完成したテンションそのまま投稿。
※注意※
胸糞な描写がある可能性があるので注意してください。特にフェイト好きの人。
海鳴市。その名の通り海が臨める市で、大都市とは程遠いが市の中心は栄えながらも、自然とのバランスの取れた土地である。
そんな海鳴市からしばらく沖合に出た海の上空で二人の少女と一人の女性が空中に浮かびながら作業を行っていた。
「キリエ、調子はどうだ」
その中の一人で杖と本を携えた少女、ディアーチェが桃色の女性に声をかける。
「はいは~い。こっちは順調よ~」
「そうか」
「それにしても、まさかエグザミアが王様達みたいな女の子とはねぇ……」
作業を続けながらも独り言をこぼすキリエ。それもその筈であり、彼女は自分の生まれた世界を救済する機械や、Oパーツのような物を創造していたのだから。それがただの少女であると知れば落胆もしよう。
「まぁ、これから呼び起こすのはエグザミアのメインを司っているユーリを起こすだけだ。我ら紫天のマテリアルズ三基と、紫天の盟主であるユーリ・エーベルヴァイン。この四人が揃って初めて『無限連環機構』は完成する」
ディアーチェの言葉に続くのはマテリアルズの参謀役であるマテリアル―S、シュテル。
「ユーリが揃った我々に不可能などありません。完全なる人体を持たぬが故の無限に近い時間。エグザミアが齎す無限の魔力。そして我々三人のサポートがあればどのような事も成し遂げて見せましょう」
「ま、そういう事だ。事が終われば貴様の世界をまず征服してやる。今はタダ働きという事で少々心苦しいがな」
「いえいえ~、まさか王様がここまで優しいとは思ってなかったから問題ないわよ~。話を聞いた時は無駄足踏んだとも思っちゃったんだし、私達の世界を何とかできるとっかかりができるなら十分よ~」
キリエの言葉にディアーチェは大きく肯くと作業を進めるために再度集中する。
「ただいま」
そうして少々の時が経った頃、新たな少女が現れた。
「おう、レヴィ」
「おかえりなさ~い」
「どうでしたか、レヴィ」
ディアーチェ、キリエ、シュテルがその少女、レヴィを迎え入れる。
「うん。かなり多くなってる。邪魔になりそうな欠片は処理してきたけど、できるだけ早く事を終わらせたいね」
「うむ。そろそろ最終セクターに入る。何もないが、少しだけ体を休めてろ」
「その方が良いでしょう。初回は
レヴィの報告に対しねぎらいの言葉をかける二人の好意に甘え、レヴィは休むことにしたのかお礼を言うと空中で横になり目をつむる。
「さて、作業スピードを上げろ。邪魔が入る前にファーストコンタクトは終わらせたい」
ディアーチェの言葉により、空間投影キーボードを叩く音がより早くなる。
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ディアーチェ達が沖合の上空で作業を続けている頃、レヴィの介入によりキリエ達を逃したはやては、 アースラへ行動不能になったアミタを預けた後、レヴィの飛び去って行った方向へ飛び続けていた。
「うん。そや。わかった。じゃぁうちとリインフォースはこのまま先行しとるから、クロノくんはなのはちゃん達を頼んだで」
そうしてアースラのクロノへの報告を終えると、はやては側にいるリインフォースの方へ顔を向ける。
「ってわけでリイン。うちらは先行してレヴィちゃん達の捜索続行や」
「イエス。マイスター」
リインフォースに確認して、共に魔力を込め移動速度を上げる。
そうして数分探し回っていると、アースラからレヴィの魔力反応を見つけたと連絡が入る。
「よし、この先やな。素直に移動しただけで助かったわ」
「しかし、なぜ彼女たちは……レヴィまで、一体なにをしようとしているのでしょうか」
移動しながらの世間話としてか、純粋に疑問に思ってなのか、リインフォースの言葉にはやては少し考える。
「せやなぁ……レヴィちゃんの最後の言葉、普通に考えるとフェイトちゃんやらに関係しとるんやないかと思うんやけど……」
「ですが、先ほど突然現れた主似の少女、ディアーチェと言いましたか、あの少女はまるでレヴィが仲間であることを当然かのようにふるまっていました」
「せやったなぁ。それにわたし、レヴィちゃんに攻撃、されたもんなぁ……」
はやてがレヴィに攻撃された事実を思い出し、落ち込む。そのはやてに対してリインフォースはなんと口に出せば良いかわからず慌てるが、はやては持ち前の切り替えの早さで、気を持ち直す。
「ま、それももっかい会って聞かなあかんな。なんや理由があるに決まっとる。あのフェイトちゃんの家族なんやから」
「そうですね、もう一度、今度は落ち着いて話を聞かなくてはなりませんね」
はやての口から出た名をリインフォースも思い出す。本当に心優しく、強い子であったと。
「さ! あとちょっとや! 気合入れて行くで!」
「はい」
気合を入れなおし、はやて達は飛ぶ。レヴィ達の目的を暴くために。
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「さて、気合入れてるところ悪いわね~。小鴉ちゃん。ここから先は進入禁止よ~」
レヴィの魔力に向かって移動を続けていたはやての達の前に進行方向を遮るようにキリエが現れる。
「お姉さん、それはわたしの言葉やで。今お姉さんには無断次元渡航の上公務執行妨害まで罪状まみれやで」
「まぁ怖い、でもちょっとだけお姉さんに付き合ってくれないかしら。ホントに、この先は危険なの。邪魔されたくないとかじゃないわ。100%善意からの言葉よ」
珍しく間延びのない真剣な口調のキリエにはやても何かを感じ取る。しかし、それでもはやては進まねばならない。
「申し訳ないですけど、それはできないですわ。私は友達のためにレヴィちゃんしばいて連れてかなアカン」
友達―フェイトとレヴィ―のために、レヴィを連れて行って事情を聴く。自分たちが手伝えるなら手伝って、その後は大人からお説教をしてもらえればお終いであるのだ。
「そ。それは残念。だけど、ありがとねお姉さんのお喋りに付き合ってもらって。もう
キリエがそう言った瞬間に周囲の空気が変わる。位相がズレる。
「これは!?」
「主、結界です」
はやてもその空気を感じとり、リインフォースはその原因を突き止める。それと全く同時にアースラからはやてに通信が入る。
『はやてちゃん!』
「エイミィさん。結界に閉じ込められちゃいましたわ」
『それはこっちも観測してるけどそうじゃないの!』
通信からはエイミィの焦った声が響く。そしてキリエは武器を構えているがはやてに対しては敵意がなく。あくまで注意はキリエの後ろ、はやての目的地であるレヴィ達が居るはずの場所へと注がれていた。
そんなキリエに対して向けていたはやての意識は、エイミィからもたらされた言葉でそらされる。
『特大の魔力反応がはやてちゃんの前! レヴィちゃんのいる場所から観測されてる!! ヤバいよ! 正確には
「は?」
キリエに向けていた意識がそらされる。いや、キリエに意識を向ける余裕すら無くなる。
「ナハトヴァール級、つまり暴走した
「違う!」
隣にいるリインフォースのつぶやきにはやては条件反射で叫んでいた。
「ナハトヴァールとリインフォースは違う! あれはリインフォースが望んでやった事やないやろ!」
「……そう、ですね。申し訳ありません、主はやて」
「さぁて、始まっちゃったし。本当に進まない方が良いわよ~。って言うかここからでもその理由わかるだろうし、それ見てからでも決めるのは遅くないんじゃない?」
キリエの言葉と視線につられはやて達もその先を見る。
そこには『闇』が広がっていた。
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「さぁ。キリエは小鴉の足止めに向かった。始めるぞ」
「やっとはじまるね」
「我ら悲願の叶う時」
キリエに
闇の書の真なる闇、砕けえぬ闇、永遠結晶エグザミア、魂魄の翼。ユーリを表す言葉は数多くあれど、マテリアル達にしてみれば最後のピースであり、家族であり、存在理由である。
「我らが盟主を呪縛から解き放ち」
ディアーチェは言いながら紫天の魔導書を起動する。
「私達の家族を取り戻す」
シュテルも言葉を紡ぎながら多数の魔導式を起動する。
「おはよう、
そしてレヴィもそう
三人の目の前には『闇』があった。
『
「なぜ……わたしを……めざめさせてしまったのですか……」
「我等のため、そして貴様のためよ」
独り言であったつぶやきにディアーチェが答える。
「私は……目覚めたくなんて、なかったのに……」
「安心してください。その苦しみは今日で終わりです」
シュテルは言いながら魔導式を走らせ続ける。攻撃のためではない。しかし、
「あぁ、もう抑えられない。私は『私』が抑えられない!」
細い腕でその華奢な身体を掻き抱く
「だから、ボク達が居るんだ」
その双腕は阻まれる。
2本の雷剣に。
一つの蒼雷に。
たった一人の少女に、受け止められる。
「ユーリ、君を助けるよ」
バルニフィカス・ツインブレイバーで魄翼の腕を受け止めながら、
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スピリットフレアによって形造られた巨腕と蒼雷によって形作られた双剣が交差する。
魔力に物を言わせた圧倒的な出力と、魔力に物を言わせた圧倒的なスピード。
その対決では、一見、スピード――レヴィが有利に思えた。
――全然、攻撃が通らない事を除けば、ね……。
レヴィはその素早さによりあらゆる攻撃を回避し、受け流しながら攻撃を加えていた。
しかし、その攻撃もすべてが無意味であった。
対U-D戦を想定して無理いって習得させてもらった御神流。
その技の中に「徹」と言われるものがある。
攻撃の衝撃を表面ではなく内部まで「徹」し、ダメージを与えるという技術。武術などでは「裏当て」「遠当て」などと呼ばれる技である。
これを魔導師戦に用いた場合、とても凶悪な技になる。
なにせ表面、バリアジャケットを素通りし、直接本人にダメージを与える事ができるのだから。つまりバリアジャケットに始まるバリア系統の魔法を、全て無効化できると言う事になる。
そしてこれは、
しかし、それを自由に使えればここまでレヴィも苦労はしない。それが自由に使えないからこそ、ここまで相手にダメージと言うダメージを与えられずにいた。
御神流は魔力が無い世界の戦闘技術である。それすなわち、使用者が
そしてそもそも武術と言うのは地に脚がついている状況を想定する動きがほとんどであり、少ない動きで最大の威力を発揮する発勁も、踏込によって生まれた力を、身体を伝い伝達する事が重要である。
つまり、人間の近接攻撃と言うのはすべからく地に足がついている事を前提にされている事がほとんどなのだ。
これはミッドでも行われる格闘大会を見ればわかる通り、格闘大会では空戦魔導師は出てこない。それは空を飛んでいては、満足な打撃が放てないからである。
故に魔導師の花型の空戦魔導師は射撃系がほとんどであり、フェイトのように空戦で近接攻撃の威力を増したければ、遠心力を利用する大振りな動きになりがちである。
これは、シグナムやヴィータの空における戦闘方法を観察すれば、ミッドもベルカも関係ないことがわかる。
故に「徹」をするためには地に足を付けなければ満足に扱えない。しかしここは上空。降下しても海があるだけで地面などない。
ならばどうするか、簡単な事である。
自分の足場を魔法で編み出し、それを踏み込み、技を放てばよい。
しかしそれをするにはレヴィの躯体は相性が悪かった。
元来細かい魔力操作などを行う事が想定されていない
躯体の素の性能は高いし、魔力の出力も大魔法を扱うマテリアル―Dと同程度かそれ以上に高い。
単純故に強い。それがマテリアル―Lのコンセプトであり、強みである。
しかしそれゆえに、マテリアルーLは「技」との相性が悪かった。
根本的に技術を扱うと言う繊細さと精密さに欠けていた。
マテリアル―Lであるレヴィだが、時間があればどうにかできた。ヴォルケンリッターと違い、「成長」が可能なプログラムであるマテリアルズは、苦手な事でも熟練度を高める時間があればどうとでもなった。
特に学習能力が極めて高いレヴィならなおさらだ。
しかし今回は時間が無かった。レヴィが躯体を得てからまだ1月もたっていない内にマテリアルズは起動し、ユーリは目覚めた。
あまりにも時間が足りなかった。
もしくは
故にレヴィはユーリの奮闘によって生まれる大きな隙を狙って、足場を作り「徹」を行う以外にダメージを与える事ができなかった。大きな隙と言っても現在のレヴィにとっては足場を作り「徹」の一撃を与えることが精一杯であり、そうして与えたダメージも莫大な魔力によって回復されてしまう。
たとえダメージを与えられても、回復を上回る高火力を高頻度で放てないのであれば
故に、この戦闘でレヴィが勝てる道理は無かった。
しかし、今回のレヴィの勝利条件は勝つことでは無い。時間を稼ぐことである。
今シュテルとディアーチェが全力で取りかかっている
それまでの時間が稼げればよかった。
「ぐぅ、あぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁあああああああああっ!!」
ユーリが咆哮と共に巨腕を拡散し、魄翼へと、純粋な魔力による炎の状態へと戻す。
そして、自身の周りを飛び回る、鬱陶しい
「っぅ!」
流石の超スピードでも全方位に放たれた衝撃は避けようがなく、レヴィは防御魔法を展開しながらも、それごと吹き飛ばされ強制的に距離をとらされる。
速度が速く攻撃が当たらない相手に攻撃を当てるにはどうすればよいのか。方法はいくつかあるだろう。
一つは相手を上回る速度を出すこと。
二つは相手の攻撃の瞬間にカウンターを入れること。
三つは相手の動きを止めること。
U-Dが選んだ方法はそのどれでもなく四つ目。
「これは、ヤバいでしょ!?」
無限の魔力によるごり押しの極致。避ける隙間のない魔力によって作られた壁。それが高速で迫ってくる。
誘導は無い。そんなものは必要ない。
ただ早く、ただ広く、ただ強力に。
必ず殺す。その意思を感じられる暴力の極致。
まるで彼の大魔王様のごとき暴力にあやかり名を借り名づけるのなら。
その圧倒的な災厄の壁に対抗するためにとっさに選んだそれは、自身が習得し改良し編み出した最も信頼のおける『強化魔法』。
「神、速!」
思考速度を強化する――。
反応速度を強化する――。
身体速度を強化する――。
自身のあらゆる性能を底上げする強化魔法の極致。もう一つの暴力の化身。
今までの速度をはるかに凌駕する速度で動く。
今まで見せなかった速度は流石に計算に入れられていないのか、カラミティウォールが迫る速度を大きく上回り、迂回する形で回避する。
その速度にU-Dが慣れる前に近づき、一撃を加える。
――魔力により地面を生成! 速度を殺すために強く踏み抜き生まれたエネルギーを、脚、腰、胴、肩、腕、それらを連動させ剣先へと伝達!
レヴィの必殺の意思に連動してバルニフィカスが変形する。奥手その2。この日のために
未来のフェイトの用いるバルディッシュのリミットブレイク、ライオットザンバーを参考に御神流を使いこなすためにチューンナップしたフォーム。
元来大味を好む
ディオスブレイバーに変形したバルディッシュを両手で握りしめ、同時に作成した足場を強く踏みしめる。
神速によって生み出された速度を一瞬で0にするほどの強力な制動力によって生まれたエネルギーを、螺旋のように身体を伝達させる。
武術というものは突き詰めればどこも似たような技術にたどり着く。
レヴィの行った力を伝達させる技術は、古代ベルカのとある流派の極致に瓜二つであった。
そうして伝えられた力、強化された
刺突。それは、剣の基本動作の中で最も避けにくく、最も殺傷力の高い動作。
「奥義之参……『射抜』!」
踏み込みによって生み出されたエネルギーを右腕に伝達させ突き出す。
そして剣先がU-Dのバリアフィールドに接触する瞬間、その衝撃を
神速を使い体感時間が加速した今のレヴィであれば、御神流の奥義と基礎技術の「徹」を同時に行う事も可能となっていた。
「っガぁッ」
強力な一撃が
しかしレヴィは止まらない。
たった一度の単純な突きであればわざわざ奥義などとは言わない。
自分の生み出した疑似的な地面を強く踏みしめながら足をひねる。
脚を伝う――。
腰を伝う――。
胴を伝う――。
身体の捻りと共に、突き出した右腕を後ろに戻しながら左腕を突き出す。
肩を伝う――。
腕を伝う――。
最小の動作で生み出されたエネルギーが、身体を伝うことで最大のエネルギーへと増幅され、放たれる。
御神流奥義之参・『射抜』。
それは最速の突きを放つ超高速連続突き。突きを行った衝撃が抜け切る前にもう片方の小太刀で二撃目を放ち、二撃目と同時に一撃目を引くことで連続での攻撃が可能の、
レヴィによって一撃が唯人であれば必殺の威力を持つ刺突が連続で放たれる。
三度目が放たれる――。
四度目が放たれる――。
五度目が放たれる――。
六度目が放たれる――。
七度目が放たれる――。
八度目が放たれる――。
「るぁあああああああぁぁぁああぁぁあぁぁぁっ!!!!!」
突きが連続で炸裂する音は、通常の時間に過ごす者からしたらまるでマシンガンの如し。
一瞬の隙を狙い、最大のダメージを叩きだす。
普通であればすでに決着はついていた。
相手はまるでマシンガンに撃たれたかのように、ハチの巣になり無残な死体を晒しているはずだった。
しかし相手は
原作において、未来からの迷い人を含め約20人の一線級魔導師が束になってやっと
その力は伊達ではなかった。
そんな擬音が聞こえる程の強い衝撃がレヴィのいた空間を薙ぐ。
身体への痛みを、衝撃をすべて無視して、スピリットフレアによって形作られた巨腕がレヴィのいた空間を薙ぎ払う。
「っはぁ、はぁっ」
神速を維持したまま射抜による連続攻撃を行っていたレヴィは、死角からの攻撃すら見切って避けると同時に少しばかし距離を取った。
神速の世界にいたレヴィにとって死角外であろうと認識できていれば通常より遅い攻撃であるため、避けること自体は造作もないことであった。
神速を維持し続け高速での連続突き、そして
従来の身体強化を凌駕する圧倒的な強化率によって生み出される速度。その速度に認識を追いつかせるために思考速度、反応速度など頭からつま先までのあらゆる部分、あらゆる性能を強化する『強化魔法・神速』は本来長時間使い続ける魔法ではなく、使った時は勝負を決める時である事が理想だった。
――自分以上の相手に対して神速を使うのは、大変なんだなぁ……。
まだ神速の段階は一段階。重ね掛けをしていない状態でこの疲労。これも一重にレヴィの経験不足、
予想以上の疲労に一周回って頭は冷静であった、というかマルチタスクの一部が壊れたのか変な感想を抱いていた。
たった一人の魔導師に予想以上のダメージを与えられたからか、
ユーリは体を掻き抱き、内側から溢れ出る衝動を必死にとどめようとしているが、その意思に反しエグザミアが出力を上げているのか、ユーリの体表に
「マテリアル―L……その力なら……。でもダメ、まだ、
魔力の供給が増えたのか、魄翼の腕が一回り巨大になる。与えたはずのダメージが即座に回復していく。
――こいつは、ジリ貧だなぁ……。
個人としては大量の魔力があれど、相手は無限の魔力製造機の持ち主。有限と無限。その差は歴然としていた。
「(シュテるん! 王様! まだ時間かかりそう!?)」
振るわれる巨腕。逃げ場をふさぐようにばら撒かれる魔力弾を回避しながらレヴィは
「(すまんがもうしばし耐えてくれ!)」
「(現在解析率70%を突破しました。流れ弾の処理もしつつですので、予想より時間がかかってます。申し訳ありませんが、今しばらく耐えて下さい!)」
「(あーダメダメ! 解析と念話と流れ弾処理とか王様ツライ! アーッ! ユーリの魔力弾しゅごいのぉぉおおぉぉおっ強すぎるのぉぉぉおおぉぉ)」
「(王が頭おかしくなってるので念話終了します!)」
手助けは求めていなかったが、あちらはあちらで中々大変らしいと言うことだけはわかった。あの自分のキャラにこだわるディアーチェが、変な事を念話してくるくらいには大変らしい。
「もう、私にカマワナイデ!」
したくもない破壊、行いたくない暴力を振るいながら
「悪いけど、もう少しだけボクと付き合ってもらうよ!」
レヴィはユーリにそう語りかけながら射撃攻撃はせずに高速で飛び続ける。
射撃攻撃は魔力の無駄遣いだから行わない。しかし
あと少し、もう少し耐えるだけでこちらの反撃の手筈は整う。
「レヴィっ!!!」
不意の邪魔が入らなければ。
「!?」
聞き知った声、この場では聞きたくなかった声を聞きレヴィの動きが一瞬止まる。
そして
戦闘空域に急に表れた
U-Dの反応、それはすなわち、破壊行為となって
「フェイトォ!!!」
神速を、極限の神速を発動する。
神速の重ね掛けを行い、驚異的なスピードを得てレヴィは飛ぶ。
それでも、レヴィしか見えていなかった、レヴィ以外のすべてが意識の外にあった
U-Dの暴虐から庇うことしかできなかった。
「っがぁっ」
激痛によって出たうめき声と共に血飛沫が舞う。
レヴィの腹を
スピリットフレアによって形作られたそれは、レヴィに燃えるような熱さを覚えさせる。いや、実際にその杭は燃えている。なにせスピリット
「れ、レヴィ……」
周囲が見えていなかった、レヴィしか見えていなかったフェイトの視界に、急に自分の目の前にレヴィが現れたかと思うと、自分を庇い貫かれたレヴィが映る。
「あ、ご、ごめんなさい…。わたし……ちがうの……」
そのあまりにもあまりな光景に錯乱するフェイトを、レヴィは杭から無理やり脱出すると弱弱しく抱きしめる。
「フェイトが無事で、よかったよ――」
「あ、あぁ」
『あぁああぁぁぁあああぁぁっ!』
絶望の空に複数の叫び声が響く。
一人は自分の過失で最愛の家族に大けがをさせてしまったフェイト。
もう一人は自分の意思ではなくとも、自分の家族を貫いてしまったユーリ。
「私は、わたしはぁっ!」
そう叫びながらユーリは己の頭を抱えると転移魔法でその場から姿を消す。
そして絶叫を上げた最後の一人は――。
「フェイト、テスタロッサァァアアアァァァアアアアァァァッ!!!」
絶望の光景の元凶に、恨みの言葉を叩きつけた――――。
ってなわけでやっと主人公最強タグ回収。
ん? 最強?
……ふ、普通の敵相手なら最強だから(震え声)
フェイトちゃんが少々アレなことになってるのはしょうがないのだ。
レヴィが強すぎてフェイトちゃんに足手まといになってもらわないと話が盛り上がらないのだ……すまない……作者の力不足ですまない……。
レヴィから独立すると決めてもそんな一月で人は変わらないのだ。フェイトちゃんもまだ産まれてから5年くらいなんですよ!
許してあげてくださいよ!