<始業式当日>
「お、おっはよ~。新学期になっても仲が良いねぇ3人衆!」
「おはよー・・・てなんだその3人衆って(汗)」
「おはよ。こなたの言う事一々気にしてたらキリが無いのは分かってるでしょ・・・?」
「私達、いつも一緒だもんね♪」
月が変わり、夏休み明けのこなたさんの第一声がそれかい。
大体、今に始まった事じゃないだろうに。
今日から2学期。
そろそろ受験に対して本腰を入れなきゃならないんだけどこなたさんは相変わらず。
・・・短期集中とはいえ中間、期末で俺やかがみさんを脅かす点数を稀に叩き出すんだからこなたさんは結構侮れない。
ちなみにつかささん、その発言は誤解を招くぞ。
・・・間違っちゃいないから強く否定できないが。
「おはようございます・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まさき先輩」
「おはよう、ゆたかさん・・・そのたっぷりの間は何?」
「えへへ・・・」
舌を出して照れ笑いするゆたかさん。
まぁ夏休み中、会う度に俺の事を『お兄ちゃん』って呼んでたからなぁ。
今この場で間違えなかっただけマシか?
ここでならともかく、学校の・・・しかも教室でそんな事言われたらシャレにならん。
そんな感じで5人揃って学校までの道のりを、お喋りしながらてくてく歩く。
新学期からどんな毎日が待ってるかな・・・?
「あ~んむ! もぐ、もぐ、もぐ、もぐ、もぐ、ごっきゅん!」
「みさおさんって何でも美味しそうに食べるよね~」
「そうなんだけど、みさちゃんってよく口の中を噛んじゃうから口内炎にも結構なってるのよ」
ある日の昼休み、いつものメンバーで昼食タイム中。
前々から食事中のみさおさんって幸せそうだと、つくづく思っている。
みさおさんは食事中、常に笑顔を絶やさない上にお喋りが止まらない事もしばしば。
もっとも、峰岸さんの言うとおり、喋りながら食べてて口の中を噛んだり舌を噛んだりしてるんだが本人は一向に改善せず・・・いや、しようとせず、こんなことも・・・。
ポロ。
「あ・・・!」
「さすがにそれは洗って食べるワケにはいかないねぇ、みさきち」
「みゅ~・・・大好物のミートボールが~・・・」
もったいないと言えば確かにそうなんだけど・・・みさおさん、泣く事ないだろ(汗)。
そんな時にかがみさんが呟いた。
「・・・3秒ルールは?」
「ぎく! いや、場合によってって事でカンベン・・・」
ニヤニヤしながらかがみさんがみさおさんを見ている。
「何かあった?」
「あ~、少し前に峰岸と2人で日下部の家に行った時の事なんだけど・・・」
『あ~むん! もぐ、もぐ、もぐ、もぐ、もぐ、ごっきゅん♪ あ~・・・あ!』
ポロ。
ひょいパク。
『もぐ、もぐ、もぐ、ごっきゅん!』
『・・・・・・』
『ほら、3秒ルール3秒ルールゥ!』
『・・・・・・』
『5秒以内だったら菌がつかないから大丈夫だってヴぁ!』
『なによ、何も言ってないでしょ・・・?』
『みさちゃん、さすがにお行儀が悪いよ?』
『みゅ~ん・・・』
「・・・なんて事があってね」
「今回はさすがのみさちゃんも無理だったわね♪」
「うう~・・・いくら何でもまさきに言わなくても良いじゃん・・・」
信じてる人、いたんだ・・・3秒ルール。
いや、信じてる、というより誤魔化しか。
「みさおさん、それは諸説ありますが、都市伝説に類する物ですから、床に落ちた食べ物はあまり口に入れないほうがよろしいですよ?」
・・・そういや根拠も何も無いよな、
ちなみに地域によって5秒ルール、10秒ルールとも呼ばれてるらしいが。
「それにしても9月にはなったけど、暑い日がまだ続くよね~」
流れを切ってこなたさんが話題を投下!
温暖化が進んでる事もあるためか、今日も最高気温は30℃に近い。
電気代の節約のため、極力冷房は使わないようにしてるが暑い時は暑い。
さすがに自室で脱水症状はカンベンなので、そうならない程度に気温を少し高めに調整し、節電に心がけております!
「うちのゆーちゃんは暑さに当てられやすいからさ、いつも居間で休んでるんだよ~」
泉家の居間は常時クーラーで一定の気温(25℃くらい)を保ってると言う。
・・・羨ましくなんか無いやい。
「私は部活である程度の暑さには慣れてるけどナ~。あやのはクーラーのきいた部屋でアニキとイチャついt「み~さ~ちゃ~ん!!」じょ、ジョ~ダンだってあやの!」
なにやら向こうでギャーギャー騒いでいる。
珍しいな、峰岸さんが真っ赤になって騒いで・・・まぁ、あれは仕方ないか。
「つかさも冷房のきいた部屋に入りびたりよ。こっちはだらけてだけど」
「あぅ~・・・」
「ま、気持ちは分かるけどね」
誰だってクソ暑い所に汗水たらしながら居たいと思うやつなんてそうそう居ないだろう。
「ちなみに私とお父さんもたまに混じって小の字になってお昼寝してるんだよね」
「小の字・・・ですか? それを言うなら『川』の字では・・・?」
「いや~、それがお父さん、必ず真ん中に入るから」
そうじろうさん、両脇に娘と姪をはべらせて何やってるんですか。
身長の高いそうじろうさんの両脇にこなたさんとゆたかさん・・・容易に想像は出来るぞ。
確かに『小』の字になる。
「ゆたかさんも慣れてきたもんだね~」
「あんたの家ってホント、相変わらずだな・・・」
「でも仲の良い家庭じゃないですk『ガリッ』・・・・・・」
今、何か聞こえたような気が・・・?
よくみるとみゆきさんが何だか涙目になっている。
そそくさとティッシュを取り出し口元に当てた。
「歯の詰め物が取れてしまったみたいです・・・(涙)」
「だ・・・大丈夫?」
また歯医者さんに通い詰めです~、と涙ながらに語ったみゆきさんだった・・・。
<放課後>
4人揃って寄り道中。
みゆきさんは泣く泣く歯医者に直行、みさおさんはおそらく部活だろう。
ゲー○ーズに着くなり、こなたさんは食玩と睨めっこ。
かがみさんは相変わらずラノベを物色中。
つかささんはCDのスペースへ向かっていった。
ついでに言うと・・・。
「何故にやまとさんがここに?」
「たまたま見かけたので早めに合流しようかと・・・」
こうさんが一緒じゃないにも拘らず、なぜか店の中でやまとさんと遭遇。
はて、やまとさんの学校も家もこっちのほうじゃなかったはずだが?
その事を聞くと俯いてボソボソと何か言ったと思ったら、
・・・こうさんの影響か、かがみさんに薦められたのか。
ちなみに新学期が始まっても相変わらず毎日一緒にランニングをしていたりする。
体の方、負担になって無きゃいいんだけど。
と、視界の端に食玩を耳元で軽く振って中の音を聞いているこなたさんが目に入った。
「何やってるの?」
「鑑定~。こうしないとお金がいくらあっても足りないからね」
「ストライクゾーン狭いなおい!? 一般人は普通やらんぞそんな事!」
ていうかそんな事をしても絶対に分からないぞ。
「はっはっは♪ ちなみに食玩のカードで箱開けたばっかのヤツなら狙ったのを大体引けるよ~」
「・・・確かに凄いけどさ、褒める気には全然ならないぞソレ」
そんなピンポイントで狙ったヤツを取れるってどんだけ研究熱心なんだか(汗)。
「纏めて箱買いしてる内にパターンが読めるようになりますた。財力に物を言わせる大人買いってヤツ?バイト様々ですよ~♪」
「・・・やってることは子供だけどな~」
「あ~・・・大きな子供買いが適切かもネ」
「というか独占欲が強いとも取れますよね」
「何気にきっついナ~、やまちゃんは」
「ソレはやめてください・・・」
気がついたら後ろにいたやまとさんがツッコンで来た。
しかしこなたさん、いくら何でも『やまちゃん』はないだろ・・・。
「え・・・柊家にお泊り?」
「はい、今日明日お世話になろうかと・・・と言いますか、つかさ先輩に誘われまして」
帰り道。
こなたさんと別れた後も俺達と一緒に歩いてくるやまとさん。
ついでに言うと、ゲー○ーズにいたのはあの近辺で待ち合わせてたらしく・・・時間はまだあったそうだが。
なにやら大きなスポーツバックを抱えてると思ったら・・・てかそこまでするほど仲良かったっけ?
夏休みの旅行が効いてるのかな・・・?
「ま、女の子には色々あるのよ。」
「むう、そう言われると・・・」
確かに男にとって不可侵領域的な物もあるよなぁ。
年頃の女の子なんだし。
「まーくんも夕飯の時間までに来てね♪」
「りょ~かい。期待してるよ~♪」
「うん!」
「へ・・・?」
元気よく返事をするつかささんに対し、何だかまるで『私、聞いてません』みたいな事を顔に書いたやまとさんが反応する。
そういや知らない・・・よなぁ。
あんな事普通は無いし。
「えっと、まさき先輩も・・・?」←ちょっと顔が赤い
「俺の場合は去年のクリスマス以降、よく夕飯をご馳走になるようになってね。といっても月に1回か2回くらいだけど」←あくまで平常運転
「・・・クリスマスに何かあったんです?」←複雑な顔
とりあえず何があったかは簡単に説明しておく・・・長くなるから割愛したけど。
「家族として、ですか・・・」
「今考えてみると、結構貴重な体験させてもらったと思ってるけどね」
「そだよね~。同じ歳の弟なんて普通は双子とかじゃないといないし」
「つかささん、指摘する所間違ってるって(汗)」
ある意味一番のツッコミ所は『女友達の家族に抵抗無く溶け込んだ事』だろう・・・。
普通だったら
やっぱり家族が女性ばかりだからだろうか?
そういや『息子とキャッチボールをしたかった』なんていってたし、やっぱり肩身が狭かったのもあったのかそれとも・・・。
「ん~・・・じゃあクリスマスの時だけ弟が出来る?」
「つかさ、色々誤解を招くわよその発言!」
「姉参号の言う通りだぞ姉四号」
「だからソレはやめろって~!」
「私たち、ロボットじゃないよ!」
「・・・・・・」
呆れてるのかどうなのか、やまとさんはぐうの音も出ないようだ。
「やっぱり私が1番不利・・・いっその事転校して、は流石に学年が違うし・・・こうやって会おうと思えば会えるけど・・・」
「ん? やまとさん何か言った?」
「いえ、別に・・・」
何だかブツブツ言ってたような気がしたんだが。
ともあれ、家に着いた俺は荷物を置いて、着替えてから時間近くまで宿題の消化を進める事にした。
夕方6時。
柊家のインターホンを押して玄関をゆっくり開ける。
「こんばんは~」
「いらっしゃい、まさくん。もう少しかかるみたいだから居間で待っててね?」
かがみもやまとちゃんもいるから~、と言いつつ台所に消えていった。
手伝いで忙しいのかと思いつつ居間に入る。
「あ、いらっしゃい」
「お邪魔しまっす」
「ホントに夕飯をご一緒してるんですね・・・」
やまとさんが半信半疑だったのも当たり前といえば当たり前の話だ。
・・・てあれ?
「まつりさんはまだ帰ってないの?」
「台所で夕飯作ってるわ」
「はい?」
まつりさんが、夕飯を・・・?
今まで聞いたことってか見た事無いけど、大丈夫かな?
「不安なのはわかるけど、つかさといのり姉さんが一緒だから大丈夫よ・・・多分」
「その多分って所がすっごく気になる・・・あれ、みきさんにただおさんは?」
「2人仲良く旅行中。帰りは明日の夜だって。」
・・・少し不安になってきたけど、ここはまつりさんを信じてみよう。
彼女なりにがんばってるのかもしれないし。
そして出て来た物が・・・。
「いらっしゃいまさきくん、やまとちゃん。つかさからもお墨付き! 私の渾身の力作『パエリア』だよ~♪」
「パエリアって確か・・・」
少々特殊な香辛料を必要とすると思ったけど、この辺のスーパーで売ってたっけ?
・・・細かい事は後にしよう。
まつりさんの力作は魚介類をふんだんに用いたシーフードのパエリア。
サラダとスープはそれぞれいのりさん、つかささんが作ったらしい。
「それじゃ食べてみて、感想聞かせてよ~♪」
なんか興奮してるけどまつりさん、何かあったのかな?
とりあえず1口、あむっ・・・。
「あ、美味し」
「パエリアって食べた事無いですけど・・・うん。美味しいですよまつりさん」
「・・・悔しいけど美味しい。うん、ちょっと見直したかな?」
「ホント!? やった~! てかがみ、ソレどういう意味よ~!」
まつりさん、舞い上がりすぎ(汗)。
ホントに何かあったんだろうか・・・?
ま、余計な詮索は後にして、今はまつりさんのパエリアを食べながら楽しい夕飯の時間を過ごしたのであった。
ちなみに食後、まだまだテンションが高いまつりさんが・・・。
「へへ~(だきゅ~)♪」
「・・・まつりさん、お酒入ってないですよね?」
「ほっほっほ~。まさきったら抱き心地良いね~♪」
「いや答えになってないですから!」
しばらくの間、上機嫌なまつりさんにぬいぐるみのように後から抱き付かれました(汗)。
なんだかかがみさん達が羨ましそうに見てたのは気のせいだと思いたい・・・。
<オマケ:土曜日早朝>
日課のために今日も早起き。
昨日はある意味(精神的な意味で)散々な目にあったが、今日は・・・どうなるだろ?
そう思いつつ外に出る。
「おはよう」
「おはようまさきくん」
「まーくんおはよ~♪」
「おはようございます、先輩」
「おっすまさき~♪」
「んじゃいこ・・・ってみさおさん!?」←今気づいた
「おう!」←マイペース
「ソレってもうノリツッコミの領域よね・・・」←呆れ半分
突然増えてたら普通驚くっての・・・。
<オマケその2:日曜日早朝>
いつもの時間に目が覚める。
昨日は朝から驚かされたが今日はどうだろ?
やまとさんは昨日の内に帰ったが・・・今日も来るのかね?
そんな事考えつつ外に出る。
「おはよう」
「おはようまさきくん」
「まーくんおはよ~♪」
「おはようございます、先輩」
「おっすまさき~♪」
「おはようございます、まさきさん」
「まさき、おっは~♪」
「おはようございます、まさき先輩♪」
「・・・・・・」
人数、また増えてるし(汗)。
しかもゆたかさんまで・・・。
朝から軽い頭痛を覚える日曜日の早朝だった。
つづく・・・