らき☆すた~if~ たとえばこんな物語   作:岡崎ひでき

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第二十三話 初体験と後輩な女の子

<10月某日:東京某所>

 

 

 

「はぁ・・・どうして、俺達の世界は、こんな所まで来てしまったんだろう・・・?」

 

その日の日曜日、真昼間から俺のテンションは大幅に下がっていた。

着物に新撰組の羽織、かつらに白い鉢巻を巻いて、腰には日本刀を模した木刀。

どこからどう見てもお巡りさんのお世話になりそうな格好だが、ココではソレも許される。

 

そう、いわゆる『コスプレ祭り(パーティ)』と言うヤツだ。

 

知らない人に頼まれてポーズとった所を撮影されたり、知らない誰かと一緒に撮影されたりするだけなんだけどね。

見世物になってる様な感じがして俺はあまり好きじゃないかったんだが・・・。

修学旅行の帰りのバスの中、新撰組の羽織と日本刀と言う名の木刀をこなたさんとつかささんがクジで当ててしまったのが事の始まり。

みゆきさんがちょうど時代劇に登場しそうな着物を持っていたり(何故持ってたかは不明である)、こなたさんがバイト先からかつらと鉢巻を借りたりして、なし崩し的にココに来るハメになってしまった。

っていうか4人の女の子が揃って上目使い+お願い事は卑怯だろう。

そしてその張本人達は・・・。

 

「お、やっと見つけたよ〜」

「へぇ、中々似合ってるじゃない」

「うんうん、やっぱりまーくん格好いいよ♪」

「ふふふ、とってもお似合いですよ、まさきさん」

「そりゃど〜も・・・」

 

みんな揃ってご機嫌である。

褒められてるはずなのに嬉しくないと思うのは初めてだぞコンチクショウ。

ポーズをとる時は、某漫画に出てきた突きを必殺技に昇華させた3番隊組長の構えである(ソレしか知らない)。

それ以外は刀を肩に乗せて見たり、納刀のまま普通に腕を組んで仁王立ちっぽくしてたりと撮影者によって色々なポーズを要求されてくうちに、途中からノリノリになるんだから不思議なもんだ。

ちなみに偶然会った人(40前後のおっさん)が同じ格好(コスプレ)をしていたのを参加者に発見されて一緒に撮影するハメになるなど、初体験の連続である。

 

 

 

「何か俺だけコスプレしてるのが微妙に納得いかないんだけど・・・?」

「細かいことはキニシナ〜イ♪」

「ま、今回はいいとして・・・こなた、ココから更にまさきくんを変な道に引っぱらないようにね?」

「おやおやかがみんはまさきのことが心配ですか♪」

「これ以上友達をソッチの道に進ませないためよ!」

 

そんなやり取りをつかささんやみゆきさんは微笑ましそうに見ていた。

あの2人のじゃれ合いはいつものことだからね。

それよりかがみさ〜ん、そこまで心配するなら最初から同行を申し出て、挙句の果てに俺を連れ出したりないでほしかったんですけど(汗)。

ちなみにこの4人は、つい先ほど俺の姿を様々な角度から撮影済みである。

そんな時・・・。

 

「あーーーーーーーーっ!!」

 

突然大声を張り上げたら周りに迷惑だぞ〜。

そんなことを思いながら叫び声がした方を見てみると、女の子が2人・・・おや?

何かどっかで見たことあるような・・・はて?

 

「どこかで見かけた様な・・・誰かの知り合いだっけ?」

「う〜ん・・・」

「ちょっとわからないわね・・・」

「すいません、私も心当たりは・・・」

 

とりあえずかがみさんたちは知らないようだが、こなたさんは首をかしげて・・・。

 

「あ、何回かゲーセンで私に格ゲーを挑んで来た()だ!」

 

こなたさんの関係者のようだ。

そういえばあんな子っぽかったような気がする・・・この場合、関係者って言うのだろうか?

隣にいるのは・・・たまにこなたさんに同行した時に見かける彼女の別の学校の友達と思われる子か?

俺同様、コスプレをしてるが、表情は不機嫌そのものだ。

 

「そうよ! 何回やっても勝てなくてやっと勝ったと思ったら・・・!」

「あれは毎回毎回こうがしつこかっただけでしょ?」

「あはは。そりゃ毎回10回以上も連戦してるからさ、いつも飽きちゃって♪」

「な、なんだって〜!? そんな理由で毎回毎回あんな放置プレイを・・・!」

 

格ゲーを毎回10連戦・・・確かに飽きそうだがそれ以前に。

 

「そんなに連続でやったらさすがにお金がもったいないと思うんだけど・・・」

「同感ね」

 

俺とコスプレしてる()がバッサリ切り捨てたもんだから、彼女はしゃがみこんで後を向き、いじけてしまった。

 

「まぁアレはほっとくとして、友達が迷惑かけてごめんなさい。私は永森やまと。聖フィオリナ女学院の1年生よ。で、あっちでいじけてるのが八坂こう。彼女は()()私の親友で陵桜学園の1年生」

「あ、それじゃ私達の1つ下なんだ」

「・・・・・・え?」

 

こなたさんの言葉に一瞬きょとんとする永森さん。

まぁ、気持ちは解るけどね・・・。

 

「永森さんって言ったっけ? このちみっこいのも()()含めて俺らは全員陵桜の2年生で、ついでに言うと俺は赤井まさき」

「まさき〜、なんか最近冷たいよ・・・。改めて泉こなたをよろしく〜!」

「こなたは自業自得だ。でもここであったのも何かの縁でしょ。私は柊かがみ、こっちは双子の妹のつかさよ」

「よろしくね♪」

「初めまして、高良みゆきと申します」

 

で、自己紹介したのは良いのだが、やはり疑わしいのだろう・・・こなたさんの年齢が。

しかし後輩だったのかあの子。

 

「こう言うのを聞くのは失礼かも知れないけど・・・やっぱりあなたもコスプレとか好きでやってるの?」

「・・・初めてでその上拒否権ナシ」

「・・・あなたも、苦労してるようね」

 

この会話だけでまだいじけてる八坂さんの性格がなんとなく分かってしまう。

 

「じゃあ永森さんも私達と同じクチか・・・。ちなみにこういうのが好きなのは、私達の中じゃこなただけよ」

「素直じゃないね〜、かがみも結構ノリノリだったじゃん」

「べ、別にそんな事無いわよ!」

「でもお姉ちゃん、今回のこと話したら、なんだが嬉しそうだったよね?」

「つかさぁ!」

 

その隣でみゆきさんが口に手をあてて、微笑ましそうに見守っている。

コレもある意味いつもの光景だからな・・・。

 

「ホント、お疲れ様」

「お互い様・・・になるのかね?」

「・・・ええ。あの手この手で何回こうにつき合わされたことか」

 

ちなみに彼女の格好はどう見てもFa○eの遠○凛です。

俺と彼女の間に、学校を枠を超えた奇妙な友情が芽生えた・・・かもしれない。

友情が芽生えたかもしれない相手が女子なのはもう気にしないことにした。

 

そしてその後・・・。

 

いじけてた時の俺達の会話が聴こえてなかった八坂さんはこなたさんが自分より1つ上だったと知り、

 

「ゑ? じょ、上級生!?」

「うんうん、この反応を見ただけでなんだか下級生が可愛く見えるから不思議だよネ♪」

 

更にショックを受けたようだ。

が・・・、

 

「ならば泉先輩・・・今日こそは勝たせて頂ますよ!?」

「ふっふっふ、どのくらい腕を上げたか知らないけどその申し出、受けて立ってやろうではないか」

 

と、まあこんな感じで意気投合してゲーセンに向かうことになった。

すでに時刻は2時過ぎ。

皆それぞれ気が済んでいたらしく、時間にもまだ余裕あるということで皆で一緒に近くのゲーセンに行く2人に付いていく。

・・・もちろん俺と永森さんが着替えてからだが。

 

 

 

<ゲームセンター>

 

 

 

そんな訳でゲームセンターに到着後、さっそくこなたさんと八坂さんの勝負が始まった。

俺は俺でゲームセンター内を一通り見て回ることにする。

すると・・・。

 

「何だコレ、戦場の絆?」

 

何か大きな球体のようなものを見つけた俺は少し興味を持って近くまで行って見た。

大雑把に言うと、オンライン回線を通じた3Dロボットアクションゲームのようだ。

この球体のような物はそのゲームで使うロボットのコクピットらしい。

とりあえず空いてるコクピットを覗いて見る。

 

「うわ、すげ・・・」

 

中は前方180度見渡せるような大きなスクリーン状になっており、操縦桿やフットペダルもある。

ゲームセンターではUFOキャッチャー以外はノータッチだったんだがな・・・。

とりあえずその球体(コクピット)から出て説明書のような物を読んでみる。

500円で2回プレイ可能、練習モードもあるようだ。

専用のカードを作り、ソレが無いとプレイが出来ない。

さらにプレイすることでポイントが貯まり、より強い機体や武器を支給されるという。

・・・ちょっとやってみたくなったけど、こなたさん達もいることだしまた今度にしよう。

さて、向こうはどうなってるのかなっと。

 

「男の子ってやっぱりああいうのに興味があるものなの?」

「へ?」

 

こなたさん達がいる所に戻ろうとすると永森さんが声をかけて来た。

 

「ん〜、俺は少しやってみたい気はするけど、やっぱり人によるんじゃないかな?」

「ふぅん・・・」

 

答えを聞くなりすたすたと八坂さんのほうに行ってしまった。

・・・なんだったんだろ?

とりあえず俺もこなたさん達の方に行ってみるか。

 

 

 

「ふっふっふ、修行が足りんのう、八坂君?」

「ぐ、適度に手を抜かれてるなんて、こんな屈辱!」

 

今の状況を見ただけでなんとなくどうなってるか解かるぞ・・・。

近くにいたかがみさんに一応聞いてみた。

 

「もう何回()ったの・・・?」

「・・・こなたの13連勝よ。」

 

・・・ここに来てから確か30分も経ってないよな?

こなたさん、恐るべし(汗)。

ていうかかがみさん、数えてたのか・・・?

 

「まーくんはやんないの?」

「家にある奴くらいしかやらないからね。こういう複雑なコマンド入力のやつはなぁ・・・」

「やはり操作方法が違うんですか?」

「全ッ然違う。こないだ家でやったヤツの方が・・・まぁある意味シンプルかな」

 

だからこういう入力が複雑なアーケードゲーム、すなわちこなたさんの土俵では、俺はまず勝てない。

そしてこの後、こなたさんが20連勝を飾ったところでひとまず終了。

それぞれ帰路につく事になった・・・八坂さんはまだ諦め切れてない様だったが。

 

 

 

<帰宅中>

 

 

 

「え、戦場の絆?」

 

みゆきさんと別れた後の電車の中で、こなたさんが意表をつかれたような声を出す。

自宅に帰る途中、彼女なら知ってるかな〜と思い聞いてみたのだ。

ちなみに八坂さん達はまだ用事があるとの事で帰りは別である。

 

「ん〜、私はやったこと無いからな〜・・・おとーさんならやってそうだけど。何々、ひょっとして興味あるの?」

「ま、ああいうの(ロボットもの)は元々嫌いじゃないからね。どんなもんだかこなたさんなら知ってそうな気がしたから聞いたんだけど・・・ネットで調べてみるかな?」

 

さすがにこなたさんも女の子。

やっぱりああいうのは知っててもやらないか・・・こなたさんの場合、ペダルに足が届かなそうだけど。

 

「何か酷いこと考えてない?」

「・・・ゼンゼンソンナコトナイヨ?」

「まーくん、喋り方が変だよ?」

「ま、何やるかはまさきくんの勝手だけど、程ほどにしときなさいよ?」

「分かってるよ。破産したくはないからね・・・八坂さんみたいに」

 

彼女は今回のこなたさんとの勝負でお小遣いの全てを使い切ってしまったのだ。

ゲーセンを出てから『今月残りどうしよう・・・』なんてぼやいていたのを『自業自得よ』と永森さんにバッサリ切り捨てられたのは仕方ないだろう。

 

「ま、やるかやらないかはその内決めればいっか」

 

こんな感じでいつも道理、俺たち4人はそれぞれの帰路につくのであった。

 

 

 

ちなみに、こなたさんが別れ際に・・・

 

「今度の年末にあるお祭りの時にもまさきはコスプレ決定だね♪」

「忘れて、今すぐ」

 

なんて会話があったがこなたさんの言うお祭りってまさか・・・(汗)。

 

 

 

つづく・・・


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