デジモンアドベンチャー 選ばれてない子供   作:noppera

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意外と時間が取れたので書きました。
ちょっと長いですがお楽しみください。


第13話 オーバーデル墓地大乱戦!

空視点

 

 信人君が穴の中に入ってから、もう10分は経つ……はぁ、ほんとに大丈夫かしら。

 本人は手がかからない子だって自称してるけど、あたしにはあまりそうは見えないのよねぇ。

 はじめて通信で会った時も強引に自分の主張を通しちゃうし……考えなしに突っ込んでいる風じゃないんだけど……

 

「ねぇ、丈先輩。信人君遅くない?」

 

「そうかな?この高さなら登るのに結構時間かかると思うけど……」

 

「心配いらねぇよ、信人のことだから大丈夫さ」

 

「そうえば、信人君のここまでの行動ってどんなのだったの?」

 

 信人君と合流してからすぐに別行動をしちゃったし、あのときは疲れていたから話を聞く暇がなかった。

 ドラコモンは信人君とずっと一緒にいたみたいだから、この際に聞いてみましょう。

 気がまぎれるかもしれないし。

 

「お!聞きたいかそれじゃあ話してやるぜ!」

 

 あたし達はドラコモンからこれまでの信人君の行動を聞いた。

 ドラコモンの話は戦闘したときことを中心に話してくれた。

 ところどころ話に穴があったけど、そこはハグルモンが補足してくれたわ。

 

「……って言うわけだ」

 

「「………」」

 

 信人君って……あたし達と同じようにだいぶ危ない場面をくぐっているのね。

 特にフライモンの森での戦闘……もう少しのところでやれるとことだったじゃない!

 しかもこれはドラコモン達が一緒になってからの話で、信人君が一人でいるときの話はドラコモン達もまだ聞いたことはないみたい。

 

「………ねぇ、さすがに遅くない?」

 

「そうだね、どうしたんだろう?」

 

 ドラコモン達から話を聞き始めてからずいぶん時間が経ったはずだけど……なんだか嫌な予感がする。

 

「た、大変だぁ~!」

 

 信人君を心配して穴をじっと見つめていたら、そこから大慌てで信人君のリュックを持ったバケモンが出てきた。

 

「バ、バケモン!……だけ?信人君は!?」

 

「うぅ~、ソウルモンにあいつが捕まっちまっただ~」

 

「なんだって!!」

 

 悪い予感が当たっちゃった……

 

「信人君はどうなったの!?」

 

「ソウルモンに始末される寸前だったけど、おら達がバケモン様の生け贄に捧げるって言ってなんとか時間を稼ぐことができただ~。おら達全員がいないとバケモン様になれないから、食事する時間は十分あるだ~」

 

 バケモンはそう言ってリュックの中身を見せてくれた。

 中にはいろいろな木の実が乱雑に詰め込まれていて、急いで食料を入れていたのが分かった。

 焦っていたのかしら……

 

「ぼ、僕の責任だ……一体どうすれば」

 

「どうすればって、決まってるでしょ!進化して助けにいくのよ!」

 

「あ、あぁそうか。よし、ゴマモン達はやく食べるんだ!」

 

 まったく丈先輩ったらこんな時に弱気になっちゃって……さっきまでの威勢はどうしたのよ。

 それにしても信人君が心配……きっと一人で怖い思いをしているに違いないわ。

 

「……こんなところでドジを踏むなんて、馬鹿な奴だ」

 

「ちょっとドラコモン、その言い方は……」

 

「準備万端デスネ、ドラコモン」

 

「え?……あ」

 

「ケッ、お前たちが遅いだけだよ」

 

 ドラコモンの前に並べられたはずの木の実がなくなっちゃってる……まさかもう食べちゃったの?

 ……なんだ、あんな言い方しててもちゃんと心配しているのね。

 

「助けに行くのはいいけど、どうやって攻める?」

 

「えーっと、うーんっと……」

 

「もう、しっかりしてよ丈先輩、リーダーでしょう!!」

 

「そうだ、僕がリーダーなのに信人君を危険な身に合わせちゃったんだ……」

 

 丈先輩は信人君を心配するあまり責任を感じて弱気になっちゃってるみたい……もう、そんなことしてる暇ないのに!

 

「今そんなこと考えてたってしょうがないじゃない!こんなことでまごまごしてて、信人君がやられちゃったらどうするの!?それこそ後悔するだけじゃすまないじゃない!」

 

 もし、ここで信人君がやられちゃったら……考えたくもない、あたし達の仲間がやられるなんて……

 

「わ、分かった。これを考えるのは後にするよ」

 

「バケモン様の儀式は本堂でやってて、ソウルモンは教会の鐘のある場所に隠れてるはずだ~」

 

「……なら、同時に攻撃した方がいいかな?どっちか片方を攻撃している間に信人君がやられちゃうとまずい」

 

 弱気にはなっているけど、判断力はそこまで鈍っていないわね……丈先輩はいつもこんな風だったらいいのだけど……

 

「なら、あたしはバードラモンに乗ってソウルモンを攻撃するわ」

 

「鐘の間にはおらが案内するだ~」

 

「え?僕の作戦でほんとにいいのかい?空君が作戦を考えた方が……」

 

 丈先輩は自分の判断に自信が持てなくなっちゃった見たい……でも今は説得している暇はないわ。

 ここは強引にでも行っちゃいましょう!

 

「いいから早く行動する!デジモン達も準備はいい?」

 

「「おっけ~」」

「とっくの昔にできてるっての!」

「問題ナシ」

 

「丈先輩も戦うときはしっかりしてよ!」

 

「わ、分かったよ」

 

 あたし達は全速力で崖の上に教会に向かって走り始めた。

 信人君……無事でいて!

 

………………

……………

………

……

 

信人視点

 

「………知らない天井だな」

 

 いくら記憶をまさぐってもこんな古ぼけて崩れかかった廃教会の天井を見た覚えはない。

 それはともかく、周りを見渡してみるとバケモン達が輪になって何かに対して祈りを捧げており、その輪の中心に俺がいるようだった。

 俺の状態を見てみると、縄でぐるぐる巻きにされて体の自由を奪われていて、何かの祭壇の上に祭られている。

 ソウルモンに捕まった俺は原作での空先輩達みたいに生け贄に捧げられてしまうようだ。

 はぁ~………しかし、あんなうっかりミスで捕まってしまうとは……

 自分からやるって言い出したのにこの体たらく、先輩達にも余計な手間をかけさせてしまうことになるだろう。

 なんとか自力でどうにかできないだろうか……そうえば俺を運んだバケモンは?

 改めてバケモン達に目を向けて新たに仲間になったバケモンを探してみる。

 あいつは俺を運んだはずだからこの儀式に参加しているはずなんだが……

 

「バケ~」

「バ~ケ~」

「バ~ケ」

「バケケ~」

 

「…………」

 

 どれがどれだかまったく見分けがつかない。

 他の場所を見渡しても一発逆転に役立ちそうなものはなかった。

 やっぱり先輩達の助けを待つしかないのか……

 最初に仲間になった方のバケモンはちゃんと空先輩達に食料を届けられただろうか?

 あの後は食べ物を持って穴に戻るだけだから、届けるのはそんな難しいことではないはずだが……

 

『それぐらいにして、さっさと始末しなさい!』

 

 どこからともなく聞こえてきたソウルモンの声が教会の内部に響き渡った。

 少し驚いてから周りを見渡してみても、ソウルモンの姿は教会内にはなかった。

 姿を消しているのか、それともこの教会のどこかにある鐘の間というところから声を出しているのか……

 

「……こういうのは雰囲気が大事だぞ~」

「んだんだ~」

「あいつ幽霊デジモンのくせに分かってないだ~」

 

 しかしバケモン達はこの指示に対して乗り気ではないようだ。

 ていうか、この儀式ってバケモン様に合体するために必要だったんじゃなくて、雰囲気を出すためだったのかよ……

 バケモン達って結構ひょうきんな奴なんだな……いや待て、もしかして俺達を始末する命令に乗った時もこんな感じのノリで引き受けたんじゃなかろうか?

 

『いいからさっさと始末しなさい!まだ他の奴らは見つかっていないんですよ!言う事を聞かないならここはバラバラですよ!』

 

「「「わ、分かったからそれだけは勘弁を~!」」」

 

 バケモンが怯えきった声で返答すると、祈るのをやめて一斉に飛び上がった。

 そして輪になってグルグルと回りながらだんだん一か所に集まっていく……バケモン様が降臨するのも時間の問題だろう。

 自分のミスのおかげでこうなったわけだからあまり強く言えた口じゃないんだが、空先輩達まだ来ないのか?

 このままだとバケモン様においしく平らげれてしまう。

 

「………うん?」

 

 先ほどから俺の真上をバケモン達がぐるぐる回っているんだが、一向に合体する気配がない。

 一体どうしたんだろうか?

 

「「「………あれ~?」」」

 

『何をしているのですか!?』

 

「誰かいないか~?」

「ひーふーみー……」

「あ、バケモンがいないぞ~」

「そうだ、バケモンがいないんだ~」

 

 バケモンなら俺の頭上に無数にいるんだがな……まぁ、この様子だと食べ物を持って行ったバケモンがいないのだろう。

 どうやらバケモン全員が揃ってないとバケモン様になれないらしい。

 

『まったく使えない愚図ばかり!こうなったら私が……なっ!ひぃ!?』

 

 なんだ!?ソウルモンのセリフのあとにすごい音がしたぞ!?

 ソウルモンの悲鳴が聞こえた瞬間、教会の上部の方から無茶苦茶に鳴る鐘の音混じりの大きな破砕音が響いた。

 それと同時にオンボロ教会全体が軋んだ音を経てた。

 

「な、なんだ~!?」

「と、とにかく外へ~!」

 

「おいちょっと嘘だろ!?これ解いて行けぇ~!」

 

 俺の嘆願はパニック状態のバケモン達に聞き入れられることはなく、不気味に軋む教会の中に雁字搦めのまま取り残された。

 天井からはパラパラと木の破片やら土やらが落ちてきて俺の体に降りかかる。

 

「おいおいこのまま生き埋めなんて……「≪ヘルズハンド≫!」……え?」

 

「悪かったぞ~お前を忘れていたぞ~」

 

 声はバケモンが出て行った教会の正面扉から声が聞こえたかと思うと、2本の青紫色の腕がそこから伸びてきて俺の体をがっしりと掴んだ。

 入り口に顔を向けるとバケモンが浮いていて、俺を掴んだ腕はバケモンの袖の中から出ている。

 あのバケモンは俺を祭壇まで運んだバケモンだろう……しかし、しかしだ。

 そこから腕を伸ばして俺を掴んで……どうするつもりだ?

 俺はこの場面だと、某ゴム人間に遠方から引っ掴まれて引き寄せられる哀れなお仲間さんしか思い浮かばないんだが……

 

「そぉ~れい!!」

 

「嘘だああああああああ!!??」

 

 俺を掴んだ青紫色の腕は俺の当たってほしくない予想通り勢いよく縮みだし、俺の体は重力から解放されてかなりの速度で空中を疾駆させられた。

 凄まじい勢いが出ているが、この速度ではあのバケモンの体躯でしっかりと受けとめられるとは思えない。

 このまま受け止めればバケモンも俺も怪我をしてしまうかもしれない。

 

「おま!?これどうやって止め「あ、すまなかったぞ」てめえええええ!!」

 

 名ばかりの謝罪をしたバケモンはこともあろうか俺を掴む腕を僅かに上に引き上げた。

 ちょっと待て!?あいつこのまま後ろの墓石群に放りこむ気か!?

 少しでもあいつの心配した俺が馬鹿だったよ!?

 

「よいしょ~」

 

「う、うわ!?」

 

 もう少しで後ろに吹き飛ばされるというところで、バケモンは腕をさらに上に振り上げて、俺を空の彼方に投げ飛ばした。

 初速度がかなりあったので、俺の体はぐんぐんと高度を上げていく。

 

「どうするんだよこれ……」

 

 俺の体はまだ縄で縛られたままなので、このままだと非常にまずいのだが、この数瞬の間にいろんなことがありすぎて逆に冷静になってしまった。

 空中で辺りの様子を観察すると、教会の鐘のあった場所はほぼ吹き飛んでいて、今も砂塵やら何かの煙でそのあたりは詳しく見えない。

 たしかあそこに鐘があったはずだから、あそこにソウルモンが隠れていたんだよな……さっきの悲鳴はこれだったのか。

 下を見てみると、墓地でバケモン達が右往左往しているところだった。

 ここでいよいよ俺の体が最高点が近づいたのか、飛び上がるスピードがだんだんと落ちてきた。

 

「参ったなぁ……え?」

 

 俺の体が最高点に到達して速度が0になった直後、またまた俺の体は青紫色の手に捕まれた。

 しかしこれは先ほどのバケモンがいた下から伸びてきたのではなく、砂塵に包まれた教会上部から伸ばされていた。

 そこからさらに横に引き込まれたが、速度も調整されているし二度目という事もあって声を上げるという事はしなかった。

 

「わわっと!」

 

「無事だったか~?」

 

「バケモンか!……ここは?」

 

「バードラモンの足よ」

 

「あ……空先輩」

 

 俺が捕まっている逆の足で、空先輩が心配そうにこちらを見つめていた。

 やっぱりさっきの騒動は空先輩とバードラモンが起こしたものだったようだ。

 恐らく食べ物を持ってきたバケモンにソウルモンの居場所を聞いて、直接そこを叩いたのだろう。

 

「いや~びっくりしただ~いきなり下から飛んでくるなんてな~」

 

「あぁ……あのバケモン下に降りたら殴ってやる」

 

「な、何があったか分からないけど穏便に済ませてほしいだ~。ほら、縄解いてやるだ」

 

 バケモンに縄を解いて貰い、ようやく自由になることができた。

 

「大丈夫?怪我はない?」

 

「あ、はい。体の方は大丈夫です」

 

「そう……もう、心配したわよ」

 

 空先輩は最初こそ心配した目でこちらを見ていたが、俺が無事だと分かった後は苦言を呈しはじめた。

 空先輩やっぱり怒ってるよなぁ……いらない心配かけちゃったし。

 とりあえず謝らないと……あれは!?

 

「空先輩、あそこ!」

 

「え?」

 

 教会上部からもくもくとあがる砂煙の中で、一か所だけ不自然に歪んでいるところがあった。

 あれは俺が食料庫で見たソウルモンが現れた前兆だ!

 

「≪ネクロマジック≫!」

 

「うわぁ!?……うぅ」

 

「バードラモン!?」

 

 俺の警告は間に合わず、ソウルモンの放った緑色の光線がバードラモンに直撃した。技の影響なのかバードラモンは飛ぶ力を失いどんどん高度を下げていく。

 これは俺が食料庫で受けた技と同じか!

 

「力が……入らない……」

 

「お~ち~る~だ~!?」

 

 バードラモンの落ちる速度はぐんぐん速まり、このままでは地面に激突してしまう。

 

「きゃああああ!」

 

「あぶない!」

 

「まかせて、丈!」

 

 下から聞こえてきたのは丈先輩とゴマモン、いやイッカクモンの声だった。

 イッカクモンはバードラモンの落下地点に先回りしていて、なんとかバードラモンの体を受け止めることができた。

 このおかげでバードラモンに乗って俺達に怪我はなく、着地することができた。

 

「助かったわ、丈先輩」

 

「ありがとうございます丈先輩」

 

「信人君!無事でよかったよ。でも、一体どうしたんだい?」

 

「私から説明してさしあげましょう」

 

「こいつは……こいつがソウルモンなのか!」

 

 俺達の頭上からソウルモンが声をかけてきた。

 今度は姿を隠しておらず、堂々と宙に浮きこちらを見下ろしている。

 

「私の≪ネクロマジック≫は相手の力を吸い取ることができるのですよ。おかげであなたの卑怯な不意打ちのダメージもある程度回復しました」

 

 バケモンと同程度の奴だと思っていたが、こんな特殊能力を持っていたとは……

 どうやらこいつのことを過小評価していたようだ。

 

「大丈夫?バードラモン」

 

「うん、いっぱい食べたからまだ力は残っている」

 

「しかしあなた達に勝ち目はありません。いくら進化してもあなた達が戦う力を持っている限り、それを吸い取って私は回復することができるのですから!ふふふ、いや~我ながら恐ろしい!流石はデビモン様に認められた私!私の前ではあなた達などただのエサで…「≪ジ・シュルネン≫!」ぐぼぉ!?」

 

「ったく、さっきからごちゃごちゃと……隙だらけなんだよバーカ!」

 

「御無事デシタカ、マスター」

 

「ハグルモン、ドラコモン!」

 

 イッカクモンの後ろからハグルモンとドラコモンが姿を現した。

 ソウルモンは自慢話をドラコモンのビーム弾攻撃で強制的に中断させられて、墓石群の中にポテッと落ちた。

 

「まったく、あれくらいのこともちゃんとできないのかよ信人!」

 

「うっ、ごめん。ちょっと焦りすぎたんだ」

 

 ドラコモンの辛辣な言葉に俺は返す言葉もなかった。

 

「俺のご主人なんだからしっかりしてくれよ」

 

「あぁ、同じ過ちはしない。それと、助けに来てくれてありがとな」

 

「……一応、ご主人だからな……当たり前のことだぜ」

 

 ドラコモンは小さい声ではあったがうれしい言葉を言ってくれた。

 この様子だとさっきの叱咤も俺を心配してのことだったのかもしれない。

 

「……素直デハナイデスネ」

 

「んだとハグルモン!」

 

「よくもやりましたねぇ~!」

 

 先ほど倒れたソウルモンだったが、俺達が会話をしている間に復帰したようだ。

 

「何をしているのですバケモン達!さっさと攻撃なさい!」

 

「「「バ、バケ~!」」」

 

 教会崩壊の危機や先輩達の登場が原因でパニック状態のバケモン達だったが、ソウルモンの一喝で、散開して戦闘態勢に移った。

 様子を見てみると、度重なるイベントでバケモン達は興奮しきっていて、とても話を聞くような状態には見えない。

 いよいよこれから本格的な戦闘が始まることになる。

 

「な、なるべく仲間は傷つけないでほしいだ~」

 

「そうだぞ~」

 

「そんなこと言っても、これだけの数のバケモン達を避けながら攻撃なんて至難の技よ!」

 

「「「≪ヘルズハンド≫!!」」」

 

「ぐお!?」

「うわあ!?」

 

 バケモン達は協力して技を放ち、複数の腕を使ってイッカクモンとバードラモンの動きを封じ込めた。

 

「ふふふ、このまま力をいただき…」

 

「≪デリートプログラム≫!」

 

「おっと、二度も同じ手は食いません!≪ネクロマジック≫!」

 

 この隙を狙ってソウルモンがまた力が吸い取ろうとしたところで、ハグルモンが牽制攻撃を放ちそれを阻止した。

 ソウルモンは妨害してきたハグルモンに攻撃を放ったが、よく見ると緑の光線はそこまでスピードは速くなく、≪フルポテンシャル≫で素早さを上げる前のハグルモンでも危なげなく避けることができた。

 あの攻撃はこちらの動きが止まっていないと当たることはないだろう。

 

「よいしょお!」

 

「「「バケ~!?」」」

 

 イッカクモン達も体格差を生かしてバケモン達の拘束からなんとか逃れることができたようだ。

 

「チッ!やっぱり使えない!しかしこうすればあなた達はどうすることもできない……」

 

 言うがはやいかソウルモンは姿を消してしまった。

 どうやら姿を消してこちらの隙を突く作戦のようだ。

 姿が見えない上にバケモンが乱舞している状況じゃ、ソウルモンを見つけることは困難を極める。

 これではどこから技が飛んでくるか分からない。

 だから咄嗟に隠れられるように、俺達人間組は近くに寄り添って墓石を遮蔽物にして座り込んだ。

 

「ソウルモンが……でもこれじゃあどこにいるかなんて分からない」

 

「それに、バケモンをどうにかしないと技が出せないわよ!」

 

「まず、この()()達を鎮めないとまずいですよ!」

 

「亡霊……幽霊……そうだ!」

 

 どうやら丈先輩は俺が言ったキーワードに気付いたようだ。

 

「幽霊にはありがたいお経のご利益しかない!ありがたいお経のご利益で、バケモン達とソウルモンの動きを止めるんだ!」

 

「そんなことできるの?」

 

「できる!!」

 

「ありがたいお経を知っているんですか?」

 

「田舎のおばあちゃんから、テストができるようになるありがたいお経を教えてもらったことがある!」

 

「そんなものバケモン達に効くの?」

 

「あ………」

 

 ここまで自分の策を熱弁していた丈先輩だったが、なぜか急に黙り込んでしまった。

 え?ちょっとなんでそこで黙っちゃうの丈先輩?

 ここは根拠のない自信をぶちまけてあのお経を唱えるんじゃないの?

 

「……やっぱりやめよう、きっと無駄なことなんだ。僕の判断なんてあてにならない」

 

「え!?」

 

「僕の判断で君を危険な身に合わせちゃったから……僕の判断なんかに自信持てないよ!」

 

 わああああ!!俺のつまらないミスがこんなところに飛び火してるううううう!!

 どうも丈先輩は俺がバケモン達に捕まったことに責任を感じてしまい、また弱気になってしまったようだ。

 なんとか説得しなければ……

 

「いや、あれは俺がドジを踏んだだけで、別に丈先輩は何も悪くないですよ!」

 

「でも君は僕の判断に従って、それでもう少しのところで生け贄になるところだったんだ。もう僕の判断になんて従えないだろう?」

 

「そんなことないです!丈先輩、これまで的確な判断してくれたじゃないですか!あの作戦だって、リスクとリターンを考えれば実行して当然です。失敗したのは、俺のツキのなさと焦りのせいなんですよ」

 

 あの穴は俺しか通れなかったし、あのままではジリ貧だったのは明白だ。

 だからあそこで行動を起こしたのは決して誤った判断ではない。

 しかしあの失敗は俺が焦って周りの確認をせずに部屋を飛び出してしまい、つまみ食いに戻ったバケモンと遭遇してしまったから引き起こされた事態だ。

 もっと慎重に動いていればこんな事態にはならなかったはず……これで丈先輩が責任を感じて自信を無くすなんて、俺の気が済まない。

 

「たまたま運が悪かっただけ、たった一度の失敗で自信をなくなさないでください!」 

 

「信人君……」

 

「こうして俺も無事だったんですから、もうそのことは置いておきましょう。これは俺が反省して次に活かせばいいだけです。それに今の提案だって別に失うものは何もないはずです。やってみましょう、リーダー!」

 

「……分かった!やってみるよ!そうだ、ありがたいお経なんだから効くに決まってる!!」

 

 先ほど丈先輩が見せた弱弱しい表情は消え去り、今はリーダーになると宣言したときの引き締まった顔をしていた。

 ……この後にすることを考えれば少しシュールだが。

 なにはともあれ丈先輩が自信を取り戻してくれたようでなによりだ。

 

「自信が戻ったのはいいけど……ちょっと怖い」

 

「よし、じゃあ……るきでくよるきでが~とすて~るきでくよぎし、ふ~ら~…木魚!!」

 

「は、はいぃ!!ああっと、えーっと……あ」

 

 丈先輩の無茶な要求に困惑する空先輩だったが、自分のかぶっている帽子が木魚の代わりになるのではないかと気づき、帽子を外して丈先輩に渡した。

 丈先輩はそれを木の棒でたたき謎のお経を続け、帽子改め木魚からなる音でそれなりの雰囲気は出ている。

 

「ち、力が抜けるんだ~」

 

「おらも~」

 

「「「バ、バケ~」」」

 

「あ!バケモン達の動きが……」

 

 丈先輩がお経を唱え始めると、辺り一帯を飛び回っていたバケモン達は徐々に力を失っていき、浮遊することもできなくなり地面に座り込んでしまった。

 

「……こ、こんな馬鹿なことで……私が力を失うなど」

 

「ソウルモン!こんな近くまで来ていたのか……」

 

 今まで姿を消していたソウルモンも、お経の効力によって俺達のすぐ目の前で姿を現した。

 もう少し作戦実行が遅れていたらこの至近距離から攻撃を受けていただろう。

 

「イッカクモン!バードラモン!今だ!僕たちは退避ぃ!」

 

「合わせろドラコモン、ハグルモン!」

 

「こ、こんなの馬鹿げている……デビモン様に認められたこの私がぁあああああ!」

 

「≪メテオウィング≫!」

「≪ハープーンバルカン≫!」

「≪ジ・シュルネン≫!」

「≪デリートプログラム≫!」

 

 俺達のデジモンの一斉攻撃が、ソウルモンに殺到した。

 お経で力を奪われたソウルモンは、もちろんこれを避けることができずにすべて直撃。大きな爆発が発生して辺り一帯いは煙に包まれた。

 

「これで……」

 

「おのれぇ……おのれええええ!!」

 

「まだ生きてるのか!?」

 

 もうもうと上がる砂煙の中からソウルモンの怨嗟の声が聞こえ、さらにボロボロの姿を現した。

 あれほど凄まじい攻撃を受けていながらまだ生きてるとは……デビモンに認められたというのも納得してしまうほどのしつこさだ。

 

「こうなったら最終手段ですよ……黒い歯車よ、私に力!!」

 

 ソウルモンが腕を振り上げた瞬間、オーバーデル墓地全体が揺れて地面がひび割れていく。

 ひび割れた地面の隙間では、原作通り黒い歯車が回っていた。

 

「お、お助け~!」

「島が割れるぞ~!」

「退避~!」

 

 先ほどまでへこたれていたバケモン達はこれに驚き、大慌てで教会内に避難してしまった。

 まぁ、あのままだと戦いの邪魔になるだろうから、こちらとしては好都合だ。

 

「な、なんだ!?」

 

「下見てください!黒い歯車が回ってます!」

 

「ははは!デビモン様の力を使えばこんなこともできるのです!」

 

 ソウルモンの高笑いとともに、地面の下にあった黒い歯車が一斉に飛び出してソウルモンにどんどん吸い込まれていった。

 歯車が1つ吸い込まれるたびに、ソウルモンの体躯が一回りずつ大きくなっていく。

 すべての歯車が吸い込まれたとき、ソウルモンの体は教会の本堂に匹敵するほどの大きさになっていた。袖の中からはバケモンが持つものと同じ青紫色の腕が覗いている。

 おそらく原作のバケモン様と同様の大きさだろう。

 

「ヒヒ、ヒヒヒヒヒ!これまで随分こけにしくれまし……いや、してくれたなぁ!!呪い殺してやらぁ!!」

 

 黒い歯車を取り込んだことで凶暴性が増したのか、先ほどの紳士的な口調は完全に崩れてしまっている。

 

「す、すごく大きくなっちゃった……」

 

「的がでかくなっただけです!攻撃しましょう!」

 

「そうだ、大きくなったってソウルモンを倒すことに変わりはない。みんな攻撃だ!」

 

「≪ハープーンバルカン≫!」

「≪メテオウィング≫!」

 

「そんな攻撃、効かんわぁ!!」

 

 イッカクモンとバードラモンが一緒に攻撃を放つが、それぞれの攻撃はソウルモンに当たる直前に何かの力が作用して別の方向に飛んで行ってしまった。

 

「ヒヒヒッ、≪エンドトランス≫!」

 

「ぐあああ、頭が痛い!」

「うぅ、私も…」

 

 ソウルモンが帽子から目を覗かせ、さらに青い怪光を放った。

 それを受けたバードラモンとイッカクモンはうずくまって地面に横たわってしまう。

 

「ヒーッヒッヒッヒ!これはお前らの意思を奪う呪いだぁ!俺様の駒になってもらうぞ!」

 

「なんだって!?」

 

「止めさせないとまずい!ドラコモン、ハグルモン!」

 

「≪ジ・シュルネン≫!」

「≪フルポテンシャル≫!≪デリートプログラム≫!」

 

「ぐぅ!お前らの相手は後でしてやる!今はこいつらを洗脳するのが先だぁ!」

 

 ドラコモンは得意のビーム弾攻撃、ハグルモンは能力を上げた後に攻撃を放ったが、効いてはいるものの攻撃を止めるには至らなかった。

 このダメージでは洗脳されるまでに怯ませることはできないようだし、お経を唱えている暇もなさそうだ。

 

「くそ!何か他の方法は……」

 

「さぁてもう少しだぁ!ヒーッヒッヒヒ「≪ヘルズハンド≫!」なぁ!?ぐおおおお!?」

 

「こ、今度はなんだぁ?」

 

 洗脳されるまでもう少しというところで教会の正面扉が吹き飛び、その中から伸びてきた青紫色の巨大な腕がソウルモンの横っ面を叩いた。

 ソウルモンは墓石群の中に突っ込み砂煙の中に沈んだ。

 

「バケー!」

 

「今度はバケモンが大きくなってるわ!」

 

「もしかして、これがバケモン様!?」

 

「そう見たいですね……おい、バケモン!お前ら協力してくれるのか?」

 

 教会の中から出てきたのは巨大化したソウルモンに匹敵する大きさのバケモンだった。

 どうやらバケモン達は教会の中で合体したようだ。

 

「バケモンじゃないだ~!バケモン様だ~!たぶんさっきの黒い歯車がおら達の故郷をばらばらにさせる奴だから、おら達ソウルモンに従う理由なくなっただ~。だから遠慮なく戦えるだ~!」

 

 たしかに黒い歯車はすべてソウルモンに吸収されたから、土地を支配する力はなくなった。

 その証拠に、周りを見回すと流れる風景がさっきと逆になっている。島がムゲンマウンテンに向かって戻っているようだった。

 

「……ぬぁあ!!愚図が何匹集まったって、俺様に勝てるものかぁ!≪ネクロマジック≫!」

 

「バケー!≪デスチャーム≫!」

 

 ソウルモンの放った緑色の光線と、バケモン様の放った青色の光線がぶつかりせめぎ合う。

 ぶつかった瞬間は拮抗していたものの、だんだんバケモン様が放った青色の光線が押され始めた。

 

「バ、バケ~!」

 

「ヒーッヒッヒッヒ!これが愚図共と俺様の力の差だぁ!力はもらったぁ!!」

 

「そうはさせない、この隙に攻撃だ!」

 

「分かったわ、バードラモン!」

 

「≪メテオウィング≫!」

 

 バードラモンの翼から炎の雨が放たれ、バケモン様と相対している隙だらけのソウルモンは、そのすべてをまともに受けてしまった。

 

「ぐふぅ!おのれぇぇ!」

 

「隙ありだ~!」

 

「しまっ!?ぎひぃ!?」

 

 ソウルモンはバードラモンの攻撃に気を取られて攻撃をやめてそちらの方に体を向けてしまった。

 しかし、バケモン様は攻撃を止めていない。

 そうなるともちろんぶつかり合っていた光線は押し切られてしまい、バケモン様の攻撃がソウルモンに直撃して体を膠着させた。

 これではもうあの不思議な力で攻撃の軌道を変えることはできない。

 ここはチャンスだ、早く攻撃しないとまずいけど……

 

「今だぁ!一斉攻撃!」

 

「≪メテオウィング≫!」

「≪ハープーンバルカン≫!」

「≪ジ・シュルネン≫!」

「≪デリートプログラム≫!」

「≪デスチャーム≫!」

 

 俺が合図するまでもなく、この機会を見逃さなかった丈先輩の合図とともにデジモン達が一斉に必殺技を放つ。

 体が大きくなり的が大きくなった上に、体を膠着させているソウルモンに当たらないはずがない。

 

「デ、デビモン様ああああああ!!」

 

 黒い歯車で力を増強したソウルモンでもこの火力には耐えることができず、自らの主の名前を叫びながら、トレードマークの三角帽子だけを残して消滅してしまった。

 

………………

……………

………

……

 

「やっただ~ソウルモンをやっつけただ~」

「これでいつも通りの暮らしができるぞ~」

「島も元にもどるだ~」

「めでたいな~」

「こうなったら~……」

 

「「「「「踊るしかないだ~!!」」」」

 

「まったく調子いいんだから」

 

「私達を襲ったことなんて、す~っかり忘れてる!」

 

「まぁ、全部丸く納まったからいいじゃないか」

 

 ソウルモンを倒した後、他のみんなは勝利の余韻に浸っていた。

 俺もそうしたいところだけど、その前にやらなくちゃいけにことがるな……

 

「空先輩、丈先輩……」

 

「何、信人君?」

 

「心配かけて、ほんとにすいませんでした!」

 

「あ……」

 

 俺は空先輩と丈先輩に向かって勢いよく頭を下げて謝った。

 空先輩はやさしくて責任感が強いから、俺がバケモンに捕まったと聞いた時はすごく心配したはずだ。

 丈先輩だって、先ほどの戦いの中で言ったようにリーダーとしての責任を感じてしまった。

 俺の軽率な行動でいらない心配をかけてしまったのだから、頭を下げるのは当然のことだ。

 

「頭を上げて信人君……反省してるんだよね?」

 

「それはもちろんです!」

 

「そう、ならそのことはもういいわ。でも、あたし達がすっごく心配したってことは覚えててね?」

 

「はい!今度からはもっと気をつけて行動します」

 

「う~ん、行動ねぇ……」

 

 空先輩は俺が謝ったことに対してはやさしげな表情を向けて許してくれたが、俺が次の行動の話をすると顔を曇らせた。

 

「信人君、あなたはまだ小学2年生で、あたしたちよりも小さいの。今回はあなたにしかできないことだったから仕方なかったけど、ほんとのことを言えばそういうことはあたし達に任せて、自分の身を守ることに専念してほしいの」

 

「それは……」

 

「あなたのことはしっかりあたし達が守るから……ね?」

 

「……すいません、それちょっと承諾できないです」

 

「どうしてだい?」

 

「自分にできることがあれば、それは率先してやりたいんですよ。戦いの方だって、今はこいつらがいるから力になれるはずです」

 

「おう!」

「ギギ……」

 

「でも……」

 

「こんな未知の世界で生きていくなら、みんなが協力していかないと駄目ですよ。俺、がんばって力になりますから、だからお願いします」

 

 俺はまた頭を少し下げてから、空先輩の目をしっかりと見つめてお願いをした。

 裏話的なことすれば、ここで行動を制限されると原作改変に支障が出るかもしれないから空先輩の提案はちょっと受け入れられない。

 心配してくれることはうれしく思うけど……こちらの事情で断ることになるからちょっと心苦しい。

 

「……僕はいいと思う」

 

「丈先輩?」

 

「君の助言は十分役に立つことは今回の件でよく分かったから、僕達の力になってくれると思う。それに、君の言うとおりここは未知の世界だ。僕達全員が力を合わせないと太刀打ちできないことだってあるかもしれない」

 

「………」

 

「それに、彼一人にやらせることもないだろう。僕たちがしっかりフォローしてあげれば、安全性はかなり高くなるはずだ」

 

「……はぁ、分かったわ」

 

「ありがとうございます!」

 

「でも、ちゃんと気をつけるのよ?」

 

「そうだぜ~、まったく今回は手間かけさせやがって」

 

「はぁ~、返す言葉がない」

 

 ちくしょう……丈先輩と空先輩から了承をもらえたのは良いけど、今回の事をネタにドラコモンが嫌味を言ってきた。

 俺がまずいミスをしたってことは分かってるから、あまり強く言いかえすことができない。

 

「たった一度の失敗でくよくよすんなって!……あれ?この言葉どっかで聞いたような?」

 

「ゴマモンも嫌味か?それは俺がさっき丈先輩に言った言葉だよ」

 

「あ、そうだった!」

 

「「「アハハハハ!」」」

 

 俺が溜息をついてがっくりと肩を落とす姿が可笑しかったのか、丈先輩達は声をあげて笑った。

 まぁなんにせよ、俺が行動することを先輩達に認めてもらえてよかった。

 

「それで、これからどうしますか?」

 

「そうねぇ……あ、霧が晴れてるわ」

 

「島だっていつの間にか逆に動いている。向かっている先は……ムゲンマウンテンだ!」

 

 ソウルモンを倒したことで霧が晴れて、島がどこに向かっているかはっきり見えるようになった。

 

「他の人たちもこんな風に分離した島を元に戻しているかもしれません」

 

「じゃあ、みんなあそこに向かっているのね」

 

「僕達もイッカクモン達に乗ってそこに……「ぐぅ~」……今の音は?」

 

「あ、あははは……すいません、その前に何か食べてもいいですか?食料庫では何も口にしてなかったんですよ」

 

 さぁ行くぞというところで俺の腹が激しい自己主張をしてしまい、緊張感のあった雰囲気が四散してしまった。丈先輩達はそんな俺を生暖かい目で見てくる。

 うわあぁ、滅茶苦茶恥ずかしい……まったく腹ペコヒロインじゃないんだからこんなことしでかして誰が得するんだよ。

 はああぁぁ、今日はまったくいいところがない……

 

「ふふ、手がかからないって言ってもやっぱり子供ね」

 

「あそこに戻れば戦いもあるかもしれないし、しっかり力を蓄えてから向かおう」

 

「……すいません。さっさと食べて、はやく出発しましょう!」

 

 まったくこんなことで時間をロスすることになるとは……

 これでデビモン戦に間に合わなくなるなんてことはないだろうな?

 そんなことになったら悔やんでも悔やみきれないから、早く食べて出発してしまおう。

 食事をすればゴマモン達の体力も回復して移動スピードも速くなるだろうし、何とかなるだろう。

 俺達は教会の中に入って食事をとることにした。

 そしてその10分後に、イッカクモン達に乗ってオーバーデル墓地を出てムゲンマウンテンに出発した。

 ……あ、ゲンナイさんに聞いた話をするのまた忘れてた。

 まぁ、別に話さなくても大丈夫だろう。選ばれし子供のことを話したら俺は戦う必要がないとか言われそうだし、ゲンナイさんが通信してくるまで黙っておくか。




信人君は行動したものの、今回はほとんどいいところなし。
また別のところでの活躍を期待しましょう。
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