それと、切の良い所で投稿していくので長さはまちまち。この位が基本だと思います。
私が母さんに言われて検査をした後、目を覚ますと急に声が聞こえてきた。
自分の声に似ているけど、どこか違う。そんな声。
誰かいないか辺りを見回してみても私以外誰もいない。
そんな中ふと目に入った鏡を見つめると、私の目の色が変わっていた。
右目が青色になっていたのだ。
――なんで?
どうして? そんな思いが胸を渦巻いているなか、今まで聞こえていた声が急に私の名前を呼んだ。
『まさか、フェイト?』
「っ!? なんで私の名前を? 誰? どこに居るの?」
叫んでも、答えは返ってこない。なんで私の名前を?
いや、私の名前はアリ……、違う。私はフェイト。フェイト・テスタロッサ。母さんはプレシア・テスタロッサ。私は母さんの娘、フェイト。
――すこし、混乱しているんだ。
そうだ、そうに違いない。この声も幻聴だ。
そう、自己完結しようとしていたら、また声が聞こえた。
『ねぇ、フェイト。落ち着いて聞いてほしいんだ。』
どこか、落ち込んだような、無理やり冷静になろうとしているような、そんな声が聞こえた。
その声の説明を私は黙って聞き続けた。
その声の説明によると、その声は私に憑依してしまった誰からしい。
基本的に体の主導権は私にあるようで、できれば自分の存在を認めてもらいたい。そのような、内容だった。
「う、うん。よくわからないけど。わかった。良いよ。」
『良いの? 自分で言っておいてなんだけど、僕って凄く怪しいよ?』
「うん。だいじょうぶ。なんだか悪い人(?)じゃない気がするから」
それに、昔に比べて母さんが構ってくれなくなったから、一人で寂しかったし。
『そっか。ありがとう、フェイト』
「どういたしまして。」
お礼を言うのは私の方かも、なんて思ってたり。
「あ、そうだ」
『どうしたの?』
「あなたの名前を教えて? なんて呼べばいいの?」
『名前……』
「うん。名前がないと、呼び辛いよ。いつまでもあなたなんて呼ぶのも変だし」
『そうだな』
そう言うとしばらく考え込んでしまったのか声が聞こえなくなった。
その間、私は暇になったので、色が変わってしまった左目のことを考えていた。
――どうしよう。母さん、心配するかな……。
『よし! 決まった』
ボーっとしていたら決まったようで、声が聞こえた。
「決まったの? なんて名前?」
『僕、いやこの際だ、“ボク”にしよう。』
どこが変わったのかはよくわからないけど、きっと本人の中では何か変わったんだろうな。
『ボクの名前はレヴィ。レヴィって呼んで』
「レヴィ。……レヴィ。うん。わかったこれからよろしくね。レヴィ」
『うん。よろしく、フェイト』
これが、私がこれからずっと一緒に過ごしていく、一番大切で姉妹以上の関係を築く事になる人、レヴィ・テスタロッサとの出会い。
*
やぁ。どうもみなさん。名無し改めレヴィだ。
フェイトに受け入れてもらって、自分の名前を考えた後はプレシアに呼ばれるまで色々試していた。
その事でわかったことがいくつか。
1つ、体の主導権はボクの浸食度にて決まる。
これは、ボクが完全に切り離されて、寝ている状態になっているのを浸食率0%だとすると、20~40%位だと、体の主導権はフェイトにあるが、僕も感覚を共有している状態。
この状態だと、簡単な魔法ぐらいならボクが個別で使える事が判明した。
それと同時にわかったのだが、ボクの魔力光は瞳の色と同じサファイアブルー。原作ゲームのレヴィ・ザ・スラッシャーのアクアブルーを鮮やかに、濃くしたような色で、ボクが発動した魔法はボクの魔力光の色になる。すなわち、ボクの魔力で作られている。って事になるみたいだ。
50%を超えると、初めのようなお互いが一つの体を共有する状態。この時は瞳の色が赤と青のオッドアイになる。
魔法を使う場合は、お互いが一人ずつ魔法を使う事もできるし、二人で一つの魔法を発動することもできる。その場合の魔力光は青と黄色を混ぜたようなマーブル色になる。魔力もお互いの魔力が合算されるらしく、戦闘と言う面では多分一番強いと思うがこの状態ではお互いが息を合わせないと上手くいかない。
正確に言うと、身体の主導権のメインはフェイトだが、右半身ならボクでも自由に動かせる。わかる通りお互いの息があっていないと右半身と左半身がバラバラに動いてしまうのだ。そんな状態では戦うどころか、まともに動く事すらできなかった。
浸食率が80%に近くなると、今度はボクとフェイトが逆転する。ボクが体を使い、フェイトはそれを見る、って言うような感じだ。瞳の色も両目が青色になる。この状態だと神様の特典である身体能力の強化が適用されるらしく、身体能力が向上した。
最後に、浸食率が100%に到達すると、フェイトの意識が無くなって体の主導権が完全にボクに移る。もしもフェイトが気絶した等の状態になった場合、ノータイムでこの状態になるので、墜落とか誘拐とかの危険性が無くなる筈。
なぜわかるかって? なんとなく、としか言いようがない。多分そうなんだろうって感じ。
これは今後訓練をする上で確かめなくちゃならないだろう。
さて、そんなことを確認していると、この部屋にプレシアがやってきた。
今の浸食率は約20%弱。フェイト以外がボクの存在に気付くことは無いはずだ。
「起きたのね、フェイト」
台に腰かけているフェイトを見下ろし、声をかけるプレシア。
生で見ると凄い威圧感だ。
「母さん」
「フェイト、今日はもう良いわ。部屋に帰って自習していなさい」
「わかったよ。母さん」
フェイトの返事を聞いたか聞かないかのタイミングで部屋を出て行ってしまうプレシア。
――あれが、フェイトのお母さん、か。
知ってはいたけど、本当にフェイトに良い感情を持っていないようだ。
『あれがフェイトのお母さん?』
「うん。そうだよ。プレシア母さん」
フェイトの部屋に帰りながらフェイトと雑談をする。
『なんか、怖い人だったね』
「そんなこと無いよ。今は忙しいみたいだけど、優しい人だよ」
フェイトの話を聞くに本当にプレシアを信頼しているみたいだ。
できる事なら今すぐアリシアを蘇生してフェイトに会わせて幸せな家庭を築いてもらいたい。
でも、その過程でフェイトが自分はクローンだと知ってしまう。そうなったとき、フェイトが心を保てるよう、ボクの話を信じてくれるように関係を築かなくちゃいけない。それに――
――まだ、ボクはプレシアに歯が立たない。
そうだ、ボクはまだまだ未熟だ。フェイトが、ボクが魔導師としてある程度の実力を身に付けなければ、プレシアと話す事自体が不可能に近い。
『フェイト。魔法の勉強、頑張ろうね!』
なるべく明るく言い放つ。フェイトが気楽でいられるように、天真爛漫に。
「ふふ、どうしたの急に」
『ボク魔法の勉強興味あるんだー。フェイト教えてよ!』
「もう、しょうがないなぁレヴィは。良いよ、一緒に勉強しよう」
『やったー!』
君にボクのすべてを持って幸せを。
待っていてフェイト。必ずボクが、雷刃―レヴィ―が君の不幸を切り裂いてあげるから。