「では、占い師役に選ばれた人たちはどんな占いをやるかを考えて置いてください。それが決まったら僕を通じて大道具小道具係のみんなと必要な道具などを決めていきたいと思います」
壇上で仕切ってるのは白石さんちのみのる君。
実は彼は文化祭の実行委員長だったりする。
ちなみに各クラスから実行委員を選出しているのだが、彼はなし崩し的に実行委員長まで押し付けられたとか。
そのわりには本人も結構楽しんでやってるようだし、結果オーライ・・・なんだろうか?
と、視界にみゆきさんが入る。
少々落ち込んでるように見える原因は、多分黒板に書かれてるアレのせいだろう・・・。
迷路(クイズ付き):3人
喫茶店:4人
占いの館:21人 ←こなたさんの発案
ハミガキ体操:5人
桐箪笥の歴史と作り方:1人 ←みゆきさんの発案
お化け屋敷:6人
みゆきさんの提案が誰も支持されなかったという悲しいお話・・・(汗)。
「はうぅ・・・(涙)」
「がんばったよみゆきさん、あなたはがんばった・・・」
こなたさんにまで同情されているみゆきさん、哀れなり・・・。
てかハミガキ体操って何だよ(汗)。
「それは・・・災難だったわね、みゆき・・・」
「でも、決まってしまったものはしょうがありません・・・」
その日の帰り道、今日のホームルームでの一幕を
ちなみにこなたさんとつかささんは占い役、俺は必要な事が決まってから動く道具係である。
「そういうC組は何をやるのか決まったの?」
「私たちはお化け屋敷なのよ」
「お姉ちゃん達のクラスは文化祭の定番だね♪」
「他にいいアイデアが出なくてさ~」
文化祭と言ったらお食事所や喫茶店、お化け屋敷あたりがある意味一番人気を競う所だろう。
・・・別にみゆきさんの案を否定してるわけじゃないぞ、念のため。
「定番って言えばさ、文化祭の時にやるのって喫茶店とか食いもん屋が多いのは何でだろ?」
「・・・そういやそうだよな~。喫茶店とが先に思いつくのは何でだ?」
こなたさんやみさおさんの疑問ももっともだろう。
文化祭とは本来、生徒の日頃の成果等の発表する学校行事だ。
しかし、実際そういう事よりも普段学校で出来ない張っちゃけぶりを発揮して楽しむ傾向が強い。
ウチのクラスの
もっとも、みゆきさんのように真面目にやろうとする人もいるけど、さっきのHRを見て分かる通り、やはりそういうのはあまり支持されないようである。
「・・・さしずめ、『食文化』と言ったところでしょうか・・・?」
『ソレダ!』
「え・・・(汗)」
みゆきさんは冗談のつもりで言ったのだろうが、あいにく真っ先に答えたのははこなたさんとみさおさんだった。
この2人が真面目に答えるのはちょっと考えづらい。
「やれやれ・・・ところでまさきくん達って占いなんて出来るの?」
「俺は裏方。ぶっちゃけ大道具小道具なんでも来いってとこ。人手が足りない部分を必要に応じて助けて回る感じだから占いはやらないよ。てか占いなんて知らんし」
「わたしもさっぱり~♪」
「おいおい・・・まさきくんは良いとしても・・・」←呆れ顔
「どんだけ~・・・」←苦笑気味
「チビッ子が発案者なんだろ? それで大丈夫なのか・・・?」
「文化祭でやる占いなんてそんなもんだよかがみん、みさきち♪」
「泉ちゃん、さすがにソレはどうかと思うけど・・・」
占いの種類ややり方を調べようとか、そういう事をまったく考えてないなこのチビッ娘・・・。
てか占いのやり方を知らないのに提案するってどうよ?
数日後。
「オープニングセレモニー? こなたさんが?」
「私だけじゃないよ~。正確にはパティの発案で私とゆーちゃん、みなみちゃんにひよりんは決定済み!・・・と言っても人数がまだ5人だけでね。もうちょっと欲しいな~・・・」
登校中、こなたさんが唐突に『高校生活最後の思い出作りをしよう』と言い出した。
発案者のパティさんが『ミンナでオモいデツクりをカネて、チアダンスをやりまショウ!』と言って周囲を巻き込んでいるそうだ。
そして協力する事になったのは良いが、人の集まりが悪いとか。
「というわけで、かがみもつかさもやってみない?」
「て、話が唐突すぎるわよ!」
「思い出か~・・・私はやってみようかな?」
「そうなるとますます忙しくなるんじゃないか?」
ただでさえクラスの出し物の準備に最近忙しくなりつつある。
準備片手にダンスの練習・・・相当ハードだと思うんですけど(汗)。
「私はやらないわよ。ただでさえ忙しいんだから!」
「え~、お姉ちゃんもやろうよ~」
そうは言っても中々かがみさんは譲らないだろう。
最近はクラスの出し物関連で学校の閉門時間ギリギリまで出し物のミーティングやらで時間を費やしてるらしく、登校は一緒だが下校の時は殆ど一緒には帰れない状態だし。
「ゆーちゃんもさ、体が弱くて今まで何も出来なかった分、自分も皆と一緒に最後まで出来る何かをがんばりたいって言っててさ。私は一応止めたんだけど・・・」
「そっか・・・」
ゆたかさんはこっちに来る前は休みがちだった反動か、最近はランニング効果でも出てきたのか、結構活発に動き回るようになってるみたいだ。
友人にも恵まれてるし、そういった意味では彼女が陵桜学園に来たのは正解だったのかもしれない。
「・・・・・・」
「でもやっぱ無理強いしてまでやっても楽しくないもんね・・・ごめんねかがみ、他を当たることにするよ」
お、珍しいなこなたさんの方から引くとは。
「分かったわよ・・・」
「へ?」
「分かったわよ、私もやるって言ったの!」
「おお~、かがみんよ~!」
「お姉ちゃん、一緒にがんばろ~♪」
「・・・いいの?」
「しょうがないじゃない、人手が足りないみたいだし・・・私だって皆との思い出は欲しいし・・・」
最後の方は段々声が小さくなったがとりあえず『嫌々』とか、口で言ってても『しょうがない』って思ってる訳じゃないなありゃ。
相変わらず素直じゃない・・・ああ、こなたさん的に言う『ツンデレ』ってとこか。
いや、これは『押してダメなら引いてみよう』って感じにこなたさんがやり方を変えたのか?
「一応聞いとくけどまさきもどうだい?」
「・・・俺にもソレをやれと、そう言いたいのか! こなたさんは!」
「大丈夫大丈夫、まさきは女装が似合うし♪」
「しねぇよ! 絶対に却下!」
なんでやねんって感じでこなたさんにはツッコミを入れておく。
それを聞いていた柊姉妹は『ナニか』を想像したらしくつかささんは苦笑、かがみさんにいたっては口と腹を抑えて笑いを堪えていたりする。
こいつらは・・・(汗)。
「で、みゆきさんもやるハメになったと」
「その、別に嫌と言うわけではありませんので。それに私も皆さんといい思い出を作れればいいなって考えてましたから」
こなたさんは教室についてから即、みゆきさんの勧誘を実行。
みゆきさんは少し考え込むも意外とあっさり承諾した。
「まさきさんはどうするんですか?」
「何が・・・?」
「いえ、まさきさんもやるんですかって」
え~っと・・・天然、だよね?
本気じゃないよね?
こなたさんみたいにわざと言ってるんじゃないよね!?
嘘だと言ってよ、みゆきさん!!
「あ、あの、冗談です! 冗談ですから真顔でそんなに近づかれるのは・・・!」←真っ赤
「・・・はっ!?」←我に返った
「まさき~? 朝っぱらから教室のド真ん中で女の子に迫るのは・・・」
「違うっての!」
今日も今日とて騒がしい朝のひと時であった。
それからしばらくの時が過ぎて。
現在進行形で本格的に文化祭改め桜籐祭の準備が始まっている。
レイアウトも決まったのでここからが俺達道具係の仕事だ。
占いで使うスペースは窓側メインに教室の約半分。
1度に5人の占い師役のクラスメイトがそれぞれ1スペース使う。
教室の中にそのための仕切りを作り、それぞれの入り口も作って外からは可能な限り見えないよう、入り口には扉も作る。
雰囲気作りのために暗幕を教室の中に張り巡らせて、厚紙に金色の折り紙を切り合せた大小の星や月を貼り付ける。
ついでにソレっぽい音楽を静かに流す事も検討中。
時間ごとに占い担当の生徒が変わり、なお且つ占いのやり方も変わるためにそれぞれ1人ずつどんな占いをするのか聞いて回り、それっぽい立て看板とあわせて、教室の入り口と出口の看板も作らなければならない。
そしてやっぱり言うのとやるのとじゃ大違い。
たったコレだけの作業と思うかもしれないが、結構な手間と時間がかかってる。
てか授業もあわせてやってるからいきなり大きな物は作れない。
・・・いっそ授業なくしちまわね?
まぁ、リハーサル前日は丸1日準備期間にするらしいから何とかなりそうだけど。
そんな事を考えつつ、俺はここ最近続けている事(既に日課になりつつある)の準備を始める。
「お、赤井。もうそんな時間か?」
「あ、うん。そんな訳で少し抜けるよ~」
「赤井くん、高良委員長達に
「いい加減誰かに絞らないとだめよ~?」
「委員長達も大変だよな~。桜籐祭のオープニングセレモニーを引き受けるなんて、僕だったらまず無理!」
「・・・私だったら練習で出来ても本番では緊張して心臓が破裂するかも」
とまぁそんな訳で、オープニングセレモニーの練習をしているこなたさん達に飲み物(2ℓ入りの清涼飲料水と紙コップ)と今日はお菓子のオマケ付きで差し入れをしている・・・何か関係ない言葉が混じってたような気がするがそこはスルー。
がんばってる皆に今の俺が出来る事と言ったら、精一杯応援する事ぐらいしかない。
今頃猛練習をしているはずだ。
ダンスの振り付けがお披露目になったのはつい先日。
今日の段階で練習時間は既に残り1週間を切っている。
最終的に集まった人数は11人。
こなたさん、つかささん、かがみさん、みゆきさん、みさおさん、峰岸さん、こうさん、ゆたかさん、みなみさん、ひよりさん、そして発案者のパティさん。
・・・全員知り合いなのは意図的なのだろうか?
オマケに何やら企んでいるようで、『当日はハプニングがあるかもよ~?』なんてこなたさんが含み笑いをしながら言ってたけど・・・そんな事を仕込んでる余裕あるのか?
とりあえず目的地(視聴覚室)に到着、ノックをして中に入る。
「うぃ~っす。WAWAWAわs・・・じゃなくて、練習はかどってる~?」
「あ、たにg・・・じゃなくてまさき先輩! いつも差し入れありがとうございます♪」
「こうさ~ん。俺、名目上応援しに来てるんだけど・・・?」
とりあえずネタでなごませつつ(効果があるかは不明だが)、そうぼやきながらクラスメイトからの差し入れもあるということで、休憩タイムに入った。
大抵俺が決まった時間に差し入れを持ってくるので皆もそれに合わせて練習してるようである。
「調子はどう?」
「まだ通しでは上手くいかなくて・・・」
「はいゆーちゃん、そこで悲観的にならないの!」
「・・・必ず出来る。全員が一丸になってがんばってるんだから」
「うん・・・うん、そうだよね♪」
「通しはまだまだだけど個人ならいい感じなんだよな♪」
「後はひたすら練習あるのみっス!」
おお、気合は十分だ。
それほど悲観的な顔はしてないし、この様子なら大丈夫そうだ。
何せ振り付けを初めて見た時なんか・・・。
『コレがフリツケになりマ~ス♪』←携帯動画を公開中
『ちょ、ちょっと待ってよ。これ、今からやるつもり?』
『・・・ダメですカ?』
『ダメと言うよりは・・・』
『・・・かなり厳しいんじゃないかな?』
『考えてもしょうがない。俺が口出しするのも何だけど、時間も無いんだし、どうしてもダメな部分は簡略化してやるしかないでしょこれ・・・』
『そだね~。それにしてもパティ・・・どんだけ~・・・』
『ウグ・・・シ、シカ~シ! ソレをノりコえたトキにはオオいなるカンドウがミンナをツツミコむのデス!』
『あんたが言うな!』
てな感じで、尺は短いけどかなり難易度が高そうなもので先行き不安そうな顔していたけど。
今は全員、肩で息をしているが皆そろって笑顔だ。
ちなみにオープニングセレモニーで何をやるかは当日まで当事者達と俺、一部の実行委員、そして教師陣以外は秘密と言う事になっている。
「どうにか形にはなってきましたね♪」
「まだ完成したわけじゃないんだし、さっきひよりさんが言った通りに繰り返し練習すればいいんじゃないかな?」
「そうね。後は集中力がモノを言うんだから気合入れなきゃ!・・・コレで失敗しちゃったら、応援してくれてるまさきくんに申し訳ないし・・・」
「ん? かがみさん、最後なんか言った?」
「な、何でもないわよ!」
「ひいらぎ~・・・」←ニヤニヤ
「かがみ~ん・・・」←(=ω=.)ニヤニヤ
「な、何だよ、あんたらもいちいちこっち見んな!」←なんだか顔が赤い
かがみさんってわりと自爆する性格だよな~、なんて思いつつ。
いつものやり取りが出来るくらいの余裕もある見たいだ。
やる時はやるオタクな娘、怒りっぽいけど妹想いな優しい娘、ちょっとドジだけどがんばりやな娘、頭脳明晰だけど天然っぽい娘、とにかく元気100%な娘・・・そしてそんな彼女達を後輩達が支えあいながら、1つの目標に向かって、力を合わせてがんばっている。
ここにもう1人、クールで少し照れ屋なあの娘がいたら、とふいに思うがさすがにそれは無理な相談だ。
当日は見に来るって言ってたから、その時に皆で思いっきり楽しんで一緒に思い出を作ればいい。
そんな事を考えながら俺は目の前の・・・かがみさんがやたら怒ってるけどどこか楽しげなやり取りをを眺めていた。
桜籐祭まであと少し・・・。
つづく・・・