らき☆すた~if~ たとえばこんな物語   作:岡崎ひでき

51 / 62
第五十話 みんなで過ごす、夏の1日 4日目

 

 

今日も楽しい1日が終わる。

みんなでお勉強して、一緒に遊んで・・・イタズラしたこなたお姉ちゃんや日下部先輩をまさきお兄ちゃんや柊先輩・・・かがみ先輩が追い掛け回すのを見るのももう珍い事じゃなくなって。

夏休みがこんなに楽しいと思った事っていつ以来だろう?

そりゃあ、毎年お父さんもお母さんもゆいお姉ちゃんも一緒でそれぞれ楽しかったけど・・・。

今回ほど楽しい夏休みは無かったように思う。

そしてあっという間に折り返し。

 

「で、みんなどう思う?」

「ふぇっ?」

 

ちょっと考え事してたら突然尋ねられた。

えっと、何の話だったっけ?

 

「まさき先輩の意中の人よ! 絶っ対にあの中にいると思うんだけど」

「こうちゃん先ぱ~い、ちょっと入れ込みすぎっス」

「ミナミもユタカもヒいてるネ」

「あっ・・・! いや~、ゴメンね。やっぱり他人の色恋沙汰って気になるじゃん?」

 

八坂先輩って突然切り替わるよね(汗)。

しかも何だか面白がってるような気がする。

でもいいな~、私も恋をしてみたいなぁ。

 

「私は柊先輩方が1歩リードしてるんじゃないかと思うっス。何しろ家は近所だし毎朝一緒にジョキング! さらに登下校も一緒となると親密度もハンパ無いっすよ」

「でも私はこなたお姉ちゃんじゃないかな~って思ってます。柊先輩達もこなたお姉ちゃんがきっかけを作らなかったらどうなってたか分からないみたいですから」

「それを言ったらみゆきさんも同じ。それに、私はよくみゆきさんの家に行ったり登下校が一緒になって話す事が多いけど、第一にまさき先輩の事を話題に出す事が多い。もしかしたら本人もその事に気付いてないかも」

「ミサオはコウドウハですネ。マサキをげーせんにヒッぱっていってイッショにアソんだりもシテマス」

「行動力ならやまとも負けてないんだけどね~。いかんせん学校が違うじゃん? 会う機会もかなり限定されるし、そもそも本人があんまり素直じゃないし」

 

聞いた話じゃ永森先輩、バレンタインの時にはまさきお兄ちゃんを呼んでチョコを渡したって言ってたっけ。

逆にホワイトデーの時はまさきお兄ちゃんが永森先輩を呼んでお返しを渡した上にそのままゲームセンターに行ったって言うし・・・そう考えると、永森先輩も十分がんばってると思うけどな。

 

「ぶっちゃけ当の本人がどう考えてるかなんだけどね~」

「いくらなんでも気付いてないって事は無いとおもうっすよ~。それこそ漫画じゃあるまいし・・・」

「ひよりんは甘い! 現に6人の女子が1人の男子に恋をするなんて普通じゃありえない状況になってるでしょ~が!」

 

ホントだよね(汗)。

それに私だって、まさきお兄ちゃんにはお世話になってる内にいつの間にか憧れちゃってるし。

この場合、憧れと恋はやっぱり違うのかな~って思うけど。

 

「でも、まさきお兄ちゃんは実際に慕われてるわけですよね」

「事実は小説よりも奇なり、とは言いますけど・・・」

「マサにリアルなレンアイゲームですネ。デモ、ダレかヒトリでもヤンデレになってしまったらダイサンジデス・・・」

 

やんでれ・・・止ん出れ?

みなみちゃんを見てみるとみなみちゃんも首を傾げてる・・・何のことだろ?

 

「あ~、そこの後輩2人! 発言には気をつけなさい。ゆたかちゃんもみなみちゃんも困ってるでしょ!」

「Oh,ヤンデレ、ツまりそれh・・・」

「は~いパティスト~っプ! それ以上はダメだって!」

『???』

 

結局、『やんでれ』の意味は分からなかった。

こなたおねえちゃんなら知ってそうだし、明日あたりにでも聞いてみようかな?

 

 

 

 

 

 

 

「さて諸君、今日を含めてこの4日間、手応えはあったかね?」

「いきなりなに言ってんのよアンタは・・・」

 

むう、ノリが悪いな~、かがみは。

うちらに共通してる事といったらもちろん・・・。

 

「まさきのことだよかがみん♪ 距離は縮まったと思うかい?」

「・・・! べ、別に・・・今までと変わら・・・ないわよ・・・」

 

むう、ちょっと言葉が尻すぼみになってなお且つ落ち込み気味だなんてかがみらしくない。

でも無理ないかもしれないね。

 

「昨夜の事があったにも拘らず、まさき先輩はいつも通りでしたね・・・」

「あう・・・」

「・・・~~~!」

「・・・かえってやる事が過激すぎたのかナ?」

 

やまとちゃんの言うとおり、今日のまさきはいつものペースを崩さなかった。

気まずくもならなければ進展すると言う事も無い。

あまりにもいつもと変わらない1日。

そりゃ遊んだりイタズラして追いかけられたりした時は楽しかったけどさ。

 

「長期戦は覚悟してたんだけどね~・・・とまぁ暗い話は置いといて」

 

このままじゃ辛気臭い雰囲気になりそうだからこのまま流しておこう。

シリアスは好きじゃないしね。

そこでやまとちゃんに前からずっと思ってた疑問を1つ。

 

「やまとちゃんってさ、いつからまさきの事を好きになってたの?」

「へ? わ、私ですか?」

「そういえばバレンタインの時にはチョコを手渡しするためにまさきくんを呼び出ししてたわよね・・・」

「学校違うからそれしかなかったんだろうけど、なかなか出来る事じゃないよね~・・・」

「私が記憶する限りでは、殆どお会いしてなかったはずなのですが・・・」

「ココまで来たらいい加減、白状してもいいよな~。私らはこないだ話したし・・・」

 

そう、以前ホワイトデーの時に一緒にお茶した時、遠まわしに聞いたんだけど結局かわされたんだよね~。

しかしココまで来たら私達は既に一蓮托生、毒食わば皿まで!

・・・なんか違うような気がするけどそれは良いとして。

 

『・・・・・・』

「最初は親近感かと、思ってたんですが・・・。」

 

声がしぼんでモジモジし始めた。

おぅおぅ、照れちゃってかわいいね~。

 

「特にカッコいい、訳じゃないのに・・・何回か会ってるうちに・・・その・・・いつの間にか先輩を目で追うようになって、て感じで・・・その内胸の中で何かモヤモヤするようになって・・・」

 

むう、峰岸さんも似たような事を言ってたような・・・?

でもこの部屋にいる全員が1人の男の子を好きになっちゃってるんだよね~。

まさか自分がギャルゲーのヒロインになろうとは。

でもゲームとは違ってコンティニューが出来ない一発勝負・・・しかも選択肢を自分で選ぶどころか、探さなきゃいけないんだから大変だ!

 

「とりあえず全員フラグが立ってるものの、全然数が足りないって事だよね」

「フラグ言うな・・・完全に否定できないのも悔しいけど」

「でも・・・」

 

かがみに続いてみゆきさんが何か言いかけた。

自分を奮い立たせるように大きい胸(←コレ重要)に手を当てて。

 

「でも、最後に選ぶのはまさきさんです。それにまさきさんは私たちのうち誰かを選ぶと思います」

 

そう、力強く言いきった。

 

「・・・高良先輩は、選ばれるのは自分だと?」

「確かに選ぶのはまーくんだけど・・・」

 

みゆきさんだけの問題だったらそうなってもおかしくはない。

彼女の場合、彼氏がいないのが不思議なくらいだから。

私達は友達として、全力で彼女をバックアップするだろう。

しかし今現在、みゆきさんの好きな人は私達も同じなワケで・・・。

ついでに言うとまさきは今のところ何の行動も取っていないのだ。

 

「皆さんも、同じように考えてみてはどうでしょうか。必ず、選ばれるのは自分だと。確かに確率的に言ったら可能性は低いかもしれませんし、ひょっとしたらまさきさんは他に好きな方がいるのかもしれません。でも諦めたら、得られる物も得られなくなります」

「・・・代償が大きい。みゆきみたいに考えてた分、反動から立ち直れなくなるかもしれない。でも私は・・・諦めたくない!」

「お~、かがみんは一途ですな~♪」

「かがみん言うな! とにかく、私は最後まで諦めない。でもその代わり、私以外の誰かがまさきくんと付き合うことになったら・・・大人しく身を引いて、応援してあげようと思う。まさきくんには、幸せになってほしいし・・・」

 

結局シリアスな会話になっちゃった・・・。

でもあの決意のこもった眼差し・・・このくらいいつも気合入ってたらダイエットも成功するんだろうけどね~。

でも、コレだけは言っておかなくちゃ♪

 

「かがみ、何か勘違いしてない? そもそもまさきは私の婿だから」

「わ、わたしも、この気持ちだけは絶対負けないもん!」

「ちびっこ~、柊を譲る事があってもよ、まさきは私が貰うゼ?」

「状況は圧倒的に不利だけど・・・ここは私も引けませんし、引くつもりもありません。まさき先輩の心は私が必ず射止めます!」

 

やまとちゃんも言うね~♪

みゆきさんの一言のおかげで全員決意が固まったかな?

最初から失う事を恐れてたら何も出来ないもんね。

ならば全力で。

例え結果がどうなろうと、私達は止まらない。

恋する女の子は無敵なのだ。

まったく・・・まさきは私達からものの見事に大変な物を盗んで逝っちゃったよね~♪

そう思っても嫌な気分にならないって事は、私自身も結構マジかもね☆

 

「コレでこの場にいる私達は全員親友兼好敵手(ライバル)って事になるよね♪」

「えっと・・・その親友って私も入るんですか?」

「当然、やまとちゃんもだよ~♪」

「表面上はいつも通りに接していたほうがいいわよね?」

「そうですね・・・その方がお互いの戸惑いも最小限に収まるでしょうし。軽く意味ありげな言葉でも加える程度に抑えたほうがいいかもしれません」

「でもお休みの日とかはどうするの?」

 

むう、まさきの近所に住んでるかがみとつかさは有利すぎるなぁ。

しかも家族ぐるみの付き合いで夕飯の招待も受けてるし、対策を練らねばなるまい。

決めなきゃいけない事も沢山あるし、勉強よりもやりがいがありそうな感じ・・・いや、間違いなくやりがいがある!

まさか自分がこういう立場になるとは思いもしなかったヨ。

・・・おとーさんが聞いたら卒倒しそうだけどそれは後で何とかするとして。

そう考えながら、私達の話し合いは日付が変わっても続く事になる・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「で、どうなんや?」

「どうって・・・何がですか?」

「決まってるじゃないの~。赤井くんの意中の人の事だよ~♪」

「・・・・・・」

 

頭が痛い・・・。

昨夜の事があってからも何とか平常心を保つ事ができたものの、今日1日、何の行動も起さなかったのがこの人達には不満だったみたいで・・・てか先生、成実さん。

現役の教職員や警察官が色恋沙汰について酒を飲みながら未成年に説教するのはどうかと思います(汗)。

いのりさんやゆかりさんは傍観中・・・てか部屋のテレビを見て談笑中。

救援は求められそうに無い。

てかそれでいいのか保護者の皆さん・・・?

 

「意中って言っても・・・あの中にいるんじゃないかってだけでまだ・・・」

「なるほど~。選り取りみどりだもんね~♪」←酔ってる為に悪気はナシ

「ずいぶんと引っかかる言い方ですね、成実さん・・・?」←少し顔が引きつってる

「なぁ赤井? 自分もあと半年経ったら卒業やろ。卒業したら時間の経過なんて・・・10年なんてあっという間やで?」←何故かテンション下降中

 

黒井先生、あなたは何かあったんですか・・・?

 

「で、現状の黒井先生が出来あがt『メキャ!』ぐおぉぉぉぉぉ!?」

「やぁかましぃ! ウチは売れ残りや無い・・・まだまだイケるっちゅ~ねん! ええか、ウチは結婚出来んやない! せぇへんだけや! それなのにウチの親と来たら結婚しろ見合いしろと・・・!!」

 

酔った勢いのせいかほぼ全力(だと思われる)の一撃で強制的に黙らされてしまった・・・(泣)。

そのまま愚痴りモードに入った黒井先生を成実さんが慰めにかかっている。

・・・何気に良いコンビだな、この2人。

 

 

 

その後酔い潰れた2人を布団に移動させて一息つく。

・・・お姫様抱っこじゃないぞ、念のため。

時間は9時。

寝るにはまだ少し早い。

 

「お疲れ様、まさくん。」

「出来れば手伝ってほしかったんですが・・・?」

「あらあら女の子にそんな事言っちゃいや~ん、よ☆」

『・・・・・・』

 

ゆかりさん、あなたがソレを言うとシャレに聞こえないんですけど・・・。

いのりさんも少し顔が引きつってるし。

てかみゆきさんの制服着たらマジで高校生に見えそうで怖い。

それを言ったらみきさんもそうなんだけどね。

 

「ま、まぁその話は置いといて、今更こういっちゃなんだけどまさくんの周りって凄いことになってるわよね。地元の頃から女の子の友達って多かったの?」

「あ~・・・いや、そんな事はなかったんですけどね~。話はするけど学校以外では会う事なんて偶然でしかなかったし、良くて友達で終わるタイプだと思ってたんですがね。今みたいな・・・てかこっちに来てから・・・や、正確に言うと去年からかな? この状況。」

 

ホントに何でこうなったんだろ、と疑問ばかりが浮かんでくる。

しかし何故か妙にスラスラと答えてしまう・・・俺って年上に弱い?

 

「思春期の真っ盛りだから・・・て訳じゃ無さそうね。あの娘達の気持ちを知ったのはいつ頃?」

「・・・バレンタインの時ですね。想いはホントに伝わるんだなって痛感しましたよ」

 

こなたさん、かがみさん、つかささん、みゆきさん、みさおさん、やまとさん。

あの時点でそうなんじゃないか、とは思っていた。

そして昨夜の彼女達の暴走(?)である意味はっきりとしている。

でも簡単には答えを出せない。

安易な選択でその娘はおろか、他の娘達も不幸にする可能性もあるから。

さすがにni○e b○atは勘弁したい所だ。

・・・最近、ギャルゲーなんてやってないんだけどなぁ。

 

「優しいのねぇ、まさきくんは」

「はい?」

「『もし、他の娘が立ち直れなかったら』とか色々考えちゃうんじゃない?」

「俺が優しいかどうかはともかく、考えてることは否定・・・出来ないですね」

 

実際、あの6人の中から誰かを選んだとして、残った娘達はどうなるんだろう?

俺の事を本気で好きだったとしたら、俺に関わったばかりに相当なショックを抱え込んでしまうのではないか。

今までの『友達』として過ごした時間が、音を立てて崩れてしまうんじゃないか。

分かってる。

ドラマでもアニメでもないんだからそうそうはそんな状態にはならない・・・と、思う。

 

「その優しさが、今は仇になってるみたいね。女の子の戦いって言うのは修羅場だけじゃ無いのよ?」

「・・・何か妙に説得力がありますね」

「大学卒業して就職までしてるんだから、色々あるものよ。いい事も悪い事も含めて、ね」

 

そう言って遠い目をするいのりさん。

ひょっとしたら本当に何かあったのかも知れない。

でもその事をポン、と聞こうとするほど空気を読めない人間ではないつもりだ。

 

「もっとも、先を越されるのはちょっと癪に障るけど、妹達の内どっちかを選んでくれたら私も嬉しいんだけどな~♪」

「あらあら、いのりちゃん、まさきくんはうちのみゆきが頂く予定ですよ?」

「ゆかりさん何言ってるですか。てか『いのりちゃん』って呼び方はやめてください」

 

・・・本人の目の前でそういう会話をしないでください(汗)。

今のにこやかなにらみ合いで一瞬にして場の空気が見事に吹き飛んでしまった。

てか付き合うことになったらこの2人は公認確定ってのもどうかと思う。

とりあえずこの2人のにらみ合いは置いといて、少し早いが俺はもう明日に備えて寝る事にしよう。

 

 

 

<オマケ:翌朝>

 

 

 

「ふわぁ・・・」

「あふ・・・」

「え~っと・・・みんな、大丈夫?」

「ふにゅ~・・・あと5分だけ~・・・ホントに~・・・」

「ほらつかさ、走るならちゃんと起きなさい・・・ふぁ」

 

ちゃんと起きて来たのはゆたかさんとみなみさんのみ。

他のみんなは、何だか帰ってきたら全員爆睡しそう・・・ぶっちゃけ物凄く眠そうだ。

 

「・・・昨夜何してたかは知らないけど、無理だけは絶対にしないようにね」

『ふぁ~い・・・』

「・・・・・・(汗)」

 

かがみさんにみゆきさん、やまとさんまで・・・。

今日は朝から別の意味で頭を抱えたくなる1日のスタートとなった。

 

 

 

つづく・・・


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。