的の人物である、ディアーチェがいた。

 

「どうしたのかしらヴィヴィオさん。残念だけどここにクローディア? って名前の人は今はいないわよ」

 

 場を代表してリンディがヴィヴィオに話しかけるが、ヴィヴィオはその言葉に首をかしげる。

 

 

「あれ? でも、王様――ディアーチェさんそこに居ますよね」

 

 

 ヴィヴィオのその言葉に何か気が付いたのは、呼ばれた本人であるディアーチェと、ヴィヴィオの隣にいるアインハルトの二人。

 

「ん? なるほど、そういうことか」

 

 ディアーチェはそうひとりごちる。

 

「ヴィヴィオさん、多分クローディアさんはまだその名前を名乗っては居ないのではないでしょうか」

「あぁ~~、なるほど!」

 

 隣のアインハルトにそう言われて初めてやっとヴィヴィオも納得がいったのか、手を叩きながら大きくうなずく。

 

「それで、このディアーチェに用事がある、でいいのかな。こちらは今後についての会議中なので、手短に済むことでなければ後回しにして貰いたいのだが……」

 

 お互いの認識のすれ違いが解消されたところで、クロノが話を進めるため口を開く。

 

「はい。そのお話の参考になるだろう伝言? を預かってます。クリス」

 

 クロノの言葉にうなづきながら、ヴィヴィオは愛機であるセイクリッドハートを呼び出すと、呼ばれたクリスはふよふよと飛行し会議室の奥へ行き、空間にディスプレイを投影し何かの映像を投射しだした。

 

「私のパパ、まぁ未来の人からの伝言です。なにやら私が今回のような状況になることを知っていたらしく、そうなった際、ディアーチェさん、シュテルさん、クロノさん、リンディさんへの伝言をクリスの中に残していたみたいで」

 

 ヴィヴィオはそういうと目の前の映像を見つめる。その先は映像を見たほうが早いとでも言うように。

 それにつられて、その場にいた全員の視線がクリスが投影している映像に注がれる。

 

 

****

 

 

****

 

 

 

「――――――」

 

 

 

 映像が終了してから少しの間、会議室内は静寂で満たされていた。

 その静寂はヴィヴィオの声で終わる。

 

「――以上、みたいですね」

 

 ヴィヴィオの言葉に映像を投影していたクリスは同意するように、何度もうなづくとヴィヴィオの下に帰っていく。

 

 

「――なるほど、確かに今後の方針が大きく変わりそうだ」

 

 映像の内容を吟味するためか、クロノはそうつぶやくと目を閉じて黙考する。

 それに対してディアーチェは大声をあげていた。

 映像の内容と、伝言と共に預けられた()を予想できなかった自分自身に対して笑いをこらえきれなかった。

 

「くくっ、まぁそうよなぁ。未来人が現れると知っていて、それが自分の知り合いなら、メッセージを残さない理由はないというわけか。くっはははっははははっ。考えてみれば当然のこと、我もシュテルのことをバカにできんなぁ。ははははっ」

 

 

 そんな二人に対しリンディが声をかける。

 

「クロノ、ディアーチェさん」

「はい」

「あぁ」

「至急、シュテルさんとエイミィ、それにアテンザ技師も呼んでください。ヴィヴィオさんから提供いただいた動画と、このデータ(・・・・・)を元に今後の方針を再検討しなおします」

「了解しました」

「わかっている。シュテルにはもう既に伝えた。ちょうどその技師と対抗プログラムについての会議をしていたようだから、ついでに連れてくるよう伝えている」

「わかりました。なのはさんたちがこちらに来るまでに、あらかたの方針を決めておいた方が良いでしょう」

 

 クロノとディアーチェの返答を聞き、リンディはうなづくき、ヴィヴィオに目線を向ける。

 

「ヴィヴィオさん」

「はい」

「伝言によるとあなたにもこれからの会議、引いては今回の作戦に参加して貰った方がいいと思うの。本来は保護するべき私たちがあなたにこういうのは大変申し訳ないのだけれど、どうかお手伝いしてもらえるかしら」

 

 まっすぐにヴィヴィオの目に視線を合わせそう言うとリンディは静かに頭を下げる。

 

「わわっ、そんなかしこまらないでください! この高町ヴィヴィオ、血は繋がっていなくても高町なのはの子として、困ってる人を見捨てるわけにはいきません! 安心してください、私これでも並の魔導師より強いので! 全力全開でお手伝いしますよ!」

 

 頭を下げたリンディに慌てながらも力強く宣言するヴィヴィオ。

 その横にいたアインハルトはリンディの肩に手を置きリンディの顔を上げさせる

 

「リンディ提督。ヴィヴィオさんのお父様の伝言によると私たちが元の時代に帰るには、アミタさんとキリエさんの助力が必要であるとか。それならば、お手伝いしないわけにはいきません。それに、ヴィヴィオさんの言う通り、私もヴィヴィオさんもある事情により通常の人間より戦うことに慣れていますので、殺しても死なないような敵であるならば、それこそ全力(・・)を振るえるというものです」

 

 そうリンディに語り掛けるアインハルトの口調は、いつも通り静かでゆったりとしたものであったが、リンディにだけ見えるアインハルトの瞳の奥底には、強敵を求める猛獣が潜んでいた。

 

 

 その瞳の奥を見て、リンディの背中に冷や汗がつたう。

 

 

 直感と呼べるものでリンディは感じ取っていた。限定オーバーS。魔導師としては最高峰に近いランクを持つ自分でさえ、目の前の少女と全力(・・)でやり逢えば、両方とも無事では済まないという事を。

 

 

「わ、わかりました。本当に感謝の言葉が絶えませんが、よろしくお願いします。高町ヴィヴィオさん、アインハルトストラトスさん」

 

 

 冷や汗の不快感を隠しながら、リンディは頭を上げ精一杯の笑顔を浮かべた。

 

『はい!』

 

 それに対し、ヴィヴィオとアインハルトの笑顔のなんと無邪気なことか。

 その笑顔にリンディは一抹の恐怖とともに強い頼もしさを感じていた。

 

 

 

***

 

 

***

 

***

 

 

 

 会議室でヴィヴィオが伝言を伝えてから数時間後、日課の早朝訓練を終えたなのは、フェイト、はやての三人(+はやての車イスを操るリインフォース)はアースラ内で話ながらブリーフィングルームを目指していた。

 

 「というわけで、そのヴィヴィオちゃんは私のことを『ママ』って呼ぶんだよ~」

 

 主に話していることは昨日の出来事であったが

 、現在はなのはが保護した(自称)未来人の二人についてであった。

 

 「は~。それがホンマやったらけったいなことやなぁ。勉強した中じゃ次元移動技術や魔法でも時間移動はできんらしいやん」

 「うん。でも確認した身分証の発行日は確かに未来の日付だったんだよね。ミッドの保険証とザンクトヒルデ? って言う学校の学生証を提示されてて、そっちは今リンディさん経由で本局に問い合わせ中」

 「まぁ未来人やったら問い合わせても該当なしやろうし、無駄手間な気はするけど、身分証を偽造するのに態々未来日なんてあからさまなもんも作らんやろうしなぁ。リインフォースは時間移動の魔法にとかには覚えないん?」

 「はい、残念ながら。体感時間を引き伸ばす事での擬似的な時間操作には心当たりがありますが、時間遡行や時間軸移動に類する魔法やレアスキルの持ち主には出会ったことはありません」

 「夜天の書で色んな魔法を集めてたリインフォースさんが知らないならどうしようも無いかもね。フェイトちゃんはどう思う?」

 「え? うん。良くわかんないけど、なのはが育てた子供なら良い子だと思うよ?」

 

 話に入ってこずにずっと傍らで話を聞いているだけだったフェイトに、なのはは話題を降るが返ってきた答えはまさに話題を理解してない的外れな返答だった。

 そのあまりの天然さにはやては器用にも車イスの上で滑り、なのはは思わず苦笑いを浮かべる。

 

『……あのさぁ、フェイト。今の話題でその話はちょっとちがくない?』

 

 周囲の友人だけでなく、今は自分の中に居る半身からも突っ込まれフェイトは明らかに狼狽しながら、弁明を図る。

 

 「で、でも。ホントになのはに育てられた子なら、嘘をつくとか、ましてや公文書偽造なんて犯罪に手を染めるとは思わないから、信じても良いと思うな!」

 「あ~、なるほどなぁ。まぁなのはちゃんの子供ってことを信じるならそうなんやろうけどなぁ」

 

 未来人、ひいてはなのはの子供という自己申告すら話し半分のはやてにとっては、フェイトの言葉には納得しにくい物が少しあり、なんとも言えない思いを感じ、語尾が弱くなる。

 

 「フェイトちゃんは素直で優しいね」

 

 対してなのはは、フェイトの『なのはの子供だから』という理由でヴィヴィオの事を信用できるという、『なのは』への信頼を感じられ胸が温かくなる思いを感じていた。

 

 「なんやー、なのはちゃん。その言い方だとうちがひねくれてて優しくない見たいな言い分やな。その喧嘩買うで~」

 「えぇ!? そんなつもりじゃ無いよ! ホントだよ!」

 「そ、そうだよ、はやては優しいよ!」

 

 なのはのフェイトへの言葉にからかい気味で頬を膨らませながらはやてが突っかかるとなのはとフェイトは慌てて言い繕う。

 その様子をどこかからか俯瞰視点で見ていたレヴィは、面白くてつい笑ってしまった。

 

『あはははっ。まぁフェイトとはやてが揃ってればちょうど良いんじゃ無いかな』

「そ、そうなの! 優しいフェイトちゃんと冷静なはやてちゃんでこう、なんか、アレが良い感じだと思うな!」

 

 レヴィの笑いながらのフォローに、なのはもすぐさま乗っかりはやてを宥めようと声をかける。

 

 その小動物のような様子にはやてもたまらなくなり吹き出してしまう。

 

「ぷふっ。はははっ、そんなに慌てんでもええよ、なのはちゃん。別に不機嫌になってへんから」

「ほ、ほんと?」

「ホンマに」

「よ、よかった~」

 

 はやての言葉が演技だとわかりホッと胸をなでおろし、安心するなのは。

 そうして3人娘(主にはやてとなのは)が姦しくおしゃべりをしているうちに、目的地であるブリーフィングルームはすぐそこまで近づいていた。

 

 

『ほら、3人ともそうこうしているうちにそろそろブリーフィングルームだよ』

 

 レヴィのその言葉で三人とも声を静め、なのはが代表して扉を叩いた後に開ける。

 

「高町なのは、フェイト・テスタロッサ、八神はやて、以下2名現着しました!」

 

 扉を開けながらなのはは自分たちが来たことを伝える。それに最も早く反応したのは中にいたヴィヴィオであった。

 

「あ~、なのはママ~~」

 

 やっほーと言いながら、入り口近くの椅子から乗り出しなのはに向かって手をヴィヴィオを見ると、なのはは少しだけ微笑ましい思いになり、ヴィヴィオに微笑みながら小さく手を振る。

 

 

 部屋の中にいるのはアースラスタッフから艦長であるリンディ、執務官のクロノ、執務官補佐であり会議では書記を担当することの多いエイミィ、技術スタッフのマリー。

 それ以外の面子は、ディアーチェとシュテル、アミタにキリエ、ヴィヴィオにアインハルトと、この事件に関わり合いのある人物が勢ぞろいしていた。

 

 

 なのは達が開いている席に座るのを確認すると、クロノが立ち上がり口を開く。

 

「それでは全員揃ったのでブリーフィングを始めます。今回の議題は現在この海鳴市周辺で発生している闇の欠片の出現、およびその原因と思われる存在システムU-D、以下U-Dと呼称します。そのU-Dそのものである少女、ユーリ・エーベルヴァインへの今後の対応と対策について」

 

 クロノの言葉に合わせ、会議室のモニターには様々な情報が映し出される。

 

 

 そうして会議はクロノ司会の下、アミタとキリエによるエルトリアの説明、ディアーチェたちによるエグザミア、システムU-Dについての詳細説明などが行われつつがなく進行する。

 

「と、言うわけで現状と我々の目標、U-Dの鎮圧、およびユーリ・エーベルヴァインの保護が共有できたところで次の議題に進みます。次の議題ですがシステムU-Dの対抗策についてです。これは先日のレヴィとU-Dの直接戦闘の記録をアースラでも確保していますが、ハッキリ言って革新的な対抗策が無ければ直接戦闘においては無謀の一言です。我々の最終手段であるアルカンシェルについてもディアーチェ曰く有効打となるかどうかは試してみるまで分からない、との事。既存の地球での事件規模で言えばナハトヴァール、闇の書の闇の戦闘力が少女大の大きさにまで凝縮された存在と言っても過言ではないでしょう」

 

 クロノのU-Dへの説明を引き継ぐように、シュテルが発言する。

 

「はい、そこで我々、私シュテルとアースラの技術官であるマリエル・アテンザ両名は、U-Dの自動防壁を中和する攻勢プログラムの開発を行っている最中です。ですがこちらはU-Dの解析不足、技術不足もあり、主力と想定されるインテリジェントデバイス、およびデュアルデバイスが行えるメンバー分を用意するのに5日程は要します。正直言って5日もユーリを放置している余裕はありませんので、ミッド式、ベルカ式プログラムを一つずつの計2つ分を2日で作成する、といったところが妥協点となるでしょうか」

「やっぱり時間が足りませんねー。ベルカとミッドだけでも大分仕組みが変わるのに加え、各々のデバイス用に調整となるとどうしても……。正直シュテルちゃんのU-Dの解析率が100%でも主力メンバー分を実戦で安定運用させるためにはやっぱり3、4日はかかっちゃう。これがミッド式だけで良いんだったらもうちょっと短くなるんだけど、それでも結局戦力になるのはなのはちゃんとフェイトちゃんだけになっちゃうし、特にフェイトちゃんのバルディッシュは難しい子だから……」

 

 シュテルの説明を引き継ぐ形でマリーが弁明する。これでもマリーは技師としては上級である上、シュテルもその「理」の性質をいかんなく発揮し、マリーを手助けしていた。この二人でなかったらミッド式1本だけでも開発に3日は必要としていただろう。

 

「やはり、時間が足りない」

 

 その二人の意見を再度確認するクロノに、二人は黙ってうなづく。

 

「では今回の主題であるが、それを解決する手段がある、と言ったらどうなる」

「解決する手段、とは?」

「正確に言ってしまえば、攻勢プログラムのミッド式、ベルカ式、インダストリアル式それぞれの完成品だ」

 

 クロノの言葉に大きな衝撃を受けるのは、先ほど説明を行ったシュテルとマリー。

 その二人ほどではないにしろ、驚いているのが説明を聞いたばかりのなのは、フェイト、はやて、リインフォース。そしてレヴィ。

 

「それを説明してもらうため、今回特別に今作戦に参加してもらうことになった一般人協力者の高町ヴィヴィオに出席してもらっています。ヴィヴィオ、よろしく頼む」

「はい!」

 

 驚く面々を置いてクロノはヴィヴィオに話を振ると、ヴィヴィオは元気よく返事をして立ち上がる。

 

「ご紹介にあずかりました、高町ヴィヴィオです。今回の事件の影響で、新暦80年のミッドチルダからこちらの時代に迷い込んでしまいました。自己紹介は置いておいて、そんな私の状況を予想していたのか、私が父と呼び慕っている人物から、この世界の皆様に向けてのメッセージと贈り物があります!」

「このメッセージは僕とリンディ提督、あとディアーチェは先に拝見している。そのメッセージを見れば彼女の言っていることが本当だと思うしかないだろう。そして、先に言っておくが、その人物からの贈り物、というのがこの事件で、U-Dとの戦闘の時に主力となるメンバー全員分(・・・)の完成済み攻勢プログラムだ」

「なんと、まさかそんな事が……。そうですか、未来の人物とはもしや……。クロノ執務官、映像を見せていただいても」

 

 ヴィヴィオとクロノの説明を聞き、シュテルは何かを思いついたのか、件の映像を催促する。

 その催促にクロノは頷き、エイミィに指示を出すと部屋が暗くなり映像が流れ始める。

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

『えーっと。これ撮れてる? OK?』

 

 映像が流れ始め最初に映し出されたのは、10代後半から20代前半といった見た目の妙齢の女性だった。

 鮮やかな水色の長髪をうなじの当たりで一つに結び、切れ長で凛々しい目から見える瞳の色はワインレッド。

 スタイルは良く、ソファーに座っている姿だが、女性にしては長身であることも伺える。

 

 そんな女性は一つ咳払いすると、言葉を仕切り直し、語り始める。

 

 

『えー、これを見ている、ということはもうボクはこの世には居ない、ということでしょう……』

 

 

 そんな重い台詞を言った瞬間、画面の横から出てきた女性がハリセンで最初の女性の頭を引っ叩く。

 

 

『いだっ』

『戯け! 自分でメッセージを送りたいからと譲ってみれば、なにをふざけて居る!』

 

 

 ハリセンをもち、水色の髪の女性を叱るのは、銀髪で毛先が黒く染まっているショートカットの女性。

 

『いや~、やっぱこういうメッセージを残すんだったらやっとかなきゃいけないかな~と思ってさ~~。お約束じゃんこういうの』

 

 ハリセンで叩かれた頭を上げ、銀髪の女性に言い訳をする水色の女性は、最初の凛々しい雰囲気は消し飛び、少年のような無邪気さを伺える表情がその顔には表れていた。

 

 

ディアーチェ(・・・・・・)の言う通りですよレヴィ(・・・)。そもそもこれは過去へのメッセージなんですから、あなたが死んでるわけないじゃないですか』

 

 画面に映る二人とはまた違う女性の声がする。声の主が言った名前を雰囲気から察するに、水色の髪の女性がレヴィ、銀髪ショートカットの女性がディアーチェなのだろう。

 

 

『いいから真面目にやらんか戯け』

 

 

 そういうとディアーチェだと思われる女性は画面外へと出て行ってしまう。

 

 

『はーい。さて、えーっと今は新暦79年です。そっちの時代は……シュテるん、何年だっけ?』

『たしか新暦66年ですね』

『なるほど、んじゃぁこの映像を見ている人はみんな新暦66年の地球、海鳴市でこの映像を見ていると思う。

 この映像を持ち込んだ少女、高町ヴィヴィオの言っている事はこのボク、レヴィ・テスタロッサが保証しよう。彼女はまさしく新暦66年からしたら未来の人物であり、高町なのはの娘だ。

 そして、13年前のクロノにリンディさん、それからなのは、フェイト、はやて以下夜天の守護騎士たち。そして無断次元移動の容疑でアースラにつかまってたりしなかったりするかもしれないけど、アミティエ・フローリアンにキリエ・フローリアンの二人。それからボク、王様、シュテるんの三人。

 君たちは今、ユーリに、システムU-Dに対抗する手段を求めているはずだ。

 それをボクはこの映像とともにクリス、ヴィヴィオのインテリジェントデバイスであるセイクリッドハートに託した。

 シュテるんが作ろうとしていたシステムU-Dの自動防壁を破るための攻勢プログラムを戦闘に参加するであろうメンバー用の物。

 未来の技術が用いられているけど、それぞれのデバイスの強化版の設計図。こっちは偶然にもヴィヴィオが早期にアースラに保護されたら使えると思う。ボクの記憶ではそんな暇は無かったはずだから攻勢プログラムのインストールだけになるかもしれないけど。

 そして、システムU-D、ユーリと直接対決する際に最も気を付けなければならない能力への対抗策。

 ユーリの他者の魔力、生命力を結晶化し奪う能力へ対抗するための力。ミッド式の魔法でも、ベルカ式の魔法でも、インダストリーの化学でも、地球の武術でもない。それら全てでなく、しかし全てを兼ね備えた技術。<F.O.R.M.U.L.A.(フォーミュラ)>システム。ボクたちが開発した魔法と科学を合わせた新しい力。

 そのシステムと、フォーミュラを扱うために必要なナノマシンの設計図、そしてサンプルも送ってある。理想は全員がフォーミュラを身に着けて挑めれば最高だけど、さすがにそんな時間は無いと思うから、もしタイミング良くボクの躯体の再構築が必要になったら、このフォーミュラ用の躯体で再構築してほしい。

 ボクのアノ記憶と違って、実際のユーリの力は凶悪になってるから。このフォーミュラを使いこなせる魔導師(・・・)が一人以上居なければ、誰もユーリには勝てない。本気を出した、見境なく力を振るうほどまでに暴走したユーリとの戦いで、このフォーミュラが無ければ、戦闘メンバー全員瞬く間に魔力と生命力を結晶化され奪われ、死ぬだけになる。

 多分このメッセージを聞いてるってことは、ボクの躯体を作り直してる頃だと思う。だから、時間がかかっても絶対にこのフォーミュラ用の躯体を作って。そのための設計図もフォーミュラの設計図と合わせて送ってあるから。

 最後に、過去のボク。フォーミュラ用の躯体が出来たら、絶対にヴィヴィオと1戦はすること。ヴィヴィオにはボクの全てを、ボクが学んだ御神流と魔法、その全てを合わせ「完成」させた魔法戦技。その全てを仕込んである。まだ神速の領域ではないから免許皆伝はあげてないけど、それでも基礎と奥義、戦術のすべては叩き込んでるはずだから。ヴィヴィオと戦って盗んで、完成させるんだ。新しい躯体での戦い方と、ボクのための御神流の使い方を。

 さて、伝えたいことは以上だと思う。みんなの検討を祈るよ。最後にヴィヴィオ、もし側にアインハルトもいたらアインハルトも。キチンと無事に帰ってくること。確かに君はなのはに似て強い子だし無理もしがちだけど、それでも無事に帰ってくるのを皆望んでるからね。それじゃぁ皆、頑張って』

 

 

――――――――――――

 

 

 頑張って。その言葉を最後に映像はフェードアウトし、再生が終了したことを映像ソフトの画面が切り替わることで会議室の面々は気づく。

 

「以上が、ヴィヴィオが持ってきてくれた映像だ。この映像と共にクリスより提供のあった各種データは後々マリー達のほうで検査して確かめてくれ」

 

 クロノの言葉にマリーは黙ってうなづく。

 

「それでは、以上で今回の会議の主題に関しては終了です。今後の動きですが、シュテル、マリーはヴィヴィオと共にクリスからデータ提供、およびそれの解析。ディアーチェ、レヴィ、シュテルはメッセージ通りにするしないはともかく、レヴィの躯体の構築が最優先。なのは、フェイト、はやて達には申し訳ないが闇の欠片の駆除にあたってもらいたい」

 

「「「了解」」」

 

「守護騎士たちもなんとかリンディ提督の掛け合いで今日の夜にはこちらに合流できる事になったので、合流次第指揮権をはやてに移譲する」

「わかりました」

 

 各々の今後の動きの確認を終えるとクロノは会議室を見渡し、伝え漏れがないかを確認すると会議の終了を宣言した。

 

「それでは、会議終了となります。リンディ提督から何か一言あれば」

「はい、それでは。高町ヴィヴィオさんのご助力により事件は早期解決に向けて大きな一歩を踏み出せることになりました。そして皆さんにはそのためにさらに頑張っていただく必要がありますが、どうかよろしくお願いします。皆、頑張りましょう!」

『はい!』

 

 

 クロノの言葉にうなづいてリンディが一言を述べ、会議室全員が一致団結し、会議は解散することとなった―――――。

 

 

 

 

 

***

 

***

 

***

 

 

 

 

 ――一方そのころ、海鳴市近郊――――。

 

「いつつつ、ここ、どこだ?」

『大丈夫? トーマ』

「あぁ、リリィのおかげでなんとかね、それにしても、変なところに来ちゃったなぁ」

『そうだね、他の人とかどうなってるのかな……』

「ま、ともあれ少し散策してみよう、何かわかるかもしれないし」

『うん』

 

 

 新たな来訪者が、また二人増えていた。

 

 

 

 





ってなわけで未来からのメッセージお披露目の会&トーマ達来訪。
一応この小説ではGOD編をうたってるので登場させとこうかと。
連載無期限停止なのであまりキャラとか性能とかが理解できてないので、活躍や登場はちょっと微妙なところになりそうです。



なのはReflection見てめっちゃ面白かったし最後のなのはさんのフォーミュラドライブがかっこよすぎたので無理やり設定追加。
そのせいでユーリがゲーム版よりReflectionよりな凶悪さになってます。


GODの過程をだいぶ吹き飛ばしてるので、そろそろGOD編も佳境に入りかけてますので、早いところ終了させたい気分。次の話はたぶんDetonation公開までには……(目標が低い)

それでは、また次回。


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