001理解できるはずなのに…それでも理解できないから
どこまでも何もない空間、それはまるで自分の心の表現しているようで僕は必死に否定した。そうそれがすべての始まりだった。あの日僕はカミサマに会ったんだ。
「なれど良いのか? 」
「構いません。きっと両親は僕の幸せなんてどうでもいいんだ。だから平気で離婚なんてできるんです」
きっと僕は自暴自棄になっていたんだと思う。誰も僕のことを見てくれてないと勘違いしていたんだ。だから僕は生きることじゃなくて死ぬことを選んだんだ。
「人間の考えことは分からぬ。 分かり合えぬなら口にすれば良かろう」
「それができないから人間は喧嘩するんです。それで喧嘩して仲直りするんです」
神はその光を宿さない青眼で僕を見つめる。まるでそれで僕のすべてを見透かされているようで不快感を示した。だから僕は思わず神から目を逸らし、拗ねた子供のように地面を見つめた。
「まぁ良い。ではここに立て」
「…はい」
神が指さした先には微かに光る魔法陣がありそれを見ているだけでおぞましいナニカに支配されるような感覚がする。それは人間が触れてはいけないナニかであり僕が生きている限りでは触れてはいけないモノなのだと確信した。
「ッッ!?」
「これ呑まれるでない。見つめずにそこに立つのじゃ」
神から発せられたその一言が僕を正気に戻させた。それとともにこのまま身を任せてしまったほうが楽だったろうか一瞬思ったがその考えを無理矢理脳の奥深くに押し込める。
「いいか。忘れるでない、貴様は生まれ変わるのじゃ。それでやり直すのだ本来の形に、だからそれまで死んではならん」
神のその言葉を胸に刻み込む僕は私になり異なる循環に身を任せた。
最初に見たのは母親の顔だった。母は助産師に抱き上げられた僕に向かって涙ぐみながら静かに口を開いた。
「生まれてくれてありがとう。私をあなたの母にしてくれてありがとう」
そんな彼女を見たとき僕は心の底から思ったんだ。
(あなたの子供にしてくれてありがとうございます)
自暴自棄だった僕にとって母の言葉は傷口に染みるように痛く、だけどそれ以上に嬉しかったんだ。
午前2時を周り人の気配がすっかりなくなった夜の公園に一人の少女が空に向かって手を広げていた。
「私はここにいるぞー!!!!! 」
その存在を世界に示さんと如き叫びは空に向かって飛び無残にもかき消された。それでもどこか満足そうに空を見上げたまま笑う彼女は息を大きく吸いそして咽せた。
「ゴッホケホ… ふぅふぅ」
そしてまた笑い始める、その彼女のことを遠くで見ていた癖っ毛の少年は彼女のどこか不思議な魅力に憑かれていた。まるでお伽話のお姫様を見ているかのように彼女の周りだけ現実感が無くなっていた。そのことに夢中になりすぎていたのだろう、少年は彼女にバレないように近づこうとしたが足元にあった枝を踏んでしまい夜の音のない公園にその音が異様なまでに響いた。
「やっべ!」
そう言ってしまったがもう遅い。彼女はこちらを無表情で見ていた。そして彼女はこちらに背を向け公園から出ようとしていた。少年はここで彼女に話しかけなければもう二度と会えないと思ったのか必死に彼女に声を掛けようとする。しかし緊張とパニックにより声が喉でつまり外にでない。それでも彼女は一刻とその歩を外に進めていく。そして公園の出口に差し掛かった時いままで溜めていた声を全部出すかのように叫んだ。
「俺の名前は一誠! 兵藤(ひょうどう)一誠(いっせい)! 」
彼女はその言葉に反応しその歩を止めこちらを振り返る。そして彼女もまた大きく叫ぶ。
「私は新城(しんじょう)千花(ちか)!! 」
まさか返事をしてくれるとは思わなかったのか一誠は呆けた顔で彼女を見つめた。その顔は月の光に照らされ幻想的で、とてもこの世のものとは思えないほど美しい笑顔だった。
深夜のテンションは怖い(確信)