デジモンアドベンチャー 選ばれてない子供 作:noppera
お待たせしました。
今回はハグルモン大活躍です。
第17話 名探偵ハグルモン!
「あぁ~いい風だ」
ファイル島を出航してからちょうど一週間目の朝、俺は甲板に出て潮風を感じていた。
ドラコモンはまだ寝ていて、ハグルモンは起きているがあまり潮風には当たりたくないというので船室にいる。
船旅中には特筆するような問題は起きず、選ばれし子供達一向+αは快適な洋上生活を送った。
今日で一週間目ということで、もうすぐサーバ大陸が見えるのではないかと思い、荷物の中から持ってきた双眼鏡を使って前方を見た。
「……お!」
双眼鏡から見えたのは久しく見なかった大地、それがだんだん大きく見えてきた。
「もしかしてあれが……?」
「はい、あれがサーバ大陸です」
俺の疑問に対して、この船に並走して泳いでいたホエーモンが答えてくれた。
原作よりも多少遅れはしたが、無事にサーバ大陸に到達することができたようだ。
「お~、やっとか。それじゃ、先輩達を起こしてくるか」
俺は先輩達を起こしたために船室に下りて行った。
先輩達が起きて来るころにはすでにサーバ大陸を目視で確認できる位置まで船は進んでいて、それを見た先輩達は無事にここまで来れたことに喜び、デジモン達はその広大な大地に驚いていた。
「で、どこに上陸するんだ?」
先輩達が一通りサーバ大陸への反応を示した後、太一先輩が上陸地点をどこにするかを決めるために話を切り出した。
ちなみにミミ先輩はいない。
先ほどパルモンが呆れ顔で船室から出てきたから、恐らくまだ寝ているのだろう。
「これから少し北に上陸しやすい入り江がありますから、そこにしませんか?船も係留しなければなりませんし」
地図を持っている泉先輩がまず発言をしたが、その入り江にはたぶんエテモンが待ち伏せしていたはずだからそこはまずい。
「ちょっと待ってください。今から行くサーバ大陸には敵がいるんですよね?だったら見つからないように、目立つ場所は避けて上陸したほうがいいんじゃないですか?」
「……一理ありますね。たしかに僕が言った入り江だと、上陸はしやすいですけどこの船だと目立ちます」
「それに、あんまり持ち出しやすい場所に船を置いとくと盗まれる可能性もありますよ?」
「なるほど、それを考慮に入れてもう一つ上陸地点の候補を出すなら……ここでしょうか?」
泉先輩が指し示したのは、初めに言った上陸地点から少し南にある岸壁地帯だった。
「少々上陸しづらいですが、岩陰に船を隠すことができると思います」
「ふ~ん、他に意見がないならこの二つのどっちかに決めようぜ」
上陸地点についての会議は泉先輩と俺の示した場所を話の軸にして行われた。
結論には少し時間を食ったが、結局俺が提案した場所に上陸することになった。
未知の敵を相手にすることと、まだ紋章を手に入れておらず進化ができないという戦力不足を考慮して、目立った行動は避けようという方向で話は纏まった。
また、ホエーモンからコロモンの村の位置を教えてもらった後、先輩達は上陸の準備のため船室に戻って行った。
俺はとりあえずエテモンの待ち伏せにを避けられたことに密かに安堵しながら、自分の上陸の準備を進めるためにまた船室に戻った。
……………
………
……
…
時間が少し飛んで、今は広大な大地を人間とデジモンが列を成して進んでいるところだ。
会議の後しばらくして上陸地点に到着して上陸した俺達は、ホエーモンの協力のもと船を岩陰に隠して錨を降ろした後にコロモンの村へと出発した。
そして今は出発してから結構時間が経っている。
もう少しすれば到着すると思うけど……
「………ん?」
「どうしたアグモン?」
「あっちからコロモンのにおいがする!」
噂をすれば影、今まで元気よく歩いていたアグモンが急に立ち止まり、ある方向を指し示した。
その方向には森があり、たぶんあの森にコロモンの村があるのだろう。
第一発見者の太一先輩を先頭にして、選ばれし子供達一行はその森に向かって行く。
森の中をしばらく歩いて行くと、開けた場所に崖に囲まれていてテントの住居を主体とした村が見えた。
「やったー!お風呂に入れるー!」
「あ、ミミ待って!」
長く歩いて疲れ切っていたはずのミミ先輩であったが、休める場所にようやくついたという事で瞬く間に元気を取り戻して村に向かって走り出して行ってしまった。
他の先輩達も俺も慌てて追って行ったが、追いつくころにはパルモンしかいなかった。
ちょっと先を見ると、ミミ先輩が小さくて灰色の丸っこいデジモン、たしかパグモンだったか?
そいつらに担がれて運ばれているのが見えた。
先輩達はそれを追っていき、最終的に村の中心にある大きなテントの中に入って行った。
泉先輩、空先輩、丈先輩、そして太一先輩が床に落ちていたミミ先輩の持ち物を追って二階に上がり、それ以外の人たちは下に残って辺りを警戒した。
「……他のやつは襲って来ねぇのか?」
「そうみたいだな」
ドラコモンは周りのパグモンに対して警戒を行っていて、ハグルモンもドラコモンと同様に周りを警戒している。
しかし俺は周りのパグモンが今は襲ってこないのを知っているので、ドラコモン達ほど気を張らずにこれからどうするか考えていた。
今こそここにパグモンがのさばっているが、元々ここはホエーモンからの情報通りコロモンの村だ。
そして今そのコロモン達は滝の裏にある洞窟に監禁されている。
それをどのタイミングで救出するか……案外早い段階でもいいのかもしれない。
別にどのタイミングで解放しようが、このあたりにはガジモンがうろついているはずだから見つかってエテモンに報告されるのは時間の問題だ。
どうせ元々ここで一泊する予定だったから明日の朝まではここにいなければならないだろうし、エテモンに居場所が知られるのは仕方ない。
だったら今日の夜辺りに動いてみるか……
「ちょっとー!レディが入浴中なのよ!」
上の階からミミ先輩の怒声が聞こえ、下の階に残っていた方は上では何が起きているのかと思い顔を見合わせる。
「ミミさん、お風呂入ってるの?」
「どうもそうみたいだな」
まったく人騒がせなとヤマト先輩が肩を疎め、大事にならなくてよかったとタケルが安堵している。
そんな俺達のところに入り口から入ってきたパグモン達が話しかけてきた。
「「「ようこそー!ここはパグモンの村!」」」
「あれ?ここってコロモンの村じゃなかったっけ?」
「「「ここはパグモンの村ー!客間へどうぞー!」」」
パグモンはタケルの疑問をにとりあえずは答え、残っているデジモン達の背中を押して強引に誘導を始めた。
「何か怪しいな~」
「まぁでも相手は幼年期みたいだから、いざとなったら何とかなるだろ」
ドラコモンの懸念に対して小声で答えながら、パグモンの誘導に従って三階にあるらしい客間へと向かった。
……………
………
……
…
また少し時間は飛び、今はパグモンのおもてなしを受けてある程度時間が経っているところであった。
あの後客間に案内された俺達は、順番に風呂に入った後にパグモン達から盛大な歓迎を受けていた。
次々と森の幸が運び込まれてきて、それを食べて気分を良くしたデジモン達や先輩達はすっかりパグモンを信用してしまっている。
ちなみにドラコモンもそのうちの一体であり、当初の懸念はどこえ行ったのか、もはや食べることにしか気を払っていなかった。
しかしその楽しい宴会も収束に向かいつつあり、今は一部を除いて木の実を食べている人やデジモンはおらず、談笑を楽しんでいる。
もう少しすれば誰かがもう寝ようと提案するだろう。
「ん?どこへ行くんだ信人?」
「ちょっと暑くなってきたんで、外の空気に当たりに……」
「そっか、あまり体を冷やすなよ」
「はい」
「オ供シマス」
太一先輩の言葉を聞きながら、俺はハグルモンと一緒に外へと向かった。
外へ出ると辺りはシーンと静まり返っていて他にデジモンの気配はなかった。
「やっぱあいつら怪しいし、少し探ってみるか」
「ギギ……」
俺が外へ出た理由はここがパグモンの村ではないという事を先輩達に証明する決定的な証拠を探すためだ。
ハグルモンもそれに協力するために出てきてくれたようだ。
さて、滝の洞窟にコロモンがいることは知っているのだが、いきなりそれを見つけてしまうと流石に不自然だ。
なので俺はこの近くにいるはずのボタモンを探すことにした。
ボタモンが見つかれば、他のデジモン達がここはパグモンの村ではないという事を見破ってくれるはずだ。
さて、さっそく探そうと思ったんだが……
「……真っ暗だ」
村の中に明かりはほとんどなく、かろうじて見えるのは今出てきたテントの中から射す光で照らされている足元だけだ。
ボタモンの体表は黒だったはずだから、この暗闇で見つけるのは至難の技だ。
「どうしたもんか……」
「私ニ任セタ方ガ良イノデハ?」
「………あ、そっか。≪ダークネスギア≫を使えばいいのか」
ハグルモンの必殺技、≪ダークネスギア≫は打ち込んだデジモンを意のままに操れる技だ。
さらに、ハグルモンには操っているデジモンの思考を読むことができるので、これを使えば情報取集は意のままだ。
ボタモンを見つけるよりはこれを使って証拠を集めた方がずっと手っ取り早い。
「じゃあハグルモンに任せた方がいいか……頼んでもいいか?」
「モチロンデス」
「よし、なんかまずそうなことがあったら直ぐに報告してくれ。大した問題じゃなかったら、とりあえず朝になるまでは動かない。気付かれないようにしてくれよ」
「了解!」
ハグルモンは返事を返すと暗闇の中に消えて行った。
情報収集はハグルモンに任せて、俺はテントの中に入り客間へと戻って行った。
客間に戻るとすでに後片付けが始まっていて、もう今日は休むようだった。
タケルに至ってはすでにヤマト先輩の隣ですでに寝息を立てていて、トコモンもそれに倣っている。
そうえばトコモンは進化しなかったな……繰り上げが起こってこのタイミングで進化すると思ったが、この様子だと進化は原作通りのタイミングになるだろうか?
もしかしたら進化しなかったことによりパグモンから目をつけられることはないのかもしれない。
「あれ?ハグルモンはどうしたんですか?」
「もう少し風に当たるようですよ」
泉先輩の問いに適当に答えながら俺も後片付けに参加した。
「「「荷物はこちらにどうぞー!」」」
暫くするとパグモン達が大きなかごを持ってきて、そこに荷物を置くように促した。
先輩達は特に疑うことはせず、そのカゴの中に荷物を入れて行った。
ハグルモンが戻ってきたのは粗方後片付けが終わり、さぁ寝ようかとという時だった。
「……で、どうだった?」
「……………」
俺は他の人に聞こえないようにハグルモンから成果を聞き、ハグルモンもまた俺だけに聞こえるように報告をした。
「ふーん、なるほどね……」
本来の目的はアレだったのか……まぁたしかに当然だな。
「念ノタメニ手モ打チマシタシ、休ンデモ問題ナイカト……」
たしかにパグモン達の目的は直接俺達に危害を加えることではないようなので、ここは休んで明日の朝に動くことに決めて、他の人たちと同様に寝ることにした。
……………
………
……
…
「……い……おい!みんな起きろ!」
「ん?」
今日の朝は太一先輩の慌てた声で俺は目を覚ました。
周りを見渡すと、他の人やデジモン達も俺と同様の目の覚まし方をしたようだ。
「う~ん、どうしたんだい?」
「俺達の荷物がないんだよ!」
「「「「「えー!!」」」」」
太一先輩の言葉を理解した人たちは驚きの声を上げ、昨晩荷物を置いたはずのカゴのある場所を一斉に見た。
そこには荷物どころか荷物を入れたカゴすらなかった。
「パグモン達を探しましょう。もしかしたらどこかに移動させただけかもしれません」
先輩達とデジモン達は泉先輩の提案に乗り、下の階に下りてパグモンを探し始めた。
俺は何が起こっているかは知っているのだが、とりあえずこの動きに便乗して下の階に下りた。
「おーい!こっちに来てくれ!」
探索を始めてからさほど時間が経ってない段階で、入り口の方から太一先輩の声が聞こえてきた。
一斉に入り口の方に向かってみると、テントの入り口には泥だらけのパグモン達が倒れていた。
「どうしたんだ一体!?」
「うぅ……昨日この村に侵入したデジモンがいて、僕達なんとか戦おうとしたけど……」
「簡単に負けて、皆さんの荷物を盗まれてしまいました……」
ヤマト先輩の問いに対して倒れているパグモンは弱弱しく答えた。
パグモンが言うには、昨晩デジモンがこの集落に侵入し、パグモンが迎撃しようとしたが返り討ちにあって、俺達の荷物を掻っ攫って行ったということだ。
しかしパグモンの体をよく見ると、その体には泥が付いているだけで外傷はない。
「それがどんなデジモンだったか覚えてますか?」
「エテモンってデジモン……サルの姿をしてて、モノクロモンに引かれたトレーラーに乗ってる」
「そいつが俺達の荷物を盗んだんだな!よし、追いかけよう!」
「ちょっと待ってください!」
みんなが追撃しようと活き込んでいるところで、俺は待ったをかける。
なぜならこれは全部パグモンが仕組んだ罠だからだ。
「ハグルモン、俺達の荷物はどこにあるんだ?」
「何言ってんだ。今パグモンが俺達の荷物はエテモンって奴が……」
「アノテントノ中デス」
「「「「えぇ?」」」」
「そうか」
怪訝な顔をする先輩達や唖然とするパグモン達を尻目に、俺はハグルモンが指し示したテントに向かい、その中を探った。
「お、あったあった」
ハグルモンの言ったとおり、その中にはみんなの荷物がカゴごと置いてあった。
俺はそれを引っ張り出してみんなに見せた。
「どういう事なの?」
「まぁ簡単に言えば、俺達はパグモンに騙されてたってことです」
困惑する空先輩に、ひいては他の先輩達に俺はネタばらしを始めた。
「ここは元々コロモンの村だったんですが、それをパグモンが乗っ取って、その時に俺達はこの村に訪れたんです。パグモン達の狙いは俺達の荷物でした。昨日の歓待は俺達を油断させるためのもので、今この状況も荷物を盗むための芝居にすぎません」
俺からネタ晴らしが行われる毎に、パグモン達の顔色はどんどん悪くなっていった。
「何で信人君はそれを知ることができたんですか?」
「ハグルモンのおかげです。ハグルモンは他のデジモンを操る特殊能力を持ってて、操ったデジモンの思考を読むことができるんです。昨日のうちにちょっと怪しいと思ったので、ハグルモンにそれを使って調べてもらったら、黒だったというわけです」
「そうえば、お前夜風に当たるとか言って出て行ったよな……その時か?」
「はい」
「補足説明スルナラ、荷物ヲ奪ウトイウ目的ノ他ニ、私達ヲエテモント合ワセル思惑モアリマシタ」
「な、なんでそれを!?あれは荷物を奪った後、急に決まったのに!?」
「それは俺も初耳だった。説明してくれハグルモン」
「ハイ、荷物ヲ奪ッタ後、パグモン達ハガジモントイウデジモンカラソノヨウナ指示ヲ受ケマシタ。ドウシテ知ッタノカトイウト……」
ハグルモンが一旦話を切った時に、顔を青くしたパグモンの中からかなり無表情のパグモンが進み出てきた。
そしてハグルモンが少し手を振ると、パグモンの中から黒い歯車が飛び出した。
「……あれ?なにしてたんだっけ?」
「黒い歯車!?」
「あれがハグルモンがデジモンを操ることをできる技、≪ダークネスギア≫です。デビモンの時にも使ってましたよね?」
「えっと……たしかエンジェモンとダルクモンがデビモンを倒すちょっと前だったっけ?」
「タケルの言うとおり、それを使ってパグモンの中にスパイを作ったってわけです。そこからの情報を得たってわけだな、ハグルモン?」
「ハイ」
「てめぇら!よくも騙したな!」
「「「に、逃げろ~!!」」」
思惑を看破され、さらにドラコモンの剣幕に怯んだパグモン達は蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。
これまでの話をまとめると、パグモンの当初の目的は俺達の荷物を奪う事。
原作では進化したポヨモンに嫉妬して目的を変えたようだけど、今回トコモンはトコモンのままで進化することがなかったから本来の目的通り行動したのだろう。
そして荷物を隠している最中にガジモンと出会い、ガジモンからの指示を受けたパグモンは、朝のような演技をして俺達とエテモンを鉢合わせさせようとしたわけだ。
「何で昨日言わなかったんだい?」
「もう休む雰囲気でしたし、大したことじゃなかったら動くのは明日の朝にしようと思ったんです。みんな疲れていたみたいでしたし」
「それより、コロモンはどこにいるの?」
「滝ノ裏ノ洞窟デス」
アグモンの問いにハグルモンが答え、俺達は滝のある場所へと足を向けた。
「何で俺には教えてくれなかったんだよ?」
「お前にはこういうことは向かないよ。聞いた途端に大暴れするのが目に見える」
「そ、そんなことない!」
本人は否定しているが、血気盛んなドラコモンならやりかねない。
ドラコモンの説得力のない言い訳を聞きながら、俺もハグルモンの先導に従って滝の方向に歩いて行った。
……………
………
……
…
滝の洞窟には情報通りコロモン達が捕まっていて、すでに先輩達のデジモンがオリを開けてコロモン達を救出したところだった。
「ありがとー!」
「「「ありがとー!!」」」
「ふふ、もっと感謝してくれてもいいのよ?」
「ミミは何もしてないじゃない……」
「ふぅ、騒がしい朝だったな。戻って休憩してから出発するか」
「イエ、今出発シタ方ガ良イカト」
「えー!どうしてよ!?ちょっとゆっくりするくらいいいじゃないの!」
ハグルモンの提案にミミ先輩が文句をつけるが、ハグルモンはいつもの表情で話を始めた。
「エテモンニ私達ノ居場所ヲ知ラレテイル可能性ガ高イデス。エテモンハパグモンカラノ情報ニヨレバ、コノ大陸ニ君臨スルボスノヨウデス」
「じゃあそのエテモンっていうデジモンが私達が倒すべき敵なのね?」
「ハイ。シカシ、今ノ私達ハ紋章ノ情報ハ何1ツ得ラレテオラズ、戦力不足ハ明ラカデス。ココハ一旦引クベキデス」
「ハグルモンの言う通りです。さらなる進化のためには紋章が必要だとゲンナイさんも言っていました」
確かに紋章もなく、ましてや進化の手がかりさえ掴めていない今の状況ではエテモンと戦っても返り討ちに会うだけだ。
「それに、この辺りで戦えばコロモンの村にも被害が出る可能性がありますよ」
「そうか……じゃあここはひとまず引くか」
太一先輩の決定に意を唱える人はおらず、この場はエテモンから逃げることになった。
「コロモン、紋章のことについて何か知らないか?」
「う~ん、よくわからないけど、この洞窟の奥に不思議な紋章が描かれた壁があるよ。村に何かあった時はそこから逃げろって言い伝えがあるんだ」
俺の問いに対してコロモン達はそういうと俺達を洞窟の奥へと案内してくれた。
洞窟の最深部まで到達すると、そこにはたしかに何かの紋章のついた壁があった。
「これが……ん?なんだぁ!?」
太一先輩がもう少しよく見ようとして前に進み出たとろで、周りの壁が急に光り輝き始めた。
光ってから暫くして、紋章の書かれた壁が浮き出てきて光りながら小さくなっていく。
そしてちょうどタグに入るかという大きさになったところで、それは太一先輩のタグの中に自ら納まった。
「これは……紋章か!」
「ほんとか!」
「あぁ、やったぜ!」
「見て、外が見えるわ!」
紋章の壁の向こうに見えたのは、緑生い茂る山々であった。
「ここは村からずっとずーっと遠くにある山の中だ」
「じゃあ、そのエテモンからはとりあえず逃れることができたってことかい?」
「そうなりますね」
「しかも、ついに紋章が手に入ったんだ!」
太一先輩は紋章が手に入ったことを喜び、泉先輩と丈先輩は敵から逃れることができたことに対して安堵している。
原作からはだいぶ離れてしまったけど、紋章も手に入ったしコロモンの棲家を壊すことにならなくてよかった。
「今回は頼りになったよハグルモン」
「ギギ……♪」
今回はハグルモン大活躍だったので、軽くハグルモンの頭を撫でてやった。
表情こそ無表情だが、歯車の回転数が上がったところを見ると機嫌はよくなったようだ。
その後先輩達は今後の事を話し合い、とりあえず今は他の紋章を求めて出発することに決めたようだ。
俺も特に異議はないので、コロモン達に念のためしばらくはこの場所に待機してもらうように伝え、この場所を後にした。
今回はエテモンと接触せずに村を後にしてしまったが、先輩達は紋章を集めることを優先するようだし、そういう奴がいるってことだけ分かっていれば十分かなと俺は思った。
あのまま居てもエテモンにコロモンの村を破壊されるだけだし……ダークネットワークや≪ラブセレナーデ≫の存在はここじゃなくても知ることができるだろう。
さて、俺達を取り逃がしたエテモンは今頃どうしてるかね……
……………
………
……
…
「もう少しで目的地に着くわ~!見ぃてらっしゃい選ばれし子供達!あちきをコケにした罪は重いわよぉ~!」
「エ、エテモン様……その選ばれし子供達ですが……」
「何よ?」
「場所を移動しました……」
「はぁ!?あら、ほんとだわ。レーダーの反応が……ってなんでこんな遠くにいるのよ!?これじゃあ、あちきまたまた無駄足じゃない!」
「そ、そう申されましても……」
「キー!進路変更!全速力で追いかけるわよ!」
「は、はいぃ!」
「今度こそ待ってなさい、選ばれし子供達~!」
ハグルモンの《ダークネスギア》が便利スキルです。
コロモンの村が壊されるのを嫌ってエテモンと接触する前に出発するようにしてみました。
作中で信人君が語っているように、紋章の入手を優先してくれればそれでいいかなと思ったので。
しかし選ばれし子供たちを喋らせるのが精いっぱいでそのデジモン達を喋らせることができないのが悩みです。
アグモンとパルモンしか喋ってない……
感想批評お待ちしております