推敲はそこそこなので、誤字脱字たくさんあると思いますがご容赦。
――。
――夜。太陽が沈み切り、闇が支配する時間。
――海鳴市中央XXビル屋上。
真冬の夜という最も寒さが厳しくなる時間、風が強く気温以上に寒さを感じる高層ビルの屋上という場所。
人っ子一人居ないどころか、昼間でも人気のないその場所には、珍しく人影があった。
「う~~ん」
その人影は空間投影ディスプレイを眺めながら腕を組み頭を捻っている。
その容姿は幼いながらも将来を待望させる美貌が伺える金髪の美少女。特に特徴的なのは、鮮やかな赤と碧の
そんな少女に、もう一人居た人影が声をかける。
「なにかわかりましたか? ヴィヴィオさん」
声をかけたのはヴィヴィオと呼ばれた少女と同年代のこれまた美少女。
髪は透き通った碧銀の長髪を二つにまとめ、そしてヴィヴィオと同じく紺と紫色の虹彩異色を持つ少女であった。
その少女に声をかけられたヴィヴィオは捻っていた頭を上げ、声をかけた主に向き直る。
「あ、アインハルトさん。いやー、軽~く周囲を探索してみたんですけど、やっぱりここは地球の海鳴市みたいですね」
「そうですか。私の方は知り合いに片っ端から連絡をしてみましたが繋がりませんでした」
「アインハルトさんもですか……」
「
「はい。ママ達や
そう話しているうちにヴィヴィオは意気消沈とし元気がなくなっていくように見える。
そんなヴィヴィオを励ますように、アインハルトは話を切り出す。
「一応誰とも通じないことが確認できた時点で、救難信号を定期的に発信するようにティオに伝えてあります」
アインハルトがそう言うと、肩に乗っていた猫のぬいぐるみが力強く鳴き声を上げる。
その様子に元気づけられたのか、ヴィヴィオは「ありがとね」と言いながらティオと呼ばれた猫のぬいぐるみの頭を撫でる。
「それにしても、海鳴市だったらなのはママの実家や、おばあちゃんが居るはずなのですが、そっちにも繋がらなくて……。困ったもんです」
「とりあえずはプレシアさん達か、近辺を巡回している次元艦が救難信号に気付いてくれる事を祈るしかありませんね」
「はい。そうですね」
お互いの状況確認が終わってしまうと喋るべき内容が無くなり無言の時間がただ過ぎていく。
「うーん。クリス達が居てくれて助かったなぁ」
ヴィヴィオは唐突にそう言うと、クリスと呼んだ兎のぬいぐるみの頭をなでる。
「そうですね。この子たちが居ない状態でこんな寒空の下放り出されたら魔力がいくらあっても足りない所です」
ヴィヴィオの独白に共感しながら、アインハルトもティオを胸に抱きかかえる。
「不測の事態に備えてなるべく魔力はとっておきたいですもんね。魔力の消費を抑えながらも、最低限の温度調整はしてくれるし、ありがとね~クリス~」
ヴィヴィオのお礼に、クリスは片腕をビシッと上げ応える。
***
***
そうこうして時間が過ぎ、ついにヴィヴィオ達の我慢の限界が訪れる。
空腹という形で。
ぐ~~
と、二人のうちのどちらかから、もしかしたら両方からお腹の音が大きく鳴る。
「ひもじぃよぉ……」
「お腹、空きましたね……」
「アインハルトさん地球のお金持ってないですよねぇ」
「流石に持ってませんよ、私地球に来たの初めてですし……。それこそヴィヴィオさんは持ってないんですか」
「クラナガンで暮らしてたら今時貨幣なんて持ち歩きませんよぉ。ミッドのクレジットは地球じゃ使えませんし、今は実質無一文ってやつです」
「今、何時なんでしょうね」
「ミッドではそろそろ19時みたいですねー。端末の時間がそう告げています」
「空、暗いですね」
「絶対19時っていう時間ではないですねー。星はちらほら見えますけど、さすがに地球の星座から時期と時間を割り出すのは無理です」
そう他愛ない話をして気を紛らわせても生理現象は容赦なく二人を襲い、再度大きくお腹が鳴る。
「お腹、空きましたね……」
「あったかい物が、飲みたいですね……」
「私は今むしょーにステーキが食べたいです」
「アインハルトさんって女子力低いですよね……」
「なんですかいきなり」
「いや、年頃の女の子がお腹空かせてお肉ガッツリ食べたいとか、それ女子力じゃなくて漢力ですよ。漢力ガジェットLV50ですよ」
「む、たんぱく質は格闘家にとっては第二の友ですよ。たんぱく質が補給できるお肉は大事です」
「因みに第一の友は?」
「筋肉です」
「ふえぇ……脳筋だよぉ……」
「むむ、なんですかその言い分は。それでも格闘家ですか」
「私は格闘家じゃなくて武闘家です~~~~~~。私の流派は総合戦闘術ですんで」
「それを言うなら覇王流も総合戦闘術です。クラウスは武芸百般に通じていましたとも。その中でも特に拳を用いた戦闘を好んでいただけです。もちろん、クラウスの記憶を受け継いだ私も、武芸百般ですとも。えぇ」
「すぐバレる嘘は辞めた方がいいですよー。アインハルトさんが武器振ってる姿なんて見たことありませんし」
「それを言うヴィヴィオさんはどうなんですか。私もヴィヴィオさんが武器を振ってる姿なんて見た事ありませんよ」
「私は毎朝素振り100回は鍛錬としてやってますしー。まだパパから他流試合を禁じられてるので公にはお見せできませんけど」
「むむっ、ま、まぁそうやって複数の事をやっても武の道は極められませんし?」
「あれれー? アインハルトさんもしかして嫉妬ですかー? まぁアインハルトさんぶきっちょですもんねー。ヴィヴィオちゃんみたいに器用に物事を学ぶ才能ないですもんねー」
「むむむっ! 何が才能ですか。結局U15ワールドチャンピオンシップでは私に惨敗したあなたが? 私よりも才能があると?? 『二つの椅子の間で尻もちをつく』とはよく言ったものですね!」
「あー! その事言ったら戦争ですよ! それに惨敗じゃありません! 最終ラウンドギリギリまでもつれ込んだじゃないですか!」
軽口の応酬を繰り広げていくうちにヒートアップしてきたのか、二人は立ち上がり顔を突き合わせる。
「やりますか!?」
「やってやりましょうとも! この場でチャンピオンの座を明け渡してもらいます!」
ヴィヴィオのその言葉に応じて二人は同時に相棒へと声をかける。
「アスティオン!」
「セイクリッドハート!」
アインハルトは肩に乗っていた猫を掌の上に乗せ。
ヴィヴィオは頭の上に乗っていた兎を掌の上に乗せる。
そして相棒を天高く掲げ、戦闘のための姿へと変わる魔法を―――――
『セーットッ!』
ぐぅうううううううぅぅぅ~~~
――――――唱えようとして、二人の腹部から、大きな音が鳴り響いた。
『……あ、あーーー』
タイミングの悪い生理現象によって気が削がれた上に、空腹を思い出した二人は一気に力が抜けそのままへたりこむ。
「そ、そうでした」
「お腹、空いてましたね……」
空腹を思い出した上、先程の言い合いによって更に体力を消費してしまい、遂には言葉すら発することが億劫な状態になってしまっていた。
「あ、あの~……」
そんな二人の頭上から声が降り注ぐ。
その声に導かれ無い体力を振り絞って二人は顔をあげ、声をかけた者を視界に納めると、そこには白き衣を身に纏う天の使いが、二人のもとに舞い降りていた――――。
****
****
夜になりしばらくすぎた時間。食事時なのかアースラの食堂は賑わっていた。
多くの人が集う食堂の中で、その視線の多くを引き寄せている人影が二人。
その二人は綺麗な金髪の美少女と碧銀の髪を持つ美少女。その顔は整っており平素であったらさぞ美しかろうという少女二人は、自分たちが食堂中の視線を集めていることにも頓着せず、その綺麗な長髪を振り乱しながら己の欲望を満たすことだけに専念していた。
「はふっはぐっもぐもご」
「っはむぐっズズズズズッもごもが」
目を引くほどの美少女二人が、数人前はありそうな量の食事を脇目も振らず、息つく暇もなくがっついていたら、それはもう食堂中の視線を集めるのもしょうがないと言えよう。
そんな二人――ヴィヴィオとアインハルトが最後の皿を綺麗にし、成人男性数人分の食事を終えるとやっと一息つき、その顔を上げた。
「ふぃ~。やっと満足出来ました~。ごちそうさまです~」
自分のお腹を擦りながら目の前の人物にお礼を言うヴィヴィオに続き、アインハルトも頭を下げる。
「本当に、ありがとうございました。ヴィヴィオさんの……ではなく、高町なのはさん」
お礼を言われた人物、高町なのはは目の前に高く積まれた皿を傍目に入れ、苦笑いしながら相づちを打つ。
「……にゃはは、どういたしまして。えっと、アインハルトちゃんに、ヴィヴィオちゃん。で良いんだよね」
「はい。改めまして、アインハルト・ストラトスです。この度は私達を救助していただき、誠にお礼を申し上げます」
なのはの言葉に頷くと、再度頭を下げるアインハルト。
「高町ヴィヴィオです! ミッドのクレジットの規格が変わってなければ食べた分は自分達で支払うから安心してね! なのは
頭を下げたアインハルトに続き名前を言うヴィヴィオの言葉に、なのは強く反応する。
「そ、それ! 会った時も言ってたけどママってなに!? 私まだ結婚もしてないよ!?」
高町なのは弱冠9歳。自分を母と呼ぶ少女と出会う。
なお、ミッド人(正確にはベルカ人)と日本人の違いを加味しても、なのはよりヴィヴィオの方が発育は良く、ヴィヴィオの方が年上であろう事が伺える。
「うーん、そう言われても。私にとってなのはママはなのはママだし。今更『なのはさん』って呼ぶのも座りが悪いというか~」
「ほ、本当に未来から来たの?」
なんとなく変な気分だから、と母と呼ぶことを諦めないヴィヴィオに、なのははこれまでに聞いた事情を再度確認する。
「はい」
それに答えたのはアインハルトの方であった。
「私達がこの場所に飛ばされる前に居たミッドチルダでは新暦81年でした」
「今はたしか新暦だと65……じゃなくて66年だった筈だから15年後? すると、私は23歳かー。あれ、ヴィヴィオちゃんって何歳なの?」
「ピチピチの12歳だよ!」
「そっかー。今の私より年上なんだね…………あれ」
ヴィヴィオの年齢を聞きふと違和感を覚えるなのは。
高町なのは、9歳。15年後は24歳。
15年後からやって来た未来人である(自称)自分の娘は12歳。
そこから導き出される結論。それは――――。
「え、えぇぇえぇぇぇぇええぇぇっ!!?? 私12歳で子ども産むのぉぉおおぉっ!?!!??」
――高町なのは、弱冠12歳にて第一子出産。
14歳の母ならぬ、12歳の母であった。
「そ、そんな……子ども産むまでにあと3年……3年でママ……。まだ中学生なのに、ママ……」
衝撃の事実に思いあたり、口から魂が抜けたかのように呆然とするなのは。
「あ、私養子だから、なのはママがお腹を痛めて産んだ子じゃないから安心して」
そんななのはと比べ、ヴィヴィオはひどくあっさりとまたもや衝撃的な事実を口にする。
「え? 養子って……?」
「えぇ、そのことを語るには聞くも涙語るも涙の超大作。アニメにして24話分。劇場版にして約2作分のお時間が……」
「まぁ、ヴィヴィオさんも色々複雑な事情がありますので、そちらは長くなりますしまたの機会にでも」
よよよとハンカチで目を押さえ嘘泣きをするヴィヴィオを華麗に流すアインハルト。
その慣れた対応、雰囲気からなのはは二人が本当に信頼しあう友人なのだと感じ取り、なぜだかわからないが嬉しくなってしまい笑みがこぼれる。
「二人は、とっても仲がいいんだね」
「んー、まぁ、そうですねー。アインハルトさんとも色々ありましたしねー」
「そうですね。色々ありましたから」
そう言ってお互いに視線をあわせはにかむヴィヴィオとアインハルト。
そんな二人を見つめ微笑むなのは。その光景は年齢はなのはのほうが低いのにも関わらず、まるで娘の友達を見て喜ぶ母の雰囲気を感じさせた。
三人がそうして談笑していると、なのはに取って見知った人物が声をかけてくる。
「すまない。会議が長引いてしまった」
声をかけたのはアースラのNo2.クロノ・ハラオウン執務官。
「初めまして。この艦の執務官のクロノ・ハラオウンだ。救助者として責任をもって君たちの問題に対処させてもらう。よろしく頼む」
身分証を投影しながら自己紹介するクロノ。しかしなぜかクロノを見て唖然とする目の前の二人を見て頭をかしげる。
「あの、どうかしたかい?」
(小さい……)
(小さい……)
(14年前……)
(年齢……平均身長……)
いきなりクロノを目の前にして、小さな声で話しあう二人。
そしてなにがしかの結論が出たのか二人は急に立ち上がりクロノの手を握る。
「うおっ、急にどうし……」
「大丈夫です! 諦めないで下しさい!」
「ぞう゛でずっ……自分を未来をズズッ。し゛ん゛し゛て゛く゛た゛さ゛い゛」
アインハルトからは力強く。なぜかヴィヴィオは号泣しながらクロノの不屈の心を説き始める。
「な、なんなんだ一体……」
「……にゃ、にゃはは」
唐突に年下の女子二人に詰め寄られクロノは堪らなくなり、なのはに視線で助けを求めるがなのはは苦笑いしか浮かべることができなかった。
「と、とりあえず。この二人に関しては僕が引き継ぐ。なのははもう遅いから帰るといい」
「う、うんよろしくねクロノくん。それじゃぁヴィヴィオちゃんにアインハルトちゃんもまたね」
妙なテンションで若干付き合いにくさを感じる二人をクロノ一人に任せるうしろめたさを感じつつも、遅い時間であり帰らねばならないということもあり、後ろ髪を引かれる思いながらその場を後にする。
「あ! なのはマ……なのはさん! レヴィ、さんに『ヴィヴィオが会いたい』と言っていたって伝えてもらっていいですか!」
「え?」
「おねがいします!」
「うん!」
去り際にヴィヴィオから、意味の分からない伝言を受けるがそれを笑って快諾し、なのはは食堂を後にした。
なのはと二人が会話中の食堂
(なのはママ……)
(なのはちゃんにバブみを感じる……)
(俺もなのはママにオギャりたい……)
そんな一団がいたとかいないとか。
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というわけで、Reflectionの画像見てテンション上がって作成→投稿の流れ。
誤字脱字とかは見直して見つけたら修正予定。
ヴィヴィのテンションとかアインハルトとの関係とか、色々と某お方に影響されてますがそちらもご容赦の程。
あ^~Reflectionたのしみなんじゃ^~