らき☆すた~if~ たとえばこんな物語   作:岡崎ひでき

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第二十九話 聖夜は家族と共に その3

<12月25日早朝>

 

 

 

「結構意外だね〜。つかさが最近持久力つけてるから何かあるな〜とは思ってたんだけど、まさかこんな事してたとは」

「スポーツウェアを持ってくるようにと言ったのはこのためなんですね」

「えへへ。私、がんばってるよ♪」

「最初はつかさに合わせてもっとゆっくり走ってたんだけどね」

「ま、誰でもやれば出来るってこった」

 

クリスマス当日の早朝。

祝日だろうが祭日だろうが天候が悪くならない限り、俺は早朝のランニングは欠かさない。

何事も継続は力になる。

傍から見ると大した事じゃなくても、いつか役に立つ時が来るというのが俺の信条だ。

でもそんなことより・・・。

 

「俺としてはみゆきさんはともかく、こなたさんがこの場にいる事がすっげぇビックリなんだけど・・・?」

「なんと失礼な!? 私だってやるときゃやるよ!」

 

遅刻ギリギリが多い(主に夜更かしが原因と思われる)こなたさんが、早朝きっちり起きていたのには正直驚いていた。

ちなみに現在5人で町内のランニングコースを疾走中。

いや、疾走と言うほど速いわけじゃないけどね。

 

「でもこれを毎日やってたら確かに持久力は養えますね。お2人はいつから?」

「ん〜っと・・・体育祭の後からかな?」

「その前から話だけは聞いてたんだけどね。つかさが自分から言い出したのよ」

「お〜、頑張り屋なつかさらしいね〜。で、それに便乗してかがみはダイエットに乗じて始めたんだけど結果的にはあんまり変わってないとか♪」

「うっさいわ!」

 

図星・・・なのかな?

ちなみに聞いた話、朝食の量が増えてるらしい。

まぁダイエット云々は置いといて。

 

「こうやって走ってるから足に筋肉が付いて来たんでしょ。だから結果的に余分な脂肪が落ちていても体重がさほど変わらないんじゃない?」

「まさき〜? 女の子に対してストレートに体重がどうのって話は感心しないわよ〜? でもそうだとするとなんか複雑な気分だわ・・・」

 

ツッコんだり怒ったり落ち込んだりと朝から忙しいなぁかがみ姉さんは。

 

今日はクリスマス。

 

そんな日にも拘らずいつも通りの何気ない朝の1コマが流れていた。

 

 

 

「ねぇねぇ、皆年末はどう過ごすの? 空いてるんだったら私とお祭りに行かない?」

 

ランニングを終えて朝の1コマ。

こなたさんから年末のお祭りに関する勧誘を受けた。

場所は有明なんだけど、なんてのたまう時点で間違いなく・・・。

 

「すいません、私は親戚の家で過ごす事になってますので」

「こなちゃん、どんなお祭りなの?」

「・・・あ〜、こなたの言うことを要約すると、コミックマーケットの買出し要員よ。夏休みに行った時はビックリしたわよ!」

「なるほど、こなたさんにパシられたんだ」

「む〜、皆で行けばば楽しいもん。お祭りはお祭りだもん」

 

確かにあの人数はお祭りだわな。

俺も以前一度だけ行った事があるが・・・何あの人ごみ(汗)。

とりあえず既につかさ姉さんは興味津々、かがみ姉さんはつかさ姉さんが行くと言えば面倒見るために行かざるを得ないだろう。

あの凄まじい人ごみの中に女の子ばかり行かせるのも如何かと思うし・・・。

そう考えると俺も行くハメになるかも(汗)。

 

「どんな所だろ。行ってみたいな〜」

「え、つかさ本気? 人ごみがハンパじゃ無いわよ?」

「ま、社会勉強にはなるんじゃない? あまりオススメは出来ないってかしないけど」

 

つかさ姉さんのことだ、到着するなり大量の人ごみで怯えてそうだが・・・。

 

 

 

<柊家:居間>

 

 

 

「と言うわけで皆暇だよね? どこか遊びに行きましょうよ♪」

「まつり姉さん唐突すぎ」

 

朝食を終え、こなたさんとみゆきさんが帰った後、まつり姉さんが突然そんな事を提案してきた。

多分行き当たりばったりなんだろうが。

 

「遊びに行くってまつりお姉ちゃん、どこか行きたい所でもあるの?」

「まぁ私も考えてはいたんだけどね。折角の休みだしその上弟もいるんだし」

「いのり姉さんの言う通りかもね。お父さんもお母さんも誘って家族皆でさ」

「俺は特にそういう希望やら予定やらは無いから姉さん達に合わせるけど?」

 

そうすると少なくとも男女7人皆で楽しめる場所が望まれる訳だ。

 

「無難に考えるとボウリングとかカラオケとか映画とか?」

「あ、それで思い出した! まさきって結構歌上手いからさ、カラオケ行こうよカラオケ!」

 

その一言でとんとん拍子に話が進んで皆で少し遠くのラ○ンド1に行くことになった。

あそこなら色んなものが揃ってるからそれぞれやりたいことをやれる。

まずは早めに昼食(外食になる)をとり、2時間ほどカラオケを楽しんだ後(延長の可能性大)、店内の施設で各自自由行動、スーパーで買い物して帰宅する、という即興の計画を立てる。

そして思い立ったら即行動。

(ただお)さんと(みき)さんに話をして即出かけることになった。

 

 

 

<ラ○ンド1:カラオケルーム>

 

 

 

『♪~~~♪』

 

現在、父さんと母さんが熱唱中。

内容が演歌の・・・ていうか自分達の願望入ってません?

いのり姉さんとまつり姉さんが思いっきり頭抱えてるし・・・。

 

アレから軽く昼食をとってラ○ンド1に到着。

ゲームを見ても『見ててもさっぱりだしボーリングもあまり上手くないから』と言う父さんと母さんの意見で少し長めに時間をとった。

でもそういうとわざわざラ○ンド1(ここ)まで来た意味ないんですけど(汗)。

で、1番手に父さんが歌い始めたのに母さんが便乗したのだが・・・。

 

「姉さん達にそういう話は・・・?」

「言わないで、お願いだから(涙)」

「ま、まだ大学生だから大丈夫・・・多分」

『・・・・・・』

 

いのり姉さんが頭を抱え、まつり姉さんも遠い目をしている。

他2人は我関せず、もしくは何か思うところがあるのか・・・黙って聞いている。

そんなこともあって・・・。

 

「♪~~~♪」

 

「♪~~~♪」

 

上から順にいのり姉さん、まつり姉さんである。

何か2人の心情をそのまま歌に込めてるよ〜な・・・あ、少し涙浮かべてる(汗)。

続いてかがみ姉さんがつかさ姉さんとデュエットで歌うようだが・・・。

 

「♪~~~♪」

「♪~~~♪」

『♪~~~~~~♪』

 

さすが双子、息もぴったりだ。

24時間テレビのフィナーレでよくうたわれる歌だ・・・何気に姉さん達を応援しているようにも聞こえるが(何を、とはあえて言わない)。

 

「まさは何を歌うの?」

「やっぱりロボット物の歌?」

 

多少吹っ切れたのか姉さん達に聞かれる。

父さんも母さんも興味津々って感じだ。

が、とりあえず俺が入れたのは・・・。

 

「♪~~~♪」

 

『ちょ! まさ(まさき)!?』

「なんでまさきがタッ○知ってるのか聞いた方が良いのかな・・・?」

「でもこれはこれである意味有名な曲よ?」

「まさきらしいっちゃまさきらしいわね・・・」

「でもやっぱり上手だよね♪」

 

うん、昨日買ってもらった物の歌でも良いけどさすがに男が歌ったらドン引きされる内容(うた)だからね。

あとこういう時に期待されると・・・裏切りたくなるじゃん♪

その後、まつり姉さんの「ロボット物の何か歌ってみてよ〜!」と言う要望により歌うことにしたのだが・・・まつり姉さん、何でそこまでこだわるのかな?

とりあえずこれなら分りやすいかな?

 

「♪~~~!!♪」

 

「聞いたことはあるけど、これってロボット物だったんだ・・・」

「しかしまさは女性歌手の歌が好きなのかしら?」

「単に歌いやすいって少し前に言ってたわよ?」

「あ、そっか。私とかがみお姉ちゃん、まーくんとカラオケに来るのって初めてじゃないもんね」

 

どうでもいいが、1万2千年前から愛してると言い切るのはすごいと思う。

そうして皆で楽しんでるうちにあっという間に時間が過ぎていく。

既に夕方。

今日も残りあとわずかだ。

 

 

 

<柊家:夕食時>

 

 

 

「な〜んかさびしいな〜。せっかく弟が出来て昨日今日と新鮮な日だったのに」

「まつり、あんまりワガママ言うもんじゃないわよ?」

 

何か神妙な顔つきな長女と次女。

まあそれを言ったらこっちも同じだ。

 

「でもまつりお姉ちゃんが言うのも分かるよ〜。私もまーくんに『つかさ姉さん』って呼ばれて、ホントに弟が出来たんだなって思えたんだもん」

「まさきは夕飯食べ終わったらもう帰っちゃうの?」

「片付けの手伝いくらいはやってくよ。でも近いとはいえ夜中だし、家を出たら全力ダッシュかな?」

 

無いとは思うが補導されるのは勘弁である。

それに始まりがあるから終わりがある。

こればかりはどうしようもない。

時間は止まらないし、ましてや戻すことなんて出来ないんだから。

 

 

 

「まさきくんのお陰で楽しいクリスマスを過ごせたよ」

「本当に、ありがとう。またいつでもいらっしゃい」

「あ、いや、べ、別にお礼なんて・・・こっちこそありがとうございました」

 

柊夫妻にお礼を言われてこっちも逆に恐縮してしまった。

玄関先で一家総出で見送られたからなおさらである。

 

「初詣の時はいらっしゃい。美人な巫女さんが4人もいるんだから♪」

「姉さん、いくらなんでもショタはd『ゴツン』あいた!?」

 

何かあの2人、かがみさんとこなたさんの姿がダブって見えるような・・・。

 

「まぁ姉さん達のことは置いといて、また・・・ね?」

「楽しかったよ。また一緒に遊ぼ♪」

「うん。それじゃあみなさん、昨日今日とお世話になりました。おやすみなさい」

 

 

 

たった2日。

その2日間が物凄く濃くて、そして楽しい・・・本当に楽しい時間だった。

そしてさほど遠くない(と言うか目と鼻の先と言ってもいい)自宅に帰って来た。

家に帰って来てまずやったのは、ただおさんに買ってもらったガン○スターを大事に飾る事。

その時の音がやけに大きく聞こえる。

・・・アパートの部屋ってこんなに静かだったっけ?

そう思えるほどに、1人暮らしの寂しさを改めて痛感した夜だった。

 

 

 

つづく・・・


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