デジモンアドベンチャー 選ばれてない子供   作:noppera

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伏線は景気よくばら撒くもの

※表現を修正しました
誤 今は七大魔王デジモンと呼ばれるデジモン達が~
修 当時は七大魔王デジモンと呼ばれるデジモン達が~


第28話 研究所探索!見える光明

「つ、疲れた……」

 

「オ疲レ様デス」

 

 俺がコンピュータと格闘開始してから約30分、ずっとモニターとの睨み合いだったからすっげぇ疲れた……少し頭痛がする。

 結果としてはこのコンピュータの管理権限を奪取することに成功し、この施設の機械は動かせるようになった。

 ただ、結構な数の重要そうなファイルは削除されてしまったが……

 

「今日はもう休むのか?」

 

「……いや、せっかく突破できたし、少しデータを漁ってみる」

 

 俺はメカノリモンの中から出て行き、コンソールの前にある豪華な椅子に座った。

 ……油断してると寝てしまいそうになるほど心地がいい。

 まぁそれは置いといて、俺はコンソールを操作してまずどんなファイルが削除されたのか調べてみることにした。

 暫くしてファイルの名前は知ることができたが、中身の復元は不可能だった。

 そしてそのファイル名からも……

 

「1/0計画、X-Virus、キメラプラン、1/0-FF0*4-Dアップデートプラン、神人構想………よくわからん」

 

 Xウィルスくらいしか内容が予想ができなかった。

 デジタルワールドにあるからコンピュータウィルスだろうか?

 消されたファイルはまだまだたくさんあり、その中には日記と思われるものあったが、とりあえずこれは置いておくことにする。

 

「まぁ、消されたファイルより残ってるやつだろ」

 

 残されたデータはかなり膨大なものであり、一日やそこらですべての読み解けるものではなかった。

 だが、ざっと見る限りデジモンの生態についてまとめられたものが大半を占めていたので、やっぱりここは俺が睨んだ通りデジモンを研究していたようだ。

 詳しくデータを見るのは明日にするとして、いくつか気になったデータを見ていくことにした。

 

 まず目に着いたのが、メカノリモンについて記述されていたデータだった。

 読み解いていくと、どうもメカノリモンは属性を持っておらず、内部で操作するデジモンによってその属性を決定するらしい。

 ストライクドラモンが襲わないことから見て、データかワクチンかと思っていたがそうじゃないようだ。

 また、メカノリモンは開発途中のデジモンであり、酷使しすぎるとデジモンの脳にあたる電脳核(デジコア)がオーバヒートするという。

 ……今度から気の付けておこう。

 それと、メカノリモンは開発途上で不完全なデジモンらしく、体内データの保有量や格納スペースにだいぶ空きがあり、このレポートの記述者はそれを利用して機体内に武器などを格納させようとしていたらしい。

 ちなみにこの記述者はメカノリモンを何体か使用して研究を手伝わせていたという。

 長い年月が経った今は、もうその個体はいないだろうが……

 

 次はファンビーモンに付いての記述だ。

 懐かしい名前が出てきて興味が出たので読んでみることにした。

 ファンビーモンは森にある草木や花のデータを回収していて、それを空中にある小規模な基地に運んでいく任務に就いているらしい。

 建設目的は今のところ不明であり、ワスプモンが防衛を担当していると書かれている。

 あのフライモンの森で助けてくれたワスプモンは元々その基地を防衛するためにいたデジモンだったのか。

 

 次にクロックモンと言うデジモンの記述。

 クロックモンは1900年から1999年の間であれば自在に時間を進めたり戻したりすることができるというトンデモ能力をもっているようだ。

 しかしその能力は非常に危険であるため、争いに直接的に関与することはなく、本来はサーバ大陸のどこかにあるクロックレー時計塔という場所にいるらしい。

 まるでファイル島にいたワイズモンみたいだと思ったが、記述によるとこのデジモンもデジタルワールドを管理するためにいるデジモンらしく、ワイズモンの仲間という事になるようだ。

 記述者もこのデジモンを見たことはなく、ここに書かれているのは伝説や噂を集めた物であるという。

 

 ……ここまでの疲れが祟ったのか、頭痛がちょっときつくなってきたのでこれで最後にしよう。

 次はデジモンの事から少し外れ、デジタルワールドにある地名について書かれているものを見た。

 題名はダークエリア調書とされている。

 このデジタルワールドには死を迎えたデジモンの魂が一旦集められる場所がデジタルワールドの存在する次元と少しずれたところに存在し、それがウィルス属性の楽園とも呼ばれるダークエリアだというのだ。

 そこに送られた魂はアヌビモンと言うデジモンの裁判を受け、良きデジモンであればデジタマにデータを還元し、悪しきデジモンであれば封印するという。

 そしてアヌビモンはダークエリアの監督と守護も行っている。

 が、監督しているかどうかと言えば、まったくしてないらしい。

 アヌビモンは裁判はきちんとしているのだが、ダークエリアに生息するデジモン達による内乱は放置している状態であったという。

 そのためダークエリアでは曖昧な境界線を巡っての争いが絶えず、当時は七大魔王デジモンと呼ばれるデジモン達がお互いに争っているらしい。

 ただ、これを記述した当時はその争いは収束していき、何か別の動きを見せていたという。

 このデジタルワールドにおける地獄と言った具合のダークエリアではあるが、絶対に死ななければ行けないという場所ではなく、ここに行くための入り口がデジタルワールド各地に散らばってるようだ。

 マップを見てみると、地形が変わってなければこの研究所の近くにもあるらしい。

 

 俺はこれを最後にデータを見るのをやめたが、これを誰が書いたのかが気になったのでもう少しコンソールを操作して名前を探した。

 暫くするとユーザ名を見つけたが……「41」と言う謎の数字が出てきた。

 好きな数字か? 随分と中途半端だが……

 まぁ、とりあえずやりたいことは終わったので、コンピュータを正規の手順を踏んでシャットダウンさせて椅子に深く座り込んだ。

 

「………ふぅ」

 

「大丈夫デスカ?」

 

「かなり疲れた……もうここでいいから寝る」

 

「了解デス」

 

 俺が目を閉じてから数秒して、ものすごい睡魔が俺を襲った。

 さすがにちょっとおかしいかと思ったが、眠気のせいでまともな思考ができるはずもなく、俺はすぐに眠りに落ちた。

 

……………

………

……

 

 俺が翌日に目を覚ましたのは朝の少し遅い時間帯だった。

 昨日は飯も食わずにかなり早めの時間に眠ったので、だいぶ早い時間に起きるかと思っていたが……まぁ、長時間移動の疲れがあったのだろう。

 昨日の夜から何も食べていなかったので朝食は多めにとり、まだ食料に少しの余裕があることを確認して部屋のコンピュータを起動させた。

 今日はとりあえずエレベータの下を見てみるつもりなので、コンピュータを操作してこの研究所のエレベータを起動させた。

 古くなって動かないと思っていたが、予想に反してエレベータはすんなり動き出した。メカノリモンは通路はぎりぎり通れるがエレベータに入るのは無理だったので、俺はストライクドラモンだけを連れて地下の探索に行った。

 エレベータで内で待つこと数十秒、目的地に到着して扉が開かれる。

 そこは大規模の機械整備場のような場所であった。

 床には円が描かれた場所が3つあり、その円を中心にしてクレーンや機械アーム、またケーブル類が壁や床下から伸びていて、その場所でロボットでも組み上げれそうな雰囲気だった。

 特に真ん中のものは他の二つより規模が大きく、かなり大型の何かを整備していたようだ。

 

「マシーン型デジモンの整備場か何かか?」

 

「そうかもしれないな」

 

 昨日少しデータを漁ってみた限りでは、サイボーグやマシーン型デジモンに関する記述の割合が多かったような気がした。

 この研究所はそれらのデジモンをメインにして研究していたのかもしれない。

 俺はこの整備上の一角にあったコンソールを起動し、ここの機械が生きているか確かめてみる。

 コンソールを操作してアームやらクレーンやらを動かそうとすると、問題なく動き出した。

 どうやらここもしっかり使えそうだし、この部屋は天井の一部が開いて地上に通じる道ができるようになっていて、メカノリモンもそこから入って来れる。

 装置の確認が終わると、この場所に他のドアが2つあるのを見つけたので、今度はそこを調べてみる。

 

 入った部屋には大きなコンソールが置かれていて、さらにガラスを挟んだ向こう側にも部屋があった。

 ガラスの向こうの部屋の中央には手術台のようなものが中央に置かれていて、それを囲うようにしてロボットアームが展開している。

 たぶん、あそこにデジモンを寝かせて調査や解剖とかをするのだと思う。

 この部屋のコンピュータを操作してここが何の部屋なのかを調べてみると、やっぱり俺が睨んだようにデジモンを改造したりする場所らしい。

 この部屋には転送ポートがあり、そこは上にあった牢屋と繋がっているようだ。

 外からデジモンを捕まえて牢屋に連れてくるときも、そのデジモン転送技術を使用していたらしい。

 こんなものまであるという事は、ここはデジモンについてかなり深く研究していたようだ。

 しかしそれを行っていたのは誰なんだろうか?

 

 この手術部屋の探索が終わった後、整備上に戻ってもう一個の扉の向こうの探索を始めることにした。

 部屋に入ると両脇に鉄製の棚があり、真っ直ぐな通路がある程度の幅を持っているだけの物置のような場所だった。

 

「……なんだありゃ」

 

 俺はその部屋を最初は武器庫か何かだと思ったが、そこには奇妙なことがあった。

 まず最初に目に入ったのはきっちり整頓されて棚に並べられているミサイルポッドやロケットランチャーのような武器兵器だった。

 だから俺はここを武器庫かと思ったが、部屋の奥の方をよく見ると、大小さまざまな試験官を逆さまにしたような形の入れ物が置いてあった。

 大小さまざまと言っても小さくても俺の身長くらいの大きさのものだった。

 入れ物に近づいて何が入っているか覗いて見たり、張ってあるラベルを読んだりした。

 

「これ……まさかデジモンの一部が入っていたのか?」

 

 ラベルには、「ギガドラモン-両腕」「メタルグレイモン-トライデントアーム」「メタルマメモン-サイコブラスター」などと書かれてた。

 今見た入れ物の中身はいずれも空っぽであったが、恐らくラベルの通りのものが入っていたのだと思う。

 ただこれらのラベルに書かれていたデジモンの名前はいずれもサイボーグやマシーン型デジモンのものだったので、やはりここでの研究はそれらのデジモンがメインだったのだろう。

 この棚にある武器も、恐らく昨日見たメカノリモンについての資料で記述されていた、メカノリモンの武装に使うための武器だろう。

 ちなみにここで研究を手伝っていたはずのメカノリモン達は、どこを探しても見当たらなかったので、恐らくもうデジタマに還ったのだと思う。

 とりあえず地下の様子は一通り見終わり、気付けばもう昼ごろになっていたので、昼食をとってからデータの閲覧をすることに決め、ストライクドラモンと共に上の階へと戻った。

 

……………

………

……

 

「……しかし、すごいデータ量だ」

 

 昼食を食べた後、俺は一人でこの研究所のコンピュータに向かい合っていた。

 ストライクドラモンとメカノリモンは二人で食料を調達しに外に出ており、今この研究所にいるのは俺一人だ。

 そして30分ほどデータを覗いてみたが、分かったことと言えば……

 

・この研究所はデジタルワールド時間で1万年以上前にデジモンを使役して建設されたらしい。この研究所の時間表示は完成直後を基準にしたもの。

・初めはデジモン全般を研究していたが、次第にサイボーグ型、マシーン型デジモンに焦点が中てられた。

・この研究所には一人の人間がいたらしい。言葉使いからして恐らく大人だと思う。

・研究所を設立してから10年後、人間は何らかの計画実行のため別の場所に移る。詳しい場所は書かれていなかったが、邪魔の入る確率が最も少ない場所だと言う。

 

 といったことぐらいだ。

 レポートなどからここにいた人間の性格を分析しようかとも思ったが、レポートには実験内容やその経過と結果が淡々と書かれているだけであり、その人物像はよく分からなかった。

 ただ、中には非情な内容の実験も多々あったので、恐らく人として尊敬できる人物ではないと思う。

 しかし皮肉にもその実験が、今回俺がやろうとしていることに近かった。

 

「堕天実験……か」

 

 この実験は堕天使型デジモンがどのようにして天使型から堕天使型に変化するのかを観察したものだ。

 具体的な内容としては、まずピッドモンというエンジェモンの亜種にあたる天使型デジモンを捕獲し、そのままウィルスデータが空気中に蔓延するダークエリアへと連れて行って体内データの変化を観測したという。

 実験がまとめられたレポートにはピッドモンの体内データの変化が詳細に記載されていて、その変化するデータの中にはお目当ての「正義」というパラメータもあった。

 その数値は実験日数が経つごとに減少していき、ある日にはウィルス属性に対しての嫌悪感および攻撃性の減少という結果が得られていたようだ。

 しかしその結果が得られたすぐ後に体内データのバランスが大きく変化し、数時間後には酷く苦しんだのちにデビモンの姿になったという。

 ウィルスへの嫌悪感減少とはまさに俺がストライクドラモンに求めているものであるが、そのすぐ後にデータのバランスが崩れてデビモンになってしまったことを考えると、この辺りの見極めがシビアになりそうだ。

 もし失敗したなら、ストライクドラモンも他のウィルス属性デジモンへと変化する場合がありそうだ。

 候補としてはデビドラモンが有力か……いや、失敗することは考えない方がいい。

 時間はまだあるのだから、じっくりとここにある資料を読み解いてできるだけ成功率を上げることだけを考えておけばいい。

 

「……背に腹は代えられないか。でも、このままじゃ使えないな」

 

 この実験はデジモンの体に自然に取り込まれるデータを観測しているだけで、体内データを調整しているわけではないから、この実験をこのまま実行すれば間違いなくストライクドラモンはウィルス属性デジモンへと変化するだろう。

 だけどウィルスデータを取り込むという解決策は間違っていないようだ。

 

「必要なのは、どうやってバランスをとるかだけど……」

 

 俺はピッドモンの体内データと、ナノモンの研究所で見たストライクドラモンのデータを比べてみる。

 ピッドモンの「正義」はパラメータはかなり高いのだが、ストライクドラモンのそれはそのさらに上を行く。

 これだと並大抵のウィルスデータを取り込ませてもつり合いが取れずに、直ぐに排除されてしまうのではないかと思った。

 そのことについてはまだ不透明なので他のデータを漁って何か手がかりがないか探してみた。

 

―――――作業開始から30分後

 

「……あぁ~、頭痛がするし中々見つからないし……」

 

 中々お目当てのデータが見つからず、しかも頭も痛くなってきたので少しイライラしている。

 あれだけ寝たのにまだ疲れが残っているのだろうか……とりあえず水筒の水を飲んで作業を続けよう。

 

―――――さらに30分後

 

「……頭痛が洒落にならなくなってきた……もう5分くらい頑張ったら休むか」

 

 お目当ての記述はまだ見つからず、しかも時間が経つにつれて頭痛がしてなんだか熱っぽくなってきたので、少し休むことを考えはじめた。

 

「……あ! ワクチン属性デジモンのウィルス耐性について……これか?」

 

 作業開始から1時間後、ようやくそれっぽいデータを見つけることができた。

 俺は休むという考えを頭の奥においやり、目当てのデータを食い入るように見始めた。

 

―――――さらに1時間後

 

 あれからさっきのデータに関連した記述が芋づる式に出てきたので、それらをすべて読み解いていた。

 いつからか頭痛や熱っぽさは気にならなくなり、かなりいい感じに集中することができて読むのが捗った。

 そして最後の資料を読み終わり、背もたれに腰を埋めて背伸びした時……

 

「……終わった~……ッ!!?」

 

 頭が割れるような頭痛が襲ってきた。

 

「ぐぅ!? な、何だ……?」

 

「マスター?」

「信人? どうした!?」

 

 いつの間にやら帰ってきていたストライクドラモンとメカノリモンが俺を心配して近寄ってきた。

 帰って来たのに全然気づかなかった……あいつらなら帰った時に声を掛けてくれるはずだけど……

 

「ハァ、ハァ……頭痛がやばい、会話するのもしんどい」

 

「何だって? 帰った時は何か様子が変だと思ったが……」

「……酷イ熱デス。直グニ休ンデクダサイ」

 

 メカノリモンに言われてはじめて気づいたが、熱っぽさが1時間前と比べ物にならないくらい酷くなっていて、体がすごくだるかった。

 この体の様子なら作業中に疲れを感じて中断しようと思うはずだが、いくら思い返しても作業中にここまで酷い状態になった覚えがなかった。

 頭痛や熱っぽさがなくなったのは覚えているが……

 

「何故コンナ状態ニナルマデ?」

 

「いや、俺にも何が何だか……とりあえず休ませてくれ」

 

「言われるまでもねぇぜ」

 

 ストライクドモンが器用に俺の体を抱え、ウィッチモンのいた部屋へと連れて行ってくれた。

 ウィッチモンが研究を行っていた部屋はここにいた人間が使っていた生活スペースのようで、元はベッドや椅子、机が1つずつある簡素な部屋であり、ウィッチモンが出て行ったあとは薬品臭かったが元の寂しい部屋へとなっていた。

 俺はその部屋にあったベッドに寝かされ、薄い毛布を掛けてもらった。

 目を閉じれば昨日と同じように眠気が襲ってきて、まだ早い時間にも関わらず直ぐに眠りの中に落ちて行った。

 

 

 




設定垂れ流し回になった気がしないでもない。
デジモンを深く研究していたという雰囲気を出すためにいろいろ書いたつもりです。

感想批評をお待ちしております。

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