転生×憑依=それはプロローグ
やぁどうも、これを見ていると言う事は少しでもこの話に興味を持って貰えたと思って話をしよう。
これはボク、レヴィ・テスタロッサが生まれてからの話。
“僕”が“ボク”になった時に出会った大切な人、フェイトとのお話。
時を遡ってお話ししよう。
“僕”が“ボク”になってからの話を。
魔法少女リリカルなのはL×F=
始まります。
*
気が付くと真っ白な空間だった。まるで病院の様に白い部屋、その部屋のベッドに僕は寝ていた。
「あれ? 僕は……」
何も思い出せなかった。自分の名前、なぜここに居るのか等。
それでもしばらく記憶を掘り返していると自分がどのような人物だったのかは思い出せてきた。
世間一般で言う『オタク』と呼べる人種であること。特に『魔法少女リリカルなのは』というアニメを中心としたメディアミックスにはまり込んでいたこと。
その中でも『フェイト・テスタロッサ』と言うキャラに心底惚れ込んでいたこと。
そんな事を思い出しているとこの部屋に誰かが入ってきた。
「おぉ。もう目覚めているのか」
その人は、よくわからない。
容姿が全く印象に残っていないのだ。
いや、残っていないのではなく理解できないのかもしれない。
容姿、服装、何もかもが頭の中に情報として入ってこない。
けれども“その人”との会話内容だけは鮮明に覚えている。
「どうじゃ? 調子は」
「……自分の名前が思い出せない以外は特には」
「ふむふむ、そうかそうか」
「あの、僕はいったいどうしてここに?」
僕がその人物に質問すると、すこし間をおいてから“その人”は答えた。
「単刀直入に言うと死んだからじゃ」
「死んだ、ですか」
「なんじゃ、驚かんのか」
驚くも何も、実感が無いので驚きようがない。
「ふむ、実感が無いか。それも仕方ないのかもな」
口に出してはいなかった筈の思いを読み取ったかのように“その人”は言った。
「そち、ちと転生して見たくはないか?」
まるで今までの世間話の延長線上とでもいうかのように自然に出された質問。
「転生、ですか」
「うむ、そうじゃ。貴様も知っている輪廻転生の転生じゃ」
まるで二次創作のようだ。
オタクである僕は当然のごとく二次創作も読み漁っていた。
『もしも』の世界を見る事ができるのがとても心が躍るのだ。
「そうじゃな、そちの思う二次創作とやらと同じような転生じゃがな」
「なぜ、僕なのです?」
二次創作だったら、神様のミスだか何だかで死んでしまったお詫びとして、なのだが。
「そうじゃのう、一番の理由は、儂も最近の流行に乗ってみたかったから、じゃな」
「流行、ですか……」
「うむそうじゃ。最近儂の周りで暇つぶしに転生させることが多くての。これが想像以上に楽しいらしいのじゃ。なので、儂もやって見たくなってな」
完全に自己満足の為らしい。いや、ミスで殺されても嫌だからまぁ悪くは無いんだけど。
「それでどうじゃ? おぬし転生してみんか?」
“その人”が再度質問してくる。
「もし、断ったらどうするんですか?」
「別にどうもせぬ。おぬしはすでに魂のクリーンニングが半ば終わっているからの。完全にクリーンニングした後、正当な転生をしてもらう」
なるほど、じゃぁ僕が自分のことを朧気にしか思い出せないのは、その『魂のクリーンニング』をされたからか。
そして、別に僕で無くとも構わない、と。
「それで、どうする? 転生して二次創作の主人公になるか? それとも輪廻転生の輪に戻り元の世界に行くか?」
3度目になる問いかけ。
はっきり言ってしまえば、転生は興味がある。今まで読んできた話の出来事が自分に降りかかってきているのだ。それでも、懸念事項はある。
「あの、一つ良いですか?」
「なんじゃ?」
「どの世界に転生するのか、教えてもらえますか?」
そう、転生先の世界だ。
たとえ転生しても直ぐに死んでしまうような危険な場所だったら転生したくはない。
「そうじゃの。『魔法少女リリカルなのは』と言う世界が人気らしいからの、そこにしようかと思っておる」
『魔法少女リリカルなのは』
前述したが、僕の大好きな話だ。世界滅亡のタイミングが二、三回あるがそれでも、僕の大好きなキャラが居る世界というのは重要なファクターである。
「どうじゃ? 行く気になったか?」
「はい。是非」
「おぉ! そうかそうか」
僕の答えに満足したのか嬉しそうな声を上げる“その人”。
名前も教えてもらってないし、姿も分からないし、もう“その人”が固有名詞みたいになってしまっている。
「それでは、何か願い事はあるか? 叶える数は3~5個ぐらいが多いらしいからの、その位であれば、できる限りは叶えてやろう」
3~5個か、確かにその位が多い気はするが、ずいぶんアバウトだな。
「すみません。少し考えるので、待ってもらえますか?」
「良いとも良いとも。存分に悩み考えるがよい」
言質もとったので存分に悩むことにする。
~数分後~
数分間悩んだが、大体決まった。
「決まったようじゃな」
「はい。まず1つ目は、アリシア・テスタロッサ、プレシア・テスタロッサ、夜天の書の管制人格、リインフォースを救える方法をください。正確には、アリシアの蘇生、プレシアの病の治癒と若返り、リインフォースは消えなくても済むように、辺りでしょうか」
「うむ。では、そのタイミングになれば儂に願うと良い。そうすればそれを行ってやろう」
おぉ、助かった。もしかしたら願い3個分とか言われるかとも思ったが。
「2つ目はできるだけ高い魔力と魔法適性を」
「うむ。魔力は10歳頃でS+、20歳頃にSSS位で良いかの?」
「はい。それで大丈夫です」
「魔法適性はサービスじゃ。どのような魔法でも習得を頑張れば使いこなせるようにしよう」
「ありがとうございます」
これでリリなのでは十分なチートになる筈。
「これで2つじゃな。あとはどうする?」
「はい。それでは、習熟速度のアップを」
「どういう事じゃ?」
「何かを覚えたり、できるようになったりするのが他人より早いように。『めだかボックス』に出てくる『黒神めだか』の《
「うむ。了解した」
さて、キャラを救うのが3つ扱いされたようにここまでは考えていたが、あと二つはどうするか。
「残り2つじゃな。どうする?」
「では、4つ目は、身体能力の強化を」
「うむ。それはわかりやすいな。任せておくがよい」
「最後は、僕がなるべくフェイトの側に居られるようにしてください」
「ふむ、赤い糸的な感じで良いのか?」
「別に、恋人になりたいわけではないですけど、フェイトを支えるような位置には居たいです」
「わかった。それでは確認するぞ。1、アリシア、プレシア、リインフォースの救済。2、高い魔力と魔法適性。3、習熟速度の向上。4、身体能力の向上。5、フェイト・テスタロッサとの縁。これで良いな」
「はい。大丈夫です」
「それでは。良き第二の人生を」
「ありがとうございます」
“その人”に挨拶すると、僕の意識は薄れていった。
*
いったか。さて、儂の行う初めての転生じゃからな。なるべく気合を入れて事に挑もう。何事も本気でやった方が楽しいし、嬉しいからの。
「よう。第245号神。最近調子どうだ?」
儂が転生した者に、能力を与えてやろうとした所に現れたのは儂の同僚である。第244号神。
「うむ。そちが先日言っていた『転生』を儂もやろうと思ってな。今見送った所じゃ」
「ほう! そうかいそうかい。それで? どんな能力をつけてやったんだ?」
「うむ、それはじゃな」
儂が能力の説明をすると、244はつまらなそうな顔をして言いおった。
「なんだ、そんなにチートじゃねーな。それにニコポ、やナデポも無しか」
「そうなのか?」
奴は十分チートだと言っておったがの。
「まぁ、いいや、それで? なにに悩んでいるんだ?」
「うむ、それがの、3つ目と5つ目の願いをどうやって叶えてやろうかと思ってな」
習熟速度の向上、と言われても儂ら神にはピンとこない。
全知全能、とは言わなくともそれに近いことはできる儂らじゃ。何かをするために努力をして身に着ける、と言う事とは縁がない。
「なるほど、だったら、こうすりゃぁ良いんじゃねぇか?」
「なるほど。そうか」
初心者である儂に244は丁寧に教えてくれる。
やはり持つべきものは心優しき同僚じゃな。
「ようし、これで少しは面白くなるだろ」
「うむ、ありがたい」
これで儂も『転生者ユーザー』の仲間入りじゃな。
*
「――――――っ」
目に刺さるような光で目を覚ます。
光になれない目は未だ脳に情報を伝えない。
しかしそれも数秒の間だけ。次第に慣れてくる
目に入ったのは手術室のようなライト。
次に感じるのは、背中に感じる硬い質感。
これまた手術台のような感覚だ。
『あれ? ここどこだ?』
そう口に出して言ってみるが、どこかおかしい。
「あれ? 誰かいるの?」
そのおかしさを突き止める前にすぐそばから女の子の声が聞こえる。
見回してみても誰もいない。
そこは無機質な、まさに手術室と言えるような部屋だった。
そこに居るのは僕だけ。なのに、
「気のせいかな?」
声が聞こえる。すぐ側から、女の子の声が。
『誰かいるの?』
もう一度声を出す。しかしまたもや違和感。声が聞こえているが、なにか違うような。そんな漠然とした違和感。
「っ! まただ。誰!? どこに居るの!?」
焦ったような少女の声。それもまたすぐ側から。
僕は辺りを見回す。すると、鏡が目に入る。
その鏡に映ったのは、少女だった。
金糸の様に煌めく艶やかな金髪。あどけない可愛らしい顔。宝石のように綺麗で光を吸い取るルビーレッドの左目にサファイアブルーの右目。
『あれ? 僕、女の子?』
「あれ? 私の目、こんな色だったっけ?」
ほぼ同時に呟く僕と少女。
それで僕は気づいてしまった、違和感の正体に。
鏡の中の少女が喋ったのは、『少女の言葉』だった。
――まさかまさかまさかまさか
頭に浮かぶのは一つの仮説。
よく鏡を見てみるとそこには見知ったような顔。
目の色は違くとも、そこに映っているのは画面の中で見た少女、「フェイト・テスタロッサ」によく似ていた。
『まさか、フェイト?』
もう一度呟いてみても鏡の中の少女の口は動かない。
「っ!? なんで私の名前を? 誰? どこに居るの?」
やっぱりそうだ。
どうやら僕は、フェイト・テスタロッサに憑依してしまったようだ。