らき☆すた~if~ たとえばこんな物語   作:岡崎ひでき

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第十三話 嬉し恥ずかし誕生会

<自宅前>

 

 

 

・・・なんだろう、今日は嬉しい日になるはずなのにさっきから嫌な予感が拭えない。

 

「何浮かない顔してんのよ。今日はあんたが主役でしょ?」

「・・・そうだね。主役が辛気臭い顔してるとせっかくのパーティがつまらなくなっちゃうもんね」

 

こうなったらもう前に進むしかない!

例え()()()が居てもなんとでもなるさ!

そして俺は自宅の扉を開く・・・ちと大げさか?

 

ガチャ。

 

パン! パパン!

 

「うぉわ!?」

 

クラッカー!?

後ろからも聞こえたってことは・・・。

 

『お誕生日おめでとう!!』

 

玄関先にこなたさん、つかささん、みゆきさん、後ろからかがみさん・・・。

皆の言葉に思わず涙ぐみそうになる。

 

「・・・ありがとう、皆」

「はいは〜い、辛気臭いのはそこまでにして!」

「ほらほら、上がって上がって♪」

「色々と用意してるんですよ♪」

 

そう言われて引っぱられるように家に入った。

そして靴を脱いで上がった瞬間!

 

パン!

 

「のわぁっ!?」

「まさき、お誕生日おめでとう♪」

「か、母さん・・・」

 

そこにはクラッカーを構えた母さんが物凄い笑顔で迎えてくれた。

嗚呼、やっぱり(汗)。

しかも時間差で来るとは・・・。

 

「いや〜、いきなり玄関の鍵が開いたと思ったら知らないおばさんが普通に入って来てびっくりしたよ。」

 

・・・びっくりしたのはむしろ母さんのほうじゃないのか?

 

「え? ええ!? まさきくんのお母さん!?」

 

突然現れた俺の母に対してかがみさんは相当驚いていた。

まあ1人暮らしのはずなのにいきなり母親が出てきたらそら驚くわな・・・。

かがみさんが知らなかったという事は・・・まぁ実家に連絡でも入れない限り、こんな状況になるなんてことはない。

先程かがみさんが電話したはずなのに知らなかったという事は、かがみさんにも伝えなかったのか・・・。

 

「今日はまさきさんをお祝いするためにわざわざ速めに来てくれたそうなんですよ?」

「うん! 突然だったからびっくりしたけど、自己紹介したら張り切って手伝ってくれたんだよ♪」

 

やっぱりさっきのトラックって(汗)。

 

「土曜日なのに珍しいなぁ。やっぱり親父に乗せてもらってきたの・・・?」

 

母さんは(たまに姉さんも)電車代をケチって親父の()()()のトラックで近くまで来る。

大抵日曜日の夜中に来るのだが・・・。

 

「お父さんがたまたま・・・本っ当に珍しく昨日帰ってきて、今日の早朝に出るって言うから。ほら、去年は電話でしか言えなかったでしょ?」

 

本当だったら父さんも直接言いたかったらしい。

つーか他にも色々ツッコミどころがあるんだが(汗)。

 

「え〜っと、親子間での細かいお話は後に回してもらってもいいですか〜?」

「それもそうねぇ。後で色々聞きたいこともあるし♪」

 

・・・とりあえず今はこの時間を思いっきり楽しもう、うん。

 

「それではさっそくお誕生会(おたのしみ)を始めるよ♪ ふぃーばーた〜いむ!」

 

『そ〜れっ!』と、どっかで聞いたような台詞で部屋の扉が開かれる。

そこのテーブルの上には数々の料理。

そして学生が作ったとは思えない程の、17本のロウソクが立てられている見事な手作りケーキがあった。

そのロウソクに1本1本火が灯されていく。

本当に・・・俺っていい友達持ったなぁ。

 

「それでは、改めまして・・・」

『まさき(君、さん)、お誕生日おめでとう!!』

「ありがとう〜!」

 

そして俺は17本のロウソクの火を吹き消した。

周りから拍手を送られ、改めて皆に感謝した。

 

「みんな~、ジュースはまわったかい?」

「どうぞ、おばさま♪」

「あらありがと♪」

「全員まわったよ」

「それでは、まさきさんのお誕生日を祝して・・・!」

 

『かんぱ〜い!!』

 

こうして、楽しい時間が始まった。

 

 

 

「それにしてもこんなに沢山の女の子が祝ってくれるなんて、まさきも結構隅に置けないわね〜♪」

「茶化さないでよ。大体友達はここに居るのが全員じゃないっての。」

 

男友達も普通にいるぞ。

登場しないのは作者の都合だ。

一応反論してから、から揚げを摘む。

 

「お、このから揚げ美味いな。」

「それは私の自信作だよ、堪能してくれたまえ〜♪」

「言われなくても堪能してるって♪」

「ちなみに1つだけ唐辛子2〜3本入ってるヤツが混じってるから気をつけてね」

「ぶっ!?」

 

なんっつ〜サプライズをかましてくれたんだコイツは!

 

「フフッ、中々面白いことをする子ね。」

 

母さんは終始ご機嫌である。

・・・その大ハズレを自分が引くかもしれないのに(汗)。

 

「そういえば、おばさまの後輩で私の母・・・ゆかりと言うのですが、母の事を何か覚えてますか?」

「ゆかりって・・・誰かに似てると思ってたけどひょっとしてあのゆかりんの娘さん?」

「母さんその呼び方はどうかと思う・・・」

 

後輩とは言え今の母さんが俺のクラスメイトの母親をそう呼ぶのは・・・。

 

「まーくんのお母さんとゆきちゃんのお母さんってやっぱり知り合いなんですか?」

「ゆかりんは部活の後輩だったのよ。まさか子供が同級生になってるとはね〜・・・」

 

本当にこんな奇跡みたいな偶然ってあるんだなぁ。

 

「ところでまさき? さっきから気になってたんだけど、この子達のことも含めて友人関係のこと、全然聞いたことなかったわよね?」

「・・・別に、わざわざ言うようなこっちゃないでしょ」

 

実際聞かれてなかったし。

 

新学年から友達になり、あっという間に馴染んで。

一緒に勉強会をして。

学校での他愛無いお喋りをして。

夏休み、海へ2泊3日の日程で遊びに行って。

みゆきさん家で本人から両親のことを聞いた上に一泊したことも掻い摘んで話す。

実は内容が内容なだけにどう反応するか冷や汗ダラダラな状態だったりする。

母さんはふむふむとうなずいて聞いていたが・・・。

 

「ふむ・・・あ、1つ言っとくけどあんたが進級してから今までどう過ごして来たか、大雑把にだけどこの子達から聞いてるから♪」

 

後で()()()()()()説明しなさいよ? としっかり釘を打たれてしまった。

しっかり裏を取ってるんじゃん(涙)。

それはさて置いて、さっきから気になってたんだが・・・。

 

「このテーブル、ウチのじゃない、よね?」

 

料理が載ってるこのテーブル、よくよく見るとウチで使ってるものじゃない。

それ以前に持ってるテーブルは少し大きめの折りたたみ式だ。

まさかわざわざ母さんが買ってきたとは思えないし、いくら近いとは言え柊家から持ってきたなんてことは・・・。

 

「お父さんが『息子の誕生日にしてやれるのはコレくらいか・・・悲しいけどこれ、現実なんだよな』ってぼやきながら柊さんの家から運んできてくれたのよ♪」

 

近所だったから助かったわ、何て言ってるが俺は内心頭を抱えてたりする。

・・・親から姉妹、はては友人知人に一気に広がるんだろうな、俺のこの友人関係。

背ひれ尾ひれが付いて凄いことになってそう・・・(汗)。

ていうかこのテーブル、返す時はやっぱり俺が運ぶんだろうか・・・?

 

 

 

『人造人間・・・これ以上お前達の好きにはさせないぞ!』

『なんだよ、またお前か・・・しつこいヤツだな』

 

突然こんなやり取りをしてると何のことだか分からないだろうが、先日かがみさんと対戦したゲーム、龍球Z(スパーキングなメテオ)でこなたさんと対戦を始めたのだ。

ちなみに原作にあったもう1つの未来編の2対2の勝負である。

俺は人造人間タッグ側。

こなたさんは材料以外の荷物を抱えてやってきたと思ったらいくつかゲーム機やらソフトを持ってきていた。

その前にかがみさんから話を聞いたこなたさんが件のゲームで勝負しようと挑んできたのだが・・・。

 

『おやおや、もうおネンネの時間かい?』

 

結果、勝者:俺。

 

「あ、あのこなたでさえやられるなんて!」

「まーくんすご〜い、こなちゃんに勝っちゃった♪」

「今はこういうゲームがあるのね・・・懐かしいキャラクターだわ〜。夕飯のときにこのアニメ、家族(みんな)でよく見てたわよね。」

「く、こうなったらタイムマシンで過去に遡って修行しなければ・・・」

 

いやいや、今から20年も前に行ったらさすがにゲーム化どころかハードすらないだろ(汗)。

てかそれを言いたいがためにわざと負けたなんてことは無いだろうね・・・?

 

「ええい、やられっぱなしで終わるもんかぁ! 今度はコレで勝負!」

 

ゲーム機ごと自分のバックから取り出したソレは!

・・・こなたさん、いくらなんでもこないだのこなたさんちでやったヤツといいそこまでマイナーなソフトまで持ってくるか?

あ、でも母さんも楽しめそう。

その名も・・・

 

「何で医者になった髭オヤジ?」

「なんとなく♪」

 

まあいいや。

とにかく・・・。

 

「母さん、やる?」

「あら、いいの?」

 

ソフトを見た辺りから母さんがうずうずしていたのでバトンタッチ。

いきなり対戦相手が母さんになったもんだからさすがのこなたさんも少しばかり緊張してたようだが・・・。

 

「お手柔らかにね?」

「相手がまさきのお母さんだからって遠慮はしません・・・ここは戦闘用のパワーで行きますよ!」

「友達のお母さん相手にそこまで意気込むこなたのパワーとやらを勉学に少しでも・・・」

「かがみさん、それマジで今更。」

 

ちなみに結果は・・・。

 

「orz・・・」←ボロボロ

「ふふ、わざわざ手加減してくれたのかしら♪」←スッキリ

「母さん今でも毎日やってるでしょ・・・GBAで」←半分呆れ顔

 

俺以外の皆が驚いていた、といえば分かるだろうか。

思いっきりへこむこなたさんがそこに居ました・・・。

 

皆でゲームを楽しみ、おしゃべりしながら料理やつかささんお手製のケーキを食べていたらあっという間に夕方になってしまった。

ちなみに唐辛子入りのから揚げは作った本人が食べて大騒ぎした、と言っておこう。

ウチに母さんが居る手前、速めに片付けて撤収となった。

ちなみに柊家から借りてきたテーブルは皆の見送りがてら俺が運んでいったことを追記しておく。

 

 

 

「あんたが小学生のとき以来かしらね、友達呼んで誕生会なんてやったのは」

「それはまぁそうだけどさ、その後家でやらなかった理由は母さんが一番よく知ってるでしょ〜に」

 

人の家の片付けはやるのに自分の家の片づけをやろうとしないのは母さんの悪癖の1つだったりする。

その後は夕飯を軽く食べた後、みっちりと友人関係のことについて尋問されました(泣)。

 

 

 

<月曜日:朝>

 

 

 

『おはようございます』

「・・・おはよう」

「おはようかがみちゃん、つかさちゃん」

 

俺達は登校のために、母さんは東京の姉貴のところに向かうために途中まで一緒に行くことになった。

 

「ホントに女の子と登校してるのね〜」

「お願いだから誤解を生みそうな話し方だけはしないでちょ〜だい・・・」

 

俺は月曜の朝から多少へこみがち、柊姉妹は苦笑気味である。

ホント、これからどうなることやら・・・。

 

 

 

つづく・・・


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