デジモンアドベンチャー 選ばれてない子供   作:noppera

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今回は短めです。
ほんとは今日の投稿は取りやめてもう少し長く書こうとも思いましたが、ビッグニュースが入ってきたのでいてもたってもいられず投稿しました。

もうご存知の方も多いと思いますが、何と2015年の春にデジモンアドベンチャーの新シリーズの制作が決定したんですよ!
デジモンアドベンチャー15th Anniversary Eventの最後の最後での衝撃発表でした。ニコ生でリアルタイムで見たときは「えええええええええ!!?」って叫んでましたww
とりあえず舞台の時間が太一が17歳の高校生になったあたりということしかわかってませんが、非常に、非常に楽しみですね!



第38話 ダークエリアからの帰還

 

「……モウスグ研究所ニ到着シマス」

 

「そうか。なんだか懐かしい気がするな、3日しかたってないはずなのに」

 

「トハイエ、色々ナ事ガアリマシタ」

 

「そうだな……でも、覚悟してたよりはだいぶ早めに事が済んだ。明日の朝一からこのブツを詳しく調べよう」

 

 ダークエリアから無事に戻った信人は、メカノリモンに乗って寄り道せずに研究所へと戻るために夜の砂漠を飛んでいる最中であった。

 もちろん、今回の収穫となるベルゼブモンの銃弾が入った箱を運びながらだ。

 アスタモン達の襲撃を何とか凌ぎ、ピエモンの影を警戒しながら約3日もかけて掘り出した大切なものなのでがっちりと抱え込まれている。

 

「……到着デス」

 

「おぉ、鉄塔が懐かしく思える」

 

 砂漠の向こう側に、目印となる月明かりに照らされた鉄塔と崩壊した客船が見えてきた。

 信人の逸る気持ちはメカノリモンのエンジンへと操縦席を通って伝わり、メカノリモンはスピードを増して研究所へと向かって行く。

 そして研究所の入り口上空で一度ホバリングして、その体勢のままゆっくりと入り口前へと降り立った。

 

「帰ってきたな……予定よりもはやかったし、ストライクドラモン達は驚くかもな」

 

「……マスター、アチラカラ何カガ」

 

 信人がいよいよ研究所へと入ろうとしたところで、メカノリモンが何かを察知した。

 そちらの方向に信人が顔を向けてみると、人型の影がこちらに走ってきているのが見えて、さらに手まで振っているのが見えた。

 人型ならストライクドラモンかもしれないと思った信人だが、手を振りながら近づいてくるような性格ではなかったと思い直し、近づいてくるのはここに滞在しているはずのウィッチモンだと当たりをつけていた。

 なのだが……

 

「おーい、信人! 会いたかったぜ~!」

 

「……何だあれ?」

「…………」

 

 信人の予想に反して、砂漠を走ってきた影は懐かしのストライクドラモン(?)であった。

 手を振るだけにあきたらず、鉄仮面を被った無骨な顔に似合わない満面の笑みまで浮かべながら、不気味なほどさわやかな雰囲気を出しながらストライクドラモン(?)が近づいてくる。

 呆けた信人とメカノリモンをよそに、そのストライクドラモン(?)はどんどん近寄ってくる。

 いつものストライクドラモンがとるような態度ではなかったため、信人が何かあったのかと本気で心配し始めた時、別の方向からものすごい砂煙をあげながら何かが近づいてくるのを信人は見た。

 その何かはストライクドラモン(?)にまっすぐと向かってきている。

 そしてストライクドラモン(?)が信人の目の前まで迫ってきたとき……

 

「何してんだお前ええええええ!!」

「ぐっほぉ!?」

 

 何者かがストライクドラモン(?)の横っ腹に盛大に飛び蹴りをかまし、モロに受けたストライクドラモン(?)は苦悶の声を上げて大きく吹き飛ばされる。

 ただでさえ混乱していた信人はそれを回らない頭で眺める事しかできず、また信人は飛び蹴りを放った張本人を見てさらに混乱することになる。

 なんと飛び蹴りを放っていたのは、今目の前で吹っ飛ばされたはずのストライクドラモンだったからだ。

 

「え? ストライク、ドラモン?」

 

「あぁ、そうだよ」

 

「え!? じゃあさっきのは……」

 

 ストライクドラモン(?)が倒れているはずの方向に信人が目を向けると、そこには赤い服を纏った女性型デジモンがぐったりとした様子で倒れていた。

 体をピクピクと痙攣させていて、非常に大きなダメージを負ってしまっているようだ。

 

「あれ……ウィッチモンか?」

 

「そうだ。あいつ、俺の姿に化けてからかってたんだよ」

 

 実は今まで手を振って信人に近づいていたのはストライクドラモンに扮したウィッチモンだった。

 ウィッチモンはミケモンをこの研究所まで運んで来た後、ウィッチモンはストライクドラモン達と一緒に滞在することになった。

 滞在中はストライクドラモンの修行に協力したり何らかの研究をしていて過ごしていたが、たまに研究の成果を確認するためにちょっかいをかけたりしていた。

 今回もそのちょっかいの1つであり、たまたま夜空の散歩を楽しんでいたウィッチモンが帰ってきた信人達を一番最初に見つけ、研究成果の1つである変身魔法を使っていたずらを仕掛けていたのだ。

 それがストライクドラモンに見つかってしまい、結果はご覧の有様となった。

 

「そうだったのか……大丈夫か、あれ?」

 

「あいつ案外タフだから心配ねぇよ。組手中にあれ以上の打撃食らわせたこともあったし……一撃KOだったけど……」

 

「駄目じゃねぇか! メカノリモン、その荷物と一緒にウィッチモンを中に運んでやってくれ」

 

了解(ラジャー)

 

 メカノリモンは木箱で両腕が塞がっているので、ウィッチモンはその木箱の上に乗せられて運ばれることになり、一足先に研究所の中へと入って行った。

 

「はぁ、まったく……帰ってきて早々この騒ぎかよ」

 

「何かすまねぇな。それと……」

 

「ん?」

 

「……待ってたぜ」

 

「……あぁ、ただいま」

 

 ストライクドラモンが拳を突き出し、信人もそれに応えて小さな拳を軽く打ち合わせ、互いに小さく笑みを浮かべた。

 その光景は両者の信頼を形に表したような絵になり、その光景を見て笑顔になる者がもう1人いた。

 

「……仲がいい」

 

「げ!? 見てたのかよミケモン……」

 

「これなら、組手を放り出したのも頷ける」

 

 それは信人達の後方から近づいて来たのはミケモンだった。

 今の光景を見られたストライクドラモンは照れたように顔を背ける。

 ミケモンはつい先ほどまでストライクドラモンと組手を行っていて、ミケモンは組手を放り出して猛スピードで走って行ったストライクドラモンを追ってここに来ていた。

 

「久しぶりだな、ミケモン。こんな時間まで組手してるのか?」

 

「えぇ……私がここに来てからはずっと。あなたがいないと落ち着かないらしい」

 

「よ、余計なこと言うんじゃねぇ!」

 

 ストライクドラモンが凄んでもミケモンは涼しい顔をしており、進化しても力関係は変わっていないように見える。

 ストライクドラモンがヒートアップしそうになり、信人が両者の間に割って入る。

 

「まぁまぁ、そのくらいにしておけって……こっちは向こうで色々あって疲れてるから、俺はもう今日は休むからな。ストライクドラモンはどうする?」

 

「……俺も今日は休む。先に中に入ってるぜ」

 

 若干不貞腐れた様子でストライクドラモンは足早に研究所の中へと入っていき、外に残されたのはミケモンと信人だけになった。

 

「どうだった? あいつの進化した後の力は」

 

「……何もかも予想以上。あの体での戦いが慣れ始めてからは凄まじかった」

 

 ミケモンは信人が帰ってくるまでに何度もストライクドラモンと組み手をしていた。

 最初のほうこそミケモンはストライクドラモンを手玉に取っていたが、新しい姿での戦いに慣れ始めたストライクドラモンが次第にスペックで圧倒し始め、ついにミケモンから一本取ったこともあった。

 今はまだミケモンが大きく勝ち越しているものの、追いつく日もそう遠くないとミケモンは言う。

 

「……だからこそ惜しい。我を忘れるあの習性が……」

 

 ミケモンがストライクドラモンに抱いている唯一の不安がウイルス属性への異常な敵対心だった。

 頭に血の登らせて戦えば、せっかくミケモンから教えてもらった周りの状況を把握しながら戦うという事が難しくなる。

 実際、エテモンとストライクドラモンが戦った時は爪を壁にめり込ませてしまい隙をさらしたり、後ろから羽交い絞めにしようとするメカノリモンに気付かなかったという事があった。

 実力の高い狡猾なウイルスデジモンであれば、その時に生じる隙を決して逃すことはないだろうとミケモンは考えていた。

 

「やっぱりあれがネックか……」

 

「進化したばかりだから、次の進化まで時間が空くはず……あのままだと危ない場面があると、私は考えてる。克服できるならそれに越したことはない」

 

 信人達だけではなくミケモンもまたストライクドラモンの身を案じていた。

 それを感じた信人はさらに決意を固め、絶対に治療を成功させようと改めて思う。

 

「私は彼がどこまで強くなるか見てみたい。途中で倒れるようなことがあっては、指導した者の身のし納得できない」

 

「分かった。全力を尽くして、必ずどうにかする」

 

「……期待している。今日はもう遅いから、中で休みましょう」

 

「あぁ」

 

 ミケモンは信人に激励の言葉をかけた後、2人そろって研究所の中へと入って行き、とりあえず今日のところは休むことになった。

 

……………

………

……

 

 翌朝、信人は部屋の外から聞こえて来た言い争いで目を覚ました。

 

「か弱いあたしに向かってなんて蹴り放つのかしら、この野蛮竜!」

 

「お前が先に下らねぇことしただろうが! あれでも手加減してやったんだぞ!」

 

「たしかに丸1日寝込んだ時とはましだったけど、今回も十分やばかったわよ! あたしの耐久を舐めないでよね!」

 

「威張ることじゃねぇだろ!」

 

「……はぁ」

 

 どうやら昨日の事でウィッチモンとストライクドラモンが衝突しているようだ。

 ダークエリアから帰還して疲れていた信人はもう少し寝ていたかったが、あの喧嘩を放置しているわけにはいかないので渋々ベッドから抜け出して部屋の外に出る。

 研究所のメインコンソールのある部屋に入ると、そこにはこの研究所に滞在しているデジモン全員が揃っていた。

 

「この……あ、あら? 起こしちゃったかしら?」

 

「おかげでばっちり目が覚めたよ」

 

「うっ、すまん……」

 

 部屋に入って来た若干疲れが抜けきっていない信人を見たストライクドラモン達は、少し罪悪感を感じて言い争いを一旦やめる。

 

「……お前のせいだぞ」

 

「あら、元はと言えばあなたが……」

 

「……両方悪い」

 

「「…………」」

 

 その後の小声での責任のなすりつけをした両者だったが、ミケモンの冷めた一声で完全に収まった。

 

「オ疲レデアレバ、モウ一度オヤスミニナッテハ?」

 

「いや、いい。せっかく全員居るんだからだから話をするよ」

 

 信人は今まで研究所で留守番をしていたデジモン達に、ダークエリアでどのようなことがあったかを説明した。

 シスタモンブランとの出会いに始まり、ブラックルータパレスでの出来事、ベルスターモンとの交流など、濃い3日間のイベントを結構時間をかけて説明した。

 

「……で? これがストライクドラモンを元に戻すために必要なものなのかしら?」

 

「そうだ。このベルゼブモンの弾丸からウイルスデータを抽出して、徐々にストライクドラモンの体に馴染ませる」

 

「なるほどね……」

 

 話し終わった後、ウィッチモンが一番に質問をした。

 その興味の対象は信人が持ち帰ったベルゼブモンの弾丸に向けられ、それをどのように使うかも納得したようだ。

 

「……その手法はここのコンピュータのデータを見て決めたのよね?」

 

「あぁ。たまたまパスワードが……」

 

「今! 今すぐにこの中身を見せて頂戴!」

 

「うお!?」

 

 突然大声を上げたウィッチモンに信人はビクリと肩を震わせたが、そんなことお構いなしにウィッチモンは信人に大きく迫り、興奮した声でまくしたてる。

 

「ずっっっっっと気になってたのよこのコンピュータの中身! だって当然でしょ、あんな高度な結界が張ってあった場所のコンピュータなのよ! 研究者として気にならない方が狂ってるわ!」

 

「いや、ちょっと……」

 

「お願いよ! どんなお願いでも聞くからはやく見せて! はやくはやく……」

 

「だあああ! もう、分かったから! 見せるから落ち着け!」

 

「ほんと!? うふふふふ……中にどんなデータがあるのかしら、楽しみで仕方ないわぁ……うふふふ……」

 

「……大丈夫なのか?」

 

「いや……うん、大丈夫だ。多分……」

 

 結局信人はウィッチモンの勢いに完全に押し切られてしまい、メインコンピュータの中身を見せることを許してしまった。

 さっそくパスワードを入れてコンピュータを操作できるようにすると、ウィッチモンはコンソールに飛びついてディスプレイに釘づけとなった。

 とりあえず場が静かになったところで、今度はミケモンが疑問を投げかける。

 

「ピエモン……いや、ダークマスターズについてもっと情報はない?」

 

「今のところ、かなりの大勢力ってことくらいしか……一部がこの地上デジタルワールドで活動してるらしいけど、ミケモンに心当たりは?」

 

「……ない」

 

 ミケモンが気にしていたのはダークエリアで勢力を急速に拡大させているダークマスターズについてだった。

 地上に侵攻する可能性があると聞けば、気になるの当然だ。

 信人はとりあえずダークエリアでベルゼスターモンから聞いた情報のみを話し、原作知識からの情報は伏せていた。

 

「そのダークマスターズは選ばれし子供達が倒すべき敵?」

 

「……俺はそうだと考えてる。でも、今は歯が立たないとも思ってるから、今のところこのことは先輩達に伏せようと思う。今は太一先輩がいなくてまとまりがないし、余計な不安を与えることになると思う」

 

「太一……選ばれし子供達の1人ね。いなくなったの?」

 

「あ、話してなかったか。実は……」

 

 信人はミケモンにエテモン達と戦った時のことや、その後に起きた太一とアグモンの行方不明と自分たちが太一を探さずにこの研究所にやってきた理由も話した。

 この話を聞いたミケモンは難しい顔をしている。

 

「選ばれし子供達がその状態だとまずくないの?」

 

「差し迫った脅威はないし、大丈夫だと思う。太一先輩とアグモンだって、覚醒した紋章をもってるんだ。空間の歪みに飲み込まれても何とかなってるって信じてる」

 

「……そう。たしかに、ダークエリアからピエモンが出てくるまで時間が掛かりそう……無理に口出しするより、時間が解決してくれるのを待つのも悪くない」

 

「太一先輩達には伏せるけど、できるだけ多くのデジモン達に伝えたいと思ってる。方法はまだ未定だけどな」

 

「良い考えだと思う。事前に知っているかいないかは大きな違い。もしすると、地上で活動しているダークマスターズの手下も見つかるかもしれない」

 

「でも、今のところ最優先はストライクドラモンの治療だ。それについてはとかはその後に考えよう」

 

 ミケモンは信人の言葉に頷き、とりあえずダークマスターズについての話題はこれで終わりになった。

 

「話はこれくらいにして、朝飯にするか。研究はその後だな」

 

「……マスター、ウィッチモンガアノ様子デハ……」

 

「な、なんて資料と実験の多さなの……素晴らしい、素晴らしいわぁ! 全部読んでやるんだから……うふふふふふ……」

 

 ウィッチモンはミケモンと信人が話している間もコンピュータ内の資料に夢中であり、今も涎でも出さんばかりに口元を緩ませて資料を一心不乱に目を通している。

 無理やり引き剥がそうものなら全力で抵抗しそうだ。

 これではコンピュータを使う事は当分できそうにない。

 

「……今日は休もう」

 

「いいのかよ? 何なら俺が気絶させてもいいんだぜ」

 

「そんなことしたらまた喧嘩になるだろう。今すぐにでもっていうほどの切迫した状況でもないし、今日のところはいい」

 

「まぁ、信人がそれでいいならいいけどよ。ならミケモン、今日も組手を頼む」

 

「分かった。とことん付き合う」

 

「じゃあ俺は……メカノリモン、だいぶ汚れてるな」

 

「ソウデショウカ?」

 

 何をしようかと考えていた信人は、メカノリモンの機体に多くの汚れがあることに気が付いた。

 機体の隙間に砂礫が入り込んでいたり、泥が付いている部分もある。

 

「発掘作業もしてたし当然か……よし、今日はメカノリモンの掃除をしよう」

 

「アリガトウゴザイマス」

 

 こうしてそれぞれの行動を決めた後に、約1名を除いて各々食事の準備をすることになった。

 食事を済ませると、信人とメカノリモンは地下の整備場へ、ミケモンとストライクドラモンは外に砂漠へと向かい、部屋には不気味な笑みを浮かべるウィッチモンだけが残された。

 

 





メカノリモンの洗車やミケモンとストライクドラモンの組手まで書きたかったのですが、それは次の話にしようと思います。

それにしても、デジアドの続編かぁ……書き始めの時は無印で終わらせるつもりだったのにまさかこんなことになるなんて思ってもみなかったな……
感想批評をお待ちしております。

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