IS IF もしも一夏があの守銭奴ステータスだったら【休載中】   作:縞瑪瑙

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・―――『縞瑪瑙』様『金ヶ一』様が入場されました。

・縞瑪瑙:『はい、というわけで第三話です。まず一言、お前たちそんなに守銭奴が好きかぁ!(褒め言葉)』
・金ヶ一:『ユニークアクセスも非常に伸びて、おまけにお気に入り登録者数が100人を突破したらしいな』
・縞瑪瑙:『こんな電波小説を読んでくださって本当にありがとうございます。今回はセシリアとの決闘の決着……まで書こうとしましたが……』
・金ヶ一:『む、途中までか?』
・縞瑪瑙:『申し訳ない。いろいろとシーンを盛り込んで、境ホラ的な要素も含ませたらかなり長くなってしまった。丁度良いところで分けるためにはここで区切るのが良いと判断しました』
・金ヶ一:『では私の雄姿はまた次回なのか』
・縞瑪瑙:『そうなりますね。では今回の作品を書くに当たり、感想欄でアイディアをくれたHN 『砂迷彩』様、『継接ぎ』様に感謝します。アンケートと判断されるかもしれませんので、アイディアはこの後活同報告に設置する折り袖出(アンケート)箱までお願いします』
・金ヶ一:『なお、今回は私の相方が出て来るぞ』
・縞瑪瑙:『ハイディポジションのキャラはあのキャラです。原作ではろくに説明されてませんので勝手にキャラ付けしちゃいましたが、後悔はしていません。ではどうぞ!』



第三話 守銭奴の問答

 翌日、すでに一夏とセシリア・オルコットの決闘話は学園中が知ることとなっていた。

 そこには尾ひれ背びれが付いており、一夏を贔屓するように脚色されたものやセシリアを擁護するものもあった。しかし実際のところ、一年一組の生徒が目撃した通りどう考えてもセシリアの側に非があり、そのように噂は伝播していた。

 しかし、一夏はそんなことをたいして気にするでもなく朝食をとるために食堂を訪れていた。噂を流したわけでも、脚色を加えたわけでもないので一夏本人にとっては関心が薄いことだった。そんなことより金に注意を払う、というのは一夏の言だ。実際一夏は早起きをしてアメリカの株についての情報をパソコンを通じてリアルタイムで調べていたのだ。その後仮眠をとってすぐさま学園へと向かうというかなりハードなスケジュールだったが、一夏は眠そうな気配すら見せない。今も和風の朝食を食堂の席に腰かけて食べていた。

 

「しかし、いきなり決闘と言われたが大丈夫なのか?」

 

 同席していたのは箒だ。箒も一夏と同じく和風朝食を食べていた。こちらは夜明けと同時に起きて型稽古をやった後だがこちらもきりっとしている。

 一夏は箒の心配げな問いに首を振る。出汁のきいた味噌汁を味わう手をいったん止めて一夏は言った。

 

「安心しろ箒。私は一度あのように言った以上容易く前言を撤回したりはしない。いかなる相手であれ私は全力を出し切り、そして勝利する。なにしろ私はこの学園では地球上全ての男性の代表のように振舞わなければならん。ラブコメまがいの迂闊な行動などしている暇もないし、もし負けるとしても全力を尽くした上でだ。なにより前言撤回など性に合わん」

 

 すらすらとこんなことを言うのである、箒からすれば中身はあれ(守銭奴)だが非常に頼もしく感じたし、同時に不覚にも胸の奥でキュンと来てしまった。何たる不覚か……! と心中で思う箒だが、それを表には出さずに思ったことを言った。

 

「相手は代表候補生なのだがな……準備の時間も短いのではないか?」

 

 うむ、と唸った一夏は鮭の塩焼きを炊き立ての白米の上に載せて、それを箸で一緒に口に入れ、咀嚼する。白米と混じる塩気を楽しみながらもそれをごくりと飲み込むと、噛んでいる間に考えていたことを言う。

 

「それが問題だな。ISに関する知識はあっても、実際に乗らないことには始まるまい。しかし昨夜のうちに調べたが学園で貸し出されているISはもう空きがないようだ。ないこともないが実質使用できるのもわずかである以上、できることは少ないな」

「で、ではだな、一夏」

 

 ここで箒の頭は、一つアイディアを思いついた。脳内会議が全会一致で送り出したのは、一夏へのアピール作戦も兼ねたものだ。

 

「せめて運動くらいはしないか? ここには剣道場もあるのだから私が剣道だけだが一緒にできる訓練をしてやろう」

 

 どうだ……? と箒は一夏の判断を待つ。さあ、どうなるか。吉と出るか凶と出るか。鬼が出るか、蛇が出るか。あるいは金が出て来るのか……って最後のは違う! そんな感じに表情をほとんど変えず、さりげなくを装った箒は脳内で妄想が加速していた。

 実は箒はとある年上の女性といわゆるメル友になっていた。彼女の方も思い人と結婚してからも妄想が加速し過ぎるらしく、時たま『ふふ、はしたない……』とつぶやいてしまうらしい。なんだかんだで影響を受けている箒もついついそれを言いそうになったとき、不意に一夏がこちらを向いた。

 

「ありがたいな箒。やはりタダで頼めるのはありがたい。では今日の放課後から頼むぞ」

 

 あっさり了承され、一夏は朝食に向き直った。時間がないため一夏の箸の動きは素早い。釣られて箒の箸も早くなり、二人仲良くきれいに平らげてしまった。

 しかし、うまく約束は取り付けたことに満足し、ぐっと机の下でガッツポーズをした箒は上機嫌で一夏とともに教室へと向かった。

 

 

 

 

 

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 そして、決闘当日となった。もちろん、この決闘が始まるまでにはいろいろとあったのだが、ここでは省略させてもらう。脱線を繰り返した挙句に迷走することが明白だからだ。

 噂が飛び回っていたためなのか既に試合の開始時間前には多くの生徒がアリーナへと詰め掛ける有様となっていた。本来これは授業中に行われるのだが、他クラスの生徒も勉強のためにという名目で見学が許された。ここには一夏のデータを得たいという狙いが見え隠れしていたが、遅かれ早かれ勝手に取られることがわかっていた一夏は大して気にしなかった。どうせ後で賠償請求を送り付けるのだ、大した問題ではない。

 一夏には特例ケースとして専用機が送られることになっていたが、世界中から菓子折りのように送られてきた資料を見た一夏はそれらをすべて『くだらない』と切って捨てた。専用機をくれてやるから身柄をよこせと、そう言っているも同然だったからだ。

 しかし、いくらなんでも学園にある第二世代型では最新鋭の第三世代機には劣ってしまう。性能の差は勝負の絶対的条件ではないが、勝つには性能も必要だ。

 ではどうすればいいのか? 一夏は恐らく提供してくれて、裏が比較的少ないところへと依頼することにした。

 

「束博士、専用機を一つ頼む」

『うーん対価は何かな?』

「箒の寝顔写真セットと剣道着の写真セットだ、今ならたれ状態の千冬姉さんの写真付きだ。ねん〇ろいども付けるぞ」

『おk! そっこでいっくんに丁度いいの作っちゃうよ!』

 

 偉い軽いノリで天災は引き受けてくれた。金の代わりにいろいろ持っていかれるよりは、一夏は自分と束の両方がWin-Winの関係になれる選択をしていた。

 

「で、私の専用機は直前になって届くことになったわけだ」

「間に合うのか、一夏?」

「間に合うだろう。束博士は人の好き嫌いが激しく、非常に気まぐれだが約束は守る人間だ。私が依頼をしていた人物も来てくれるそうだから、直前でも調整は間に合うだろうし、機体の特徴を知るなら動かさなくともできるかもしれん」

 

 既にISスーツに着替え、ピットで待機する一夏は届くであろうISをただ待っていた。しかし一夏は携帯端末で何やら操作をしているだけで、時間が近いことに起因する焦りや緊張は見えなかった。流石は一夏と呆れ半分関心半分の箒だが、しかし一週間の間の一夏の行動を思い出してみた。

 確かに毎日トレーニングルームに通い、毎朝自分との竹刀での稽古をやっていたが、それ以外にも何かやっていたのだろうかと思った。曰く、ISの構造などについても意見を聞きに行ったり、親交のある人物に意見を聞きに行っていたらしい。流石にそこまでは図々しくついていかなかったので、どうなったかはさっぱりわからない。

 ただ、かなり機嫌よい時を何度か見かけていることからすると、おそらく順調なのだろう。ただ、女としての勘でなんとなく他の女性が近づいているのを感じ取っていた。しかしIS学園が実質女子高である以上女性が近づくことに問題はないのだが……なんというか、一夏と似通ったにおいがするのだ。

 

 ……いや待て。

 

 箒は自問する。

 大体、一夏のあんな性格(守銭奴)に合わせることができるのはそれ相応の性格を持っていなければならない。つまり、千冬のように何らかの手段でねじ伏せることができる人物か、あるいは同じような性格であるか、だ。

 少し冷や汗が噴き出てきた箒だが、一夏の声に現実へと戻って来る。

 

「来たな」

 

 そして、重たい金属音とともに扉が開いて大きなコンテナが運び込まれてくる。

 人が丸ごとおさまりそうな巨大なそれは、灰色の冷たい外装を持ち、そして厳重にロックが施されているのが素人目にもわかった。これはもちろん貴重なISのコアを守るためなのだ、この程度でもまだ足りないくらいである。

 

『織斑、時間がないから急いで支度をしろ』

「了解した」

 

 頷いた一夏はすぐにコンテナ脇にあるコンソールをいじって操作する。いくつもあるロックが順々にはずれていったとき、箒はピットに入ってきた人物を見た。

 

 ……誰だ?

 

 それはIS学園の制服を着た少女だった。両目を閉じ、銀色の髪を肩のあたりまで垂らしていて、その一部は三つ編みになっている。いよいよ箒の危険感知センサーがアラート音を鳴らす一方で、一夏もまた入ってきた人物に気が付いた。

 

「クロエか、わざわざすまないな」

「構いません一夏。だって……」

 

 だって、といったクロエと呼ばれた女子生徒は右手を動かした。

 それは腕が体の横にあった状態からの動きだった。肩から肘にかけてが一気に持ち上がり、自分の胸のあたりまで手が持ち上がる。

 続いて、次に生まれたのは指の動きだ。動かしやすいように腕を動かしている間に一度屈伸した指は、腕が止まる直前で一気にとある形を作り上げる。それは拇指対向性―――親指が拳を握った時に他の指と向き合うように握りこまれる特徴を生かすことでそれを作る。人差し指が第一、第二関節の順に曲り、人差し指と親指の先端が触れ合い輪を作り上げる。ほぼ完ぺきな円を作り上げたその指の形を意味するところを、箒は一瞬にして理解した。

 

「金がかかっているんでしょう!?」

「当然だ! 金がかかっていないことほど、価値のない話はない! そしてこれは金が絡む、故に全力だ!」

 

 誰もが一度はやったことがあるであろう、金を意味する手指の形。それを向けるクロエは実にイイ笑顔で、一夏もまたテンション高めに無表情だ。無表情なのは無表情だが、冷静な顔の下には紛れも無い強欲があるのがわかった。意味が分からないと思うが(ry。

 そして箒も、一体この女子生徒が何者かを理解した。

 

「「「「「「「お前も守銭奴かよ!?」」」」」」」

 

 奇しくも、その場にいた全員と、管制室にいた千冬たちは同時に突っ込みの声を上げていた。

 しかし、それを笑って受け流したクロエはイイ笑顔で言った。

 

「金が大好きで何が悪いのぉ!?」

「理解できるか普通!」

「ふん、お金の価値がわからないなんて。バーカバーカ、貧乏人!」

 

 箒がツッコミ返しをするがクロエはめげない。罵倒の仕方までいっそ清々しく金が大好きな感じを前面に押し出している。くるりと一夏の方に向き直ると、やや悲壮な声マネをして縋り付いた。

 

「一夏! なんだか金のない貧乏人が理解できないことを言ってくるよ!」

「気にするなクロエ。我々は金があるがあちらにはない。そこですでに決定的な違いがあるのだ、対話の余地などないぞ」

 

 励ますように言う一夏はすぐに届けられたISの方を向いた。

 

「さっそくISを準備する。協力頼むぞ」

 

 

 

 

 

 

 

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 セシリア・オルコットは大いに困惑していた。

 試合開始の時間が迫る中、対戦相手である織斑一夏がやってこないのだ。いや、ピットからアリーナへと続くゲートは開いており、いつでもISが飛び出して来そうなのだが、一向に来る気配がない。

 

「どうしたのかしら……」

 

 なにやら人が出たり入ったりを繰り返しているようで騒がしい。何かトラブルが起きているなら管制室から連絡が来てもおかしくないのだが、それもなかった。

 そこでISの通信回線を開くと管制室へとつなぐ。ワンコールでつながったので、早速セシリアは文句の一つでも言おうとした。

 

「あの『ギャア! ちょっと織斑先生落ち着いてください!』……!?」

 

 回線から届いたのは、クラスの副担任である真耶の悲鳴。思わず黙り込んだセシリアはそのまま耳を傾けてしまった。

 

『や、やめてください織斑先生! いくら織斑君と同じ守銭奴キャラが増えたからって暴走しちゃいけません!』

『離してくれ、私は一夏の被害者をこれ以上増やすわけにはいかん! だから離してくれ! HA☆NA☆SE!』

『だからって近接ブレードはダメですってば! 織斑先生の腕だとスパッと首が飛んで血がダダベチャァってなるじゃないですか!』

『しかも幼気(いたいけ)な子供だぞ!? どっから連れ込んだのだ! というか弟がペド趣味で落ち着けるか! 私の弟がこんな犯罪者予備軍なわけがない!』

 

 セシリアは静かに回線を閉じることにした。

 いったい何が管制室で起こっているのかは、まったく理解できない。というか理解できてはいけない気がする。人間的にも正気度的にも。

 気を取り直して、今度は対戦相手側のピットの方へと通信回線をつなげる。管制室があれなら直接言った方が早いだろうと考えたのだ。しばらくして回線が接続されたので、早速音声回線をつなげた。

 

「あの『金が好きで何が悪いというのだ、箒!?』……!?」

 

 回線から届いたのは、クラス、そして学園唯一の男子である織斑一夏の怒声。思わず黙り込んだセシリアはそのまま耳を傾けてしまった。

 

『ええい、やめないか箒!? いくら私と同じ守銭奴キャラだとしても問題ない、だから暴走するな!』

『離さんか、私はこれ以上一夏の被害者を増やすわけにはいかん! 離してくれ! HA☆NA☆SE!』

『だから私に近接ブレードを向けるな、ダメだ! お前の腕ではスパッと切り裂いて私の首がすっ飛んでえらいことになる!』

『しかも幼気な子供だぞ!? 一体どっから連れ込んだのだ! というか一夏がペド趣味で落ち着けるか! 私の幼馴染がこんなに犯罪者予備軍なわけがない!』

 

 セシリアは静かに回線を閉じることにした。

 いったい何がピットで起こっているのかは、まったく理解できない。というか理解できてはいけない気がする。人間的にも正気度的にも。

 気を取り直して、もう対戦相手が出てくるまで待つことにした。この様子では騒ぎが収まるまでかなり時間がかかりそうだ。

 

「暇になりましたわね……」

 

 そう、ISを装着している状態では何もやることがないのだ。

 お真面目なセシリアはこういうときに余計なことはしない主義だが、実はIS操縦者の多くが専用機に時間つぶしの道具をこっそり入れている。

 例えば、ドイツのとある部隊の副隊長はラノベや漫画などの娯楽を格納領域に入れており、いつでも読めるようにしている。

 また、とあるアメリカのテストパイロットは、テスト中のISの格納領域にいわゆる婚活の情報をまとめて入れている。アメリカでも結婚事情は厳しい。何しろ“あっち”の趣味の人が普通にいる国なのだから。因みに実際にIS操縦者同士が同性間で結婚するケースも増えており、隠れて少子化が進んでいるのは内緒だ。

 

 

 

 

 

 

      ●

 

 

 

 

 白い装甲のISをまとって一夏が飛び出してきたのは、それから三十分も経った後だった。

 

「いや、済まない。最後には箒が木刀でリアル斬鉄をやって、それをクロエが大気蹴りをかまして回避するという事態まで起こってしまってな。慌てて私が五円玉メイルで割って入って……如何した、そんなに疲れた顔をして」

「疲れますわよ! 大体試合開始予定時間からかなり遅れていますのよ!?」

「しょうがないな、では今から始めよう。まずは議論・応答からだぞ。相手の言ったことにはそれ相応の内容を答えること、良いな?」

「ハァ……構いませんわ」

 

 セシリアの言葉に、もう覇気はなかった。事態の説明を求めたところで、どうせろくなことにはならないだろうことは想像がついた、というかついてしまった。

 ともかく、とセシリアはハイパーセンサーを通じて開示された情報を閲覧した。

 

 ……試作第5世代型ISですって!? なんで世代を二つも飛ばしてそんなISが生まれているのです!?

 

 現在最も配備されているのは第二世代型のISだ。学園に置かれる打鉄やラファールなどがそれにあたる。また、一部では開発の差こそあるが、自分が乗る第三世代型ISが開発が進められており、ヨーロッパでは総合IS開発計画であるイグニッション・プランが実行されている最中だ。

 

「私のISは少々特殊でな……まあ、気にすることはないぞ。ISなぞ金などよりも価値がないものだからな。いちいち気にかけていたら禿げて、皺が増えて、肌にはシミが増えてしまう。さらには胃もたれがひどくなって胃薬の世話になる。そうすると薬局などで育毛剤や肌をケアする化粧品や胃薬が大いに売れて金が流れる、わかったな?」

「わかりませんのよー!」

「すまんな、つい脱線してしまった。しかし金の方が重要である以上仕方がないな、うん」

 

 自己完結した守銭奴はうんうんとうなずくと、漸くセシリアの言わんとすることに気が付いた。

 

「そちらのISは第三世代か。――――金の無駄だな(なかなかよさそうなISだ)」

「本音がダダ漏れですのよー!」

「おっと、つい本音が出てしまったな……これは失敬」

 

 そして守銭奴は身に着けているISを手でさして紹介を行った。

 

「私のISは試作第五世代型IS『白面稲荷金式(仮)』だ、現段階では未完成のため仮が付くが、量子化機能付き増量円柱金庫を四つほど装備していてな、これがなかなかに使える」

「なんですのそれは……」

 

 茶番だと、セシリアは判断した。だからというように自分の手にレーザーライフルであるスターライトを取り出す。安全装置を解除すると、センサー系と連動させる、

 

「まあよろしいですわ、さっさと始めませんこと?」

「心外だな、セシリア・オルコット……もう始まっている。そして貴様の一敗だ」

 

 えっ、と疑問の声を上げる観客席とセシリアの前で、守銭奴は指を一本立てていた。

 

「私との応答による勝負を途中で投げ出した。私が自分の機体について話したのに対し、貴様はライフルを出すだけで何の情報も明かさなかった。ゆえに貴様の失点だ」

「はぁ? 何を根拠に? 言いがかりはおやめなさい?」

「そちらこそ、言いがかりはやめておくといい。私は最初にISではなく、議論による勝負を挑み、そちらも了承していた。それを反故にするとは度し難いな」

 

 すると一夏は管制室の方へと回線をつなげる。

 

「教師 織斑、記録してるはずの映像をお願いする。それを全員が見れるようにしてほしい」

『ム、確かに記録してあるが、今か?』

「必要なことだ、お願いする。いまPCで見ている人は少し上までスクロールしても構わない」

「「「「「メタな発言はやめろ!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

     ●

 

 

 

 

 しばらくして、アリーナに先ほどのやり取りが再生された。

 

『いや、済まない。最後には箒がリアル斬鉄を行うという奇行を行って、それをクロエが大気蹴りをかまして回避するという事態まで起こってしまってな。慌てて私が五円玉メイルで割って入って……如何した、そんなに疲れた顔をして』

『疲れますわよ! 大体試合開始予定時間からかなり遅れていますのよ!?」

『しょうがないな、では今から始めよう。まずは議論・応答からだぞ。相手の言ったことにはそれ相応の内容を答えること、良いな?』

『ハァ……構いませんわ』

 

 アリーナの中が沈黙で満ちた。視線が行くのは、当然セシリアの方だ。誰もが似たような視線を送ってくることに気が付いたセシリアは、目の前の守銭奴をにらんだ。しかし全く守銭奴は気にした風もなく淡々と言う。

 

「私はそちらの了承をとった上で、議論による決闘を望んだわけだ。決闘だとそちらは言ったが、何もISを使うとは一言も言っていないからな」

「揚げ足を取りましたわね……!」

「違う、言質といってほしい。まさかそちらは自分が行ったことを翻意する気なのか? だとするならば貴様の、そして英国の信用はがた落ちだな。世界恐慌もビックリな勢いだ」

「くっ……」

 

 返答に詰まるセシリア。確かに国家代表候補生と言えど、ある意味国の代表としてこのIS学園に来ている。つまりセシリアの態度はそのままイギリスの態度ととられてもおかしくはないのだ。一連の言動を考えれば非があるのはセシリアである。一方で一夏の方は行動や言論は矛盾を起こしていない。

 そして、一夏は返答に詰まったセシリアを見て頷いて言った。

 

「返答がないか……つまり私の二勝目、あるいは二点目だな」

「な、なら!」

 

 セシリアは言い返しそうになった自分を抑えて、改めて宣告した。

 

「ISを用いての決闘ですわ! それがこのIS学園にふさわしいのではなくて?」

「フム、良いだろう。流石に断わるわけにはいかんな」

 

 一夏は専用機である『白面稲荷金式(仮)』の武装を展開する。

 

「偉人はこういった。Time is money. 時は金なり、と。だが私はこうも言おう」

 

 一息入れ、一夏は言った。

 

「Money is power. 金は力なり、と。『白面稲荷金式(仮)』戦闘モードで起動。クロエ、バックアップは頼むぞ」

『オッケー! そんな貧乏イギリス淑女(笑)に負けないでね!』

 

 すると白い装甲の一部がかの大妖狐『白面金毛九尾の狐』を彷彿させるような金色に染まっていく。また腰には量子化機能付き増量円柱金庫が二つ現れて、ハードポイントへとセットされる。

 

「では始めよう、ISによる決闘を」

 

 公式戦における、男性の操縦するISの初めての戦闘が開始された。

 

 

 

 




 戦闘までもってけなかったのは悔やむべきですね……次回こそ決闘となりますのでお楽しみに。

 まあ、今回は境ホラでも何度か発生した“討論による相対”を書いてみました。一夏は守銭奴ですが商人なので、言質をとったりとられたりには慣れています。その点でセシリアは負けてましたね。

 また今回は原作八巻?で出てきたクロエ・クロニクルの登場となりました。そんな彼女は守銭奴キャラという位置づけで、一夏のパートナーです。このままクロエ√突入しちゃおうかなぁ。

 次回の更新までまだかかると思いますが、お楽しみに。感想を待っています。



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