らき☆すた~if~ たとえばこんな物語   作:岡崎ひでき

34 / 62
第三十三話 ある意味人生初めての日

<3月某日:商店街>

 

 

 

「やっぱ定番はキャンデー、マシュマロ、クッキーか・・・でも定番過ぎるよね・・・しかしそんなにひねってもな・・・」

 

俺は商店街をあちこち見て回りながらお返しするものを考えてた。

お返し・・・もちろんバレンタインデーのお返しだ。

一部では『3倍返し』なんて言われてるが、はっきり言って1人ならまだしも10人となると(後で数えた)懐がかなり・・・てかぶっちゃけ足りん。

後は定番・・・というか一番懐が痛まずに、なお且つ気持ちを込めて送れる物といったら・・・。

 

「自分で作るしかない、か。とりあえず本屋にでも行こう」

 

そうぼやいて、俺はそこそこ大きい本屋へお菓子の作り方が載ってる本を買いに行くのであった。

 

 

 

<自宅>

 

 

 

「え〜っと最初は小麦粉に砂糖、バターに・・・卵黄!? こんなの原材料に入ってたのか。それから・・・」

 

いくら1人暮らしが長くなってきたとはいえ、料理はお世辞にも上手いとは言えない。

だから買ってきた料理本(お菓子専門)を片手に必死になって練習していた。

 

「飴・・・まぁ結局は砂糖水を固めたようなモンみたいだけど・・・てアチッ! ち、侮れねえゼ、クッキー作りってのもよぅ」

 

そんな1人漫才をやりながら、ちょっとやけどもしたりしてるけど自分が納得できるようになるまで練習練習。

その合間に少し思い出す。

渡されたチョコレート。

いくつかは本命・・・なのだろう。

少々形がいびつな物、包装が上手くいかなかったっぽい物等々もいくつかあったが、やはり『想い』というのは実際に伝わって来るという事を痛感した。

さすがに全員ってワケじゃなかったけど。

だけどそんなに好かれるようなことしたかな俺?

2年生になってどっかの古い恋愛漫画みたいな出会いをしてこなたさんと知り合って。

そこからつかささん、みゆきさん、かがみさんと立て続けに知り合って。

柊姉妹の家が思いのほか近かったことが判明して。

それからはゆったりとした、でも足早に1年が経過しようとしている。

そんな中で誰かと親密になるような事ってあっただろうか?

そりゃあ皆と遊びにはよく行くし、誕生日は皆で祝ったり祝ってもらったりしたし(強制だったとはいえ)コスプレされて互いに同情してみたり・・・。

あっという間に時間が過ぎて残りあと1年・・・いや、もう1年しか時間は残ってない。

そして過ぎ去った(とき)は戻らない・・・なら悔いの無い学生生活を送って、答えを模索していこう。

 

「・・・同じ問答を自分の中で何回繰り返したかな?」

 

その中で答えを見つけた時・・・俺は、皆は、どうなってるだろう・・・?

 

 

 

<陵桜学園2−B:昼休み>

 

 

 

んでホワイトデー当日。

昼休みにチョコをくれた皆に俺の努力の結晶とも言うべき手作りクッキーを渡して回った。

ちなみに柊家の面々には今朝のうちに手渡し済みである。

いのりさんとまつりさんのかなり驚いた顔は記憶に新しい。

 

「ねぇ、やっぱりアンタのその手・・・」

「ホントに大丈夫?」

「慣れない事をやったからかな。やらかしたのは最初のうちだけだし、心配しなくても大丈夫」

「いやしかしまさかの手作りでお返しが来ようとは・・・」

「でもとっても美味しそうに焼けてますね♪」

「味は保障できないぞ〜」

 

あくまで俺の味覚で、まあ大丈夫だろうという程度の出来だ。

 

「でもこういうのって気持ちが大事だと思うの」

「あやのの言うとおりだと思うぜ? サンキュ〜な、赤井!」

「そう言ってもらえると、作った甲斐ってのもあるもんだ」

 

野郎のちょっとした努力でコレだけ言われりゃ男冥利に尽きるってモンだ。

身内からもらった時は、全部売ってるものくらいしか送らなかったからな。

ま、コレも良い経験ってことで。

ついでに言うと他校生である永森さんには連絡済。

今日の放課後、チョコを貰った公園で会う約束をメールでしている。

ちなみにアドレスや番号はチョコを貰った日に交換済み。

 

「そういえばこなたの従姉妹、陵桜(ここ)受けたんでしょ? どうだったの?」

「あ〜、受かったって。今日ウチに挨拶に来るんだよ〜」

「泉さんのお宅にですか?」

「ゆーちゃん・・・小早川ゆたかっていう、私の妹みたいな()なんだけどね、実家が遠い上に体が弱いからね」

 

そこで下宿先として親戚である泉家が預かる事になったという。

 

「へ〜。でもチビッ子と並んだらどっちが上かわからなくなるんじゃね〜か?」

「あっはは♪ それありそうだね。こなたさんちっこいし」

「ちっこい言うな〜! でも妹みたいってのはホントだよ?」

 

・・・どんだけちっこいんだ泉家の家系・・・?

 

「でもここをすんなり受かるなんて従姉妹さん、凄いね〜」

「つかさ・・・とりようによっては自信過剰に聞こえるわよ?」

「でもそれを踏まえてもさ、体が弱いって事は結構学校も休みがちだったんじゃないの?」

 

そうなると休んだ分を取り返すためには結構な努力が必要になる。

ねぇこなたさん? と俺は話をふった。

 

「そだね〜。病欠や早退もあったみたいだし、ゆーちゃん自身もちょっとした事で体調を崩す事も多かったから」

 

どのくらい休んでるかは分からないけど、受験に向けてさらに相当な努力もしたはずだ。

 

「そっか・・・来年はいよいよ私達も受験だね」

「受験・・・するのかな? まだ全然決めてね〜や」

「みさちゃん・・・(汗)」

 

峰岸さんは感慨深いことを言ってるが日下部さんは・・・でも(汗)。

 

「ヤバイ、いい加減にしっかり決めないと」

「奇遇だネ。私もだよ〜」

「泉さん・・・まさきさんまで(汗)」

「まぁ、まさきくんは勉強しっかりやってるからギリギリまで考えられるでしょうけど・・・この2人は本気で将来決めとかないとやばいんじゃないのか?」

 

かがみさん、ナイスツッコミ・・・。

 

 

 

<放課後:とある公園>

 

 

 

時間の余裕は十分。

俺は以前、永森さんからチョコを貰ったこの公園に1人で来ていた。

そもそもどの辺に住んでるのかも知らないんだよなぁ。

それを言ったら日下部さんや峰岸さんも同じだが。

 

「赤井先輩、こんにちは」

「お、こんにちは永森さん。わざわざゴメンね?」

「いえ、学校からも家からも大して離れてないですから」

 

先月は私が呼び出しましたし、と永森さん。

時刻は4時・・・約束した時間にぴったり合わせて彼女はやってきた。

・・・考えてみるとお返しのためだけに呼び出したようなモンだよな。

気恥ずかしいがさすがに・・・。

 

「コレだけのためとはいえ、そっちの学校まで行くのは・・・ね」

「さすがに、ですね・・・」

 

俺は思わず苦笑い、永森さんは無表情・・・でもないか。

ほんの少し赤くなってるのは気のせいじゃないだろう。

ていうか前から思ってたんだけど表情が読みにくい娘だなぁ。

そして俺が何か言う前に。

 

「あの・・・この後暇だったら、良ければ遊びに行きません?」

「ん? まぁバイトは今日は休みだし構わないけど、どこか行きたい所でもあるの?」

「ハイ」

 

あ、今薄く笑ったような感じがした。

とりあえずどこに行くかは着いてからのお楽しみ、という事だが着いた先は・・・。

 

 

 

<ゲームセンター:戦場の絆固体(コクピット)の中>

 

 

 

いつの間にかココに来ていた(汗)。

どうやら彼女も戦場の絆を始めていたらしい。

しかも狙ったかのように俺と同じ赤軍で。

 

『よろしくお願いします』

「ああ、よろしく。にしても結構意外だなぁ。永森さん、この手のゲームやらなそうなイメージがあったけど」

『全然やらないと言った事もありませんよ? それにこうに付き合わされてこの手の対戦ゲームは見慣れてますから』

 

後はコツを掴めば結構いけます、とは永森さんの言葉。

ちなみに現在の階級は俺が上等兵、永森さんは一等兵である。

ついでに言うと同じゲーセンで同じクラス(俺達はBクラス)のマッチングならボイスチャットが可能なため、こういった会話をしながらプレイができる。

 

『あら? もう1人ここに入った人がいるみたいですね』

「え、ほんと・・・ってこの人って(汗)」

『お〜っす、赤井に永森。たまたま入ってく所見かけたからアタシもやるぜ♪』

「やっぱり日下部さんかい!」

『・・・えっと以前、赤井先輩と一緒にいた人・・・ですよね?』

『おう! よろしくな。あと赤井、みんな観戦してるからみっともないトコ見せんなよ〜♪』

 

・・・ちょっとマテ。

 

「みんなってまさか・・・?」

『そ、いつものメンツ』

 

あやのは来れなかったけどな、とのたまうが、本当にたまたまだったのか怪しくなってきたんですけど・・・?

まあそれはともかくとして、いっちょ気合入れていきますか!

戦場はは砂漠、レーダーを使いにくくする撹乱幕濃度は0%、数は6vs6での戦闘になる。

永森さんや日下部さん、他のプレイヤーの選ぶ機体のタイプを見ながら俺は格闘型・・・近接戦闘タイプの機体を選び、武装や特殊装備を確認して選定終了。

そして3番機として出撃する!

 

「2人とも、援護よろしく!」

『よ〜っし! 任せとけ!』

『・・・ハイ。行きましょう』

 

そうして砂漠の戦場へ進んでいった。

 

 

 

<こなた視点>

 

 

 

いやはや、面白半分とは言え尾行もしてみるもんだね〜。

何かまさきがそそくさと出て行ったから・・・まあ予想はしてたんだけど、やまとさんにもキッチリお返しを渡すとは。

しかも状況からしてまさきから呼び出したみたいだしライバル・・・になるのかな?

本人に自覚があるかは後にして。

そんな事を思っていたら2人揃ってどこかに行く様子。

行った先は・・・ゲーセン!

まぁこうちゃんと一緒にいる所を見たことが何回かあるからそんな感じかと思いきや、やまとさんも隣のコクピットに入っていった!?

そうなるとここはまさきと同じく登録、プレイ済みなみさきちの出番!

一緒に始めたって話を聞いてたから様子を探る意味合いで行ってもらったんだけど・・・結構本気っぽい?

それに名前が分かりやすいこと・・・本名をローマ字にしただけじゃん。

 

「なんていうか・・・わかりやすい名前ねぇ」

「もう少しひねっても良いと思うけどね。まあ見てる方も分かりやすくて良いじゃん?」

「まーくんが青いので日下部さんが緑色っぽいの・・・永森さんは黒いのだね」

「泉さん、戦力的にはどうなんでしょうか?」

 

みゆきさんに聞かれてちょっと考え込む。

私はこのゲームの内容をあまり知らない。

お父さんの影響で多少の知識はあるけど、詳しく解説できるほどの知識は無いのだ。

 

「そだね〜・・・近距離から遠距離までバランスよく機体が揃ってるから後はプレイヤーの腕次第・・・カナ?」

「あ、まーくんのロボットから鞭みたいなのが出たよ?」

「あれって電気流したんじゃ・・・? 相手、よく動けるわね〜」

 

ダウンはしたけど、まぁゲームだしね。

そんなかがみのぼやきを聞いてる間にみさきちと永森さんの追撃で1体撃破。

組んでやるのって初めてのはずなんだけどここまで息ぴったりに動けるのかね?

・・・この3人ならじぇっとすとりーむあたっくみたいな事も出来そうだ♪

後で聞いてみよっと。

 

 

 

<まさき視点>

 

 

 

2戦2勝。

撃墜数2、被弾率はさすがに高かったものの、落ちてないだけまだマシか。

対人戦としては良いほうかな?

 

「や〜、結構ヒヤヒヤしたな〜」

「日下部先輩は少し突っ込みすぎです。近接は赤井先輩に任せてヒット&アウェイに徹した方が良かったのでは・・・」

「たしかに。近接格闘型の俺より突っ込んでどうすんの」

「ほぇ? いつもアタシはあんな感じだぜ?」

 

・・・日下部さんはチームプレイを覚えた方が良いと思うぞ?

近距離型とはいえ俺のと違ってバランス型っぽいし。

 

「いやいや、見事な戦いぶりだったね」

「結構動きが統率されてた様に見えたんだけど、そんなに上手くいくものなの?」

「同じ店ならボイスチャットが出来ますから」

「そうだね。だから後は他のプレイヤーやCPUがうまく合わせてくれたんじゃないかな?」

 

その後は普通のおしゃべりタイムになりそうだからカードをターミナルに通してゲーセンを出る。

 

「あ、悪いけどまさきくんは先に帰っててもらえる?」

「何か用事?」

「ん〜・・・親睦会みたいなものかな?」

「そうですね。せっかく他校の生徒とお友達になれそうですし」

「そゆことだから。じゃ、永森さん、逝こうか♪」

「・・・は、はい」

「じゃあ赤井、まったな〜♪」

 

なんて言って女性陣は行ってしまった・・・まあ女の子同士じゃないと出来ない話もあるだろうし。

でもこなたさん、なんか言葉のイントネーション違くない?

とりあえず俺は無難に返事して皆に軽く手を振り、帰路についた。

 

「あ、そういえば皆があそこにいた理由聞いてないや・・・」

 

結局家に帰るまでそんな事を考えていた。

時は3月。

みんなと知り合ってから2年目の春はもうすぐだ。

 

 

 

つづく・・・


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。