ゼロの奇妙な腹心   作:Neverleave

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学院に盗賊が現れたその最中、ドッピオに突如電話がかかってきた!
いったい、これから物語はどうなっていくのか!?

気になるあなたはこのまま14話へGo!!


14話

「「「……………………………………………………え?」」」

 

 その場にいた全員が、突然のことで凍りついた。

 ルイズとキュルケは、いきなり奇声を発し始めたドッピオに。

 ドッピオは、この世界に存在するはずがない電話のコール音が聞こえてきたことに。

 そこにいた者は皆、あまりのことに動くことをやめた。

 

「今の……なに?」

「……ドッピオ?」

 

 キュルケとルイズが、ドッピオに注目する。

 だが当のドッピオは、そんなことなどは全く目もくれず。せわしなく視線を動かして、何かを探していた。

 

「とおるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるん」

 

 再び、ドッピオが奇声を発する。

 ルイズとキュルケは、彼の奇怪な行動のせいでフーケやゴーレムのことなど忘れてしまっていた。

 

「……ね、ねえドッピオ、どうしたの?」

 

 ルイズが恐る恐る、ドッピオに訊ねかける。

 しかし、今のドッピオには彼女の言葉すら届いていない。

 闇雲にあちこちを見回す彼の表情には、次第に焦りの色が見えてきた。

 

「とおるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるん」

 

 三度目。いよいよルイズとキュルケは、ルイズの使い魔がいったい何をしているのかと心配になってきた。

 ルイズとキュルケはドッピオに駆け寄るが、ドッピオはそんなものなど見えていないかのようにふるまう。

 

「……どこだ……どこにあるんだよ……ちくしょう、どこだ!?」

「ドッピオ……?」

 

 ルイズは、ドッピオの目を見る。そこには、希望と絶望が混じりあったような色が見えた。

 まるで、すでに諦めきっていた『希望』が目の前に現れて。すぐにでもそれに飛びつきたいというのに、飛びつけないでいる『絶望』を味わっている。そんな色が、見えた。

 

 そんなときルイズとキュルケは再び地面が大きく揺れ始めたのを感じて、ふとゴーレムの方を見直す。

 すると、そこには学院から立ち去ろうとしているゴーレムが見えて。その肩の上には、フーケらしき人影が、しっかりと乗っていた。

 まずい。逃げられてしまう。

 そう思ったルイズは、使い魔に声をかけた。

 

「ドッピオ! フーケが逃げちゃうわ、追わないと!」

 

 だが、ドッピオはルイズの言葉にすら反応を返さなかった。

 ブツブツと何か独り言を言いながら、意味のわからぬ奇声をたまに発しては四方八方をまわるだけだ。

 ルイズはそんなドッピオの様子を見て、怒りがこみあげてきた。

 いったいこいつはさっきから何をやっているんだ。盗賊が学院に忍び込んで、宝物を持ち去ろうとしているというのに。

 そしてルイズは、使い魔に向かって叫んだ。

 

「ドッピオ!! ご主人様の言葉が聞こえないの!? 早く――」

「今それどころじゃあねェんだよォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」

 

 ビクッ!! と。

 今まで聞いたこともないようなドッピオの大声を間近で聞き、ルイズとキュルケは大きく体を震わせた。

 ドッピオはダラダラと冷汗を流し、切羽詰まった表情で『何か』を必死に探していた。

 

「どこだ、どこなんだよ! どこにあるってんだ!? ここに電話はないんじゃあなかったのかよ!? どこなんだボス、どこに……」

 

 やがて、ドッピオがそのまま探し物をしていた、そのときに。

 

「とおるるる…………」

 

 また何の前触れもなく。ドッピオは声を出すのをやめた。

 そのとたん、ドッピオはピタリと動きを止めて、そのまま制止する。

 それが逆に不気味で……ルイズとキュルケは、身動きを取ることができなかった。

 

「……え?」

 

 するとドッピオは戸惑いの色を見せだした。

 耳に手をあて、キョロキョロとあたりを見渡すが、もうおかしな声を出しはしなかった。

 

「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ぼ、す…………?」

 

 しばらくの間、またブツブツと小さな声でなにかをつぶやいていたが……やはりもう、奇声を発することはない。

 そのままドッピオは、だらりと両手を下げて立ち尽くした。

 

 

「………………………………………………………………………………………………」

 

 

 重い沈黙が、三人の空間を支配した。

 誰一人として、その場から動こうとする者はおらず。すべてを除いて、静寂のみがそこに残った。

 

「………………………………………………………………………………………………」

 

 やがて……ドッピオは両の拳を硬く、かたく握りしめ。

 

 それを思い切り、地面に叩き付けた。

 

「がァァァァァァァァァァァァァァァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 喉が張り裂けそうなほどの叫び声をあげながら。ドッピオは何度も何度も地面を殴った。

 それを繰り返すうちにドッピオの手は肉が裂け、赤黒い液体で染め上げられていき、白く尖った骨すらもとび出るような痛々しいものとなった。

 それでも、ドッピオは殴ることをやめなかった。叫ぶことも、やめなかった。

 

「あァァァァァァァァァァァァァァああああああああああああ!! う゛ァァァァァァァァァァァああああああああああああああああああああああああああああああ!!! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

 あまりの光景に言葉を失うルイズとキュルケだったが、ハッと気づくとすぐにドッピオを止めようとした。

 それでも、ドッピオは止まらずに、自分の手をズタズタに痛めつけ。

 それからくるものとは違う、涙をずっと流し続けていた。

 結局それは、騒ぎを聞いて駆け付けた教師が止めてくれるまで終わることはなかった。

 

 そのときには、もうとっくのとうに土くれのフーケは姿を消していた。

 宝物庫に入ってみると、そこからは学院が保管する一つの宝物がなくなっていたという。

 代わりに、宝物庫の壁にはこんなメッセージが刻まれていた。

 

『約束のペンダント、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』

 

 だが、そんなことはドッピオにとってはどうでもよかった。

 学院の秘宝がどうなろうと。そんなものは歯の間に挟まったクラッカーのカスほどの価値もない。

 そんなことよりももっと彼にとって重要で。致命的なほどに精神を傷つける出来事が、あったのだから。

 

 ……ドッピオは……ボスからやってきた電話に。またも、出ることはできなかった……

 

 

 

「……というのが、そのときに起こった出来事のすべてです」

 

 翌日の早朝。トリステイン魔法学院は、前代未聞の事件に大騒ぎとなった。

 もちろんそれは、トリステイン王国にて出没する盗賊、土くれのフーケによって学院から秘宝が奪われたということだ。

 なんでも宝物庫の外壁には、国内でもトップクラスのメイジが『固定化』の魔法を施したことによって、外部からの衝撃などには滅法強いつくりになっていたらしい。

 そんなものを破ることができるメイジなど、そうそういるはずもない。

 だが噂の怪盗は、夜中にこの学院へと侵入して、実行してみせたのだ。

 絶対に安全だと言われていた宝物庫からはまんまと秘宝が盗み出されてしまい、学院の者たちは皆騒然とした。

生徒たちも現場へと押しかけたが、その破壊の痕跡を目の当たりにして息を呑んでいる。

 そしてその現場にはこの学院の教師が集結し、この事態をどう収めるかの話し合いをしていた。

 

 ……いや、話し合いというよりは、一部を除いての責任の押し付け合いだったが。

 

「いったいその日の当直は誰だったというのだ! 自分の役目も放り出したあげく、秘宝を盗まれることになるとは!」

「30メイルほどの大きさのゴーレムを出したというではないか、なぜ誰も気づかなかったんだ!」

 

 生徒たちを目の前にして、こんな論議をしている時点でもはやこの者達が問題を解決してくれる見込みは皆無と思っていいだろう。

 ルイズはそんな教師たちの醜態を軽蔑のまなざしで見ていた。

 

(なによ……そんなこと話している暇があるなら、さっさとフーケから秘宝を取り戻すための計画を練りなさいよ)

 

 ルイズは目撃者の一人として、キュルケとドッピオとともにここへとやってくるよう指示されていた。

 そして自分たちが見た限りのことをすべて教師たちに伝えた。一部を除いて、だが。

 そうして始まった教師たちの論議に、ルイズも耳を傾けていたのだが……聞こえてくる内容には心底うんざりさせられた。

 それはどうやらキュルケも同じだったようで、もはやフーケの事件についても興味も示さない。

 だが、そんな彼女の注意は、彼女の隣にいる人物に向けられていた。

 

(……ドッピオ……)

 

 ルイズは、チラとドッピオの方を見る。

 とりあえずあのときドッピオがした奇怪な行動については誰にも話していない。手の怪我についても、ゴーレムに立ち向かったときに怪我をしてしまったのだと言っておいた。

 地面を何度も殴っていたことに関しては、賊を捕えられなかったことの悔しさでやってしまったことだと言っているため、特に彼の行動について周囲から言及されることはなかった。

 だが……あれからドッピオは、まるですべての希望をなくしてしまったかのように生気がなくなっていた。

 目からは光が消え失せ、うわごとのように何度も『ボス……ボス……』とつぶやいてばかり。

 手は包帯でグルグルに巻かれており、ところどころがすでに赤く染めあがっている。

 見ているだけで痛々しいが、本人は痛がる素振りすら見せない。

 

 ……精神的に、なにか大きく傷ついてしまうことでも、あったのだろうか。

 

 ルイズは何度も訊ねてみたが、ドッピオは俯いて『オメーには関係ないよ……』と弱々しく言うだけで、何も答えてくれない。

 

(なによ、自分一人で抱え込んじゃって……バカ犬……)

 

 ルイズは、死んだような表情のままのドッピオに悪態をつく。

 おかしなことを言い始めたあのとき。いったい何があったか、自分には話してくれたっていいのに。

 確かに驚きはした。少し頭がぶっ飛んでるとはいえ、ドッピオはあんなおかしな行動に出るようなヤツではない。そんなことを思っていた分だけ、驚愕は大きかった。

 それでも……それでも、だ。

 自分にくらい、相談してくれたっていいのに。

 

 召喚されてから、初めて授業をともに受けたあの日。おまえの問題は俺が一緒に向き合ってやると言ったくせに、自分自身のこととなればルイズにすら話さないというのか。

 そんなの、なんだか不公平だ。ずるい。

 使い魔の態度が気に入らなくて、ルイズはイラついていた。

 

 

「ミセス・シュヴルーズ! 昨日の当直はあなたでしたな!? いったいどうして見回りをしなかったのですか!?」

「す、すいません! 私、昨日事件があったときには、自室で眠っていて……」

「眠っていたですと!? 重要な役割であったというのに、それを全うすることもせずに!? なんと無責任な!!」

「これはミセス・シュヴルーズの責任ですぞ! どうするおつもりですか!!」

 

 

 ……などと考えている間に、どうやらあちらの責任転嫁論議は白熱してきていたようだ。

 昨日当直にあたっていたはずの教師であるシュヴルーズがその仕事を放りだしていたということから、すべてをシュヴルーズに押し付けようとしているらしい。

 シュヴルーズは泣きながら謝罪を繰り返すが、他の教師たちはそれでも容赦なく彼女を責め立てる。

 見ているだけで、虫唾が走るような光景だった。

 

「どうなのですかミセス・シュヴルーズ! この学院の秘宝を、あなたは取り戻せるのですか!? それとも弁償でもするというのですか!?」

「いや、もしそうできたとしてもあなたのせいで秘宝が奪われたという『結果』があるのは変わらない! そのことについてはどうするつもりです!!」

「わ、私は……私は……」

 

 シュヴルーズは堪えきれなくなったようで、涙目になりながら縮こまる。

 ルイズの苛立ちはピークに達しようとしていた。

 なぜこの者達はこうも貴族にあるまじき愚行にばかり走るのだ。

 論議のそもそもの目的は、秘宝奪還のための計画作成であって、誰が悪いだとか誰の責任だとか決めるためのものではない。

 すぐにでもこの者の中で立候補者が出て、フーケ討伐に乗り出すべきだというのに、いつまでも意味のない会話を延々と続けてばかり。

 

 無駄だ。なにもかもが無駄だ。

 無駄という言葉以外に何も表現できない。

 ルイズが教師陣に向かって一言言おうとしたそのとき。シュヴルーズの前に、一人の人物が立ちふさがった。

 

「今は責任のなすりつけ合いなどしとる場合ではないとなぜわからんのだ、このバカもんどもめ」

 

 それは、オールド・オスマン。このトリステイン魔法学院の学院長であり、そこにいるすべての者達から尊敬と畏怖を集める、偉大なメイジだった。

 その目は言いようのない怒りで燃えており、見ているだけで体が震えあがりそうだった。

 

「すまぬのう、皆の衆。少し探し物をしておったもんじゃからな、遅れてしまったことの非礼を詫びよう……じゃが……これはいったい、どういうことかな?」

 

 申し訳なさそうにオスマンは頭を下げたが、すると今度はシュヴルーズを追いつめていた教師陣に軽蔑の眼差しを送る。

 それでもなおも食い下がる教師もいて……恐れ多くも彼に訴えかける者がいた。

 

「し、しかしオールド・オスマン! 彼女のせいでこの事態が発生してしまったというのは明らかなことでして……」

「では聞こう。おぬしはその見回りを一度でも放棄したことがないと言い切れるのかの?」

 

 じろりとオスマンがその教師を睨みつけると、教師は言葉を詰まらせて何も言わなくなる。

 それは、他の教師にとっても図星であったらしく。とたんに皆が視線を下げた。

 

「ここにいる誰も当直を真面目に行っておらんことを、ワシが知らんとでも思ったのか? 彼女が偶然当直の日に賊が入ったから、責任を彼女一人に押し付ける? 恥知らずめが。己がどれだけ愚かなことをしているのか、もう一度考え直せ」

「で……ですが……」

「ですがではない。これは、ここにいるすべての者に等しく責任があるのじゃ。だからこそ、ワシらの手で解決すべきことなのじゃよ。それがわかったのなら、さっさとフーケの行方を捜索するなりなんなり動かんか」

 

 未だに納得しようとしない教師に向かってオスマンは静かに、しかし力強さを秘めた声でそう言い放った。

 するとそこにいた全員が恥じ入るように俯き、なにもしゃべらなくなる。

 彼らを見てどこか悲しそうな表情を浮かべるオスマンだったが……振り返ってシュヴルーズの方を向くと、先ほどとは打って変わって優しい声で彼女に語りかける。

 

「ミセス・シュヴルーズ。そういうことなのじゃ。おぬしが何もすべて背負うことはない。ともにこの問題を乗り切ろうぞ」

「おお……オールド・オスマン。ありがとうございます、ありがとうございます……」

 

 シュヴルーズは涙を流しながら、オスマンに感謝の言葉を述べる。

 オスマンはニッコリと笑いながら、ただ彼女を見守り続けた。

 そのまま沈黙が続いたが、やがて会議から一人外れていたコルベールはオスマンに話しかける。

 

「オールド・オスマン。この事件の概要ですが……」

「うむ。ワシは事件の当事者から説明を詳しく聞きたいのでの。それは、どちらかな?」

「ええ。この三名です」

 

 と、コルベールは事件に遭遇したルイズ、キュルケ、ドッピオの三人を指し示した。

 オスマンは彼らを見ると、昨日の夜になにがあったのか、一部始終を説明することを求めた。

 ルイズもその要求に応じて、自分の見たものをすべてオスマンに伝える。

 

 すべてを聞き終えたオスマンは現場を一瞥すると難しそうな顔をして唸った。

 そんなオスマンに、コルベールは提案をする。

 

「王室に報告をしましょう。増援を呼んで、賊を捕えるのです、オールド・オスマン」

「そんなものを待っていれば、増援が来たころにはフーケはより遠くへ逃げておるわ……これはすべてワシらの問題。自分のことくらい、自分で解決できなくてどうして貴族と名乗ることができよう……しかし、ミス・ロングビルはどうしたのじゃ? この場にはいないようじゃが……」

 

 と、オスマンは首をかしげて人を探すようにあたりを見渡したが、目当ての人物は見つからないようだ。

 いったいどうしたものか、とオスマンがつぶやいたそのとき。

 

 馬のいななきが、どこからともなく聞こえてきた。

 そこにいた全員がそちらの方へと目を向ける。するとそこにいたのは、馬に乗りながら急いだ様子で現場まで近寄ってくる、緑の髪の美しい女性だった。

 

「おおっ、ミス・ロングビル! おぬしいったいどこへ行っていたというのだ! ことは緊急を要するのじゃぞ!?」

「すみません、オールド・オスマン! フーケが出没したと聞いて、私なりに付近を調査しておりまして……そして見つけたのです、フーケが隠れていると思しき場所を!」

 

 その瞬間、そこにいた教師、生徒のすべてが驚愕で目を見開いた。

 オスマンはその吉報を聞いて感嘆すると、ロングビルにその詳細について訊ねる。

 

「おお、さすがはミス・ロングビル! して、それはいったいどこかね!?」

「はい。逃走中のフーケらしき黒いフードをかぶった人物を、農民が目撃したとのことで……その者によると、付近の森の中にある廃屋へフーケは入っていったそうです。ここから徒歩で半日。馬で四時間といったところです」

「うむ、よくやってくれた。それでは案内役として場所を知っているミス・ロングビルを含めて、フーケ討伐を買って出る者を集めたいと思う。この中で手柄を立てたい者がおれば、杖を掲げよ」

 

 そうしてオスマンはその場にいた全員に呼びかけた。

 だが、彼の呼びかけに応えて杖を掲げる者は一人もおらず……皆、誰かほかの者が早くあげはしないかと互いを見あってばかりいた。

 これにはさすがのオスマンも呆れたらしく、嘆くような口調で再び群衆に声をかけた。

 

「なんじゃ、おらんのか? この中で、フーケ討伐を名乗り出る、勇気あるものはおらんのか?」

 

 だが、相変わらず誰も反応しようとはしない。

 これは、当然と言えば当然だった。話を聞くところによれば、フーケはこの国でも最高レベルの防御力を持つ壁を破壊して、宝物庫から秘宝を奪ったのだ。

 メイジとしてどれほどの実力を持つかは、破壊の痕を見れば一目瞭然。そんな者に戦いを挑むなど、よっぽどの自信家でもない限りいない。

 そう、誰も名乗り出ないのが、当たり前だった。

 

 そんな中で、一人の人物が杖を掲げた。

 その者は、教師ではなかった。成績は優秀と言えるが、実技である魔法ではいつも失敗を繰り返してばかり。

 そのため皆から蔑まれ、疎まれてきた。

 それでもその者は、フーケから秘宝を取り戻すべく杖を掲げたのだ。

 

 そうっ! 彼女こそはッ!

 『ゼロ』という不名誉な二つ名をつけられた、トリステイン魔法学院の生徒、ルイズッ!!

 

 

 バァ――――――――――――z____________ン!!

 

 

「なっ!? ミス・ヴァリエール、君はまだ学生じゃあないか! なぜ君がッ!?」

 

 教師の一人が、ルイズを見て驚愕の声をあげる。

 だがルイズはその疑問に対してほんのわずかな間もあけることなく、即答して見せた。

 

「誰もあげようとしないからです」

 

 その表情には、ほんの少しの躊躇いすら見えはしない。

 ただそこにあるのは、『学院に手を出した悪党に制裁を下してやる』という、確固たる決意のみ。

 それを見た教師は、思わずゴクリと唾を飲んだ。

 

「仕方ないわね。あなたが行くなら私も行くわ」

 

 そしてそれとともに、彼女のすぐそばでも杖が掲げられた。

 その主は……『微熱』の二つ名を持つ、ツェルプストー家の末裔が一人、キュルケッ!!

 

「あら、あなたもついてくるっていうの?」

「ええ。ヴァリエール家に負けていたんじゃあ、父様や母様にも顔出しできないわ。決してあなたのためじゃあないから、そこは理解してね」

「ふんっ、わかってるわよ」

 

 お互いに憎まれ口を叩くルイズとキュルケ。

 あまりのことにあんぐりと口を開ける教師たちたったが、これだけで終わりではなかった。

 なんと、またも杖を掲げる者たちが出たのだ。

 

「ではそのフーケ討伐に、この僕も乗り出させていただこう!」

「……」

 

 今度は、群衆から杖があがった。

 その杖は薔薇の形をした華やかなもので、それを持つ主人もまた壮麗な容姿をしていた。

 またそこから少し離れたところでも、青い髪をした無表情で小さな少女が杖を持って手をあげている。

 

「ギーシュ! それに……タバサ!?」

 

 思ってもいなかった味方が現れて、ルイズだけでなくキュルケまでもが驚嘆して思わず少女の名を叫んだ。ギーシュが立候補したというだけでもかなりインパクトがあるものだったのだが、キュルケにとってはその少女の方がよほど意外だったのかもしれない。

 そのまま二人はルイズとキュルケのそばまで近づいていった。

 

「知り合いなの? キュルケ」

「……ええ。その、私と同じこの学院の留学生で、名前はタバサ……親友よ。でも、どうして?」

 

 軽く相手の説明をルイズにすると、キュルケはタバサに問いかけた。

 タバサという少女は、手に持った本を読みながらキュルケの問いに答える。

 

「心配だから」

 

 たった一言の、シンプルな回答。だがその言葉を聞いた途端、キュルケは感極まったように口元に手をあてると、タバサをひしと抱きしめた。

 ちなみにちょうどタバサの頭のあたりがキュルケの胸にあたっており、そこにいた男性陣は羨みの視線を彼女たちに向けている。

 

 と、そこでルイズは未だに動機がはっきりとしていないギーシュに対しても疑問を投げかける。

 はっきり言って、この中で一番謎なのはギーシュだ。

 

「……で、あんたはどうしてここへ来たのよ、ギーシュ」

「……なに、僕も『気高く飢えて』みたいと思っただけさ。そこの彼を見習って……それに、レディだけを危険な目に合わせるだなんて僕にはできないからね……あとは、僕の名誉の回復、かな」

 

 ルイズの疑問に、ギーシュは意味深長な発言をしながらドッピオを杖で示した。

 三人は皆、前半のギーシュの発言に首をかしげるが、『このキザ野郎のことだからあまり深く考えなくても大丈夫か』と納得した。後半に至ってはこいつらしいと言えばこいつらしいし。

そう思うと、三人はオスマン達の方へと向き直り、ギーシュもそれに続いた。

 

「……諸君。君たちがこれから立ち向かうのは、並大抵の力を持った者ではない。気を抜けば怪我をするどころではなく……死ぬことすらあるのじゃぞ? そしてなにより、これは授業ではない。訓練でもない。途中で抜けることは、できぬ……それでも、よいのか?」

 

 オスマンが、そこにいた全員を代表して、ルイズ達に訊ねかけた。

 しかし、ルイズはその問いかけを聞いて、決意に満ちた声で返答をした。

 

「はい。戦いの覚悟はできています!」

 

 それを聞いたオスマンは、ルイズ、キュルケ、タバサ、ギーシュの目を順に見て、満足げな笑みを浮かべると口を開く。

 

「よろしい。では、君たちにフーケ討伐の任を与える」

 

 これにはさすがに教師陣は納得ができなかったのか、次々にオスマンへと疑問を投げかけた。

 本来ならば彼ら教師のような一人前のメイジが行くべきだというのに、まさか半人前の学生たちを刺客として送り込もうなどということを、オスマンが認めるとは思わなかったからだ。

 

「なぜです、オールド・オスマン!」

「彼らはまだ学生ですぞ!?」

「こんなことをして、秘宝が戻ってくると本当にお思いですか!?」

 

 最初こそオスマンは彼らの問いかけに口を挟まず、静かに耳を傾けるだけだったが、すべて聞き終えるとそれらに対して首を横に振る。

 

「確かに、彼らはワシらと比べればまだ未熟ともとれる者達じゃ。しかし彼らはすでに『覚悟』を決めておる。どれほどに追いつめられ、劣勢に立たされようと立ち向かうという、意思を持っておるのじゃ。それこそがまさに勝利への道標。ワシはそれを信じてみたい」

 

 そこで一息入れると、オスマンは言葉を続けた。

 

「それに、じゃ。この者達は皆、優秀な才能を持つ者ばかりじゃ。まず、ミス・タバサじゃが、この齢にしてすでにシュヴァリエの称号をもっておる」

 

 それを聞くと、あたりが騒めきだした。

 当たり前だ。シュヴァリエというのは貴族に与えられる称号の中でも業績を残した者にした与えられないものの一つだ。これを持っているものは、国から実力を認められた貴族であると言っても過言ではない。

 

「ねぇタバサ。それホントなの? ホントなら、どうして黙っていたの?」

「聞かれなかったから」

 

 キュルケに訊ねられたタバサは、淡々とそう返事をした。

 聞かれなかったからというか、まずそんなことを聞くこと自体がないのだがそこはどうなのだろう。

 するとオスマンは、次にキュルケを見つめる。

 

「そしてミス・ツェルプストーじゃが、ゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家計の出であり、彼女自身の炎の魔法もかなり強力と聞いておる」

「お褒めに預かり光栄ですわ、オールド・オスマン」

 

 キュルケは誇らしげに自らの赤髪をかきあげる。

 彼女の家、ツェルプストー家はゲルマニアとトリステイン王国の国境付近の領地を任される家系であり、万が一他国から侵略を受けた時も最前線に出て国を守るという大役を預かっている者達なのだ。当然、メイジとしての力は優れている。

学院の中でも彼女の実力は群を抜いているだろう。

 オスマンは彼女の次に、ギーシュへと視線をうつす。

 

「次に、ギーシュ・ド・グラモン。知っての通り彼の父親はトリステイン王国にて元帥を務める者である。まだドットではあるが彼自身も土系統の魔法に優れていて、特にゴーレムを精製、操る術に長けている。彼奴と戦う上でも役立つじゃろう」

 

 ギーシュもオスマンからの言葉を受け取ると、きざったらしい仕草で一礼した。

 ドッピオとの決闘に敗れたとはいえ、彼の実力は本物だ。もう少し慎重に行動をしていれば、勝っていたのはギーシュかもしれない。

 それにオスマンも言ったように、ギーシュはフーケと同じくゴーレムをつくり、使役することに長けている。威力こそ劣るとしても、その知識と経験は彼らの中で最も豊富だ。

 最後にオスマンはルイズを見たが……彼女については何を言えばいいかと悩むように唸った。

「そして……えー、ミス・ヴァリエールじゃが……本人は、ツェルプストー家と同じく数々の有能なメイジを輩出するヴァリエール家出身の者であり、その……」

「魔法を使えばいつも爆発します」

 

 オスマンが何を言おうかとあぐねいているその最中に、言葉を挟むものが現れた。それも、彼女を誹謗中傷するようなことを。

 なんとそれは、今しがた紹介されているルイズ本人から発せられた言葉だった。

 驚きで目を丸くするオスマンだったが、ルイズはそれにかまわず言葉を続ける。

 

「どのような魔法を使おうとしても、すべてそれは本来の効果を発揮することなく失敗し、爆発してしまいます。ですが逆を言えば、私は『魔法でなんでも爆発させることができます』。威力の方に関しては、ミセス・シュヴルーズがご存知かと」

 

 ルイズが言うと、オスマンはシュヴルーズの方を見る。

 シュヴルーズはどう言おうかと迷っているようだったが、やがてシュヴルーズは口を開いた。

 

「ええ……彼女の、その……魔法は、とても高い威力を持っています……一度、教室が半壊いたしております……」

 

 言っていいものかどうか、シュヴルーズは躊躇わずにはいられなかった。

 確かに、魔法の威力としては相当なものだろう。だが何もかも魔法を失敗させてしまうというものが、本人にとってどれほどつらいものであるかを考えると、こうして言葉にするこちらも精神的にくるものがある。

 だがルイズはシュヴルーズの言葉を聞くとニッコリと笑って、声高に宣言をした。

 

「確かに、魔法をろくに使えないという点で私は他の者よりも劣ります。ですが、だからといってこのフーケ討伐に名乗りをあげない理由にはなりません。そして、誰かに止められる謂れもありません。役立たずのまま終わるつもりもありません。私は私の役目を果たし、必ず成果をあげて見せます」

 

 ルイズのその目には、黄金ともいえる光が宿っていた。

 その言葉には躊躇いも迷いもない。確固たる自信と覚悟に満ちた、誇り高い貴族の姿がそこにはあった。

 

「そして、私の使い魔ですが……周知の通り、彼は平民の身でありながら、一度ミスタ・ギーシュと決闘し、勝利しています。これほど心強い味方はありません」

 

 呼びかけられたドッピオは顔をあげ、ルイズを見た。

 以前は強く輝いていたその目も、今は弱々しいものになっていて、とても頼りない。

 そんなドッピオを見ると、ルイズは眉をひそめて彼に言った。

 

「ドッピオ。あんたにあのとき、どんなことがあったかなんて、私にはわからない。どれだけ大切なことがあったかなんて知りもしない……だけどね」

 

 そこでいったん言い切るとドッピオの目の前にまで歩み寄り、彼をほぼ真下から見上げて次の言葉を言い放った。

 

「前が終わってしまっても、その次がきっとあるわ。あなたが失敗したとしても、その次で取り返せばいいの。たった一度しかチャンスがないと決まっていないのならば、二度目があると信じて待つ。そうでなくても、それを『過去』から知って他の方法を探しなさい……あんたは私にそう言ってくれたはずよ、忘れたの?」

 

 ――人の成長とは、未熟な『過去』に打ち勝つことだ――

 自らの無能さに打ちのめされていたルイズを救った、使い魔の言葉。

 『過去』とは、自らが未熟で何もできなかった頃のことも示してくる、誰も覗きたがらぬものだってある。だが、人間の成長とはそれを見て初めて成し遂げられるものなのだ。

 未熟であったのならば、それを学び。

 失態をしたというのならば、それを反省し。

 間違いを犯したのならば、それを正す。

 それが、成長するということだ。

 そう教えてくれた当の本人が、それを忘れてしまうとはどういうことだ。

 ルイズは怒りを感じずにはいられなかった。自分を救ってくれた人間が、自分に再び前を見て歩む勇気をくれたその言葉を、自ら否定している。

 それに対して、どうして憤怒せずにいられようか。

 

「ドッピオ。いろいろ私に言って聞かせていたあなたも、まだ未熟みたいね。だったらいいわよ、未熟者同士、あんたも私も成長するのよ……だからもうクヨクヨしない!」

 

 ルイズはドッピオの足に蹴りを入れる。

 ギャッ!! と悲鳴をあげるとドッピオは足をかかえてその場に座り込み、痛そうに蹴られた場所をさする。

 ルイズはそんなドッピオを見下ろして、フンッと鼻をならした。

 

「テテテ……オメー、俺がまだ体いてェっつーのわかってんのか?」

「わかってるから蹴ったんじゃない。なに? それともその手を蹴り飛ばしてほしかったかしら?」

「……おっかねぇご主人様に召喚されちまったんだなァ~~、俺」

 

 そうぼやきながらも、ドッピオは先ほどとは違う、光の戻った目でルイズを見上げて笑った。

 それを見たルイズも、笑ってドッピオに手を差し出す。

 手に取るとドッピオはルイズに引かれて立ち上がり、今度はまっすぐと立ち上がって彼女の隣に立った。

 

 ――そうだ。

 まず、この世界に電話なんてものは存在しないのに、今回こうして電話があったこと自体がそもそもおかしいんだ。

 ボスはどうにかして、俺に電話を送ってくれた。だから、次だってそうなるはずだ。

 俺が出るまで、きっとボスは電話を送り続けてくれる……

 だから……次こそ……

 

 と、ドッピオが意思を新たにしたそのときだった。

 

 

「……? ミス・ヴァリエール。今、彼のことをなんと言った?」

 

 

 オスマンが、ルイズに奇妙なことを訊ねてきた。

 ルイズを始め、フーケ討伐に名乗り出た全員が首をかしげる。オスマンはなぜドッピオの名を聞いてきたのだろう?

 疑問を感じたまま、ルイズはオスマンの質問に答えた。

 

「ええと……ドッピオ、ですが」

「彼のフルネームは? どんな名前かね?」

 

 どういうことだろう。

 オスマンとドッピオには、何らつながりなどないはずだ。

 オスマンはこのトリステイン王国、いやハルケギニア中でも知らない者がいないほど高名な人物だ。対してドッピオはルイズに召喚されたばかりの、常識が欠如した平民。

 どう考えても、彼らの間に接点があるなどとは思えない。

 なのに、なぜ名前を訊ねる?

 

「……ヴィネガー・ドッピオ、です」

 

 そうルイズが告げたとたん、オスマンの表情が一変した。

 目を見開いてドッピオを見つめ、『なんと……なんと……』などとつぶやくと、そのまま何か考え込んだまま沈黙してしまう。

 しばらくしてオスマンはもう一度ドッピオへと目線を戻し、彼に話しかけた。

 

「ミスタ・ドッピオ……君は、いったいどこからやってきたのかね?」

「……はい? え、えと……」

 

 ドッピオは、突然の質問に困惑した。

 どこから、やってきた? いったいそんなことを聞いてどうするつもりだろうか。

 しかし目的はわからずとも、困ったことになった。ドッピオはこの世界にいた人間ではない。正直に答えたところで、信じてもらえるかどうかもわからない。

 どこか適当な場所を言ってごまかそうかと考えていると、オスマンがドッピオに言い放つ。

 

 

「イタリアのヴェネツィア、というところから来たのではないかね?」

 

 

 その瞬間、ドッピオの動きが止まった。

 ……今のは、聞き間違いか? 耳でもおかしくなっちまったのか?

 若干発音も違っていたし、もしかしたらよく似た地名の場所があるのではないかと、ドッピオは思った……

 だが……そのどれもが、間違っているということを、次のオスマンの言葉でドッピオは思い知ることになる。

 

 

「そして君は……その国で、ある組織に属していたのではないじゃろうか。確か名は……『パッショーネ』じゃったか」

 

 

 ドッピオは大股でオスマンにまで歩み寄り、胸倉を掴んだ。

 突然のドッピオの暴行に、ルイズやキュルケ達ばかりでなくそこにいた全ての者が慌てふためく。

 

「テメーなんでそのことを知ってやがんだッ!! 答えろこのジジィ!!」

 

 公衆の面前であるにも関わらず、怒声を放つドッピオ。オスマンは喉が締め付けられているのか、息苦しそうにしている。

 駆け寄ったコルベールがドッピオとオスマンの間に入ると、ドッピオの手を離させる。

 ハッとしたルイズ達もドッピオの元へと走り、コルベールと協力して暴れるドッピオをなんとか抑え込んだ。

 

「あ、ああああああああああんたいったい何をしてるのよ!?」

「ドッピオ! いったいどうしたっていうのよ!?」

「危険」

「落ち着きたまえ! なにがあったっていうんだい!?」

「ミスタ・ドッピオ! これはいったいどういうことですか!?」

「クソやかましいぞ! 話をしてるのは俺とそこの爺さんだッ! オメーらは黙ってろ!!」

 

 だがドッピオは地に伏せさせられてももがき、オスマンを睨みつけていた。

 それほどまでに、オスマンの言葉は恐ろしいことを示していたのだ。

 誰も、ドッピオの故郷など知らず、そして彼がそこで何をしていたのか知る人間はいなかった。

 ならどうして。どうしてこの老人はそれを知っている?

 あり得ない。そんなこと、あるはずがない。

 なぜだ。なぜなんだ!?

 

 混乱するドッピオ。一方でオスマンは解放されて荒い呼吸を数度繰り返すと落ち着きを取り戻すと、ドッピオの元へとゆっくり歩み寄る。

 

「何をしているのですかオールド・オスマン!? 今の彼に近づいては……!!」

「いや、その青年の言う通りじゃ。これはワシらの会話。どうか彼とキチンと話をさせておくれ」

 

 そう言ってオスマンはコルベールの警告も聞かず、ドッピオと目を合わせて会話する。

 ドッピオも幾分かは頭を冷やしたらしい。相変わらずオスマンに鋭い眼光を向けたままだが、彼はオスマンの言葉を待った。

 

「ミスタ・ドッピオ……此度の事件、君にも全くの無関係とは言えんのじゃ……いや、むしろ君こそが誰よりも関係していることと言っていいかもしれん」

「……いったいどういうことだよ」

「さて、それじゃ。盗まれた秘宝はの、ワシの命の恩人が最後にワシに預けたものだったのじゃ。そんな大切なものじゃったから、ワシは宝物庫の中へ入れて、それをずっと守り続けていたんじゃよ……」

 

 オスマンは悔しげに顔をゆがめ、嘆くようにため息を吐く。

 そして大きく息を吸い込むと、何かを決心したようにドッピオへと言葉を放った。

 

「そのとき『約束のペンダント』を渡したものは、ワシに言ったんじゃ。その者の出身、組織……そして……君のことを」

 

 ドクン、と。

 ドッピオは、自分の中で心臓が大きく鼓動するのを感じた。

 

 ――そんな――

 ――俺の、ことを?――

 ――いったい、誰が……どうして……――

 

 それは時とともに次第に大きくなっていき。

 しまいには、ドッピオが心音が耳で聞こえるほどにまでになり。

 

 

「……その者は、こう言っていた……『このペンダントを、私の一番の側近に渡してくれないか?』……とな」

 

 

 ドッピオは、呼吸するのを止めた。

 




ちょいとでも『ボスがついに参加するッ!』と思ったかマヌケがァ!!
その思考、まさに貧弱貧弱ゥ!!

……あの、ボスはもう少し先になるので、ホントに待ってください。お願いします(:_;)
こんな展開でマジすいません許してくださいオナシャス! ひィ~~~~~~~許してェ~~~~~!!


あ、あとアンケートなんですが……スタンドのラッシュの掛け声、あなたはどちら派ですか?
承太郎のように『オラオラ!』か、それともブチャラティのようにイタリア語から派生したものか。
できるだけ、感想などでお答えしていただけると嬉しいです。
結果によっては……? まぁ、物語において一部の設定が変わるとだけ言っておきましょう。

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