転生先はNARUTOの世界~狐の姿を捨てたキツネ~ 作:nagatsuki
六道仙人の息子の長男と、次男。彼らの子孫達は、互いに憎しみ合い、殺し合いをしていた。長男は紅き写輪眼をもつうちは一族として。次男は、強靭な生命力をもつ千手一族として。
白空は、旅している中で、それらを幾度もなく、見てきた。それはもう、容赦なき忍の戦いだった。
人間とはどうして同族を容易く殺せるのか。転生前は人間だった白空だったが、疑問に思う。
本能に従っている獣さえ、同族殺しはまずしない。白狐一族でも、同族殺しは、最もやってはいけない禁忌の一つであり、本能に従ってさえ、同族殺しは絶対にしない。いや、本能があるからこそ同族殺しはしないのか。
人間とは、本能を抑える事が出来る生き物。本能を抑える能力の本質は、理性から来ているものだ。その人間なりの理性が同族殺しを許しているものなのか?理性があるからこそ同族を殺すのか?同族殺しをしてはいけないという本能からの禁忌を理性が抑えているのか?
白空は、人間ではないので、分かることが出来なかった。ただ、それでも白空は、人間を嫌うことはしなかった。転生前が人間なのかもしれないが、人間という生き物と、一緒に共存したいと思っているのだ。
◆◆◆
私は、二人の少女を目の前にして、かつての記憶を思い出しながら暗誦する。
「アメツチハジメテヒラケシトキ」
「?」
「タカマノハラニナリマセルカミノナハ」
「??」
「アメノミナカヌシノカミ。ツギニ タカミムスビノカミ。ツギニ カミムスビノカミ」
「???」
「白空ちゃん。何言ってるの?」
私の記憶から一生懸命に思い出して暗誦した文章を、理解できない少女二人が目の前にいた。
そんなわけで私は解説する。
「これね、私がはるか昔にいた国の、それも世界の始まりの物語。えっとね、天と大地が分かれ始めた時に、高天原という雲の上にある神様の国にね、別天津神という、とても偉い神様たちが……
と私は目の前にいる二人の少女に、この物語を分かりやすく説明。少女たちは熱心に聞いているようだ。
そして私は、写輪眼を発動する。
「白空ちゃんの目が紅い……」
「これね。"写輪眼"という、瞳の術。よし、面白いものを見せようかな」
"万華鏡写輪眼『高皇産霊(たかみむすび)』"
私や少女二人がいる周りの空間が歪んでいき、別の空間に変わった。
私達三人は、その空間のなかで宙を浮いている。そしてその三人が見ているものは、ひとつの物語だった。
夫婦が矛を持って国を作り固めている光景。その夫婦はたくさんの神を生んだ光景。
その夫婦は物語の登場人物であり、私たちはその物語を観る観客だ。
「これは、さっきの物語の続き。百聞は一見に如かず、聞いているよりも見たほうが早くてね」
少女たちは白空が作り上げた、その光景を見ていた。
「うわ、男の人と女の人が裸で抱き合ってる・・・」
「えっ、あの人死んじゃうの?」
少女二人は、その物語を見て、感想を呟きだした。ちょっと過激なシーンも有ったが。
万華鏡写輪眼『高皇産霊』。ひとつの小さな世界を創りあげる瞳術。簡単に言えば、『月読』の現実バージョン。その小さな世界は、法則、物質など全て術者の思いのまま。
白空が創りあげた空間にいた、登場人物たちは幻ではなく、実体なのだ。
私は術を止め、二人の少女を見た。この二人の少女の名はオオゲツとウケモチ。
私が旅している時に出会った少女たちだ。
私は白狐一族の集落から旅立ちした。旅の途中で作物を育てて、里の人達にその作物を分け与えたり、口寄せして白仙を呼んで、お稲荷を強奪したり、白狐一族の集落に戻ってお稲荷の早食い競争に参加したり、旅に戻ってもお稲荷を持参し過ぎて動けなくなったり、めちゃくちゃ美味しいお稲荷を作るのに、千年以上かけたり、偶然出会ったオオゲツとウケモチという少女たちに涙ながしながらも苦渋の決断によってお稲荷を授けたりした。
その旅で出会った二人の少女、オオゲツとウケモチ。この二人は、実は親なしの捨て子だったのだ。
そして、この二人は、実は狐だったりする。私と同じ狐だったので、すぐにこの二人と打ち解けた。
私はこの二人の少女達と一緒に旅をすると決め、彼女たちもそれを了承したのだ。
その旅の道中で、私は
「ねえ白空ちゃん」
突然、オオゲツが私を止め、ある方向に指をさす。
私はオオゲツが指さした方向を見て、観察する。
そこでは黒の長髪の少年と、白髮の少年が、十人以上の忍に囲まれ、今にも倒れそうになっていた。
白空が教えた物語は、日本の神話です。
『天地初發之時。於高天原成神名。天之御中主神。次高御産巣日神。次神産巣日神。』白空が暗誦した文章で、古事記上巻の冒頭部分です。