らき☆すた~if~ たとえばこんな物語   作:岡崎ひでき

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第六十話 もってけ! セーラーふく

「や~、今日もおつかれ~」

「あ、まーくんもお疲れ様♪」

「すいません、クラスのほうのお手伝いもままならなくて・・・」

「いいのいいの。みゆきさん達にはしっかり(まつり)を盛り上げてもらわなきゃ♪」

 

桜籐祭までの時間が迫ってきて準備に追われる今日この頃。

てか明日はもうリハーサルだ。

こなたさん達はどんな占いをやるのかは既に確認済みなので後はそれっぽい衣装を各自用意するだけなのでダンスの練習に専念している。

練習を終えたこなたさん達とばったり出くわして互いの近況報告をしている所だ。

 

「衣装も届いたし、全体練習の繰り返しで撤退的に煮詰めてるところだよ~。まさきの度肝を抜いちゃる!」

「まさきくんの度肝を抜いてどうすんのよまったく・・・」

 

差し入れの時に多少様子を見ているが、どのくらいのレベルに達しているのかまでは分からない。

ちなみに衣装をチョイスしたのはひよりさんのお兄さんだとか。

どんな衣装かは『当日のお楽しみだよ~♪』とこなたさんがのたまって見せてくれないため、どんな衣装かは分からない。

・・・別に気になってるわけじゃないぞ?

でも男がチアの衣装を選択してる時点でどうかと思うんだが(汗)。

ちなみに後輩組はまだ仕事が残ってるらしく居残り中。

本番前に体調崩さなきゃ良いけど。

 

「明日は最後の通し練習だからな。気合入れていこーぜ!」

「みさちゃん、たまには肩の力を抜かないと・・・」

 

ごもっとも。

ある意味巻き込まれる形で参加したみさおさんと峰岸さんだが、何だかんだで楽しんでやっている。

本番まであと2日。

クラスでの出し物の準備は明日1日で終わらせられるくらいの余裕はある。

裏方として出来る事はちゃんとやっておかないとね。

 

 

 

<翌日:リハーサル>

 

 

 

「いや~、お互いクラスの未完成具合がいい感じだね~♪」

『やかましいわ!』

 

スパ~ン!

スパ~ン!

 

「ふおぉぉっ!?」

 

桜籐祭前日。

今日いっぱい準備に追われるため、教室内の飾り付けや立て看板の仕上げなど残ってる仕事を片っ端から片付けている所にこなたさんのこの一言である。

俺とかがみさんはもはや慣れきったように今日もハリセンでこなたさんにツッコミを入れた。

 

「まったく。そういうあんたもなんでそんな格好でうろついてんのよ?」

「そういうかがみさんのそのカッコは・・・?」

「・・・今衣装あわせしてたのよ」

 

こなたさんの格好は某高校の制服に全身を覆う黒マント、それと黒い三角帽子。

典型的なファンタジーに出てくる魔法使いのようなカッコだ・・・マントの下は学生服だが。

明らかに長○有○の格好のような気がするがそこはスルー。

ついでに言うとかがみさんは白装束、白髪のかつらにバンダナ巻いて作り物のロウソクをつけて、ご丁寧に藁人形もぶら下げている。

・・・どういう脅かし方をするんだろう?

 

「私はまず、形から入って見たのだよ。宣伝にもなるしね♪」

「こなちゃんの衣装、かわいいよね♪」

「ちなみにこなたさんはどんな占いをするの?」

 

特に占いをするような道具は・・・このカッコからして杖でも出すか?

でも内容までは解からないが。

そう考えてると、こなたさんはおもむろに杖・・・ではなく先っぽに星のついた短いステッキを取り出す。

 

「・・・あなたはこれから4分19秒後に飲み物を買って4分57秒後につまずいて中身を見知らぬ男性にかけてしまい、直後に謝罪をしてその後、1週間以内にその縁でその方と付き合うことになるでしょう。」←超早口

「それは占いではなく、予言では・・・?」←苦笑

「っていうか、あまりにも占いとはかけ離れてるんじゃない・・・?」←呆れ声

 

すっかりなりきってる様だが、俺もあいにくみゆきさんと同意見である。

そういやみゆきさんはタロット占いをするとか言ってたけど・・・。

 

「つかささんは何の占いだっけ?」

「私? 私はね、ゆきちゃんに勧められて『形を見る占い』なんだけど・・・」

「へ~、つかさ、どんなの?」

「え、えっと・・・」

 

何か答え難そうなつかささん。

・・・もしかして上手くいってないのかな?

 

「・・・こないだウチで実演した時はせんべいを2つに割って、その場で即興で考えた答えを披露してくれたのよね~♪」←からかうように

「お、お姉ちゃ~ん・・・」←涙目

「ふふふ、大丈夫よつかさ。こなたみたいに結構適当にやってるヤツもいるみたいだから♪」

「・・・まさき~。かがみんがいじめる~!」

「あきらかに嘘泣きだって分かるからやめい」

 

そんな感じで盛り上がっていると不意に後輩の声が聞こえてきた。

 

「おお~、先輩達も気合入ってますね~」

「コナタもカガミもサイショっからクライマックスデスネ♪」

 

ひよりさんとパティさんの登場。

そして後ろには・・・見なかった振りをした方が良いのだろうか、アレは?

 

「あのさ、後方に控えてるゆたかさんとみなみさんのあのカッコは・・・(汗)」

「ふっふっふ。ギリギリになりましたけど、ようやく完成したっス!」

「ドウゾ~!!」

 

そして2人が指し示した場所には、材料はともかくとして、見た目きらびやかに着飾ったゆたかさんと、彼女と腕を組む形でみなみさんが立っていた。

みなみさんは白い紳士風の衣装、そしてゆたかさんは真紅のドレスを身に纏っている。

 

「おお~!」

「2人ともかわいい♪」

「とってもよくお似合いですよ♪」

 

・・・てか気合入りすぎだろコレ。学園祭でやるレベルじゃねぇ(汗)。

 

「そういえば聞いてなかったけど、田村さん達のクラスがやるのって・・・?」

「ヅカ喫茶っス♪」

「あ~、かがみにも分かりやすく説明すると、『ヅカ』のようなショーを簡単に楽しめる喫茶店らしいよ~」

 

こなたさん、解説ありがとう。

それでみなみさんが男役、ゆたかさんが娘役と言った所か・・・みなみさん、本意じゃないんだろうなぁ。

本人達も『いつのまにそんな事に・・・』とか『チアもだけど、こっちも大丈夫かな・・・?』とか冷や汗混じりにぼやいていたとかなんとか。

・・・この辺はひよりさん辺りがまた妄想を暴走させてパティさんもそれに同調したのかもしれない。

 

「この衣装で・・・歩き回るのは・・・」←真っ赤

「何だか凄く恥ずかしいな・・・」←同じく

「そりゃそうだろうね。それは宣伝?」

 

宣伝効果は抜群だろうがこの2人にとってはある意味針のむしろなのではなかろ~か・・・。

格好が格好だから視線が2人に集中されるのは容易に想像できる。

 

「ユタカとミナミはワがクラスのエースなのデス。」

「ちなみにゆーちゃんとみなみちゃんはトップを勤めるっスよ。艶やかなドレスの娘や凛々しい男装の娘をウェイトレスとして指名できる・・・ああ、めくるめく美の世界・・・」

「お~い、戻ってこ~い」

「・・・ハ!?」

 

とりあえず帰還できたようで何より。

そしてひよりさんは気を取り直したところで特別ゲストとして招いたアイドルのステージ(リハーサルだが)が始まると言うので俺も行ってみる事にする。

何でも14歳のスーパーアイドル、とかで人気を集めているそうだ。

ちなみに他の皆は準備や衣装あわせのために一旦それぞれのクラスに戻っていった。

 

 

 

『おっはらっき~! みんな、今日はあきらのために集まってくれてありがとう♪』

 

集まったといっても今日はリハーサルだぞ~、と心の中でツッコンでおく。

ちなみに体育館でやる演目の総合司会は白石くんが担当している。

でもなんか・・・ネコかぶってそうな印象だな、あの娘。

こなたさんにひよりさん、パティさんと4人で行くも席は半分も埋まっていない。

もっとも、リハーサルだから明日を純粋に楽しもうとしてるのか興味が無いのか・・・おれはどっちでm『ゴルゥアテメェ!ちゃんと歌わせろや!』な、何だ!?

 

『だから今日はリハーサルだって言ったでしょ! 時間もないんですよ!?』

『んなこと知ったこっちゃ無いわよ!』

『あ~あ~、難しい日本語分からないね~!』

 

「・・・なんで白石くんって普通にアイドルと口喧嘩してるんだ?」

「そういやあきらちゃんのラジオパーソナリティの声に似ているような似てないような・・・」

「泉先ぱ~い、その辺にした方がよろしいかと・・・」

 

とりあえず触れないようにした方がよさそうである。

それにしてもやっぱりあの娘、ネコかぶってるのね・・・他のアイドルもそうなんだろうかと思いつつ、俺達は体育館を後にする。

片付けないといけない仕事はまだ残ってるのだ。

 

 

 

時間はもうすぐ6時を回る頃。

クラス内での準備はもうまもなく終わる。

こなたさん達の練習もそろそろ仕上げに入るはず。

ちなみに今日は何故かこうさんに『いつも先輩から差し入れとか貰ってるのに悪いんですけど・・・今日の練習、体育館で通しの練習するんですけど、終わるまで体育館に来るのを遠慮して欲しいんです』なんて言われている。

その時のこうさんの申し訳無さそうな顔も珍しいし、彼女がそんな顔をしながらそんな事を言うのはかなりの事情があるのだろう。

俺は少し考えたが無難にそれを承諾した。

その時、ついでに今日の分の差し入れをこうさんを通して届けてもらっている。

気になる事と言えばその後、こうさんが茶色い髪をポニーテールにした同級生らしき女子と一緒に体育館に入って行くのが遠目で見えた事くらいか。

 

「あれ、赤井。今日はまだ行かないのか?」

「ああ、何か訳有りみたいでね。先生以外は完全シャットアウトだって」

「え? それって赤井くんも締め出されちゃったの?」

「ま、事を荒立てる必要も無いでしょ」

 

今頃、明日の本番に向けてラストスパートをかけているはずだ。

一丸となってがんばってる皆に出来る事は今の俺には無い。

ただ、成功をする事を・・・いや、皆でいい思い出に出来るように祈るのみ。

・・・俺、無宗教なんだがなぁ。

そんな事を思いつつたまたま見かけた白石くんに話を振ってみる。

 

「そういや白石くんさ、あの小神あきらの関係者?」

「あまりツッコまないで欲しかったんだけどやっぱ無理か・・・バイトでラジオ番組のアシスタントやってるんだけどさ・・・」

 

この後の会話は皆さんの想像にお任せします。

下手すりゃファンが一気に減りかねん(汗)。

それともう1つ、白石くんに無茶をお願いした。

少し渋っていたが何とか了承してもらえたから後はタイミングかな?

 

 

 

時計が7時を回った頃にこなたさん、つかささん、みゆきさんが荷物を取りに教室に戻って来た。

ちなみに教室の鍵は俺が持っている上、準備も万端。

他のクラスメートは既に下校済みだがまだ作業してるクラスもある。

 

「お、お疲れさん。首尾はどうだい?」

 

俺の問いに3人は互いに笑顔になる。

この反応なら明日は大丈夫だろう。

 

「答えは明日って事で♪」

「でも何だか不思議な感じがするな~」

 

教室を出ながらそんな会話を交わしつつ、かがみさんたちと合流した。

 

「私もちょっと寂しい気分です。お祭りは、準備してるときが一番楽しいって言いますしね・・・」

「そっか、明日が本番なんだよな~」

「って何だよ今更」

 

俺がそうみさおさんにツッコムと皆がクスクスと笑う。

何となく実感が湧かないと言うのも、みゆきさんが言う事も分かる気がする。

 

「明日からはもうこんな形で・・・夜まで残る事も、もうないんだもんね」

「・・・そう思うと、確かにみゆきの言う通り、寂しい感じがするわね」

「祭を楽しむための準備、なんだけどな~・・・」

 

少ししんみりとした雰囲気になる。

明日が終われば後は勉強に打ち込むことになるだろう。

でも今は・・・。

 

「明日は皆で、思いっきり楽しもう!」

『お~!』

 

高校生活、最後にして最高の思い出を作るために・・・。

 

 

 

<桜籐祭当日:体育館>

 

 

 

体育館は生徒や生徒の関係者等、後ろのほうでは立ち見しているほどの超満員。

コレで緊張しないヤツなんてそういないだろう。

・・・あ、後ろのほうで立派なカメラやビデオ構えてるの、絶対そうじろうさんだなあれ。

舞台の幕の向こうではこなたさん達が待機している。

朝からこなたさんも含めて少し緊張気味にしていたし、下手したら・・・。

だから俺は、俺に出来る最後のサポートをする事を決めている。

上手くいけば一気に緊張を和らげる事が出来るはずだ。

約1名、恥をかいてもらうことになるが本人は『何を今更』なんて言ってくる辺り、案外大物なのかもしれない。

そしてその時間が遂にやってきた。

 

『それではこれより、陵桜学園桜籐祭を開催いたします。まず最初の発表は、留学生のパトリシア=マーティンさんの発案によるオープニングセレモニーです。上級生も下級生もなく、仲の良いメンバーで行います。チアリーディングです!』

 

ちなみにウチの学校には応援団はあるがチアリーディング部は無い。

会場の、それも男子生徒からはどよめきが走る。

・・・実にわかりやすい反応だなお前ら(苦笑)。

しかし白石くんよ・・・あんたホントに大物だよ。

こんな大観衆の中、司会とはいえよくそんなに流暢に喋れるな?

だけどタイミング的にはそろそろ・・・ん、良し。

 

『それでは、さっそく始めてもらいm『♪み、み、み○くる☆み○ルンルン み、み、み○くる☆み○ルンルン♪』あ、すいません、携帯電話はって俺のじゃん!? うわヤバヤバ!』

 

・・・・・・

 

一瞬の静寂の後、会場から沸き起こる大爆笑。

ちなみにこれは俺が白石くんにお願いした無茶・・・会場でアクシデントを起こし、皆の緊張を少しでも和らげる事。

総合司会と言う都合上、彼はある意味もっとも注目される立場にある。

それを利用して大音量で携帯電話の着信を鳴らしたのだから・・・しかも着うたでアレである。

ある意味彼には個人的にMVPを送りたい。

ちなみに俺の席は幸いな事に最前列。

幕の後ろからもほんのわずかだけど、笑い声が漏れ聞こえていた。

後は、彼女達次第だ。

 

『はいすいません! さあ、それでは気を取り直していってみましょう! 『もってけ!セーラーふく』!」

 

そして大喝采の中、ステージの幕が上がる。

幕が上がりきった所で体育館の明かりが消えて、ステージのみが照らされて音楽が流れ始めた。

ワンピースタイプ、とでも言うんだろうか?

下から大部分を紫色。

そこから緑色のライン、そして白になって中央には星のマーク。

そして前列に4人、後列に・・・あれ?

何か違和感が・・・って、ええええええええええええ!?

舞台の上を見た俺は大声を出さなかった自分を褒めてやりたい。

もっとも、回りが盛り上がっているから気にならないだろうけど・・・なんで・・・なんで!

何で舞台の上に、やまとさんがいるんだよ!?

他校生なのに・・・いや思い出にするにはかなりのインパクトがあるけどさ!

俺が顎を外しそうなくらい大きな口を開けてるうちに、舞台の上では少女達の魅力を最大限に引き出すような、華麗なダンスを披露していた。

精一杯体を動かし、黄色いポンポンを流れるように動かして。

そして皆の満開の花を咲かせるような笑顔。

最後に皆がポーズを横一列に決めてチアリーディングが終わる。

このたった数分のために、一生懸命がんばった結果がこの割れんばかりの拍手喝采だろう。

その後、自由に行動が出来るようになった頃にはどうにか冷静になれた。

やまとさんの登場にはメチャクチャ驚いたけど、見事なダンスだったと思う。

そして俺は大役を終えた『彼女達』を探し始めた・・・。

 

 

 

エピローグへ・・・


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