マインオブザデッド   作:dorodoro

83 / 84
後日談、蛇足
後日談 はるか高みに上ったその後 


「おーいマイン、お昼だぞ。」

 

「カミルちょっと待って、あと少しで切りが良くなるから。」

 

私が、はるか高みに上ってから2年ほど経ちました。

 

今はどこにいるかって?当然村に決まっているじゃないですか。神殿の周りに作った田んぼでお米の品種改良中です。

 

ええ、何とか村には降りられるようになりました。とは言っても小神殿からあまり離れることはできませんが、私は他へ行く必要性を感じないので十分です。

 

はるか高みに上ってから一年は本当に大変でした。結局あの神様はほとんど何も教えずにどこかに消えてしまって呼び出したくても呼び出せませんし。

 

とりあえず神様の残滓を探って、神の代わりになるように同じような機能の魔術具的なものを生み出したりしていました。

 

ウラノの世界の『でうすおぶまきな』みたいなものです。後はひたすら世界の管理です。どんどん自動化していったとはいえ、それだけでは当然足りません。

 

自動化した神の代わりとかも魔力が切れれば動きませんし、皆さんにお祈りして魔力を奉納してもらわないと動かなくなってしまいます。

 

まあ、最低限このユルゲンシュミットを維持できるだけの魔力を稼げればそれでいいので、動かなくても問題ないものも多いのですが。

 

そんなこんなで徹底的に無駄なところを省いてユルゲンシュミットの世界を少しの間なら自動で管理できるようになったのが最近というわけですが当然地上に降りる方法なんてありません。

 

どのようにしたら地上(ユルゲンシュミット)に降りることができるかと困り果てていたところで、一方的にものすごく懐かしい冷徹なぶっきらぼうな声で、降ろすぞ。と聞こえたかと思ったらいきなり地面に私の存在が吸われ気が付いたらあの小神殿でした。

 

ええ、まるで私のはるか高みでの作業を逐一見ていたかのように完璧なタイミングで降ろしてくださったわけですが...まさかいくらあの方とはいえ、見えているとか言わないよね?

 

エーレンフェストの懐かしい方々がお出迎えしてみんなで喜んでくれました。

 

一通り、みんなで再会を喜び合っていると魔王様が寄ってきて、相変わらずお小言から始まったので思い切って言ってみました。

 

「あら、仮にも神になったのにまだ私にお小言を言われるのですか。今の私ならフェルディナンド様相手でもどうとでもできますよ。」

 

「ふ、ならば君はこちらへ降りられる方法を見つけたのか。私がいなければ君はこちらへ降りることもままならぬぞ」

 

「ごめんなさい。わたくしが悪うございました。」

 

全面敗北です。まさしく瞬殺でいいのでしょうか。確かの今、神の魔力を利用すればどうとでも対処できるかもしれませんが降りる方法は見当もつきません。

 

まったく仕方のないやつだという風に神殿においてある以前はなかった魔術具の説明をしてくれます。

 

要は、この魔術具で小神殿を神域に書き換え私が来られるようにするという代物だそうです。

 

仕組みも説明と解析でわかりましたが、材料を用意するのが大変ですし、そもそもはるか高みでは用意できませんし無理です。メンテナンスもはるか高みからでは無理ですし、こんなものを用意できる魔王様がおかしいだけです。

 

この後も、しばらくは少しの間だけ神殿に降りて家族に会ってまたとんぼ返りという感じが続きましたが、魔王様がさらに魔術具を追加してくれて、小神殿の周辺なら何とか移動できるようになりました。

 

何の魔術具を追加したかって?私が以前に作った魔力を通さない糸と魔力糸で編んだあの布を使って、その布と魔術具を身に付ければかなり神域に近い状態を維持できるという代物です。

 

魔力を外に漏れださないようにする作用を利用しているようです。とはいうものの、脱いだとたん世界から弾かれますし、小神殿のおかげで周辺が神域に少しだけ近い状態だから可能なようです。

 

私はというと相変わらず、はるか高みにいなくてよいというわけではないのですが、少しの間なら降りても問題ない状態になりました。

 

「それでマインは今回、どのくらいこっちにいられるんだ。」

 

「お父さん、うふふん、今回は二日ぐらいいられそうだよ。今までで最長を目指すんだよ。」

 

「おお、そうかそうか、うれしいなぁ。」

 

「マイン、いいのかよ。神様っていうのは二日も休めるものなのか。」

 

「カミル、お姉ちゃんだって頑張っているからようやく二日も降りられるようになったんだよ。尊敬してくれてもいいんだよ。」

 

私が胸を張って言うと、カミルがいたずらっ子が相手をからかうかのように軽い口調で言ってきました。

 

「マインは俺と身長そんなに変りないし、見た目も幼いから余りお姉ちゃんに見えないんだけど。」

 

「うふふふ、人が気にしていることを。なんで神様になったのに身長伸びないんだろ!一生このままの可能性が高いなんてひどいよ!」

 

「あら、一番かわいい時期がずっと続くのだからうらやましいわよ。お母さんなんてねぇ。」

 

「エーフェは、いくつになってもきれいだから大丈夫だ。」

 

いつも通り、お父さんのお母さんへの愛を語る姿もカミルがものすごく生意気になってきたのも含めて幸せだなぁ。家族と言いたいこと気にせず言いあえるって素晴らしいことだと思わない。

 

昼ごはんが終われば、お母さんの仕事を手伝ったり。

 

お母さんのためなら神具の機織り機で最高級の布を織っちゃうよと気合入れ過ぎて逆にこんな高級なもの使えないと言われてしまったりいろいろあったりしましたけど。

 

夕方に、トゥーリとルッツが一緒に家に来ました。

 

「ただいま、あ、マインが帰ってきてる!」

 

「お、マインも帰って来ていたのか。」

 

「おかえり。うん、今回は頑張って二日ぐらいいるつもりだよ。ルッツがこの時間にトゥーリと家に来るなんて珍しいね。」

 

「ああ、婚約したからな。トゥーリと。」

 

え、こんやく?だれとだれが?

 

「あれ?言っていなかったかな。マイン、私とルッツは婚約しているの。」

 

え、え、え~~~!

 

「トゥーリ、ルッツ!どういうこと!?お母さんもカミルも笑っていないで教えてよ!」

 

神に祈りを!って、残念ながら私が一応神様でした...。

 

「待て、お父さんはまだ認めてないぞ!せめてお父さんを倒せるぐらい強い男でないと。」

 

「ギュンター、あなたを倒さないと認めないだなんてそれこそ貴族様でもない限り結婚できませんよ。ルッツ、この人は私が黙らせておくから安心してね。」

 

「エーファおばさん、ありがとうございます。ギュンター叔父さんには戦いでは勝てませんが商人としての戦いでいつか認めさせてみせます。」

 

完全においてけぼりです。というか、お父さんはこの間中級貴族の方と模擬戦をして勝ったとかカミルが言ってたよね。平民でお父さんに勝てる人っているのだろうか。

 

なんだかそうやって反対しているお父さんの前で堂々としているルッツもいつもより格好よく見えるし、一応貴族にもなっていたのにあまり成長していないのって私だけな気が...。

 

まあ、いいよね。みんな幸せそうだし、お父さんもああは言っているけどルッツのことを認めているようだし。

 

「そういえばマイン、神様って結婚できるのか?」

 

いや、カミル、普通に考えて無理でしょ。体の成長も完全に止まっているし。

 

「そっかぁ、無理なんだ...ヴィルフリート様も報われないな。」

 

最後の方はつぶやくような感じで聞き取れませんでした。

 

まあ、いいのです。そんなことよりも家族が、みんなが幸せに暮らせる方が大切です。

 

 

 

 

あっという間に時間が幸せな時間が過ぎてしまい、また帰る日になってしまいます。

 

こっちに戻ってきたときはいつものんびり好きなことができるし何よりも家族といられるから幸せです。

 

次に戻って来られるときは、ルッツとトゥーリの星結びになりそうです。必ず帰って来られるようにして、盛大に祝福を贈って祝ってあげるんだ。

 

「次こっちに来られるのは、トゥーリとルッツの星結びかな。そうしたらルッツが私のお義兄ちゃんになるんだね。」

 

「マインにお義兄ちゃんと呼ばれるのは変な感じだからルッツのままでいい。神様のお義兄ちゃんってよく考えたらとんでもないな...」

 

「もちろん、ルッツはルッツだしね。あ、そろそろいい加減戻らなきゃ!」

 

はるか高みでは、ほとんど一人なので寂しく思うときもあるけどみんなのためなら頑張れます。

 

それに以前とは違いこうして何度も会えるようになりましたから幸せですね。きっとこのような幸せな時間がずっと続くのだろうなと漠然とながら思いました。

 

「じゃあ、みんなまたね!」

 

 

 

 




これにてこの物語は終わりです。

ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました。
一応本日いつもの更新時間に蛇足の話をあげる予定ですが、読むかはタイトルを見てから判断してください。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。