マインオブザデッド   作:dorodoro

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72話 神々のご加護

午後は神々の加護を得るという実技なわけですが、グルトリスハイトの知識を見る限り加護を得ていないとグルトリスハイトを取得できないはずなのですがどうなっているのでしょうか。

 

嫌な予感しかしません。私は条件を満たしているなどと言われた以上どこかで得ているはずなのですが全く心当たりがありません。

 

お、ハンネローレ様だ。ダンケルフェルガーは合格者がとても少ないけど、さすがは領主候補生です。

 

私がハンネローレ様に挨拶しました。すると、ハンネローレ様がアーレンスバッハの生徒を見回し少し恥ずかしそうに言ってきました。

 

「アーレンスバッハもかなりの方が合格されているのですね。ダンケルフェルガーは見ての通りで少し恥ずかしいです。」

 

「神々の名前は長いですからね。わたくしは生まれてからずっと身近でしたし、神殿を管理するために必要な知識でしたので覚えなければなりませんでしたが、必要がなければなかなか覚えられないですよね。」

 

今話してみて思いましたが、考えてみれば、神殿の常識で考えてはいけないんですよね。神事にほとんど関わらない貴族の方々が自身に関わりのない神の名まで覚えているとは思えません。

 

「ええ、大変でした。ここにいる合格した方もローゼマイン様がディッターで強いのは神々について詳しいからだとか言い出して必死に覚えた方々なのですよ。」

 

変なところに私の影響が広まっていますね。問題にはならないでしょうから別にいいのですが。

 

「わたくしも神々について覚えるために必死に聖典を読もうと頑張った時を思い出します。初めて聖典を読めたときは感激したものです、あの時、初めて神々を身近に感じられました」

 

自分で言っていてあれだけど、実際は知識に飢えていただけなんだけどね。

 

「何時頃読まれたのですか。」

 

「4歳くらいだったかと思いますが。あの時は小神殿を管理させられていましたね。」

 

「そんな時から、神殿の管理を...。他に人はいなかったのですか。」

 

いくら何でも若すぎるってことだよね。

 

「余りの人手不足で、その村に神官として勤務できるものが私しかいなかったのです。その小神殿のあった村にお世話になり一緒に暮らしていました。」

 

こっち来てから嘘ばかり話しているなぁ。完全に間違いじゃないのだけど。

 

「貴族なのに神殿に入れられていただけでなく平民と村で暮らしていたなんて...。」

 

「神殿は、平民との繋がりが深いところです。あの時の暮らしは厳しいものでしたがそこで得たものは私の中で今でも残っていますし、今思い返しても幸せな時間でした。あ、この話はここだけの秘密ですよ。」

 

まあ、貴族としては失格だよね。平民になるつもりだなんて言ったらびっくりされるだろうね。

 

「ローゼマイン様のことが少しわかった気がします。お互い神々の祝福が得られるように頑張りましょう。」

 

 

 

 

そのあと、クラッセンブルク、ダンケルフェルガーが少人数で前から座り、ドレヴァンヒェルは多いですね。次にアーレンスバッハです。

 

エーレンフェストは後ろですが異様ですね。合格した人数だけならアーレンスバッハもあまり変わりませんが全員合格とはやはりすごいです。

 

さて、お祈りの言葉を先生に教えられますが、お祈りの言葉は知っています。すでに知識にありますし、やろうと思えば儀式の場から作れます。

 

材料がないため、すぐに儀式の場は用意できませんが、神殿の祭壇を利用すれば魔法陣を用意するだけで簡単にできます。もちろん、何かがあると嫌なので今までこの儀式をおこなったことはありません。

 

「先生、覚えましたのでお願いします。」

 

覚えるまでもありません。さっさと行きましょう。他の方は少し時間がかかるでしょうからその間なら何があっても対処できるでしょう。

 

属性については公開される場合が多いですが、得られた神については領地で秘匿する場合も多いので今日はうちの寮監も来ています。

 

「んまあ!今話したばかりなのに大丈夫ですの?」

 

「神殿の神事でほとんど同じ言葉を使いますし、礎に魔力を奉納するときも似たような祈りの言葉を唱えますので問題はございません。」

 

他の領地の領主候補生は、礎に供給するときも祈りの言葉を唱えるのかとびっくりしています。私もグルトリスハイトを得るまでは適当な祈りの言葉で魔力を奉納していました。

 

「エーレンフェストでも似たような祈りの言葉を唱えながら礎に魔力を奉納するが、さすがにまだ覚えられません。」

 

礎に魔力を奉納するときに祈りの言葉を捧げるのはエーレンフェストぐらいみたいです。

 

まあ、そんな話はどうでもいいのです。他の方に迷惑をかけずにさっさと終わらせることが重要なのです。

 

祭壇のある最奥の間に案内されます。魔法陣の中央で祈りを捧げれば魔力が奉納され神々のご加護が得られるという流れです。

 

さて、では祈りを捧げますか。

 

 

 

 

まず、最高神と五柱の大神の名を唱えると反応があり魔法陣にそれぞれの貴色が立ち並びます。ただ、どの色も本来の貴色よりも薄く透明なのが気になりますが。

 

その後に眷属の名を唱えていくのですが、こちらも反応があるにはあるのですがなんというかかすれていると言えばいいのでしょうか。はっきりとした反応ではないのです。唱えていく神々すべてがそのような感じです。

 

本来はグルトリスハイトを得るための前提条件を確認するための儀式でもありますしね。既に手にしてしまっている弊害が起こっているのでしょうか。

 

最後に「御身のご加護を賜らん」と締めれば儀式が起動します。

 

一度最高神と五柱の大神の七つの柱がぐるぐる回り中央に風の女神 シュツェーリアの貴色と同じ黄色い大きな光の柱が立ちます。

 

その後中央にできた光の柱はゆっくりと上へ上っていき他の柱はそれぞれの祭壇の神の像へ吸い込まれていきます。

 

その後、祭壇の神の像が回りだし、中央の柱が上をこじ開けるかのように弾け、以前にはじまりの庭へ行くのに上った最後の螺旋階段が姿を表します。

 

「んまあ!なんですのこれは!」

 

「先生、どうも最高神がはるか高みへと呼んでいるようなので行ってきますね。」

 

何が起こっているかは分かりませんが、何かが起こる予感はしました。

 

「んまぁ!どうしたらいいのでしょう!どうしましょう?」

 

うちの寮監は混乱の極致のようで何を言っても聞いてくれなさそうです。

 

「んまぁ!んまぁ!行かせていいのかしら!?」

 

んまぁ!んまぁ!とか言っていないで落ち着きましょうよ寮監...。混乱していますが行かないと次の人が困るので勝手に向かいます。

 

階段を上ると、そこは以前と同じはじまりの庭です。

 

やはりこの空間はいいですね。心がなごみます。今回はぼんやりとしか見えなかったうるさい神もいないですしいいですね。

 

すぐに帰らないといけないのが難点ですが...私が深呼吸して帰ろうとすると入り口が消えています!

 

どういうこと?

 

そこで空間がいきなり塗り替えられていきます。えっと、家の中だと思うけど、知らない家です。

 

ウラノの世界の家のリビングのような空間ですが、ウラノの住んでいた家の知識とも合致しません。とそこでいきなり人が現れて声をかけられます。

 

「あら?呼び出されちゃったのかな。ようこそ、一応はじめましてマイン。」

 

なんであなたがここにいるの!?

 

「なんであなたがここにいるって、呼び出したのはあなただし、言うまでもなくあなたはわかっていたはずよ。あ、なんで私が心で思っていることがわかるのなんて野暮なことは聞かないでね。」

 

おかしいです。ここにいるはずのない人物です。だって彼女は...。

 

「今は時間がないから顔合わせだけね。後でまた会いに来てね。次に会いに来るのが余り遅すぎても困るけどね。まあでもタイムリミットと言ってもあなたが私を楽しませてくれている間は維持してあげるから私を飽きさせないように頑張ってちょうだい。」

 

そう一方的に彼女が言って空間に亀裂が入り壊れ落下します。

 

あうち!祭壇の魔法陣の上に落とされました。そこそこ高いところから落とされたようで、お守りが発動して問題はなかったのですがずいぶん手荒です。

 

「んまぁ!大丈夫でしたの。いきなり階段が消えたと思ったら上から落ちてきて驚きましたわ!」

 

先生も驚いていますが当事者である私の方が驚くことばかりです。わかっていたはずなんて言われても何がどうなっているのかさっぱりわかりません。

 

 

 

 

周りからいくつの神から加護を得たとか聞かれますが、頭が混乱で働きません。

 

私が戻るとすぐにこんな会話が聞こえます。

 

「ヴィルフリート、もう行くのか。」

 

「ああ、行って来る。」

 

周りも明らかに私が混乱しているのかわかるのか声をかけてこなくなりました。

 

しばらくすると、ヴィルフリート様も戻ってきます。どこか不満そうな表情です。

 

「ヴィルフリート、いくつの神から加護を得たのだ。」

 

「21の神々から加護を得た。」

 

「21だと!すごいじゃないか。そんなにたくさんの神々から加護を得たなんて聞いたことがないぞ。なんでそんなに不満そうなんだ。」

 

21ですごいんだ。オルドヴィーン様がこれだけ驚いているんだからきっとすごいのでしょう。

 

「フェルナンド叔父上が言うには条件を満たすと特殊な現象が起こるらしいのだが起こせなかった。」

 

「なんだそれは。」

 

私も気になります。さっきの現象につながるのでしょうか。

 

「詳しいことは一切わからん、私も特殊な現象が起こる場合があるとしか聞いていないからな。」

 

詳しくは聞いていないのか。まあ、魔王様のことだから起こせれば自分の目で見て来いってことかな。ああ、魔王様に相談したいです。ヒルシュール先生あたりに仲介してもらって聞けませんかね。

 

私の場合は果たして加護を得られたのでしょうか。なんというか雲をつかむような感触といいますか、簡単に零れ落ちるような何とも言えない感触だったのですが。他の人にもぜひとも聞いてみたいです。

 

 

 

 

その後、オルドヴィーン様や、ハンネローレ様が入っていき、ほかの貴族院の学生も入っていきます。

 

ハンネローレ様が戻って来たのでどうだったのか聞いてみます。

 

「ローゼマイン様やりました!ドレッファングーア様の加護を得られました。」

 

その後、反応の様子について聞いてみると柱の色が薄いのは別におかしくないとのことです。

 

以前から、他の方もそんな感じとのこと。アーレンスバッハの方にも聞いてみますが同じような回答でした。

 

皆さん同じだからと言って安心できる要素ではないですが、とりあえず私だけではなかったようです。

 

こぼれ落ちるようななんとも言えない感触というのはわかってもらえませんでしたが...。

 

 

 

 


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