らき☆すた~if~ たとえばこんな物語   作:岡崎ひでき

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第十四話 諦めない人たち

誕生日の2日後の月曜日。

母さんと別れた俺と柊姉妹は校門をくぐった所でこなたさんと合流したのだが・・・。

 

「あら皆さん、ごきげんよう<きゃら〜ん>」

『・・・・・・』

 

何か悪い物でも食ったのか? とツッコミたくなるような変貌を遂げていた。

 

「つかささん、リボンが曲がっていましてよ?」

「あ、ありがとうこなちゃん・・・」

「こなたさん、一体何があったの?」

「まぁ・・・大体予想は付くけどね」

 

あまりの変貌振りに俺とかがみさんは若干引き気味である。

 

「いやぁ、今見てるアニメにちょっとハマッてて」

 

あまりにも分かりやすい回答をありがとう。

でもいくらなんでも影響受けすぎでしょ・・・。

 

 

 

<2−B教室>

 

 

 

「う〜っす」

「おはよう、ゆきちゃん」

「みゆきさん、ごきげんよう」

「あら皆さん、ごきげんよう」

 

朝の挨拶同様、こなたさんの違和感バリバリな変貌は続いているのだが・・・。

 

「こなたさんの会話に違和感を感じないのかな、みゆきさんって・・・?」

「でもああ言うお話してるのを聞いてると、ゆきちゃんってやっぱり大人な感じするよね♪」

 

つかささん、まずは何の疑問も無く、普通に会話してるみゆきさんにツッコもうよ。

天然なのか受け流(スルー)してるのか・・・前者だな、うん。

 

 

 

時間はあっという間に経過して6時間目のLHR。

そろそろ先を見据えて真剣に進路を考えなくてはいけない時期だ。

そういうことで黒井先生から進路に関して考えるように、と用紙に第1〜第3希望を書いて提出するようにとのこと。

俺は特に受けたい学科が無い場合、就職をすることも考えてる。

将来何をやりたいか、なんて具体的なプランは今のところ無きに等しい。

だからって引きこもるわけにはいかないだろう。

参考までに皆に聞いてみた。

 

「私? 一応法学部で進学希望よ」

「私はお料理得意だから、お料理の専門学校かな?」

「私は医者を目指そうと思っています」

 

むう、皆はどこの大学かはとにかくとしてやりたいことは結構固まって・・・。

 

「私は・・・どうするんだろ? そもそも進学するのかな?」

 

いましたここに1人、何も考えてない人!

まぁ俺も似たようなもんだけど・・・。

 

「あんた本気で将来心配したほうがいいぞ・・・それにそういうまさきくんは?」

「ある意味こなたさんと似たような状態かな。進学か就職かで相当悩んでる上にやりたいことが見つからなくてね」

 

見栄はって進学しても金がかかるだけだろうし、就職してもこの不景気の真っ只中だ。

食べてくためにとはいえ、やりたくも無いことをやらされるのはできれば勘弁願いたい。

 

「正直言ってあまり親の負担にもなりたくないし、出来れば早めに就職したいけど先走って後悔してからじゃ遅いし・・・とまぁ堂々巡りだなぁ」

「けどまだ時間はありますから、そう急く事は無いと思いますよ?」

「そうね。もっとも、それにアグラをかいちゃいけないけど」

 

このことについてはまだまだ考察する必要あり、か・・・。

両親にも進路についてよく相談したほうがいいだろうし。

 

「でもかがみんがそこまで考えてたのは以外だよネ〜」

「はぁ!? 何でよ失礼ね!」

 

また始まった・・・。

 

「だって皆と同じクラスになりたいから文系選んだくらいだもんね~♪」

「・・・つかさぁ〜! しゃべったなぁ〜! よりによってコイツに・・・コイツに〜!!」

「にゃはは・・・めんご〜」

 

至近距離にいた俺やみゆきさんにもバッチリ聞こえております。

なるほど、かがみさんはそれくらい寂しがり屋だという訳か。

 

「まったくもう、かがみんったら可愛いねぇ〜。よしよし♪」

「う、ううううるさ〜い!!」

 

少し離れてその様子を観察中の俺とみゆきさん。

 

「仲良きことは美しきかな、てか?」

「そうですね♪ 例え離れ離れになったとしても、私達はずっと仲の良いお友達だと思います。その中にはもちろん、まさきさんも入ってますよ?」

 

俺も含まれるのか・・・まぁ親に顔も憶えられたし、実際皆と一緒にいることも悪くない気分なのは確かだ。

 

「こらそこの2人! ほのぼのとしてないでこいつを黙らせるの手伝え〜!」

「はっはっは! 私はそう簡単には・・・てあれ、まさき? いつのまに頭つかんだの?」

「さすがに調子乗りすぎてるみたいだからね、たまにはかがみさんの手伝いしないと(ニヤリ)」

 

頭を掴んだらやることは1つ!

約十秒間、俺の放ったシャイ○ングフィ○ガーにより、この階の廊下中にこなたさんの悲鳴が響き渡った・・・。

 

 

 

<寄り道兼帰宅中>

 

 

 

「うう〜、頭がまだじんじんするよ〜」

「あ〜、取り合えずやりすぎたのは認める。すまんかった」

 

さすがに女子相手に力入れすぎたかね?

一応加減はしたんだが、シャイ○ングフィ○ガーを食らったこなたさんはまだダメージを引きずってるようである。

 

「まさきくんって握力どれ位あるの?」

「ん?いつだったかの体力測定の時は・・・40kgチョイだったかな?」

 

平均値はどれくらいだか忘れたが。

 

「そんなに握力強いのに思いっきりアイアンクローかますこと無いじゃん!」

「悪かったって、こうしてお詫び変わりに買い物に付き合ってるんだからそろそろ勘弁してくれ」

 

少しやりすぎたみたいで取り合えず機嫌を損ねかけた彼女の機嫌取りにこなたさんの買い物に付き合うことになったのだ。

ちなみにかがみさんが付いて来たのはラノベの新刊が出たからだとのこと。

・・・地元の本屋じゃ売ってないのか、ラノベって?

このメンツでアニメグッズを数多く取り揃えている店、アニ○イトに向かっている。

そういや皆と知り合ったばかりの時、こなたさんに案内されて行ったことがあるがアレは・・・(汗)。

 

 

 

<遡ること4月のある日>

 

 

 

「古今東西、ポイントカードには不思議な力が宿っている・・・気が付くと予定に無い買い物までしちゃうんだよね〜」

「あんたはホント、無計画だな〜。少しは分かるけど」

「それはいいとして、この店は何?」

 

今日はバイトもないし帰って宿題さっさと片付けてのんびりと、と思っていた所にこなたさんに絡まれてココまでついて来たが・・・。

 

「ふっふっふ・・・君に新天地を教えてあげるよ♪」

「新天地って・・・名前からしてアニメ専門ショップっぽいけど?」

「ぽい、じゃ無くて実際そうなのよ」

 

ふむ、まあ俺もそういうのは嫌いじゃないし知ってて損は無いのだろうが。

こなたさんを先頭に店に入ってみると・・・。

 

「へぇ・・・」

 

普通のCDも取り扱ってる本屋を全部漫画やアニメ、ラノベ、キャラグッズに置き換えてるような店かな?

 

「赤井くん結構平然としてるのね・・・私、初めて来た時は少し引いたんだけど」

「そういうのを別に気にしてないってだけ。というかある意味新鮮な空気?」

 

実家周辺でこういう店はちょっと記憶に無い。

ちなみにこなたさんは既に物色中。

柊さんは目当てのものがあるらしく、そちらに向かっていった。

右も左も分からないので取り合えずこなたさんについていってみるが・・・。

 

「いくぞ! 伝説の少女Aシフトだ〜!!」

『おう!』

 

ん?

今、何か聞こえたかな?

と思っていると・・・。

 

ドンッ!

 

「いぃぃぃらっしゃいませぇぇぇ!」

「うおゎっ!?」

 

何だこの店員、今本棚飛び越えてこなかったか!?

 

「この店特有の宣伝だよ〜♪」

「宣・・・伝・・・?」

 

ずいぶん体張ってるなおい。

 

「DVDハ○ヒの5巻、入荷しましたぁぁぁぁぁぁ!」

 

体張った宣伝もいいけど某流派みたいに頭から突っ込んで飛んでくるのは人間業じゃないだろ!?

あ、頭から上半身が壁にめり込んだ。

 

「限定版、通常版、完備です!」

 

コッチはある程度まともかな・・・てか普段からこんな宣伝をしてるのかこの店は?

 

「その他グッズも、続々入荷ですよ!!」

 

・・・認識改めさせてもらおう。

何なんだこの(あつ)苦しい上に店員が一方的に騒がしい店?

夏場は絶対に来たくないぞ・・・。

タダでさえ暑い季節なのに余計暑くなりそうだ。

 

「赤井君、こなたはまだ見てまわってるの?」

 

柊さんは会計を済ませたようだがこなたさんはまだ店員の(俺にとっては異常な)宣伝を流しつつ物色中だ。

すると突然閃いた様に顔をあげる。

 

「あ、今日は○○○の特典が目当てだったんだっけ」

「・・・その特典とやらはここにはないの?」

「同じ商品でも店によって特典が違うからね〜、てなワケでゲ○ズに行かなきゃ」

 

ココの店員を見てると少し不安になる。

 

「そこもココみたいな・・・?」

「それは行ってからのお楽しみだよ♪」

 

そうして3人そろって店を出る。

後からなんか爆発音のような音が聞こえて大騒ぎしてるような声が聞こえたが・・・いつもああなのかあの店?

 

 

 

<現在:アニ○イト前>

 

 

 

その後何回かこなたさんの買い物に付き合ってココに来ることもあったが、あの手この手使って、とにかく何故かこなたさんに商品を買ってもらおうと必死のようである。

さりげなく聞き耳を立てると、こなたさんのことを『伝説の少女A』と呼んでいるらしい。

何か意味があるとは思えんが・・・。

取り合えず3人で中に入ることにする。

 

「さてさて今日の掘り出し物は何かな〜?」

「私は向こう行ってるからね」

 

会計したら合流するから、と言い残してかがみさんは店内に入っていく。

 

「まさきは何か欲しいもの無いの? エロゲとか♪」

「俺はまだ17歳だよ!」

 

たまにギャルゲーには手を出してるがソッチまでは手を出してない。

まあ私服ならまだ誤魔化して買えるだろうが流石に制服でそんなモン買う勇気は無い。

・・・別に欲しいと思ってるわけじゃないぞ?

 

「俺は特に欲しいものも今のところは無い・・・かな?」

 

バイトの給料日はあと2週間以上先な上に欲しかった物も確保済み。

そろそろ節約して残った分は貯金に回さなければ。

何事も備えっていうのはあったほうがいいだろう。

 

「そかそか・・・お、コレって新刊出てたんだ」

「知らないうちに新刊が出てるってことも結構あるよね」

「特典が店によって違うから他の店でも同じ本をついつい・・・」

「破産しない程度にね」

 

ちなみに今回も見張られてるようである。

なにやらこそこそ動き回って、時には通信機・・・トランシーバーだろうか? とにかくそれを使って連絡を取り合い、こちらを誘導してるようだが。

・・・あれ?

自分の言葉に気が付いたことが1つ。

 

「そういやこなたさん、こないだ衝動買いしたって言ってたよね。懐具合は大丈夫?」

「へ・・・? あ」

 

先日、衝動買いで財政事情が厳しくなったと騒いでいた事を自分でもすっかり忘れていたらしい。

・・・来る前にサイフの中身くらい確認くらいしようよ(汗)。

と、いうわけでかがみさんと合流し、店を出る事になる。

後の店内からは案の定、本来なら有りえないほどの爆音が聞こえて宙を舞う店員達の姿があった・・・。

 

 

 

つづく・・・


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