マインオブザデッド   作:dorodoro

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61話 二年目貴族院終了~祈念式

卒業式が終われば、帰還準備です。とりあえず、しばらく行けなくなるので図書館に向かいます。

 

図書館につくといつも通りソランジュ先生に挨拶をします。

 

「あるじ きた」

「おしごと がんばった」

 

シュバルツ、ヴァイツも相変わらずですね。魔力補給をして礎とか像などに魔力を奉納します。

 

メスティオノーラの像に奉納しても今回は特に何も起こりませんでした。

 

その後、シュバルツとヴァイスのための魔石を渡したり、今年は図書館の返却具合がいいということなどを話していると...。

 

「ローゼマイン、こちらにいらしていたのですね。」

 

ヒルデブラント王子...。出て来て大丈夫なのでしょうか。人がいないわけではないのに。

 

「急遽成人式の祝詞を任されたり、色々大変だったそうですね。」

 

まったくです。体調悪い中大変でした。ヒルでブラント王子はそういう命令出さない王子になってくださいねなんて本音は話せません。

 

「王命でしたので、体調悪い中でも問題なく終えられてよかったですわ。」

 

「ローゼマインは表彰式も出られないほど体調を崩していたというのに御父上も...」

 

「ヒルデブラント王子、そこまでです。ローゼマイン様、私からも成人式についてはお礼を言わせていただきたい。お陰様であの聖典原理主義者どもが少しは静かになりそうです。」

 

血縁とはいえ、ツェントへの批判は中央の騎士団長が止めに入ると。聖典原理主義者がどうこうはどうでもいいけどね。

 

「ご心配頂きありがとう存じます。すべては王命に従っただけですわ。」

 

うん、ヒルデブラント王子にあげた魔術具のシュミルもぴょこぴょこついてきているし気に入ってくれたようで良かったです。そんなことを思っていると私の視線に気が付いたのか。

 

「おかげさまで、この子も元気に動いています。物を持ってきてくれたり便利で賢い魔術具で驚きました。」

 

「大事に使ってくれているようで製作者としても喜ばしい限りですわ。」

 

名前とかも気になりますが、教えたくない場合もあるでしょうからあえて聞きませんよ。

 

 

 

 

さて、図書館の用事が済んだ後、帰る前にダンケルフェルガーよりお茶会のお誘いです。

 

こちらから招待するという話もしたのですが、今回はぜひ来てくれということなので帰還準備を終えて手持無沙汰な側近連中と向かいます。

 

「ローゼマイン様、こちらがお約束の品です。」

 

ディッターで勝った景品がさっそく来ました。わざわざハイスヒッツェ様が持ってきてくれたようです。

 

「まあ、ずいぶんと素晴らしい物を。ぜひとも欲しいものでしたので遠慮なくいただきますね。」

 

「ええ、アウブからの分も入っております。素晴らしい戦いに景品が必要だと。」

 

ええ、なんだかハイスヒッツェ様にルール上とはいえ勝ってしまったということでダンケルフェルガーの方々の視線が痛いです。

 

その後、騎士見習いの方々にディッターの話を振られたりいろいろあってすぐに時間が過ぎていきます。

 

別に私はディッターが好きなわけではないのですけど、ダンケルフェルガーの方々は私がディッター好きだと勘違いしていませんか。

 

何とか軌道修正しようと試みますが、まあ、うちの方々と一緒ですね。

 

ハンネローレ様に、こっそりと相談するも、申し訳なさそうに諦めて話に付き合ってあげてくださいとのこと。

 

同じ苦労をしてきた身として心の中でお互い固い握手をして話に付き合います。適当に相槌を打つことしかできませんが...。

 

最後にディッターのお詫びということで、第一夫人が用意してくれたとのことで、ダンケルフェルガーの神話の本などをお借りすることができました。

 

知識との整合性の確認のためこういう本はありがたいですね。

 

 

 

さて、あっという間に帰還です。

 

今年は親族間での報告もないらしく、簡単な現状確認だけです。

 

エーレンフェストが成績を急激に伸ばしており、領地としても安定しているのでいよいよ無視できなくなるかもしれないということです。

 

何でも領地対抗戦のディッターではうちの寮監が分裂する非常に厄介な魔獣のフンデルトタイレンを出したらしいのですが二年で本来なら出るはずのないヴィルフリート様がとても細かい網で拘束し他の方が大魔力で攻撃し瞬殺したとかで非常に話題になったそうです。

 

分裂したら倒すの大変なんですよね。私はあれが苦手なので無視するか逃げます。

 

それでも準備に少し時間がかかったらしく2位とのこと。1位はダンケルフェルガーですよもちろん。あそこは別格です。

 

なぜか3位がアーレンスバッハというのは解せませんが。アーレンスバッハは国境門が開いている関係から守りに重点を置いているので攻撃はそこまで得意ではなかったはずなのですが何かあったのでしょうか。

 

私については今年も最優秀だったらしいことなどを確認します。研究の発表や、ヒルシュール先生の関係で少しお小言をいただいてしまいましたが。どちらも私にとっては不可抗力なのですが...。

 

その後アーレンスバッハの神殿へ行き聖典と鍵を偽物と入れ替えます。グルトリスハイトの知識を使って、かなり精巧な偽物を作ることができました。

 

なぜこんなにも危ないものなのに神殿の警備は疎かなのでしょうか。いえ、この事実を知っている者がいなければ怖くないですね。領地の礎を丸裸にしているようなものだなんて。さすがに聖典の鍵で礎に行けるなんてみんな考えませんからね。

 

本物の聖典と鍵は私の隠し部屋へ入れます。

 

後で旧ベルケシュトックの分もやらないといけませんね。

 

神殿の滞っていた業務を終えたら、城の文官に確認し必要なところがあれば手伝いをします。

 

その後、春を紡ぐ宴があり、成績優秀者や異動するものや処分者などの発表が行われました。

 

この宴は話を聞くだけで、社交シーズンを終える意味でしかありませんので楽ですね。

 

領主一族の洗礼式があればここで同時に行う場合もありますが、しばらく領主一族が増える予定もありませんしね。

 

 

 

 

春を迎えれば、すぐに祈念式です。相変わらず直轄地は全部私の担当になりましたよ。素材回収のついでなので諦めています。

 

さて、レティーツィアが数か所だけ直轄地の中でも近場の所に同席することになりました。

 

「今回は特にアウブから同行の件はお聞きしていませんでしたけど、レティーツィアが希望したのですか。」

 

「ええ、ドレヴァンヒェルでは神事にかかわりたいとは思いませんでしたがお姉様と一緒に奉納式を行ったため他の神事にも参加してみたくて。その、ご迷惑でしたか...。」

 

ご迷惑だなんてとんでもない。お姉様だしね!トゥーリのような頼れるお姉様に...。道のりは遠いいですね。なるならない以前に...。今は考えるのをやめよう。

 

「神殿長としても姉としてもうれしいですわ。いずれ礎に魔力を奉納するための訓練にもなりますしね。ですが無理する必要はありませんわ。今回は近場の2、3カ所にしておきましょう。」

 

「はい、お姉様。」

 

付き添いの側近の親子も神事にレティーツィアを参加させること自体には忌避感はないようです。

 

「そういえば、なぜこのような格好なのですか。」

 

そうだよね。貴族街では石畳の上しか移動しないものね。神殿の関係者と分かると今後の情勢次第では良くないかもしれないということなどもあり、今回は動きやすい格好を優先してもらっています。

 

「レティーツィアはどろどろの土の上を歩いたことがないのですね。農村には石畳などありませんから足を取られてしまうと言ってもわからないでしょう。まあ、行ってみればわかるかと存じます。」

 

農村の状況は去年とは大違いで、この一年でずいぶんと余裕ができたようです。

 

奉納式を行うと事前に伝えておいたためかこの近辺の人全員が来ているのではない勘違いしそうになるほどの人だかりができています。

 

「レティーツィア、本来は最初から一緒に手を当てて行うのが通常なのですが、今回は最初なので2回に分けて行います。最初に私がある程度魔力を満たしておき、残りを一緒に満たしましょう。」

 

「わかりました、お姉様」

 

まあ、すでに奉納式も行っているから大丈夫だと思うけどね。

 

「癒しと変化をもたらす水の女神フリュートレーネよ」

 

どうでもいいけど、命の神って土の神のことを好きすぎだよね。

 

「土の女神ゲドゥルリーヒに新たな命を育む力を与え給え」

 

魔力で聖杯を満たさないよう、魔力量に気を付けながら奉納します。

 

7割くらい奉納したら残りをレティーツィアと一緒に奉納です。

 

「レティーツィア、大丈夫ですか」

 

「ええ、大丈夫です。」

 

顔色も悪くなっていませんし、もっと魔力を奉納する量を増やしても大丈夫そうです。

 

この日は一度帰して、その間に私は2か所ほど回ります。

 

次の日にまた合流して6割ほど一緒に奉納を行い、少しきつそうでしたが終わります。

 

また同様に今度は念のため1日開けて合流します。

 

「お姉様、今回は最初からおこなってみたいです。」

 

なんでこんなに積極的なのでしょうか。いえ、素晴らしいことこの上ないのですが。

 

姉としてできるだけ希望を叶えてあげなければなりません。

 

「側近、護衛の皆様、レティーツィアが最初から奉納を体験したいと言っていますので手伝ってくださる」

 

二人で最初からおこなうと危ないですが、みんなで行えば負担は減りますし、最初から行うという感覚もわかるでしょう。

 

我々もおこなうのですかと驚いています。当然の反応ですね。自身が参加するとなればどうしても神事に対する以前の感情が抜けないようですし、自分に必要なこと以外のために魔力を使うということを嫌がる人は多いのです。

 

「あら、かわいい私の妹というだけでなく、領主候補生で次期アウブ候補であるレティーツィアが儀式を行っているのに側近であるあなた方は手伝える力がありながら何も行わないのですか。」

 

うふふん、かわいい妹のためなら、多少嫌がられても気にならないよ。

 

「皆様...いえ、私のわがままのために付き合わせるわけには。」

 

「いえ、ぜひ手伝わせていただきます!」

 

ねえ、なんでわたしが言うのとこんなに反応が違うの?

 

いや、レティーツィアの側近だから当然と言えば当然なのだけど。なんだか釈然としません。

 

私とレティーツィア以外の皆さんが恐る恐る聖杯に触れていたのが少し印象的でしたが無事に魔力の奉納を終えました。ところでみなさん疲れすぎじゃないでしょうか。魔力の奉納が終わった後、みなさん疲れてぐったりとしているように見えます。

 

帰るのには問題なさそうなのでここで別れます。別れるときにレティーツィア以外からの畏怖と尊敬を混ぜたような視線を向けられたのはとても気になりますが...。

 

この後は去年と同様に儀式を行っていきます。

 

ただ、回っているうちに気になることが。以前お話しした神殿の入口に設置された謎の神の像がいろいろなところで増えているのはなんなのでしょうか。

 

特に旧ベルケシュトックでは、何ヵ所かにあるのを見たのですが。

 

旧ベルケシュトックの小神殿では鍵と聖典は確保しました。本物であることも確認済みです。

 

その後旧ベルケシュトックの礎も、小神殿から行けましたので鍵で開けて中の確認まではしました。満たさないようにと言っても一度で満たすほどの魔力はさすがにありませんが...魔力を奉納してきました。朽ちかけていた一部の建物がだいぶ息を吹き返したようです。

 

間違っても、魔力を満たしてアウブに登録される訳にはいきません。魔力を満たしてしまったらアウブが許可を出したところ以外に行ってはいけないという命令に反しかねないので不味いのです。

 

これ以上余計なことをするならお父様とダンケルフェルガーへの協議が必要になるでしょう。

 

外へ出たらまた奇跡を起こしたとか言って大変な騒ぎになってしまいましたが。私は何もしていないと嘘をついておきました。

 

あとは小聖杯の受け渡しに数ヶ所ですが、レティーツィアが同行したくらいでしょうか。

 

その関係で直轄地以外も少しだけ回り、エーレンフェストの領界近くに行きましたがゲオルギーネ様の支持者の方々が多い土地の割には歓迎されました。

 

小聖杯を渡すのに歓迎しないところはありませんが...。

 

さて、そんなこんなで気が付けば領主会議の季節になりました。

 

 

 

 


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