マインオブザデッド   作:dorodoro

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70話 神殿襲撃、服作成と餅つき大会

たまたま政務手伝いやレティーツィアの教育などで城に来ている時でした。

 

用事がある程度終わって少し調べものや薬関係の部署にでも寄ろうかと考えていたところ、オルドナンツが飛んできます。

 

なんでも神殿に侵入者が来て大変とのことです。急いでレッサー君で神殿に戻ります。

 

私が戻ったときには既に終わっており、幸い神殿への侵入者は仕掛けておいた戦闘用シュミルで追い払えたようでした。

 

一部捕まえたものもいたようなのですが、捕まえた方々は、自害もしくは契約で強制的にはるか高みに上らされてしてしまった模様です。

 

追い払えた方々も、もしかしたら身食い兵で既に破棄され、既にはるか高みに登っている可能性もありそうです。一歩間違えれば私も彼らと同じであった可能性もありえたと考えると...。非常に胸が痛くやるせなくなりますね。

 

人的被害がないか最優先に確認するよう指示を出し、私はなくなったものがないかを確認します。

 

部屋などを荒らされた形跡はありません。毒なども確認しますがどこも反応がありませんでした。

 

人的被害も、敵が来て物で解決できるのなら下手に抵抗せず好きにさせろと言ってあるので、軽いけが人が出た以外は特に無く、誘拐等も無いようでした。

 

何か目的を達する前にレッサー君集団で対処できたということで間違いなさそうです。

 

神殿で欲しいものと言うと、真っ先に思いつくものは聖典と鍵と神具ぐらいですが目的が分かりません。

 

いえ、礎の秘密を知ってアーレンスバッハの礎を奪取して、アウブにでもなりたい方がいるのでしょうか...。

 

そこでふと、今まで契約を直接どうにかして逃げることばかりに気をとられ気がつかなかったのですが、私が仮に礎を奪取したらどうなるのでしょうか。今の主を害する結果になるのでやろうと実行し始めた時点でダメそうですね...。

 

奪取が結果的にアウブのためになる状況を作ればいけるかもしれませんが、そんなことってありえるのでしょうか。私が一時的に仮のアウブになれれば契約の破棄なんて楽にできるのですが、そううまくはいきませんね。

 

なれたところで引き継ぎの問題などそれはそれで問題だらけですが...。

 

話がそれましたが、アウブになりたいなんて領主候補生の二人ぐらいしか思い浮かびませんし、二人とも礎を奪取するにしてもまだどちらになるか確定していないわけで、今はまだわざわざ奪いに来る理由としては弱い気がします。考えても分かりませんね。

 

人的被害が無かったので今回はよしとしましょう。

 

 

 

 

数日後、エーレンフェストとの国境沿いの貴族二名が神殿に来ました。以前からのエーレンフェストとのいざこざなどで、すでにギーベを退かれた方々なのですがゲオルギーネ様派の方々です。

 

神殿関係者に侮蔑的な視線を向けてくる、アーレンスバッハでは普通の貴族の方々ですね。

 

そういう方はそもそも神殿に近づかないのですが久しぶりに花捧げをお求めの方でしょうか。

 

一応、この特徴的なガマガエルみたいな方々には何度か顔を合わせた事があるので久しぶりの挨拶をします。

 

「ローゼマイン様、神殿に賊が入ったとのことですな。」

 

まあ、余り会話したい相手ではないですし、侮蔑の感じがにじみ出ていますので適当に聞き流します。

 

花捧げなら仕方がありません、したいという子に行って頂きましょう。

 

「つきましては、賊が毒を仕掛けていっていないかわれわれに調査させていただきたい。」

 

は、え、なんで毒を仕掛けていったという話になっているのだろう。えっと、たぶん賊がきた、目的を果たせなかった、置き土産に毒を置いていきますという感じでしょうか。

 

「わたくしもそれなりに毒には詳しいのですが、調べた限りでは問題はございませんでしたが。」

 

「それが、新種の毒物を使われた可能性が非常に高く、ローゼマイン様のことが心配だとゲオルギーネ様がおっしゃるもので、代わりに我々が調べに来たというわけです。」

 

あら、意外。ゲオルギーネ様の名前を出すんだ。新種の薬物についてなぜ分かったかといわせればゲオルギーネ様の研究施設関連の調査結果だと言いたいわけですね。

 

本当に新種で私にはわからない薬の可能性も否めませんし、監視をつけて好きにさせるしかありません。

 

「そこまで仰って頂けるなら、お好きにどうぞ。ただしこちらからも数名同行いたします。神具など神事に必要なものに万が一があってはいけないですから。」

 

表は、青色神官と灰色神官にお願いします。裏からはこっそりと魔術具のレッサー君たちやシュミルに毒物を勝手に仕掛けていないかなど監視させるしかないですね。

 

「では、わたくしは神殿長室におりますので何かございましたら呼んで下さいまし。」

 

青色神官二名と灰色神官四名に監視させ、何かあれば私をすぐ呼ぶようにと緊急呼びだし用の魔術具を3つ別に持ってきて貸し出します。

 

後は隠し部屋に行って、いろいろやりますかね。

 

決して調査の邪魔をしないように直ちに全員に周知させ、指定した人以外は、接触させないようにしました。

 

しばらくすると、連絡が来ます。すぐに出ると私の部屋も調べたいといっているとのことです。

 

大事なものは基本的に隠し部屋に隠しているので私も同行の元許可を出します。

 

一応うら若き女性の部屋をうんたらと少し渋る演技をし、嫌々と言う雰囲気は出しておきます。そんなことを気にしてくれる人たちではないでしょうが。

 

...引き出しまで開けて何をやっているのでしょうか。

 

まあ、もはや何を言っても無駄だと思いますので好きにさせることにしました。

 

さて、かなりの時間いましたが問題ないとのことです。念のため私も検査をし直しましたが問題はありません。

 

本当に何をしにきたのでしょうか。私が見ていた限りでは薬物検査をしている雰囲気はまったく無くまるで何かを探しているようでした。

 

ざっくりと見ましたがなくなっている物は分からずと言いたかったのですが...。えっと、まあ、いいです。持っていかれたのは偽物ですから。何がしたいんでしょうか。アウブに謀反の疑いのある勢力がいるかもしれないくらい伝えておいたほうがいいのでしょうか。

 

ゲオルギーネ様は絶対欲しがらないと思うのだけど、ディートリンデ様もそんな事を今の段階ではしないと信じたいですしね。ゲオルギーネ様の名前を出した時点で別の黒幕の可能性も否めませんし、別の使い方があるのかもしれませんが。

 

 

 

 

さて、物を盗まれた以外は特に被害なく終わったので、以前手に入れた銀の布を加工する準備をします。銀の布は予想通り魔力を通さない糸で編まれた布の様です。

 

ウラノの世界の『破邪の銀(みすりる)』的なものでいいのかな、え、みすりるは魔力を上げる素材だって?定義はいろいろだよねきっと。

 

せっかく編んであるのに、もったいないですが一度ほどいて糸に戻します。シュミルである程度自動化したとはいえ、なかなか大変な作業でした。

 

『ウィーベン!』

 

シュタープを、機織りの女神 ヴェントゥヒーテの機織り機に変化させます。

 

うふふん、お母さんとトゥーリが一番信仰する神の道具を模した機織り機を作れるなんて言ったらうらやましがられるかな。

 

何度かこっそり使ってきましたが経糸(たていと)を勝手に調整して張ってくれますし、緯糸(よこいと)を編んでいくのも補助してくれます。

 

ウラノの世界の『きかい』まではいきませんが、ものすごく楽です。

 

ちなみに出来栄えにそこまでこだわらなくていいものは、この機織り機があれば汎用シュミルでほぼ全自動で布を作れます。

 

レッサー君で始めは頑張ったのですが手足が短すぎて口なども利用して自動化しようとしましたが無理でした。

 

この間の魔王様の時ように、壊されたくないので戦い以外で使いたいのですが、手足が短いというのは使い勝手が悪いのです。

 

レッサー君の地位向上への道のりは長いです。

 

さて、今回は私の手で作るので、機織り機を使って経糸(たていと)には丈夫で燃えにくい糸を、緯糸(よこいと)には銀の糸を使って作り直していきます。

 

途中で緯糸(よこいと)を魔力糸に変えたりして魔法陣に干渉しないように工夫し、ばれないように外套の内側に身につけられるようにします。

 

ヴェールも作れば全身を銀の糸で覆えますので、境界にある結界もすり抜けられるでしょう。

 

これで後は、契約の問題を残すのみですね。グルトリスハイトも魔石を利用し魔剣を作る要領で魔力を込めれば耐久性が上がるものを一つ作りましたし順調です。

 

レティーツィアも神事に興味があるのか、教えに行くと、いろいろ聞いてきますので私がわかる限りは教えています。神殿長の引継ぎと言っても前神殿長は健在ですし神官長もいますので彼らがいればやり方自体は何も問題ありません。

 

私が、神殿長の証である鍵の所有権を破棄すればそのまま次の方が登録してもらえばいいですし、なかなか順調ではないでしょうか。

 

お米は有り余るくらい作りましたが品種改良は進んでいるのかいないのかよくわからない状態です。

 

もち米はもち米で利用できるのでそれなりの量を作っています。

 

シュミルに餅つきをさせたらそれなりに絵になりますよね?

 

 

 

 

「というわけで皆様、餅つき大会をしましょう。」

 

私は孤児院のまとめ役をしている者なのですがローゼマイン様がまた何かやり始めました。

 

ローゼマイン様が来てから孤児院の環境は以前よりも良くなり、食べるものに不自由しなくなりました。

 

以前は払下げだけでしたので全く足りなくやりくりが大変でしたが、今は自分達で作れるようになっただけでなく、孤児院の食事を食べていった変わった貴族の方がとても美味しいとのことで野菜を貴族の方に卸したりもしています。

 

恐らく私達が育てている野菜がおいしいのは、野菜を育てている土地をローゼマイン様が直々に祝詞で祝福をかけているためだと思われます。

 

ローゼマイン様は、売れもしない海外のお米と言う主食に並々ならぬ情熱を注いでいるようで、品種改良をおこなっているようですが、うまくいっていないようです。

 

ローゼマイン様のおこなうことなので何か意味があるのだと思いますがお米に関してはなぜそこまで情熱を傾けるのか全く理解ができません。

 

また、孤児院の者だというだけで外に出ると侮蔑の目で見られたり、対応を悪くされるのは当然だったのですが、そういう方が極端に減りました。逆にローゼマイン様について聞きたがる方が多く、私達に、良くしてくれる方がとても増えました。

 

領主一族であり、領主候補生であるにもかかわらず、誰にでも分け隔てなく接し話してくださるローゼマイン様は孤児院でも大人気です。

 

来た当初こそ領主候補生として威厳を出そうとされていたのかわかりませんが、あまり触れ合う機会も少なかったのですが、最近は孤児院の教壇にローゼマイン様ご自身で立ちみんなに教えだしました。

 

これが驚いたことに分かりやすいのです。ローゼマイン様が孤児院で直接教えているという噂がどこからか流れたらしく最近では町民だけでなく下級貴族の方まで来るようになりました。

 

貴族の方まで来だすと流石に問題が起こるかもとひやひやしていたのですが、皆様ローゼマイン様の話題などで盛り上がっており、とても仲が良いようです。

 

ローゼマイン様はご自身で教えるだけではなく勝手に厨房に入り、料理までしていることがあります。本人は調合がうまく行かないから練習代わりだとか言っていますが、そもそも料理をする貴族など聞いたことがありません。

 

しかもかなり美味しいのです...。変わったものばかり作りますが。

 

この間のカレーライスモドキとか言う海外の料理は子供達にも大人気でした。

何だかんだで美味しいものを食べられると言うことがわかってみんなひそかに楽しみにしています。本当は止めないといけないのでしょうが神殿長なので誰も止められません。

 

そういうこともあって、子供達からは物凄く慕われています。中には死んでしまった姉の幻想をローゼマイン様にみている子もいます。

 

ローゼマイン様も孤児院の子達とのふれあいをとても大事にしているようです。

 

最近は隣の領地と緊迫した雰囲気になっていたこともありローゼマイン様もいろいろ大変だったようで、その噂がなくなった辺りからより触れ合う機会が増えたり、不思議な行動が増えたので精神的に安定させる意味もあったのかもしれません。

 

そんな領主一族どころか貴族らしくない行動も多いローゼマイン様ですが、いざ神事になるとまさしく天使のように美しく、まさに神の遣いのように触れがたい荘厳な雰囲気になります。ローゼマイン様の祝福は何度見ても美しく感動するものです。その姿しか見ていない人が信仰の対象にするのも無理のないことでしょう。

 

さて、そんな私達の理解を超えた天使であるローゼマイン様が餅つき大会なるものをするとのことです。

 

砂糖で煮詰めた豆や、乾燥させた豆を挽いたものに塩と砂糖を混ぜたものや、スープを既に用意させています。

 

もち米と言うローゼマイン様が生産している米も蒸らしています。

 

後は精米機と呼ばれている水車に設置されている杵と臼と少し大きな水入れを用意し、ローゼマイン様が作るシュミル2体向かい合わせ、片方が杵を持っています。臼に蒸らしたお米を入れて片方のシュミルが杵でついて、もう片方のシュミルがこねていきます。

 

とても可愛らしいですね。皆さん暖かい目でシュミルを見ています。

 

つく速度と、こねる速度が上がっていきます。

 

ローゼマイン様が心なしか落ちつきなくそわそわしだしたかと思ったところ。

 

ばん!

 

いい音がなりました。こねるシュミルが停止します。

 

どうにも杵でこねていたシュミルの手を打ってしまったようです。

 

両方のシュミルを退かして、誰かついたりこねたりしたい人はいますかと少し動揺した声でローゼマイン様が聞いたところ、やりたいやりたいと言う声が上がりみんなで交代でつくことになりました。

 

出来立てのお餅はとても柔らかく美味しいものでした。喉に詰まらないよう少しずつ食べてくださいまし、とのことです。

 

忠告をちゃんと聞かないものが案の定、喉につかえローゼマイン様に癒しをもらっていました。

 

癒しなんて普通の貴族は平民にはしないものですがローゼマイン様は平気でします。

 

たまに重症患者が神殿に運ばれ癒しをかけることもあるほどです。ローゼマイン様が隠し部屋に籠るとなかなか出てきてくれないのですが緊急連絡用の魔術具が神殿には設置されており、そちらを押すと必ず出てきてくれます。

 

ちなみに隠し部屋から出てきてくれないときは、いつも使いたくなりますがローゼマイン様の信頼を裏切りたくないので誰もただ出てきてもらうためだけには使いません。

 

そのような素晴らしい方なのですがお体はあまり強くないようですし心配になることもあります。もし、ローゼマイン様に何かあって神殿から去られたらどうなってしまうのでしょうか。

 

レティーツィア様も神事に興味がおありのようですがローゼマイン様の影響だと思われます。そのため、もしものことがあってローゼマイン様がおられなくなったらその後はどうなるかわかりません。

 

わがままかもしれませんが、できるだけ長くローゼマイン様には神殿にいて頂きたいものです。

 

 

 

 


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