らき☆すた~if~ たとえばこんな物語   作:岡崎ひでき

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第二話 こんな日常

<こなた視点>

 

 

パンッ!

 

タッタッタッタッタッタッタッタ・・・

 

カチッ!

 

タイム7秒98。

 

「お〜、さすがこなちゃん。凄いね〜♪」

「いやいや、そんなこと無いよ」

 

今は体育の時間。

男女合同・・・なんてことはなく男子と女子で分かれて50M走を測定中。

人より運動はそこそこ出来るけど好きという訳ではじゃない。

でも褒められると結構うれしいもんだネ。

 

「こんなに運動できるのに何で部活に入らないの?こなちゃんなら運動部で活躍できそうなのに」

 

部活・・・高校生になると結構本格的になるんだよね。

 

「だって部活に入るとゴールデンタイムのアニメが見れないじゃん?」

「こ、こなちゃんらしい理由だね・・・(汗)」

 

私は自分がオタクだということを隠そうとは思わない。

取り繕ってもボロが出るだけだしネ。

変な目で見られることもあるけど、こんな自分でも友達は出来るのだ・・・あんまり多くは無いけど。

 

「お? 向こうはまさきの番みたいだよ?」

「あ、ホントだ〜。まーくんがんばれ〜♪」

 

つかさ〜、応援するのは良いけどあんまり大きな声で言うもんじゃないと思うよ〜?

 

 

<まさき視点>

 

 

「まぁこんなもんかな」

 

タイムは7秒02。

特に部活をやってるわけではないが自主トレ的なことをやってるからこれくらいのタイムなら上々だろう。

 

「・・・しかしつかささんって絶対天然だよなアレは」

 

スタート前につかささんの声援が聞こえたのはいいが、俺に聞こえるって事は他の男子にも聞こえるワケで・・・。

 

「ちくしょう、何で赤井ばかり」

「赤井の回りっていつも女子がいるよな~」

「俺もあんな声援がほしいぜ・・・」

 

とまあこんな感じで一部男子のため息はともかく嫉妬まで受けてたりする。

 

「(別に付き合ったりしてるワケじゃないのに)・・・ハァ」

 

最近妙に男子の視線が痛い。

まぁ気がついたらこなたさん、つかささん、みゆきさんに何故か隣のクラスのかがみさんと休み時間に喋ったり昼休みに昼食を一緒に食べるのがほとんど。

その上柊姉妹とほぼ毎日登下校が一緒だったりして(つかささんが早起きするようになったと驚かれてるという)思い当たる節はてんこもり。

俺としては普通に友達付き合いって言う感じで、今の所誰かを意識してるわけではない。

周りを気にして急によそよそしくするのもどうかと思うし・・・まぁなるようになるだろう。

そんなことを考えてるとクラスメートの白石君が話しかけてきた。

 

「柊さんの声援で記録更新か? ま・あ・くん?」

「・・・あのね」

「冗談だって。でももったいないよな〜。赤井って中々いいタイム出してるし、体格もいいから練習次第じゃ運動部、どこでもいけるんじゃないのか?」

「そう言ってもらえるのは嬉しいけどね、高校の部活って結構本格的でしょ。生活費をバイトで稼いでる関係上そこまで器用に立ち回れないからなぁ」

 

特に嫌いなスポ()ーツ()があるわけじゃない。

強いてあげるならサッカーが少し苦手なくらいだ。

などと話してる内にチャイムが鳴って体育終了し、クラスに戻っていった。

 

 

 

<昼休み>

 

 

 

昼飯は大抵弁当を持参する。

今日も今日とてこなたさんに誘われてつかささんとみゆきさんの4人で食べることになった。

かがみさんは今日は来ないようだ。

 

「それにしても結構意外だよね。まさきって1人暮らしだから毎日パンか学食だと思ってたヨ」

 

チョココロネを頬張りながらこなたさんが言ってきた。

 

「そういうのを偏見って言うんだと思うけど?」

 

1人暮らしに向けてある程度の家事を母さんに教えられたし自分で作ったほうがお得だ。

安いに越したことは無い。

 

「でもお料理が出来るというのは良いことだと思いますよ?」

「そうだよね。お弁当作るのって結構大変だもん」

「・・・俺の場合はレトルトや冷凍が入るんだけどね」

 

どこぞのクッキングなおやじや食に精通した新聞記者でもないから、ある程度の量があってまずくなければ今の所それでいい。

 

「でもご飯の間に醤油ひたした海苔挟めるのって結構手間かかるじゃん?」

「これはお気に入りだからね。冷めたご飯と結構会うし」

 

その代わり夏場は傷みやすくなるから海苔を使わず梅干(余り好きじゃない)を入れている。

と、唐突にこなたさんが口を出す。

 

「ねぇねぇ、皆はチョココロネってどこから食べる?」

 

またどうでもいいことを・・・。

 

「え? 私は頭からだけど?」

 

頭・・・?

 

「頭ってどっち?」

 

こなたさんも同じ疑問を抱いたようだ。

 

「細いほう。巻貝みたいだし」

「私は太いほうが頭だと思ったけどな〜。芋虫みたいで」

 

おいおい、つかささんとみゆきさんが引いてるぞ。

 

「食事中にンな事を言うか・・・?」

「じゃあまさきは?」

「どっちが頭かはともかくとして、太いほうから食べるな」

「でもそれだと最後のほうでチョコがなくなってしまうのでは?」

 

それを聞く限りみゆきさんも細いほうから食べるみたいだが・・・。

 

「チョコが残り少なくなったら口の中に詰め込むし」

「豪快な食べ方するね〜。さすが男の子」

「まーくん、喉につまらないの?」

 

そんな心配は無用だ。

 

「やばくなったら飲み物で流し込むから♪」

「まさきさん・・・体に悪いですよ?」

「そういうみゆきさんはやっぱり細いほうから?」

「ええ。チョココロネは細いほうをちぎって余ったチョコを付けて食べるのが本来の食べ方と聞いたことがありまして」

 

いったいどこから仕入れてくるのか、みゆきさんは結構な情報通だ。

大抵のことは彼女に聞けば分かる。

きっと頭も良いんだろう。

 

「さすがみゆきさん♪ あったまいい〜ネ!」

「ゆきちゃん凄〜い♪」

「なるほど、そういう食べ方があるのか」

 

などと口々に言われてさすがに恥ずかしかったようだ。

 

「いえ、たまたま聞いたことがあるだけですから・・・」

 

 

 

新しいクラスになって、つまり彼女らと知り合ってまだ半月だが・・・。

こなたさんはともかくかがみさんたちも下の名前で呼び(かがみさんに突っ込まれた)、こなたさんには呼び捨て、かがみさんやみゆきさんには普通に名前で、つかささんにいたってはあだ名(つかささん曰く、可愛いかららしい)で呼ばれている。

・・・さすがにつかささんには勘弁してほしいと言ったんだが・・・あんな風になみだ目+上目使いで言われたら、ねぇ?

で、放課後に用事が無ければこなたさんにかがみさん共々あちこち連れまわされる(主にアニメ、ゲーム専門店)事もしばしば。

そういったこともあり気恥ずかしさは無くなりつつある。

微妙に視線がまだ気になるけど・・・。

繰り返すが知り合ってまだ半月・・・いくらなんでも馴染むの早くないか俺?

 

4月の下旬。

 

微妙に恥ずかしいものの、まったりした空気が心地いい、という俺の日常が出来上がっていた。

 

 

 

<午後の授業>

 

 

 

食後のこの五時間目、一番眠くなるのは誰でも一緒だと思う。

それに打ち勝ってこそテストという名の結果に繋がると思うんだけど・・・。

 

「修正してやる!」

 

ゴチン!

 

「ポチョムキン!?」

 

黒井先生の授業で堂々と寝るのはこなたさんくらいだろう。

訳の分からないネタで通じてるあたり先生も結構ソッチ系の人みたいだが本人曰く、ロ○テの方が熱いらしい。

 

「い〜ずみ〜? 授業はちゃんと聞けや〜。それとも聞かんても余裕か?」

「いや頑張ってはいるんですけど・・・知らない間に飛ぶんです! 奴らは突然来るんです! 防御不可なんです!」

 

教師相手にそんな事力説してどうするの。

そんな事言ってるとまた・・・。

 

バキャ!

 

「おおぉぅ・・・」

「これで目が覚めるやろ」

 

2度目の鉄拳制裁を受けるこなたさんでした。

 

 

 

<休み時間>

 

 

 

「にしても豪快に食らったもんだね〜」

「ううぅ。暴力反対〜・・・」

「こなちゃん気持ちよさそうに寝てたもんね♪」

 

漫画みたいなタンコブなんて初めて見たぞ。

 

「でも、泉さんの仰ることも分かる気がしますね」

「そんなこといったらこなたさんがまた調子に乗るぞ?」

「・・・つかさ〜、最近のまさき、私の扱いが酷いよ〜」

 

こなたさんがつかささんに泣きついてしまった。

無論誰が見ても演技だが・・・。

 

「大丈夫だよこなちゃん。まーくん優しいからきっと許してくれるよ〜」

「いや意味わからんし」

 

つかささんにとってはそうでもないらしい。

純粋というか天然というか・・・両方あるような気もするがたぶん後者なんだろうな。

見てるとこっちが癒される気もするが。

そして六時間目のチャイムが鳴り、それぞれの席についた。

 

 

 

<放課後>

 

 

 

今日はみゆきさんと別れた後にゲームセンターに遊びに行っていた。

ゲームセンターに着いたら皆それぞれお目当てのゲーム台に向かう。

ちなみにいいだしっぺはこなたさん。

みゆきさんもさそったがあいにく彼女は歯医者。

何度も治療を受けてるのにもかかわらずまだ時間がかかるようだ。

虫歯になりやすい体質なんだろうか?

 

「かがみさんって(シュー)(ティング)(ゲーム)結構やり込んでるんだ?」

 

後ろから見ているとかなり上手いのが分かる。

ちなみにこなたさんは格ゲープレイ中、つかささんはクレーンゲームとにらめっこしてる。

俺は基本的にゲーセンでは一部を除いてノータッチだ。

見てるほうが面白い時もある。

 

「こなたほどじゃないけどね・・・っと!」

 

巧みに攻撃をかわして次々と敵機を倒していくのは見事だ。

 

「その割には相当上手いみたいだけど」

「・・・なんか引っかかる言い方ね」

「別に悪い意味じゃないって」

 

邪魔するのも悪いし他を覗いてみよう。

 

「ま、また負けた・・・」

「ふふふ・・・私を相手するにはまだまだ修行が足りんのぅ」

 

どうやらこなたさんは知らない子(服装から陵桜の子)と対戦中。

様子を見てみるとこなたさんはかなりの強者(つわもの)のようだ。

 

 

 

「こんどこそ〜!!」

「・・・さすがにそろそろ飽きてきたヨ」

 

俺がこなたさんの後から見始めて既に3戦目。

こなたさんが微妙にテンション下がってるけどいったい何戦やってるんだろ?

 

一方別の場所では・・・。

 

「う〜ん、なかなか取れないよ〜」

 

つかささんは何か目当ての物でもあるのか・・・いや、あのカエル軍曹の人形を狙ってるようだが苦戦中のようだ。

 

「そんなに難しいの?」

「うん。もう3回失敗しちゃって」

「どれどれ。フム・・・あの位置なら」

 

クレーンゲームは前いた所で結構やってたのでこの機種の感触を確かめつつ1つ取ってみる。

 

「わ、すご〜い! 1回でとっちゃった!」

「ほれ、やるよ。欲しかったんでしょ?」

「え、で、でも・・・」

「はい次〜♪」

 

昔の勘は衰えてないようだ。

 

 

 

それから15分後・・・。

 

 

 

「ポ○モン、ゲットだぜ〜♪」

「どんだけ〜・・・」

 

現在の収穫はその数7個。

まだまだいけるぜ♪

 

「アンタそんなに取るのは良いけどお金大丈夫なの?」

「あ・・・」

 

いつの間にか近くに来ていたかがみさんに指摘されようやく俺は手を止めた。

そういや前に調子に乗って1ヶ月の小遣いパーにしたことがあったっけ(汗)。

 

「あたしもやってみるか・・・」

 

俺がポンポン取ってるのを見て簡単だと思ったのか、かがみさんがクレーンゲームをやり始めた。

しかし・・・。

 

「あ・・・」

「お姉ちゃんおしかったね〜」

「もう少しだったのに・・・ええぃ、もう1回!」

 

かがみさん、少し熱が入ったようだが・・・。

 

「アレ?」

 

「ウソ!」

 

「何で!?」

 

現実はこんなもんである。

 

「エライ人はいいました。UFOキャッチャーは貯金箱であると・・・」

「上手いこと言うね・・・てこなたさんいつの間に!?」

「さすがに10回以上連コされてさ。飽きたから放置しますた」

「・・・おいおい」

 

すると少し遠くのほうで・・・、

 

「やった〜! ふっふっふ。あたしの粘り勝ちネ・・・っていないし!?」

「あれだけこうがしつこく挑戦するから飽きて帰ったんじゃないの? まったく、こうは負けず嫌いなんだから・・・」

「すっげー空しいから放置プレイはやめてくれよ〜・・・」

 

あわれ見知らぬ女子生徒、相手が悪かったようだ。

一緒の子は他校生のようだが多分あの子の友達だろう。

 

 

 

<帰り道>

 

 

 

「せっかくSTGでいい気分になってたのに・・・」

 

結局何も取れないまま帰路についてかがみさんは少々落ち込み気味。

 

「大丈夫だよお姉ちゃん、私も1個も取れなかったし」

「つかさ、それ慰めになってない・・・けどありがと」

 

基本的に仲が良いこの姉妹。

喧嘩なんて無縁なんだろう・・・ていうかまるで想像ができない。

会うなり口論(ケンカ)が絶えないウチの姉達にも見習ってもらいたいモンである。

 

「俺が取った奴、なんか欲しいのあればやろうか?」

「いいの?・・・じゃあ1つだけ」

 

そう言って、かがみさんは少し迷った後にポ○太君の人形(ミニサイズ)を取った。

 

「よかったねお姉ちゃん♪」

「べ、別にありがたいけど変な意味はないわよ! そのへん勘違いしないでよね!?」

「わ、分かってるって!」

 

かがみさんはたまに訳の分からない事で真っ赤になって怒る時があるがこなたさん曰く、

 

「かがみんはツンデレだからね〜」

 

とのこと・・・まぁ難しいお年頃なんだろう。

 

「まさきくんはクレーンゲームっていうかゲームって結構得意な方なの?」

「ん〜? クレーンゲームに関してはこっちに来る前、地元のスーパーやゲーセンで店員に警戒されたことがあるくらい?」

「疑問を疑問で返されても困るんだけど・・・」

「どんだけ〜?」

「まぁゲーセンではクレーンくらいしかやらないけど家ではRPGメイン。たまに格闘モノもやるけどあまり上手くはないかなぁ。後は全年齢版のギャルゲーをいくつか」

「アンタもそういう人間かい・・・」

「ほ、ほら。まーくんも男の子だし」

「全年齢って言ったろ。一応言っておくけど元が18禁ゲーとは思えないようなやつだぞ? 内容もしっかりしてるし、むしろ女子がやっても別に違和感ないようなヤツ」

 

恋愛小説を映像、声付きのサウンドノベルにしたようなもんだ。

 

「こなたがやってるのを見たことあるんだけどね・・・」

 

どうやらちょうどやばいシーンを見たことがあるようで・・・。

友達にってか女の子にそういうのを見せるのはどうかと思うぞこなたさん?

てかやってるとは聞いたが・・・。

 

彼女(あいつ)はそういうのまでどうやって手を出してるんだろ・・・?」

「前に聞いたらこなたのお父さんが買ってくるそうよ・・・」

 

娘に買ってくるのか泉父!?

母親は何も言わないんだろうかとツッコミたいぞ!

 

こんな感じの会話をしながら歩いているとあっという間に家に到着する。

時間の経過が早いと思うのはそれだけ毎日が充実してるということだろうか?

 

「それじゃ、また明日」

「うん。お人形、ありがとうね♪」

「またね・・・その、今日はありがと・・・」

 

つかささんは明るい笑顔で、かがみさんは少し顔をそらして別れを告げる。

別に礼を言われるようなことした訳じゃないんだけどな・・・。

 

 

 

もうすぐGW、それが過ぎれば中間テストがある。

とりあえず今日はバイトまで時間があるから宿題かたづけてからバイトに行こう。

親との約束で成績はある程度上位をキープ(少なくても2桁だから結構きつい)しなければならない。

成績落ちたからっていきなり連れ戻す・・・なんて事は無いと思うけど、電話越しとは言え怒られるのも嫌だし。

なんとなくそう考えながら、俺はアパートの階段を上がっていった。

 

 

 

つづく・・・


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