マインオブザデッド   作:dorodoro

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66話 脱出準備とランツェナーヴェ歓迎会

魔王様に一方的に遊ばれ結局なにもできなかったあの日から数日が立ちました。

 

失ったものばかりで本当に何もかもいやになりますが泣き言を言っていてもなにも変わりません。

 

こういうときは無心で何かをしたり、現状を確認したり余計なことを考えないようにするに限ります。少し油断すると今回の件の所為で、胸の中を駆け巡る私の心のゲドゥルリーヒへの思いを止めることができなくなってしまいます。

 

とりあえず壊されたレッサー君を回収に行って、現場に行ってもほとんど残っていませんでしたけど...頑張って治したり新たに調合して作ったり、魔紙もけちらずに大量に使ってしまったので調合です。

 

ディッターの話は完全に終わったようですが、ゲオルギーネ様の動きが読めません。

 

ライゼガングも、もう暴走しないと信じたいですがどうなることやら。最近は魔力対策として平民の身食いをこっそり神殿で引き取っています。

 

寄付は増えてますし、子供に必要な魔術具の指輪も今の私ならいくらでも作れますし、足りなくても魔力を奉納してもらえばいいだけなので。

 

とはいうものの、身食いなんてほとんど生まれませんので、数名の子供が増えただけです。

 

私がいるうちに成果はでないでしょうから、微妙なところですし最後まで面倒を見きれない可能性が高いのが難点ですが、そのままはるか高みに上るよりは選択肢を与えてあげたいという気持ちが強いのです。

 

もちろん自分で選択はしてもらってますよ。家族の元にずっといたいという気持ちは痛いほど分かりますから。家族に会うのは自由にしていますが、誘拐が怖いのでほとんど帰らせてあげられないのが辛い所です。

 

時間があるときに、貴族院で写した資料とか孤児院に移して読めるようにしています。これらの資料は逃げるときには持っていけませんし、ほとんど今の私にはいらないものですしね。寄付しても何も問題ありません。

 

こっそり身分を隠してってバレバレだと思いますが、孤児院の子供と遊んだりいろいろ勉強を教えたりしています。回りは大反対ですが威厳とかもはやどうでもいいのです。

 

それよりも子供達に教えたりして貴族の位を剥奪された後の対策を考える方がよっぽど建設的です。

 

ええ、つまり本気で逃げる準備を始めています。

 

これまでいろいろありましたが問題の魔力不足も孤児院の対策以外にも、レティーツィアに最低限こっそりと神事を引き継げれば後は勝手に回りが協力してくれるでしょうし、政情も以前から見れば安定してきています。

 

さすがに一年もあればお父様とお母様どちらかは回復するよね?今のところは順調に回復してきています。

 

ただ、問題があるところが魔力器官そのものなので一度壊れかけると完全に戻るかは不透明なところが不安ですが。最悪の場合でもレティーツィアが成人するくらいまで持たせればいいのですからなんとかなるでしょう。

 

逃げる過程でシュタープはたぶん失うでしょうから、最近はシュタープなしで魔術具の作成など調合もしています。

 

シュタープで作るペンを代用できる魔術具は作製しましたし、後は壊れない魔術具のグルトリスハイトですね。

 

グルトリスハイトの魔術具を作るにはターニちゃんの皮でも行けそうだけど、そちらはレッサー君に使うため魔紙を改良しています。

 

ベースとなる魔紙はできましたので後は生産して再度調合するだけです。

 

素材がいくらあっても足りないのが問題ですが...。

 

神具の作成の知識も頭に入ってますし、一番の問題以外はどうにかなりそうです。

 

ええ、契約の問題です。お父様に次のアウブに引き継ぐ前にはるか高みに上っていただくのが一番簡単な方法なのですがさすがにそんな方法は取りたくありません。

 

後は交渉かな。それなりのカードを出せば契約解除してもらえないかな...。命令をすれば大体のことは言うことを聞かせられるので、交渉にすらならない未来しか見えませんね。

 

他には魔力も隠すために何かをしないといけませんし、まだまだ前途多難ですが、道筋が見え、希望が持てる状態になってきたのは素直に喜ぶところです。

 

お米に関してもついに杵と臼を使用し精米もでき食べることができました!

 

ジャポニカ種でなくても米は米です。ようやくカレーライスもどきを食べることができました!

 

やっぱりインディカ種には、スープ系とか炒めたりしたものが合うよね。

 

水車についても小麦等をひくためのもので既に似たようなものがあるそうなのでそこまで難しくなくできるとのことです。

 

品種改良については、農業用シュミルに分別等させていますがなかなか進みません。

 

思っていた以上に変異種と思われるものは収穫できるのですが、インディカ種から外れることが出来ないのです。

 

こちらについてもまだまだ先は長そうです。種ぐらいなら持っていけますし、去る前に一定の研究成果を出したいです。

 

 

 

 

さて、ランツェナーヴェの船が来たようで今年は入港するところを初めて見られました。例年だと春の終わりに来るそうですが今年は遅れていたようです。領内に入って来ると礎に供給しているものなら誰でもわかるということもあって事前に向かうことができました。

 

去年はアウレーリアの件とかいろいろあって、倒れていた時期も多かったので、それどころではなかったですし。

 

領主一族で来られるものはみんな来ているようです。

 

「お父様、あの黒い船がランツェナーヴェの船なのですか?」

 

「今年から形が変わったようだな。」

 

魔力を持たない人たちが多いはずの国の船にしては魔力を使っているように見えます。と言っても魔力の漏れ方が歪で不思議な感じです。

 

その後、船が銀色に変わると魔力がほとんど漏れなくなります。あの銀色の材料は魔力を防ぐ効果があるようです。

 

今はいいですが、魔力を完全に通さないとなると場合によっては危険ですが、とてもほしいですね。

 

念のため、お父様に伝えて騎士団にはシュタープ以外の武器をもってもらっておいた方がいいでしょう。

 

魔力を持たないものが相手なら熱風とかでやけどさせてあげれば無力化できそうですが。

 

後は、地面の石とか飛ばしたり落とし穴に落としたりとかですね。

 

 

 

さて、星結びの儀式や星祭りを終えれば、ランツェナーヴェの使節団のお出迎えです。

 

中央の騎士団長も来ているのですね。

 

去年もアーレンスバッハの騎士団以外の人がいると思いましたがその時は中央の騎士団だったとは思いませんでした。

 

唯一の国境の開いている領地に警備のため来ているということでおかしくはないのですがわざわざ騎士団長が中央の警備から抜けてまで来るとは不思議な気もします。アーレンスバッハが出身地でなかったはずですがどういう繋がりなのだろう。

 

今年の使節団は皆さん銀の布を巻いてますね。

 

この布も魔力を通さないのかな?

 

挨拶時に去年話した使節団の方に今年も面白いものが入ったから是非見に来てくれとのことなので後でお邪魔することになりました。

 

「これが以前お話しされていたもので間違いないでしょうか?」

 

来ましたよ!古代米。真っ黒ですね。品種が増えればそれだけ品種改良の幅が広がります。

 

「後、丈が短い物としてこういうものもありましたが。」

 

うれしい!なんとジャポニカ種と思われるお米です。どちらも水耕栽培で作る品種とのことです。

 

「神に祈りを!」

 

あ、まずいこんなところで祝福が...。

 

でも、仕方がないよね。この程度ですんで良かったと思いましょう。

 

びっくりしたのか使節団や回りの方が固まってます。

 

アーレンスバッハに来たときはよく見た光景ですが、久しぶりに見た気がします。皆さんもう慣れてますからね。

 

付き添いで来ている側近連中も対応には慣れたものですぐに場が落ち着きます。

 

「去年いただいた祝福にも驚かされましたがこれほどとは感激いたしました。」

 

あははは、やっちゃった感じかな。やっぱし。

 

「とりあえず料金はどうしましょうか。」

 

「ローゼマインとは長い付き合いになりそうですので今回はお譲りいさせて頂きます。」

 

「いえ、今後どうなるかわかりませんので通常通りに取引いたしましょう。」

 

彼らにとっては料金と言っても魔石が一番欲しいようなので魔石との物々交換です。

 

「わかりました。それではお値段は勉強させて頂きます。」

 

その後使節団の方が脇に来て、こっそり小さな包みを渡してきました。

 

「お米を包むのにもいい布を使わせていただきますね。」

 

「ありがとう存じます。お心遣い感謝します。」

 

祝福をあげるだけでいろいろ融通してくれるなんてうれしいね。

 

銀色の船や布について歓迎会の挨拶時に、こそっと耳元でささやいておいた甲斐がありました。

 

もちろんお金は魔石で余分に払いましたよ。

 

うふふん、この銀の布が想定通りの効果なら逃げ出す準備の魔力を防ぐ方法はこれで解決です。

 

最悪はるか高みへ上りかけるけど薬で魔力を一時的に止めて魔術具で村まで移動させるとか考えていましたが無駄に終わって良かったです。

 

さて、神殿に戻ってお米作りです。

 

ジャポニカ種と思われる物が手に入ったのに作らないわけないでしょう。

 

農業用シュミルに準備だけはさせておいた小さな田んぼに種を蒔き祝詞で、成長させて実を取っていきます。

 

数を増やすために回復薬にも手を伸ばし数を増やして乾燥させます。

 

食べられるのは乾燥、精米が終わってからですね。

 

数日後、炊いてみましたよ。

 

...残念ながらモチ種でした。ウルチ種じゃないよぉ。

 

いや、もち米も美味しいことは美味しいけど蒸らしてこそだしね。

 

そもそもいいかい、ウラノの世界の話だけど、コシヒカリって品種があるらしいんだけどあれは分類ではウルチ種になっているけど品種改良の過程でかなりモチ種も入っているんだよ。

 

それで純粋なウルチ種であるササニシキ系統は以前はコシヒカリと生産量を半分で分けていたけど、今では全体の1%程度しか作っていないわけ。

 

冷害に弱すぎるし他の品種より風通しをよくしないと育てられないため密に植えられないとか育てるのが大変すぎるし生産量の関係から他の品種にとって変わられるのは当然なんだけどね。

 

お陰で生産のほとんどはコシヒカリの系統なんだって。

 

モチ種は食べると消化等で体に負担がかかるし普段食べるにはササニシキ系統の方が圧倒的に向いているわけで。

 

なので以前は病院でも体に優しく美味しいササニシキ系統に拘っていたところもあったのだけど今ではコシヒカリ系統しか手に入らないから病院食でもコシヒカリなわけ。

 

つまり何が言いたいかと言うと本物の日常的に食べる美味しいうるち米はもち米系統からは生まれないというわけで。

 

私の絶望がわかってもらえたかな。

 

まあ、ウラノの世界の『和菓子』の道は広がるけど。

 

大福、求肥、練りきり、白玉団子、他にもいろいろ!もの凄く広がりますね。

 

古代米とインディカ米で少しずつ品種改良するしかないですね。後はもち米の先祖帰りか...見分ける方法が無理すぎます。

 

古代米から進化させるなんて2000年以上の積み重ねがあって今のウラノの世界のお米があるわけで、美味しいジャポニカ種のうるち米を食べるまでの道のりが遠すぎます。

 

 

 

 




お米については簡単な農業体験で少ししかしたことがないので結構嘘ついているかもしれません。知識も簡単にしか学んでいませんし、かなり昔なので怪しいです。

こんなことを書いていますがコシヒカリ系は何も考えず食べる分には、すごくおいしいですよね。コシヒカリは戦後、戦争中や戦前、古米のためパサパサしていたお米ばかり食べていたそうですが、もっちりとしてそれでいて、もち米とは違い日常的に食べられるおいしいお米として広まったと聞きました。最近ですとミルキークイーンとか最強においしいですが毎日は絶対に食べたくないお米とかお米も目的に合わせて多様化していますね。


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