らき☆すた~if~ たとえばこんな物語   作:岡崎ひでき

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第四十六話 どうにもならない悪い癖

「今回はわざわざ俺達のためにすいません、いのりさん。お世話になります」

「いーのいーの。まさくんには妹達が色々とお世話になってるし・・・それにしても聞けば聞くほど凄い状況よね~♪」

「・・・そこはもう諦めました」

 

岩崎家所有の避暑地への旅行兼勉強合宿出発日。

俺はいのりさんの運転する車にかがみさん、つかささんと一緒に乗って、集合場所である東京某所の岩崎家へ向かっている。

電車以外では行った事が無いが最近は便利なもので、カーナビゲーションを使用しているから道に迷うことは無いだろう。

後は道路状況次第かな?

 

「色々と急だったもんね。いのり姉さんが車の免許持っててくれて助かったわ」

「まつりお姉ちゃんも一緒だったら良かったのにね♪」

「しょうがない・・・ていうかまつりのアレの場合は自業自得よ」

 

どうやら大学のレポートが溜まってる上に運悪く、提出期間が近いために缶詰状態になってるようだ。

・・・状況的にどこかの誰かを思い出す(汗)。

 

「万が一の場合は母さんを召喚しようかとも思ったんだけどね」

「召喚ってアンタ・・・(汗)」

 

もっとも仕事の関係上、1週間以上も休んでもらうわけには行かないもんなぁ。

まぁ結果オーライって事で。

 

「でもこうやって車で行くのは初めてだから、行き先は分かってても結構新鮮だよね」

「そうね・・・ドライブっていうのも悪くないか」

「ねぇねぇまーくん。18歳になったら免許取るの?」

「ん~・・・。早い方が良いんだろうけどまずは受験を終わらせてからかな」

 

それ以前に自動車学校に通わなきゃいけないし、その費用も確かハンパな額じゃなかったはずだ。

その辺りは貯金でギリギリ何とかなるかもしれないけど肝心の自動車は・・・無理!

 

「あらあら、つかさはまさくんと2人っきりでドライブに行きたいの?」←ニヤニヤ

「ふえぇ!? ちちちち違うよ、みんなで一緒にドライブするのもいいなぁって思っただけで!」←真っ赤になって錯乱中

「・・・当然、運転するのは俺の役目になるんだろうけど、そうするとワゴン車辺り買わないといけないんじゃないか、それ・・・? 経済的に難しいなぁ」←素の状態

「レンタカーの場合はいくらかかるのかしらね?」←スルー

 

と、こんな感じでつかささんを弄りながら目的地に向かう俺達だった。

 

夏休み、ということもあって多少道路の混雑を予想していたが、国道は比較的流れている様子。

この調子なら待ち合わせ時間に遅れることも無いだろう。

ちなみにこなたさんとゆたかさんは成実さんの車で途中日下部さんを拾い、八坂さんと永森さんはひよりさん、パティさんと一緒にそれぞれ行くそうだ。

・・・成実さん、いきなりスイッチ入んなきゃいいんだけど(汗)。

 

 

 

「うっわ~・・・この辺高級住宅街じゃん。さすが別荘を持ってるだけあるわね。えっと、岩崎さんだっけ?」

「まぁ持ってる人は持ってるって事で。ちなみに反対側の家はクラスメイトで委員長の高良さんちです」

 

岩崎家に到着するなり、いのりさんの一言。

社会人とは言え、そう思うのも無理は無い・・・のかな?

考えたこと無かったけど岩崎さんの家の敷地、何坪あるんだろ?

あ、庭でチェリーがはしゃいでる。

ちなみにいのりさんは反対側の家を見て・・・こっちを見ても口をあんぐりしていた。

 

「あ、チェリーちゃん、今日も元気だね」

「ていうか車が来たから興奮してるだけなんじゃない?」

 

そんな中でいのりさんの妹達は慣れた動作で岩崎家のインターホンを鳴らす。

どうやら俺達が一番乗りだったようだ(高良家の2人は家が真正面だから除く)。

玄関のドアが開き、ほのかさんが出迎えてくれた。

 

「いらっしゃいみなさん。そちらが保護者の方かしら? 初めまして、岩崎ほのかと申します。」

「あ、えと、初めまして、柊いのりと申します。今回は妹達共々、若輩者ですが保護者として同行させていただきます。よろしくお願いいたします」

 

おおう、大人な会話のやりとりだ。

てかこうして見るといのりさんも社会人っぽく見える。

 

「なんかいのりお姉ちゃんかっこいいね」

「いつもああだと良いんだけどね~」

「まぁ、今だけじゃない? 社交辞令って事で」

「・・・何気に言うわね、まさきくんも」

 

もちろん本人に聞かれたらカミナリが落ちかねないので小声で話している。

その後全員が揃うまでティータイムにするようだ。

が、俺の場合・・・。

 

「おいこらチェリー、あんまり舐めるなくすぐったい、てかひっかくなコラ!」

 

岩崎家に入ろうとした時に何故かチェリーが俺について来たので、相手をするために外に残って暇を潰していた。

こんなに犬に懐かれやすかったっけ、俺?

 

「あの、赤井先輩・・・」

「ん? どうしたのみなみさん?」

 

むう、人の家のペットに馴れ馴れしくしすぎたかな?

かと思いきや・・・。

 

「先輩とチェリーが遊んでる所、撮って良いですか?」

「へ・・・?」

 

どうやらチェリーが尻尾を振って()()遊んでいるところがみなみさん的にグッと来たらしい・・・あくまでチェリーに、ね。

まぁ断る理由もないから構わないと言ったら、いそいそとデジカメを取り出してシャッターを押し始めた。

そこに八坂さん達が来たらしく、ひよりさん達に教えられたのかみなみさんに挨拶をしに来た。

 

「あなたがみなみちゃん? 初めまして、八坂こうです。今回は誘ってくれてありがとね!」

「永森やまとです、よろしく・・・こう、もうちょっとテンション下げられないの?」

「いえ、私は気にしてませんし、元々母の提案でしたから・・・」

 

八坂さんを諌める永森さんだが、みなみさんが特に気にしてないと知るとホッと一息ついたようだ・・・相変わらず苦労してるなぁ。

 

「・・・ねぇ岩崎さん、私も混ぜてもらっていいかしら?」

「・・・ええ、どうぞご遠慮なく」

「永森さんって犬は大丈夫なんだ?」

「ええ、まぁ・・・ね」

 

そんな訳で永森さんも混じってきた・・・なんかニヤニヤした八坂さんの視線が気になるが。

チェリーは永森さんの足元をくるくると臭いを嗅いで回っていたが、永森さんが遠慮がちに手を出すと前足をポン、と乗せた。

その後は永森さんがチェリーの頭や顎を撫でたり、体に顔を埋めたりしてはうっすらと笑みを覗かせていた。

ちなみにこっちもみなみさんは激写中である・・・あっさり馴染んだな、こっちも。

そんな事をしてる間に成実車に乗ったこなたさんたちや、黒井先生が来て全員が揃ったようだ。

正直黒井先生や成実車辺りが遅れ・・・いや、成実車はさらに早く来るか(汗)。

実際、黒井先生が一番遅かったんだがこれは誤差の範疇。

 

「しかしこうして見るとますます俺の存在が浮くな~・・・」

「何言ってんの、まさきがいなきゃ私達は全員揃ったとは言えないじゃん♪」

「いや、意味解かんないし」

 

保護者含めて女性15人に対して男性は俺1人・・・肩身がおもいっきり狭いっての(汗)。

 

「そういや誰がどの車に乗るか決めてるの?」

「いえ、それに関してはこれから決めようかと・・・ご希望があるんですか?」

「いや、希望というより提案かな・・・」

 

ドライバーの性格など色々と考慮して考えていた事をみゆきさんに提案した。

その結果・・・。

 

高良車 ゆかりさん(運転手)、柊姉妹、日下部さん。

黒井車 黒井先生(運転手)、みゆきさん、八坂さん、永森さん。

柊車 いのりさん(運転手)、みなみさん、ゆたかさん、パティさん、オマケにチェリー。

成実車 成実さん(運転手)、俺、こなたさん、ひよりさん。

 

となった。

基本的にこの順番で走る事になる。

目的地を知ってる人をそれぞれの車に最低1人乗せて、例外的に場所を知らないメンツの成実車が前を走るいのりさんの車を見失う、という事はないと判断。

さらに俺は目的地を事前に聞いて、インターネット等を駆使して道順を頭に叩き込み、さらに地図帳を持った上で助手席に乗ることを選んだ。

こうして万が一に備えた上で成実さんが爆走(暴走とも言う)しそうになったら、彼女を止める役を自ら引き受けたのである。

こなたさんは成実さんが暴走してもある程度慣れてるし、ひよりさんは・・・まぁ抽選の結果ってことで。

少々距離がある事から高速道路を利用し、岩崎家や高良家がいつも使ってるS.Aで休憩することも確認した。

乗車する車が決まった人から車に乗り、順次出発となる。

目的地は軽井沢だ。

 

 

 

「いや~、去年より更に凄い人数で旅行することになるとはね~。赤井君も大変だね☆」

「まぁ大変ではありますけどね・・・今は主に成実さんの爆走を止めるために」

「他に誰がゆいねーさんを止められるかって考えると、きーにいさんくらいしかいないもんね~」

「ええっと、何だか先輩方との話を聞いてるとすっごくヤな予感しかしないんスけど~・・・?」

 

現在高速道路を走行中。

今の所、猛スピードで走る車は特に無く、暴走の兆しも見えない。

ま、杞憂に終わるのが一番良いんだけどね。

 

「しかしまさきも考えたもんだね」

「何が?」

「分乗の時の事だよ~。私ら揃って何も考えてなかったからさ。ゆーちゃんが乗った状態で暴走しようモンなら間違いなく体調崩すしさ」

「むむ、おねーさんをもうちょっと信用してくれても良いんじゃないかな?」

「そうは言いますけどね・・・」

 

去年の『アレ』を思い出すとどうしても、なぁ。

ひよりさんは言ってる意味が解からなかったようで・・・。

 

「あの~、さっきから気になってるんスけど・・・爆走とか暴走って?」

「ああ、成実さんって猛スピードで追い抜かれるとスイッチが入っちゃってね」

「スイッチ?」

「つまり、ゆいねーさんはその瞬間に頭○字D的な走りになるんだ!」

「な、なんだって~!?」

 

ネタをネタで返したのは良いが、後部座席でこなたさんがポン、とひよりさんの肩を叩いた。

ひよりさんはネタで返す余裕はあったようだがすぐに顔面蒼白になっている。

 

「生きて、帰れますよね?」

「運が良ければ死なない程度に気絶するだけじゃない?」

「私はもうそこそこ慣れたけどネ~」

「ダ~イジョウブだって。おねーさんにまかs『ブゥオンッ!!』・・・・・・」

 

俺たちが冗談半分で言ってるそばから猛スピードのスポーツカーが通り抜けました(汗)。

やべ、成美さんの表情が既に頭○字D的なタッチに・・・!

 

「・・・あんにゃろう、いい気になr「ハイストップ。成実さん、ひとまず落ち着いてください」ここで引くわけにはいかないんだよ赤井くん!?」

 

うお、怖!

でもここで怖気づいたら何のために助手席(ココ)に乗ったか分からない。

何としても止めなければ!

俺は急ハンドルを切れないようにハンドルを押さえて、クラッチレバーにも手をかけた。

後ろから何か聞こえるが気にしてる余裕は無い!

 

「成実さん、高校生とは言え子供達の前ですよ!? それに最悪の事態になった時、悲しむ人たちがいると言う事を考えてください!」

「・・・・・・!」

「こなたさんは成実さんのかわいい妹でしょ!? 成実さんに何かあったら旦那さんやゆたかさんも悲しむでしょう!? ひよりさんにもそういう人はいるんですよ!!」

「・・・くっ・・・!」

 

成実さんが頭の中で理性と本能が戦ってる・・・でももう一息!

 

「もしこれが原因で成実さんが俺に対して悪いイメージを持ったとしても俺は後悔しませんよ。俺は、俺の正しいと思ったことを言って、行動しただけなんですから」

「・・・分かったヨまさきくん。分かったからまず手を離してくれないかな?」

 

成実さんの声は暴走した時のまま。

でもここは成実さんを信じて俺は手を離した。

 

「(スゥ~、ハァ~)・・・ゴメンね~怖がらせちゃって。もう大丈夫! 心配要らないよ~☆」

 

大きく深呼吸をした後の成実さんはいつもの成実さんだ。

あ~、怖かった・・・。

幸いなことに前を走ってる柊車は見失っていない。

と、そこに・・・。

 

「減点!」

 

バキッ!

 

「痛っ! いきなり何すんの!?」

 

突然後からこなたさんが俺の頭を拳骨で叩いたのだ・・・それも結構な力で。

 

「さっきのゆいねーさんを止めたまさきは凄かったけどさ、まさきにだって何かあったら悲しむ人が一杯いるんだからね? それを忘れちゃダメだよ?」

「あっはっは。考えてみると赤井君、自分の事に関しては全然触れてなかったもんね~」

 

・・・そういや自分の事はまるで考えてなかったっけ。

 

「・・・は! メモメモ! 今のは・・・えっとあそこで・・・ああいう風に。でも・・・いや待てよ? アレンジを加えて・・・キタキタ、ネタがキタ~!」

「も~好きにしてくれ・・・」

 

ひよりさんは相変わらず研究熱心な事だ。

こっちはこっちで相手をする余裕は既に無い・・・。

 

 

 

<軽井沢:岩崎家別荘>

 

 

 

「・・・ということがあったんスよ~」

「す、凄いですね、赤井先輩」

「中々出来る事じゃないですね・・・」

「さすがニッポンダンジ、キめるトコロでキめますネ、マサキ!」

 

別荘に着いた時は既に夕方。

水やガス、電気はキッチリ管理されていたのですぐに夕飯の準備に取り掛かれた。

長旅だったこともあり、今日の夕飯は簡単な物で済ませる事になる。

ちなみに高良母娘は今日は親戚の家に行くとの事でココにはいない。

その後、全員風呂に入り(もちろんお約束なんて無かった)、ひよりさんが興奮気味にみんなに話していたため、成実さんを説得した時の言葉が鮮明に思い出されて・・・。

うわ、メチャメチャクサい事言ったな、俺(汗)。

 

「それにしてもアンタは最初っからそのつもりだったのか?」

「まーくん、確かに凄いけど・・・」

「もう少し自分を大事にした方が良いと思います」

「でもお姉ちゃん達がなんとも無くてよかった~」

 

実際、あのスポーツカーを見た時、ゆたかさんは成実さんが暴走しないか相当心配してたようだ。

直線の高速道路も十分危険だからね。

ついでに言うと成実さんを説得中、後から聞こえた話し声はゆたかさんがこなたさんの携帯に電話をして状況の確認をしていたとか。

 

「あ~・・・俺はもう寝るよ」

「ええ~? もうすこs「今日はお疲れ様、お休みまさきくん」フガモガ~!」

『お休みなさ~い』

「Good Night! マサキ!」

「ああ。お休み、みんな」

 

 

 

場所は移して保護者達の部屋。

俺の寝床は居間のソファーでも良いって言ったんだけどなぁ。

 

「お、来おったな今日の勇者君!」

「何ですかそれは・・・」

 

今日あったことは既に保護者組にも伝わっているようで、成実さんは部屋の隅で小さくなってブツブツ呟いてる・・・ビール片手に。

 

「結局何事も無かったんんですから、お咎め無しでも良いんじゃ?」

「まぁね。まさくんの言う通り、そう言ったんだけど・・・お酒入ったら成実さん、ああなっちゃって・・・」

 

この後、成実さんを立ち直らせるのにまた一苦労したのは余談である。

さらに・・・。

 

「赤井、お前のとった行動は正しいのかも知れへんけどな・・・最悪の場合、赤井のご両親にうちら全員顔向けが出来なくなるんやからな?」

「何かあったらあの娘達が悲しむし、私達も同じなのよ? それだけは憶えておいてちょうだい」

「ハイ、すいませんでした・・・」

 

自分を大事にしなかった点について、追い討ちをかけるようにいのりさんと黒井先生に説教されました(涙)。

 

 

 

つづく・・・


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