マインオブザデッド   作:dorodoro

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62話 領主会議の呼び出し 米作り始動

その日はお父様とお母様が領主会議へ行ってしまい、政務が滞っているとのことでたまたま城にきてたのですが...。

 

「ローゼマイン様ですね。そのまま同行お願いします。」

 

なんでも彼らは中央騎士団の者で領主会議での議題の確認のため私に出席しろとのことです。お父様が彼らに転移の許可を出したということですね。

 

「わたくしはなにも悪いことはした記憶がないのですが、理由は何でしょうか。」

 

ただの呼び出しでもおかしいのに中央の騎士までこちらに来るとか、まるで犯罪者を連行するかのような状態で不安になります。まさか図書館の件がばれたのかな。

 

「ローゼマイン様に罪はございませんのでその点はご安心ください。」

 

うん、全く信じられないけどおとなしく連行されるしかなさそうですね。

 

着いて早々ツェントの前に跪くお父様がいます。

 

私も横に行けとのことでアウブの斜め後で跪きます。

 

アウブより最低限挨拶以外の話をするな。と小声で命令されます。

 

「ローゼマイン、挨拶はこの場では省略する。此度其方を呼んだのは其方がエーレンフェストの聖女でありアーレンスバッハに拉致され従属させられている疑いが強いため呼び出させてもらった。」

 

また、エーレンフェストの聖女ですか。エーレンフェストから拉致されたのは事実だけど聖女とはなんのことでしょうか。

 

ツェントはそう言った後に私の全身をじっくり見たかと思うと最後に私の左手に目を向けてから言ってきました。

 

「まずは、その白い手袋を取りなさい。」

 

人前では外したくないんだけどな。まあ、王命だものね。外すだけなら契約も問題はないはず...いやいやながら私は手袋をとります。

 

アーレンスバッハの領紋のついた薄く美しくも嫌な気分にさせられる従属の指輪が姿を現します。回りから本当に従属の指輪ではないかとざわめきが広がりだしました。

 

「確かにエーレンフェストの主張通り従属の指輪のようだがアーレンスバッハはこのことについて申し開きはあるか。」

 

そう言われるとお父様が周りの反応を確認しながらゆっくり一呼吸おいてから発言します。

 

「恐れながらツェント、こちらの従属契約はアーレンスバッハ特有の同時期の領主候補生を上級貴族に下げる慣習を回避するための手段です。」

 

少しざわめきが静かになるのを待ってからお父様が続けます。

 

「仮に拉致したとしても大領地の領主一族として遇しておるのに何か問題がありますか。」

 

ないわけないじゃん、言えないけど。まわりも私の意見と同じなのか批難するような声が聞こえます。

 

「ローゼマイン自身の意見が聞きたい。」

 

聞きたいって言われても発言許可がないのですが。私はアウブの方を向くとアウブはうなずき。

 

「ローゼマイン、発言を許可する。」

 

言いたい、全部言いたい...。私の心のゲドゥルリ...考えるな!

 

「...アウブのお言葉以上の話はありません。」

 

命令でアーレンスバッハの不利になることはしてはいけないってなっているからどうしようもないよね。

 

下手に遠まわしに伝えようとしても感情が抑えられなくなるのは目に見えているので無理です。ついでにここで拉致されましたなんて言ったらウラノ世界の『いっぱつあうと』です。

 

「アウブアーレンスバッハ、従属契約を一時廃棄しろ。その状態での発言ではなにもわからないだろう。」

 

うん、そうしてもらえれば王命でなんとかなるけど...。

 

「ツェント、それはできません。同時期の領主候補生を上級貴族に落とす制度も、上級貴族に落とさない為の従属契約の特例につきましても、後継者争いが何度も加熱したアーレンスバッハに対して当時のツェントより提案を受け制度化されているものです。」

 

はぁ...そうなんですよ。アウブなら当然知っているしツェントだって知っているはずだよね。

 

「加えて、この制度そのものの大元は王族の昔にあった制度にならっており、そのご命令は我々アーレンスバッハが代々守ってきた慣例を破ることになりますのでお受けできません。」

 

王族の元々の制度だと!とか言う声が聞こえますのであまり有名な制度ではないようです。

 

「現在はアーレンスバッハ内の制度となっている以上、そこから先はアーレンスバッハの問題となりますのでご配慮頂けると助かります。」

 

王族といえども何年も続いている領地の制度には口を出せないんだよね。

 

加えて、外国と唯一繋がりを持ち余計なところまで管理している大領地といくら順位を伸ばしているとはいえただの中領地、どちらの発言を優先するかといえば比較するまでもありません。

 

「わかった。何年も守られてきた領内の制度ならば仕方がない。現状では、アーレンスバッハの罪はないものとする。」

 

わざわざ私を呼び出したわりには粘る事もなくあっさり終わりそうです。エーレンフェストは私をここまで引っ張り出しておいて完全に言い返せなかったとかではないよね。だとすると領地間での駆け引きの一端なのか、それともエーレンフェスト内へ向けてのポーズなのか。

 

帰っていいのかな。一言話すためだけに領主会議へ出席することになるとは...。その一言のために疲労困憊だけどね。

 

せっかくだから気分転換に許可をとって図書館でも見てくるかな。

 

もしかしたらなんて期待したわけではないんだよ。ぐすん。

 

その後、私は下がらされアウブも席に戻りました。時間ができたので図書館へ行ってソランジュ先生に挨拶をします。

 

その後にシュバルツ、ヴァイスに魔力をあげます。この魔術具の態度は相変わらずです。

 

「ローゼマイン様がこの時期にいるとは、何かあったのですか。」

 

何があったと言われても、内容は話せないし。

 

「領主会議の関係で当事者兼参考人として召喚されてしまいました。」

 

「...領主会議で貴族院に在籍する領主候補生がそのような呼び出しを受けるとは前代未聞ですね。」

 

やはり滅多にないことだよね。

 

 

 

 

地下書庫へ行く時間はさすがにないので一階の本を読みます。昨今の状勢などは最近の本を見ないとわかりませんからね。

 

「ローゼマイン様、ここにいたのですね。」

 

「とりあえずいて良かった。其方に話がある。」

 

うん、アナスタージウス王子とエグランティーヌ様。こんな時期に何か用でしょうか。

 

エグランティーヌ様の部屋に連れていかれました。なんだか今日は連行されてばかりなのですが。

 

盗聴防止の魔術具を展開し話が始まります。

 

「其方、この間の薬の話についてだ。」

 

「何か問題がありましたか。」

 

問題がないとは言い切れません。トルークを摂取している状態では効果があっても飲みたいとは思えない薬なのです。

 

「いや、成分や効果、どのような症状に効くのかは分かった。同様の薬はなかなか作れないようだがな。ツェントよりずいぶん楽になったと話されていた。礼を言うぞ。まあ、飲んだ時はひどい目にあったようだが。」

 

「誤解を受けやすい薬ですので、先に良く調べてくださいとお伝えさせていただきました。効果はあっても解毒作用を発揮するときに苦しくなるのはどうしようもありません。むしろ吐くことによって毒を一気に輩出できるよう調合してあります。」

 

「領主候補生でありながら、毒に詳しく調合までできるとは。やはりアーレンスバッハの身内争いが酷いのは今も変わらないということなのか。」

 

今問題を起こしているのは主にゲオルギーネ様だけですけどね...どうでもいいことですが、アナスタージウス王子は私と話をしているときはため息とか呆れ顔ばかりですね。

 

「契約のせいで言えませんが、薬の開発能力が高いせいでもあるのですが。」

 

絶対身内争いが絶えないのってトルークのせいだよね。あんな思考誘導薬があったら操って争わせようって人が出てこないわけがない。

 

「ローゼマイン様、契約とは何ですか。」

 

エグランティーヌ様が不思議そうに首をかしげながら聞いてくるけど何でだろう。ああ、今の会議での話だからまだ伝わっていないのか。

 

「今回の領主会議での話なので、後でご確認をお願いいたしますわ。わたくしの口からお話しすることではないかと存じます。」

 

「こちらに急遽いらっしゃった理由がそれなのですね。分かりました。今は聞きません。」

 

私にとっては非常にどうでもいい話が終わりました。こんな話より図書館で本を読んでいた方がよほどよかったよね。

 

 

 

 

この後、領主会議が終わり領地へ戻ります。領地に戻ればすぐに領主一族の報告会です。

 

私が呼び出されたことや、9位まで伸ばしてきたエーレンフェストにこれまで以上に注意すること。後は確定ではないのですがレティーツィアについてヒルデブラント王子との婚約話が進行中とのことです。アウブに何かがあれば王族が後ろ盾になってくれるということですかね。

 

ちなみにアーレンスバッハの情勢は安定してきており、貴族院でもそこそこ成績をあげているということで4位に一気に上がるそうです。とはいうものの以前は3位と4位でいったり来たりしていたそうですから戻っただけのようです。

 

今回もアウブより報告会の後で呼び出しです。

 

「さて、ローゼマインにはいろいろ婚約話がきている。中でもドレヴァンヒェルは注意が必要だがそれ以外は無視して問題ない。」

 

まあ、去年から打診中らしいからね。

 

「あと、ローゼマインが、勝手に決めたダンケルフェルガーの歴史書に関する印税というものについては、こちらの言う通りにするとのことだ。」

 

ダンケルフェルガーは婚約については年の近い候補がいないから大丈夫そうですね。

 

レスティラウト様の可能性がないこともないけど嫌われているし問題ないよね?

 

魔王様はディッターでの活躍を認められただけで当時下位領地だったエーレンフェストの領主候補生にもかかわらず婚約までいったという話もあるからダンケルフェルガーの騎士にルール上とはいえ勝ってしまった私の扱いはどうなるか読めないですしね。

 

「後は王族より中央神殿の神殿長として赴任できないかと言う話も出ているがアーレンスバッハの現状を説明し、今のところは大丈夫だが、そういう話が出ていると言うことだけは頭にいれておいて欲しい」

 

王族との婚約とかでなくて良かった。大領地だからあり得なくはないしね。年の近い王子はいないからまずありえないけど秘密を知られたら取り込まれかねないよね。

 

ですが、中央神殿の話は少し危ないですね。ヒルデブラント王子の婚約と交換条件にされかねないですし...

 

王族からすればアーレンスバッハとの私に祝福を代行させない約束を反故にできますし、アーレンスバッハからするといざというときに王族の庇護を受けられると。どちらにとっても悪くはない取引になりそうです。

 

他にはハンネローレ様と行った儀式や、シュツェーリアの盾についてもずいぶん話題になっていたという話がありました。

 

 

 

さて、非常に疲れる会議を終えれば待ちに待ったお米の生産です。

 

ウラノの世界では、品種改良は10年単位でやるとか聞いたけど、祝詞を使いまくれば、どんどん変異種が生まれるでしょうから、先祖帰りした実を見つけて交配して行けば、いけるかもなんて甘く見ていましたが...。

 

まず、品種改良するにしても現状として品種が一つしかないので突然変異を期待するしかない状態です。これでは他の品種を掛け合わせることができないのでなかなか品種改良が進みません。

 

加えて、種を増やして食べる量を確保し脱穀、種の種類分け、精米と現状では一つ一つ手作業でやらざるをえず、いくら孤児院の人手があると言ってもとても足りません。

 

とりあえず、千歯こきを手先の器用な方に作ってもらい、先祖帰りや突然変異のお米がないか、調べてもらうところから始めるしかなさそうです。

 

後はウラノの世界の一升瓶の中に脱穀したお米を入れて棒でつけば一応精米できるので、同様の原理で臼と杵も作らないといけませんし、その前にお米を天日干しして乾燥させないといけませんし、必要な道具も準備しなければなりません。

 

とりあえず魔術具でそれらしいものを作ればいいんですね。

 

精米は下手に魔術具を作るよりも水車でやった方が楽そうです。

 

アーレンスバッハでお米を作っても売れるとはとても思えないので完全に趣味でやるしかありません。個人の趣味のために、どこまで孤児院のみんなに手伝ってもらうべきかわかりませんし、困りました。

 

そうだ、農業専用シュミルを作りましょう!

 

また、素材の消費がさらにひどいことになりそうです...。

 

ですが、お米を食べるまで、いえ、美味しいお米を作るまで後には引けません!

 

 

 

 


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