らき☆すた~if~ たとえばこんな物語   作:岡崎ひでき

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第一話 春、出会いの季節

「ふわ〜あ・・・あふ・・・」

 

午前5時半。

 

かなり早い時間と思うかもしれないが、朝食の準備のほかにランニングなど軽い運動を習慣としてるのでコレくらいの余裕を持たせないと全力ダッシュするはめになる。

とりあえず台所に行って冷蔵庫を覗いた。

 

「・・・今日は買い物にいかないとね」

 

中には納豆と買い置きの漬物、それと飲み物が少々。

米も朝食分を残してほとんど無いような物だから今日は買い物が必要だ。

出前だと高くつくからなるべく避けている。

 

俺、赤井まさきは現在一人暮らし。

両親が通っていたと言う陵桜学園に、諸々の条件はついたものの入学と同時に新しい環境で生活を始めてすでに一年。

家賃その他は親の仕送りに頼ってるが食費、娯楽費(こづかい)はバイトで稼いでるごく普通の高校生だ。

そして今日は始業式。2年生に進級して心機一転!

いつものランニング、軽い筋トレをすませてどんな1年になるか、どんな出会いがあるのか・・・少しワクワクしながら朝食をとって身支度を整える。

 

「・・・行って来ます!」

 

返事は無いけど必ず言う言葉。

言わないと寂しい・・・ではなく単なる癖なのでそこはスルーしていただきたい。

 

 

 

<陵桜学園>

 

 

 

自分の通ってる学校に到着した俺はクラス表が張り出されてる所に向かった。

 

「B組か・・・」

 

クラス替えしたとはいえここまでバラバラになるとは・・・。

陵桜は1学年13クラス。

1クラス約40人と考えると少子化の現実味がまるで感じられないくらいのマンモス校。

そのせいか、1年の時に親しかった友達が見事にバラバラになってると来た(しかも図られたかのように遠いクラス)。

知ってる奴が誰もいないワケでもないが、顔見知り程度でしかなかったりする。

 

 

 

<B組教室前>

 

 

 

新たな学校生活を送るこのクラス、この扉の先に待ってるのは何だろう?

ちょっと大げさかな、と思いつつ教室に入るため扉に手をかけた。

 

ガラ!

とん。

 

「おっと悪い」

 

突然扉が開いて出てきた人に当たってしまった。

衝撃(かなり軽い)を腹に感じたので見下ろしてみると、そこには青髪にぴょこんと一房立ってるのが印象的なちっさい女の子がいた。

 

「とと、大丈夫大丈夫!・・・コレ、フラグ立ったてるよね?」

「・・・は?」

 

今なんて言ったこのちみっ子。

 

「・・・フラグ?」

「そう! ってそんなこと言ってる場合じゃなかった! また後でね〜!」

 

と言い残して嵐のように去っていってしまった。

 

「何だったんだ今の・・・?」

 

まぁトイレに消えていったんだからもよおしてたんだろう、多分。

 

とりあえず自分の席に着く。

苗字があ行とは言え今年も最前列とはまたきつい。

席替えに期待かな?

 

 

 

始業チャイムが鳴る・・・が、担任の先生が来る気配が無い。

クラスがざわついてくると何だか足音って言うか走ってくる音が聞こえてきた。

 

・・・ダダダダダダダダッ! ガラッ!

 

「皆席に着け〜! ハァッハァ、間に合った〜」

 

いや、完全にアウトでしょ。

 

「ウチが担任の黒井や。学年上がったことやし休み気分でおらんで頑張るように!」

 

『(うっわ、説得力ねぇ!)』

 

おそらくクラス一同そう思ったことだろう。

先生の髪はボサボサだし明らかに先生が遅刻寸前だったようだ。

 

その後は体育館に移動し、始業式恒例の長〜い校長の話を終えてようやくクラスに戻る。

担任の黒井ななこ先生は、ああ見えて遅刻と居眠りには容赦ない教師だが結構人望のある先生(27才独身)だ。

 

「上半期の委員長は高良、お前に任せてもええか?」

「はい、分かりました」

 

SHRでクラス委員もサクサクと決まっていき、残った時間で『新しいクラスメートと親睦を深めときぃ!』と言って後は放置プレイのようだ。

・・・いい加減というか放任主義というか。

それでもクラスの生徒の殆どは既に好きなように色々な事で盛り上がってる。

かく言う俺もその中の一人で・・・。

 

「いや〜、急いでたとはいえ今朝はごめんね?」

「俺は気にしてないから別にいいけど・・・」

 

今喋ってるこの子は泉こなたという。

クラスメートってか席が近かった上に今朝のこともあり、声をかけられたのだが見た目はどう見ても小学生だ。

 

「まさか新学期早々男子にフラグ立てちゃうとはね〜。席が隣じゃないのが残念だよ」

「・・・色々と待った」

「なに〜? 3サイズは秘密だよ?」

「誰もそんなことは聞いてないって!」

 

薄々感じてはいたが念のために聞いておく。

 

「今朝から言ってるフラグって・・・?」

「知らないの? ギャルゲーの基礎知識だよ!」

「力説されても困るっての」

「最近はギャルゲーのみならずス○オや一部のテ○ルズでは当たり前でしょ?」

「そうかもしれないけど知らないよ!」

 

実名出したら色々やばいでしょ!?

て言うかやっぱり、

 

「泉さんってさ、結構ゲーム好き?」

 

と、遠まわしに聞いてみた。

 

「アニメに同人、フィギュアにネトゲー、エロゲもやりますが何か?」

「どう考えても最後のはやばいだろ高校2年生・・・」

 

俺の予想を大きく上回るゲーマー、いや、オタクだった!

 

「ちなみに私はこなたでいいよ〜。その方が親しみやすいし」

 

セリフとは裏腹に妙にニヤニヤしてるその顔が何だか(よこしま)に感じてしまうのはナゼだろう?

 

「俺の方は好きに呼んでくれていいよ・・・」

「じゃあまさきくんで!」

「即答かい!?」

 

つ、疲れる・・・。

 

「ふむふむ、まさきくんはツッコミ属性か。かがみんと絡ませたら展開次第によっては面白い事に・・・!」

「ツッコミは条件反射みたいなもんでね・・・かがみんってのはこなたさんの友達?」

「後で紹介するよ〜。条件反射でツッコミ入れられるとはキミ、いろんなイミで素質あるかもネ♪」

「なんかひっじょ〜に引っかかる言い方なんだけど・・・?」

「気にしない気にしない。ちなみに委員長のみゆきさんとあっちにいるつかさも友達だから後で紹介したげるね♪」

 

女の子の友達が増えるのは大歓迎だが不安のほうが大きかったりする・・・。

が、それもこの後すぐに杞憂に終わることになる。

 

 

 

<放課後>

 

 

 

俺はこなたさんからさっそく友達を紹介された。

 

「柊つかさだよ。よろしくね♪」

「高良みゆきです。よろしくお願いします」

「赤井まさきです。1年間よろしく!」

 

柊さんはライトパープルの髪にリボンを付けたショートカットの女の子。

高良さんはピンクの髪のロングヘアーでメガネをかけていて結構なきょnゲフンゲフン! いやなんでもない。

しかし2人とも結構・・・てかかなりカワイイ部類に入るよね?

緊張を抑えながら軽く挨拶をする。

 

「なに〜? まさきくん、どっちかに惚れた?」

「ブッ!?」

 

いきなり何言い出すのこのチビ!

 

「ふえぇぇっ!?」

「え〜っとその、私達はまだ知り合ったばかりであのその!」

 

お約束と言うか何と言うか、二人は思いっきり真っ赤になって混乱してる(汗)。

 

「とりあえずそういうんじゃないから。落ち着いてくれ2人とも」

「むう、やっぱりフラグを立てなきゃすぐには無理か」

「ゲームと現実をごっちゃにしちゃだめでしょ・・・」

 

軽く頭痛がしてきた。そのうち鉄拳制裁が必要だろうか?

てか俺にそんな相手が現れるとは思えんが・・・。

 

「あ、あはは。そうだよね」

「と、取り乱してすいません」

 

この二人は結構純粋な様である。

まだ顔が赤いがそれもそのうち落ち着くだろう。

 

「お〜い。帰ろ〜・・・て、男子と居るのは珍しいわね。新しい友達?」

 

教室にツインテールの女の子が入ってきた。

はて、髪の色が柊さんと同じだけど・・・?

 

「今朝方私がフラグげっとした男子で赤井まさきくんだよ〜。で、まさきくん。凶暴そうに見える彼女がかがみん」

 

バキャ!

  

「はう!?」

「殴るわよ? それと、かがみんいうな!」

「殴ってから言わないでよ!?」

「女の子に凶暴そうなんていったらそりゃ怒るだろ。てかフラグゲット言うな・・・」

 

どうやら彼女がこなたさんの言うかがみんらしい。

てか素で鉄拳制裁する辺りは結構親しい仲のようだ。

 

「ハァ、あんたも災難ね〜。新学期早々こんなのと知り合って・・・。私は柊かがみ。そこにいるつかさの双子の姉よ」

「あれれ〜? 何だかとっても失礼なこといってないかがみ?」

「とりあえず初めまして。さっきからこなたさんと話してるけど・・・お疲れさん」

「そうねぎらってもらえるとありがたいわ・・・」

「しかし双子っていう割にはあまり似てないね?」

 

とりあえず疑問に思ったことを聞いてみる。

こなたさんは・・・放置プレイで良いだろう。

 

「もしも〜し? まさきくんわたしをスルー?」

「双子でも一卵性と二卵性じゃ結構違うって言うからね」

「私達は二卵性なんだよ♪」

「ぐは!? かがみはおろかつかさまで!?」

「大丈夫ですよ泉さん。お三方とも冗談でやってることですから♪」

 

妹さんにまで放置されて高良さんに慰められてるこなたさんだった・・・。

 

 

 

<通学路>

 

 

 

駅まで同じだと言うこともあり5人で一緒に帰ることになったが・・・何か恥ずかしい。

女子4人に男子1人。

健全な男子なら意識するなというのも無理な話である。

 

「どうしたの? 赤井くん」

 

柊さん妹(なんか呼び方がな・・・)に声をかけられても「な、なんでもない。」としか答えられない自分がちょっと情けない。

こなたさんがやけにニヤニヤしていたがとりあえず気づかない振りをしておこう。

 

 

 

高良さんは東京方面らしく途中で別れ、その後こなたさんとも別れて現在、柊姉妹と一緒の電車に乗っている。

話を聞く限りじゃどうやら家は結構近いようだが・・・。

 

「え、あんたの家ってあそこのアパート?」

「うわ〜、すごく近いね〜」

「・・・去年1年間会った事が無いのが不思議なくらいだね」

 

柊姉妹の家よりわずかに徒歩1〜2分くらいの場所。

部屋代は親に頼ってるが整理整頓の仕方によっては結構快適なアパートの一室が今の俺の住居である。

対して柊家は神社の近くの一軒家で、父親がそこの神社の神主をやってるらしい。

家の近くの神社ということで、何回か気分転換の散歩やお参りに入ったことがあるから会った事・・・とまでは行かなくても、顔くらいは会わせた事があったかもしれない。

 

「ねぇねぇ。せっかくだから、明日から一緒に学校行こうよ♪」

 

・・・小学生ならともかく、年頃の女子が同年代の男子にマジで言ってるあたりどうなんだろう?

 

「まあ、否定する要素は無いけどつかさらしいって言うか」

 

そんな妹に柊姉は苦笑気味である。

 

「ちなみに俺は毎朝7時半には家を出てるけど大丈夫・・・?」

「はぅ!?」

 

朝会った事が無い=時間が一度も合うどころか結構ズレてると直感して聞いてみたら案の定のようだ。

 

「つかさって朝起きれないタイプだからね。あんたが家を出たときに私達がいなかったら、気にしないで先行ってていいわよ?」

 

ヘタすると走るハメになるし、と柊姉が後から付け加える。

どうやらこの2人、性格は似てるどころか正反対らしい。

 

「う〜・・・明日からはがんばって起きるよ〜」

 

まさかとは思うが・・・。

 

「妹さんって休みの日は寝て過ごすタイプ?」

「・・・そこまで酷くないけど昼まで起きないわね」

「だってお布団が気持ち良くて・・・中々起きれなくない?」

「まぁ気持ちは分かるけど・・・」

「ちなみにつかさは9時には寝るわよ」

「いくらなんでも寝すぎでしょ!?」

「はうぅ・・・」

 

どこぞのイチゴでだぉ〜な娘を思い出したのはご愛嬌だ。

てか9時に寝て起きるのが翌日の正午って・・・(汗)。

 

「明日はがんばって起きるよ!」

「まぁ無理はしないようにね・・・。じゃ、また明日」

「ええ、また明日ね」

「バイバ〜イ」

 

妹さん、手を振らないでくれ恥ずかしい・・・。

 

 

 

「ただいまっと」

 

あれから買い物を済ませ、アパートに帰宅した俺は夕飯の支度をして早々に食べた。

その間に風呂の準備もしておく。

夕飯後少し休んでから風呂に入り、しばらくしたらバイトの時間。

バイトが休みのときはゲームをしたりネットで動画を見たり宿題やったりとその時によって様々だ。

バイトが終わったら帰宅し、気分次第でもう一度風呂に入る。

 

「春は出会いの季節とは言うけど・・・」

 

今日のことを振り返りながら布団に入った。

始業式の日にクラスに上手く馴染めたし、なんと言っても女の子の友達(かなり個性的ではあるが)が一気に4人も出来た。

悩みどころは柊姉妹をどう呼ぶか・・・いつまでも姉、妹と呼ぶのもなぁ。

まぁそのうち慣れるか。

これからの学校生活、少なくとも退屈はしないだろう。

期待に少し胸を躍らせながら俺は眠りについた・・・。

 

 

 

つづく・・・


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