ある日の帰り道・・・。
俺達はみゆきさんと別れた後、電車の中でちょっとした話し合いをしていた。
数日後に控えた10月25日・・・みゆきさんの誕生日のことでだ。
しかしその日は平日で・・・学校にプレゼントを持っていくわけにもいかず(見つかったら即没収である)、どうしたものか。
そもそもこなたさんや柊姉妹の誕生日の時は元より、俺の時はあれだけ盛大に祝ってもらったのだ。
彼女だけおめでとうと言ってハイ終わり・・・というのはさすがに気が引ける。
もっとも彼女は、それだけでも十分とでも言いそうだが。
そして話し合った結果・・・。
「それじゃあ、少し遅くなったけど」
「改めてゆきちゃん♪」
『お誕生日おめでとう〜♪』
「ありがとうございます、皆さん♪」
誕生日の数日後である休日に、改めて祝うことになったのだ。
ちなみに岩崎さんも一緒である。
場所は高良邸のみゆきさんの部屋。
すっかりおなじみのメンバー+岩崎さんでプレゼントを我先に、と渡している光景をゆかりさんがちゃっかり写真に収めていたりする。
「お誕生日が平日だったからその次の休日にお誕生日を祝ってくれるなんて、みゆきもお友達に恵まれたわね〜♪」
「わ、私はそこまでする事は無いと遠慮したんですが・・・」←真っ赤
「そういうわけには行かないじゃない」
「そうそう、かがみの言うとおりだよみゆきさん。友達にはそういう遠慮はナシナシ!」
自分達は祝ってもらってるのにみゆきさんだけ祝わないのは友達として如何かと思うしね。
そんな訳で、いつの間にか加わってたゆかりさんも交えてちょっと遅めの誕生会が始まった。
「みゆきが男の子からプレゼント貰ったのもいつ以来かしら?」
「お、お母さん!?」
ソレを言ったら俺だって女の子にあれだけ誕生日を盛大に祝ってもらったのも初めてなんですけど・・・。
「みなみちゃん以外はみんな貰ってますよ?」
つかささ〜ん、ソレをあっさり言わないでくれ。
はっきり言われたら恥ずかしいんだから・・・。
そういえば岩崎さんの誕生日って知らないな。
「というわけで、みなみちゃんは誕生日いつ?
「何が『というわけで』なの・・・?」
「わ、わたしは、別に・・・」←真っ赤
こなたさん、岩崎さんが困ってるでしょ。
「みなみさんの誕生日は、実はこの中にいる、ある人の誕生日の前日なんですよ♪」
「あ、あう・・・」←顔から火が出そうなくらい真っ赤
ってことはもう誕生日は過ぎてる可能性が高いと・・・みゆきさんの口ぶりからするとみゆきさん以外の誰かのようだけど。
「まぁ、無理して言うこt「こなちゃんは5月、私達は7月、まーくんは9月だからそのどれかかな?」・・・つかささん(汗)」
本人が言う気が無いなら無理に詮索する必要ないだろうに。
大体、誕生日が何時だか解らないけどゆかりさんって言う選択肢は無いのか?
でも岩崎さん、顔に出しすぎ。
「ほほう・・・その表情から察するにみなみちゃんの誕じょうb「無理に掘り起こすな、みなみちゃんが困ってるでしょ!」はうぁ!?」
ここでかがみさんがこなたさんに拳骨と言う名のブレーキをかける。
そんな感じでわいわいとおしゃべりしていた時、俺はふと気になっていた事を思い出し、みゆきさんの部屋を見回した。
「う〜ん・・・」
「どうしたのまさきくん・・・女の子の部屋をじっくり見回すのは如何かと思うんだけど?」
「とりあえずその握り拳はしまってね。いや、みゆきさんって勉強以外の事でもかなり物知りだからさ、色々な本とかあるのかなって思ってたんだけど・・・」
「そういえばそうだね。見た感じ、あそこに収まってる何冊かの本と分厚い辞書とパソコンくらい・・・かな?」
こなたさんの言う通り、他に知識を得られそうな媒体はあまり見かけ無い。
ちなみにこなたさんが言う分厚い辞書は広辞苑だったりする。
聞いてみたところ、家の中に書斎があって殆どの本はそこに保管しているとの事。
「みゆきが物知りになるような、切っ掛けとかって何かあるの?」
それこそ誰でも気になるだろう、あれだけ物知りなんだから。
「お恥ずかしながら、小さい頃お母さんに
『お母さんが知らないようなことを色々知ってて、みゆきって凄いわね〜』
って褒められたのが嬉しくて・・・それからはいろいろと調べるのが癖になったんですよ。それが今では色々な事を知るのが楽しくなってるんです♪」
「それってつまり、私の育て方が良かったって言うことよね♪」
子供心に母親に褒められて、それが良い癖になって、その延長線上で今に至ると言うことか。
ある意味良い傾向だけどそれにしても・・・。
「みゆきさんってさ、お母さん似っぽいよね」
「みゆきさんの親父さんを知らないからハッキリとは言えないけど、俺もそうなんじゃないかって思う」
何この
「え、そうですか?」
うんうんと岩崎さんも含めて俺達4人は頷いた。
「その影響で小さい頃から一緒だったみなみちゃんも読書が好きになったのよね?」
「・・・(コク)」
あ、否定はしないんだ。
「小さい頃からご近所さんということで、みなみさんと一緒にいることが多かったんですよ」
「だから周りからは姉妹だって勘違いされることがあるくらい、みゆきの傍から離れないこともあったのよね♪」
「みゆきさんは・・・私にとって本当に尊敬できるお姉さんですから」
2人の付き合いからして幼馴染といったほうが合ってるような気もするけど、何か本当の姉妹みたいで微笑ましい。
ちなみに岩崎さんはみゆきさんを心から慕っており、それが理由で陵桜を受験するのだと言う。
「姉妹とか兄弟ってさ、お互いが何かを吸収してるって言うか、結構対な性質があるよね」
「ウチの姉貴達はそんな感じしないけどな〜・・・」
「・・・なるほど。吸収、ですか」
ん?
何か岩崎さんの様子が・・・。
するとこなたさんが近づいて、
「病まない病まない、需要はあるさ♪」
なんてつぶやいて岩崎さんがさらに落ち込んでいた・・・何か心当たりでもあるのか?
「岩崎さんは大切な何かをみゆきさんに吸収されたとか?」
「まさき〜、それ以上は言っちゃダメだよ。乙女心は複雑なんだから・・・私の場合はお母さんの血脈からカナ〜」
あれ?
こなたさんまで落ち込んでしまった。
「こなちゃんもみなみちゃんも大丈夫だよ、2人も私達もまだ成長期だからこれからきっと大きくなるよ!」
「はいはい、それ以上は男の子の前でなくても、深入りするのは
禁句っていうほどのことか?
こなたさんは・・・まぁ絶望的、かな。
柊姉妹もそんなに低くは無いと思うし。
岩崎さんは吸収されてるって思うほど
「す、すいませんみなみさん。私ったら知らないうちに・・・」
「ストップ! これ以上はさすがに人前で話すようなことじゃないわよみゆき。特にまさきくんの前では」
よく分からんが俺だけ仲間はずれかい・・・ま、ここにいる時点で色々と浮いてるような気がするけどね。
とりあえず女の子同士の悩みということで納得しておこう。
「そういえばみゆきさんってパソコンは主に何に使ってるの? やっぱり調べ物とか?」
「そうですね。インターネットでWikipediaのようなフリー百科事典は、辞書に乗ってない事も沢山ありますのでよく利用しているんです。後はたまにソリティアやマインスイーパといったゲームもやりますね」
使用目的がWikipediaとはまたみゆきさんらしい。
それにみゆきさんって頭脳派だからソリティアみたいなゲームを1度始めるとやりこんでそうだ。
「へぇ、みゆきがそういうゲームをするのってちょっと意外・・・でもないか(苦笑)」
「こなたさんちでやった落ちゲーを少し見てただけであっさりコツ掴んだ人だからね」
「でもわかる気がするなぁ。ああいう単純なゲームって結構熱中しちゃうし・・・ゆきちゃんはどれ位できるの?」
「時々熱くなってしまいまして、運にもよるんですがソリティアでは稀に1万点を超える事もあるんですよ」
・・・今さらっと凄まじいこと言ったぞこの人。
「俺、せいぜい4千点が限度なんだけど・・・?」
「流石はみゆきさん・・・やっぱりやりこみ派だね」
彼女の集中力を持ってすればきっとぷよ○よでも10数連鎖とか普通に連続でこなしてしまうに違いない。
「でも、そんなみゆきでも苦手なものがあるのよね〜♪」
「はう・・・はい。どうしても歯医者さんは苦手で・・・」
「でもそれって普通だよね?」
「この子はちゃんと歯磨きしてても、虫歯になっちゃう体質だから」
へぇ、歯をちゃんと磨いててもなる人はなるんだ。
虫歯は痛い→治す為に歯医者に通わなければいけない→でも歯医者は苦手→いつまでも虫歯が治らない、と悪循環になってしまうということか。
「かかったこと無いから分かんないんだけど、歯医者さんってそんなに怖いの?」
「え、こなちゃんって歯医者さんに行ったことないんだ〜」
「私も、無いです・・・」
「ゴメン、俺も行ったことが無いや。」
「みなみちゃんにまさきくんも!? ・・・そうすると食べる量とかってやっぱり虫歯とは関係ないのか」
「ほほう、かがみは食べる量が多いから虫歯には注意していると?」
「・・・! う、うっさい!」
かがみさんってよく自爆するよな(汗)。
でも歯を削る時ってやっぱり痛いんだろうか?
「あのドリルの音が怖い上に、歯にも神経が通ってるから痛いんですよ」
「そ、それは怖そうだね・・・でも男の子は結構好きそうだね、まさき?」
「は・・・?」
こなたさんの言いたい事がよく解らんが・・・。
「だってドリルって漢のロマンじゃん?」
「ソッチ方面にロマンを感じるのはかなり特殊なヤツだと思うぞ・・・?」
見るのはともかく削られるのは・・・なぁ。
・・・うん、想像しただけで痛そうだ。
俺も虫歯には気をつけねば。
ちなみに参考までに聞いておこう。
「みゆきさんは歯磨きにどれくらい時間かけてるの?」
「ちゃんとお医者さんに教わった方法で15分ほど磨いてるんですけど・・・」
「じ、じゅうごふん!?」
・・・そんなに時間かけたこと無いぞ俺(汗)。
こなたさんも流石に絶句してるし・・・。
「夏休みとか長いお休みが終わる前に行けばいいのに中々行かないから、最期には歯医者さんに来てもらおうと思ったこともあるのよ。」
「・・・つまり、押してダメだから引いてみようと?」
「そうそう、そんな感じ♪」
やっぱり天然だな、この母娘。
「でもゆきちゃんって結構努力家な面もあるよね。」
「そういえば泳げないのを自分から教えて欲しいって言ったこともあるもんね・・・まさきくんに」
そういや海に行った時、俺に頼み込んで来た時はえらく力が入ってたような・・・。
でもみゆきさんの場合は水中で目を開けられないだけだから、それさえ何とかすればちゃんと泳げたからな〜。
ある意味俺も精神面を多少は鍛えられたし。
「あらあら、みゆきったらいつのm「お、お母さん、それ以上はストップです(真っ赤)」・・・時間掛かりそうね〜、色々と」
「なんですかその意味深な発言は・・・?」
何だか含みを持ったその一言が気になってしょうがなかった・・・。
つづく・・・