マインオブザデッド   作:dorodoro

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59話 領地対抗戦

お茶会がない合間は、領地対抗戦への準備です。

 

といっても、領地対抗戦と言いますか、お茶会関係については皆さん非常に優秀な方ばかりなので準備は滞りなく進みます。

 

他には講義が終わっていない方の手伝いなどしたりしました。

 

アーレンスバッハの領地対抗戦で発表する論文関係は、あまり力を入れていないのかスペースが余ってしまっているようなので寮監に校正をお願いして私の論文も隅でこっそりと発表させてもらうことにしました。

 

図書館と魔法陣との接続に関する考察です。

 

直接的に書きすぎるといろいろまずそうなので、かなりぼかして鋭意研究中とかにしていますし、隅なので注目されないでしょう。題材も非常に地味ですし。

 

いろいろやっていると、あっという間に領地対抗戦の日を迎えてしまいます。

 

今年は出席せざるを得ないだろうということで、問題が起こらない限りでなければならないとのことです。

 

さすがに2年連続で出ないのはまずいですし、領主候補生として最低限社交を積まないといけないということですよね。

 

やりたくはないですが仕方ありません。

 

当日の会場準備と言っても、私がやることはほとんどありません。最終確認と設置などで問題があればその対応くらいです。

 

人手が多く、皆様やる気がみなぎっているので確認するだけでいいのはありがたいです。

 

途中で、ディッターに出る方々が祝福を欲しいと言ってきたのでこっそり別の部屋に行って祝福をかけてあげられる程度には余裕がありました。

 

今回は全員跪いていました。特に言っていませんが去年の件で跪いた方が効果が高いと去年の件で実感したからだそうです。

 

そんなこんなで、確認等終えたらアウブの呼び出しで寮へ戻ります。

 

「さて、ゲオルギーネが留守を預かっているので、ディートリンデとローゼマインで一部の客を対応してもらう。」

 

「お任せくださいな、お父様。」

 

ディートリンデ様、頼りにしていますよ。去年はどうしたんだろうね。三人で対応したのかな。

 

私がいろいろ考えていると、お父様がわきに来てボソッと言っていきました。

 

「領地対抗戦の間は当初の契約以外は自由とする。ただし、アーレンスバッハの不利益となる行動はとらないこと。」

 

ありがたいですね。万が一があるとめんどくさいからでしょうが。

 

今年はこっそりカステラの他に月餅や、練り切りなど出してみました。

 

練りきりと言ってもつなぎはもち米がないので小麦粉やジャガイモから作った片栗粉なので食感が少し微妙ですが。

 

色付けは、野菜等すりおろしたりして着色しています。基本的に小豆は見つかっていないので白い豆を使った白餡を中心にずんだ餡風なものなども使っています。

 

相変わらず砂糖菓子に埋もれているので、ほとんど注目はされませんが、目ざとい方々は見つけて食べている模様です。

 

今も王族の方々がお越しになり、エグランティーヌ様が見つけて払下げをしていました。

 

「あそこにある新しいお菓子はまた其方が考案したものか。あいかわらず、目立たないところに置いておくのだな。」

 

アナスタージウス王子とエグランティーヌ様は幸せそうですね。私がお菓子の説明をしようと口を開きかけたところで...

 

「改めましてようこそアナスタージウス王子、アウブとはお話をしなくてよろしくって。」

 

ディートリンデ様は王族のこと嫌いすぎですよね。あっち行ってくださらないって感じの対応だものね。

 

「ふん、ディートリンデも相変わらずだな。アウブアーレンスバッハには、この後にあいさつに行く。先にこちらへ来たのは、ローゼマインに去年もらった助言のお礼を言っていなかったからな。」

 

「あら、途中から態度が変わったと思ったらローゼマイン様が原因でしたの。ではわたくしからもお礼を言わないといけませんね。」

 

クスクスといった感じでお互いらぶらぶですね。

 

「お礼を言われるようなことはしておりませんし、お二人の幸せそうな顔を見られただけで十分かと存じます。」

 

その後、お父様方があいさつ回りに行くということで席を外していますが、無難になんとか対応していきます。

 

ちょうど客の流れが途切れ少し周りを見る余裕が生まれました。やはりダンケルフェルガーの方々はいつでも戦えるような恰好をしており、団体様で移動していますね。

 

今は、お父様方が挨拶周りで向かっているはずなのですが、私達の方にまっすぐ来るのは気のせいでしょうか。

 

「これを作ったのは其方だな。」

 

「挨拶もなくいきなり本題とは。いくらアウブと言ってもどうなのかしら。」

 

ディートリンデ様、全くその通りですが上位領地にそんなこと言って大丈夫なのでしょうか...。まあ、ダンケルフェルガーの歴史を見る限りは気にしなさそうですが。

 

「これは、アウブダンケルフェルガー。歴史書を現代語訳に直して編纂したのはわたくしですが、アウブが直接来られるほどの何かがございましたか。」

 

とんでもない訳し間違いがあって怒ってきたという感じでもないし何だろう。

 

「これをダンケルフェルガーで本にしたい。」

 

「申し訳ございませんが、あくまで個人で作っているものですのでわたくし個人としては広めてほしいものではないのですが。」

 

というか、なんでアウブが持っているのだろう。ハンネローレ様は取り上げられてしまったのでしょうか。

 

「そうかならばディッターで決めようではないか。」

 

きました、そんなことよりディッターしようぜ。いや、違いますが。私が今言ったら大ウケではないでしょうか。

 

ハンネローレ様があわあわしています。ちょっとかわいいですね。ダンケルフェルガーがディッターを持ち出した以上、後に引けない何かがあるのでしょうか。

 

ディートリンデ様はダンケルフェルガーのことが王族以上に嫌いなので話したくもないらしく顔がわずかにヒクヒクしています。

 

「あの、仮にディッターをするにしても誰と誰で行うのですか。ダンケルフェルガーのようにアーレンスバッハではあまり盛んではないですし。」

 

別に再度見直して直してもらって、印税をもらえるならいいのかな。いずれにせよアウブの案件だよね。

 

「その要件はアウブを通して頂くべきかと存じます。」

 

「いま、其方が個人で作っていると言ったではないか。ならば何も問題あるまい。」

 

問題大ありでしょうとか、ディートリンデ様も言って下さいますがこうなるとなかなか聞く耳を持たないのは、親戚と言ってもいいベルケシュトックの方々でよくわかっています。

 

「わかりました。わたくしとしては印税として一冊売るごとにいくらか私の手元に入ってくるように徹底してもらえるのなら問題はございません。」

 

そう言って、印税の説明をします。

 

「ふむ、では其方がディッターに勝ったらそれでいこう。」

 

いや、ディッターは関係ないよね。

 

「ディッターに関係なく、いえ、ディッターせずともその条件ならお譲りしますが。」

 

「こちらとしては、買取ならともかくそのような面倒な制度を加えるというならそのくらいの条件を飲んでもらわねば無理だ。」

 

はぁ、ディッターしたいだけなんだね。分かりましたよ。お父さまたちも戻ってきそうだしどうせなら魔術具の実験に付き合っていただきましょう。私はあくまで乗り気ではないという雰囲気を出すために小さく溜息をはきます。

 

「わかりました。ではアウブが戻って来るのが見えましたので、今からやりましょう。ディートリンデお義姉様。申し訳ございませんが後のことお願いしてもよろしいですか。」

 

「待ちなさい、まさかとは思うけどローゼマイン、あなたがディッターをするつもり?おやめなさい。」

 

「ディートリンデお義姉様、要はディッターを名目としたこの本を譲れという催促なのです。ただ、わたくしとしてはこのまま譲るのは面白くありませんのでいろいろやらせていただきたいと存じます。」

 

「まて、譲れなどと思ってはいないぞ。」

 

「いままでたくさんある借りを一つ返したと思っていただければ結構ですわ。ですが、やるからには勝たせてもらいますわ。」

 

万が一に備えて魔王様対策のためにいろいろ試したいしいいよね。フルに使ってもこの不死身の集団(ダンケルフェルガー)を止められるとは思わないけど。

 

「仕方がないわね。こちらは任せなさい。ディッターである以上少しの怪我は許しますけど重症とかになることは許しませんからね。あなた方も肝に銘じてくださいまし。」

 

ディートリンデ様だけに任せる状態になってしまうのは申し訳ないですが、この場合は仕方がないですよね。

 

 

 

 

さて、外の使っていない訓練場に移動です。移動中にルールなどを話し合います。

 

「さて、当然挑まれているのはわたくしなのでルールはわたくしが決めてよろしいですよね。」

 

「もちろんだ。あまりに不利な条件でもない限り受け入れよう。」

 

ルールとして一対一で時間制限ありで逃げ切れば私の勝ち。

 

ケガを避けるために私の首に付けたお守りが発動した時点でわたしの負け。

 

フィールドはディッター専用の施設内のみ。

 

他にディッターに必要な条件を決めます。

 

「こちらはお守り等についてはいいのか。」

 

「時間制限の分、そちらで判断してもらって結構ですわ。」

 

万が一、いい戦いになって魔術具のテスト終わる前に終了じゃ困りますからね。

 

「ほう、ところで其方本当に戦えるのか。」

 

「あら、これでも逃げることに関してはそこそこ訓練を受けてますわ。落第とか訓練させるだけ無駄かとか言われましたが...。」

 

相手から大丈夫なのかという声も上がります。

 

「ただ、わたくし負けるつもりはないのでそちらからは最高の戦士を希望しますわ。負けてもいい経験になるでしょう。」

 

「その意気やよし。ハイスヒッツェ。相手してやれ。」

 

ええ...いいのかよ、という雰囲気が流れますがアウブの命はどこでも絶対ですね。

 

「わかりました。お相手しよう。もし私に勝てたら私の持っているもので欲しいものをなんでもあげよう。」

 

負けるわけないだろ、かわいそうだから関係なくあげろよとか聞こえます...もう、この方達はどちらの味方なのでしょうか。

 

始まる前にハンネローレ様が涙目でごめんなさい、絶対に無理をなさらないでくださいとか言ってくれます。

 

「ハンネローレ様、目に物を見せてあげますので期待してくださいまし。」

 

 

 

 

さて、始まりの合図を待つばかりです。こっそり移動中にアインにフル装備を取りに行かせましたので万全です。

 

ここまでフル装備で戦うのはアーレンスバッハに来てからは何度かしかありません。

 

開始の合図とともに魔術具を展開し、

 

『水鉄砲』

 

「なんだ、この壁は!」

 

容赦はしません。純粋に透明な迷路の魔術具です。

 

水鉄砲は、単純に矢の形態にしてマシンガンのように乱れ打ちします。

 

「うお!」

 

お守りの破壊に成功したようです。さらに下から近くに来た人を自動で追尾する地雷を数発お見舞いします。

 

「なかなかやるな。言うだけのことはある。ただの貴族院生と思ってやると痛い目を見そうだ。」

 

お守りを吹っ飛ばしても、全然効いていませんね。

 

ラルツェ!

 

私はとりあえずライデンシャフトの槍を出します。

 

アインに持たせ攻撃させます。

 

「なかなか危険な槍だな。打ち合いたくはないな。」

 

当然ながら全然当たりません。無理に攻撃しようとしたアインの手ごと切られて解除されてしまいます。

 

まあ、私としては時間稼ぎができれば良かったのです。

 

シュヴェールト!

 

エーヴィリーベの剣は今の季節なら使えるしね。

 

「再生と死を司る命の神 エーヴィリーベよ 側に仕える眷属たる十二の神よ」

 

これって、エーレンフェストの冬の主と眷属を呼び出す儀式だから今の私が使うのは微妙なんだけどね。

 

アーレンスバッハの冬の主は呼び出せなくはないけど寒さが厳しくないので弱いんだよね。むしろ海とか山とか夏とか...。まあ、今はいいのです。

 

「ゲドゥルリーヒを守る力を我が手に」

 

使っても問題ないカードだからさっさと切るけど今の私がゲドゥルリーヒを守る力をって、いやになるよね。

 

うお!なんだこいつらはという声が聞こえます。この集団を一人で相手するのは少しは骨が折れると思いますよ。

 

「ローゼマイン様、私、ハイスヒッツェはまだあなた様を見くびっていたようだ。ここからは相手をフェルディナンドだと思い全力で当たらせていただく。」

 

いや、十分強かったですが。目が楽しくてしょうがないという感じでキラキラしだしてハイスヒッツェ様の剣が光輝きだします。

 

「魔術具ごと全力で切らせていただく。」

 

そう言った直後に広範囲の横一線の攻撃が来ます。当たった瞬間、あまりの魔力量に一瞬で魔術具と生み出した冬の主が蒸発しました。

 

ゲッティルト!

 

シュツェーリアの盾にシュタープを変え呪文は唱えている暇がないのでアインに盾を補助してもらい魔力量を込めて強引に防ぎます。

 

当然、迷路の魔術具は使用不能になり魔力もそこそこ使いました。

 

でも、今の攻撃は魔王様のそこそこ全力と同じくらいだったよね。普通に耐えきれたってことはわたしも成長している証拠だよね。

 

耐えきれた満足感に少し油断して直接攻撃を食らいますが、

 

「これで終わりだ、うお!」

 

うふふん、簡単には破れないよ、お守りはまだまだたっぷりとありますから。

 

いい感じで吹っ飛びます。ここまで強力な反撃ができるお守りを持っているとは思っていなかったようです。ここでできた時間を使って薬で念のため魔力を回復させます。

 

風の盾を 我が手に

 

その後、シュツェーリアの盾の守りを展開します。

 

「はは、まだ油断があったというのか。まるでフェルディナンドを相手にしているようだ。」

 

「ずいぶんフェルディナンド様とお親しいようで、噂の魔王様と比較していただけるとは嬉しい限りですわ。」

 

「あなたが彼の関係者と言われても驚きませんよ。」

 

楽しそうな目から一転して真剣な目に変わり再度、剣に魔力を収束させこちらを攻撃しようとしてきますが...

 

「させません、アイン攻撃」

 

話している間に穴を掘らせて後ろからお守りアタックです。

 

「っく」

 

集中力を乱させれば、この手の攻撃は防げる可能性が高まります。

 

と思ったのですがシュタープの二個目を出しアインに攻撃されてしまいます。

 

シュタープ二個持ちかぁ。よく考えれば昔の人は七個とか出してたとかいう記録もあるから私もやってやれないことはないと思うけど。

 

そんなことを考えている余裕はありません、先ほどの攻撃が再度来ます。

 

攻撃に踏み込んだ瞬間を狙って移動地雷と魔紙を使った魔法陣で攻撃を試みるもこちらの攻撃を無視するかのように容赦なく踏み込んで攻撃してきます。

 

とはいえ、魔力を注げば防ぎきれます。

 

「これでも駄目か。ならばこれでどうだ。」

 

なんでこんな戦いを楽しめるのでしょうか。レッサー君軍団を使うか悩ましいですが、よく考えたら万が一に備えているのに他の領地に伝わる可能性がある以上使えないんですよね。

 

グルトリスハイトの知識を使えば少し楽に戦えますが、ぶっつけ本番は怖いですし、目立ちそうなのでやめておいた方がいいでしょう。

 

先ほどと同じように剣を両手に持ってハイスヒッツェ様が攻撃してきます。あれ、両手の剣両方ともさっきよりも魔力をまとって輝いていない!?

 

一発目は耐えきれますが、

 

「これでどうだ。」

 

すかさず二発目が来ます。

 

きゃあ!

 

衝撃波で割られたかのようにシュタープの盾ごとたたき切られます。

 

お守りが発動して防ぎきりますが、魔力が大量に削られてしまいました。

 

「お守りを一体いくつ持っているのだ。直接胸のお守りを破壊するしかないな。」

 

「させません!」

 

ゲッティルト!

 

再度、シュツェーリアの盾を出して、風の守りを展開します。

 

魔力回復薬をもう一本入れて

 

更に『水鉄砲』

 

ぶっつけ本番でしたが普通にいけました。

 

「なんだと!騎士でもないのにシュタープを2個出してくるとは」

 

防御しながら一方的に乱れ撃ちです。最初に撃った時と違い残りの魔力量を気にせず全力で魔力を込めて撃ちまくりました。

 

「ところでそろそろ時間では、あとどのくらいですか?」

 

審判の方も時間制限ありなんてめったにやらないようでこちらの試合ばかりを見て時間を確認していなかったようです。

 

「双方そこまで!」

 

かなり慌てて言ったようだけど、どのくらい過ぎていたんだろうね。そのせいで私の魔力回復薬を余計に消費したなんてことはないよね?

 

はぁ、疲れました。あうち!気を抜いた瞬間疲労でかなりまずい状況の様です。感覚的には薬を飲んで休めば何とかなりそうですね。

 

「見事なり、これで貴族院生とは信じられん。」

 

「恐れ入ります、申し訳ございませんが、体調がすぐれないため下がらせていただきます。」

 

まわりは、は!?とか困惑気味ですが知ったことでがありません。

 

「ではアウブダンケルフェルガー、約束は守ってくださいませ、あとハイスヒッツェ様も最高級の素材ありったけ用意してくださいませ。」

 

「ディッターで負けた以上必ず用意しよう。」

 

ダンケルフェルガー産の最高級の素材は楽しみだね。

 

そんなことより休憩して回復させなきゃ。ハンネローレ様も周りを説得してくれたようで特に引き留められずに帰ることができました。

 

 

 

 

悪夢を見る確率100%の悪魔の睡眠薬に加えて体調を回復させる薬を飲んで休んでから、戻ります。

 

万全とは言えないけど去年よりは全然いいですね。今年はユレーヴェに浸かれたおかげでかなりいいです。

 

悪夢ですか?忘れます。今回は村に帰ろうとしても帰ろうと頑張れば頑張るほど、どんどん故郷から離れていく夢を見ました。

 

戻ると、ちょうどアーレンスバッハのディッターが始まったところでした。

 

「大丈夫か...今回の件はなぜ私を待たなかった」

 

お父様が眉間にしわを寄せ額に指を当てながら言ってきます。

 

「アウブダンケルフェルガーより、個人の問題だと言われてしまいましたので。上位領地にそういわれてしまえば言われた中で対応するしかございませんわ」

 

「同じ大領地だ、ある程度の対応はできる。次から気を付けることだ」

 

「わかりました。申し訳ございませんお父様。次回はそのようにいたします」

 

分かればいいといった感じで話は終わります。

 

後ろの方で横にならずにいられるのなら、他領の対応とかは一切しないでいいので休んでいるように言われました。

 

休んでいる間に、背中に悪寒が走り、その後怖い視線を感じたような気がしたせいで、あまり気が休まりませんでしたがなんだったのでしょうか...。

 

 

 

 

ぼ~としていたら、気が付いたら表彰式の準備が始まったようです。

 

アーレンスバッハは大領地なので王族の現れる所に比較的近い場所に移動しなければなりません。

 

競技場へ学生たちが競技場へ向かって下ります。並んでしばらくすると、王族がやってきて表彰式を始めようという状態になったところで...。

 

なんだかすごい音が鳴って火柱がたっているのですが、何かの演出でしょうか。魔力反応からして魔術具が使われたようです。

 

そこそこ近場での爆発だったため周りが混乱しているようです。

 

「皆様、落ち着いてください、ほかに魔術具の反応はありませんから落ち着いて観客席へ戻りましょう。皆様、一度冷静になって魔石の鎧と盾を装備してから移動しましょう。」

 

私はそう言った後、文官を中心にして外に騎士科や心得のあるものを配置するよう円陣を組ませようとしますが皆様混乱して動きが遅いです。

 

仕方がないので

 

ゲッティルト!

 

風の盾を 我が手に

 

祝詞を唱えてシュツェーリアの盾の守りを展開します。

 

とりあえず、大きな盾を展開し中に入れば少しは安心するでしょう。

 

大きな盾に入ったという心理的効果は大きく混乱が収まり、まず円陣を組むかのように文官たちを守れる体制を作ります。

 

その次にとりあえず、観客席の方へ戻るよう誘導します。

 

少し落ち着いてきたと思ったらターニスベファレン、通称ターニちゃんが大量に出てきて会場は大混乱です。

 

貴族院生が混乱しながらむやみやたらに黒の武器を装備しないで、中途半端な攻撃を繰り返すためターニちゃんがどんどん大きくなっていきます。

 

せっかくいい素材が取れそうなのでお父様に狩りに行く許可を願いにオルドナンツを飛ばすと...

 

「絶対にならん、それに、盾から離れれば誰があの者たちを守るのだ。」

 

まあ、仕方がありません。人命以上に大切なものはありません。

 

 

 

 

他の寮の者たちまで保護を求めてきたので入れてあげるも動きが取れなくなります。

 

「皆様、一旦シュツェーリアの盾の守りを固定しますのでここにいてくださいまし。」

 

まったく、向こうから寄ってくるならしょうがないよね。

 

ダンケルフェルガーの騎士も気が付けば参戦しているので数の暴力で放っておけば決着はつきそうだけど

 

ラルツェ!

 

こっそり寄ってきたターニちゃん二体を魔力で吹っ飛ばし爆発させます。

 

こんだけ混乱してれば分からないよね。素材なんて回収している暇があるわけないので全部吹っ飛ばし魔石だけ回収させてもらいます。

 

とそこで、ハンネローレ様がダンケルフェルガーの騎士についてきたようでこちらに来ます。

 

「ハンネローレ様、ご無事でよかったです。」

 

「ローゼマイン様も、何やらここですごい爆発がありましたが大丈夫でしたか?」

 

ハンネローレ様や騎士達が少し慌てたようにこちらに来たのは、私が起こした爆発の所為だった模様です。

 

「ええ、全く問題なく。」

 

やっぱり少し目立っちゃったかな。きっと犯人のせいになるから大丈夫だよね。

 

とそこで、不自然な動きをする騎士が何名か騎獣で空に上がっています。

 

「ハンネローレ様、ダンケルフェルガーではディッターの後に行う儀式がありますよね」

 

「え、ローゼマイン様このような時に何を。」

 

「念のため、準備してもらってよろしいですか。」

 

「ええ、まぁいいですけど。そろそろ魔獣の掃討も終わりそうですし。」

 

ハンネローレ様は何言っているのだろこの人はといった表情です。

 

ですが不自然な行動をされている方々は遠目に見たため断定はできないですがあの目はきっとまずいです。

 

判断が間違っていたとしても危害を加えるわけではないので処分されないよね。きっと。

 

私の真剣な目に何か感じ取ったのかハンネローレ様はフェアフューレメーアの杖を出してくれます。

 

初めて見ましたが記憶にあるものと一緒ですね。

 

「ハンネローレ様、わたくしのこれからやることを信じてくださる?」

 

「ええ、何をされるのか分かりませんが信じます。」

 

「では、魔力を奉納する儀式をしていただけますか。その時に私もハンネローレ様の杖に触らせてもらって補助しますので。」

 

何がしたいのかわからないようですが了承してくれます。

 

そんな話をしているうちに、不自然な集団が動き出します。

 

「グルトリスハイトを持たぬ偽りの王よ!我らが」

 

「今ですお願いします。」

 

私は、広域魔法陣を書いた魔紙と鎮静効果を極限まで上げる魔法陣をシュタープのペンで展開しハンネローレ様にお願いします。

 

「我等に祝福をくださった神々へ 感謝の祈りと共に 魔力を奉納いたします」

 

無理やりハンネローレ様の魔力に同調させ魔力を補助する形で広範囲に強制的に鎮静化させる儀式の効果を波及させます。

 

不自然な動きをしていた人達が「恨みを思い」と続けて言ったところで儀式が効果を発揮し騎獣が解除され呆けたような表情で落ちていきます。

 

アーレンスバッハは大領地なのでもともと王族の近くにおり、先ほどまで余り移動できなかったため王族に攻撃しようとしていた人達がすぐ近くに落ちてきます。

 

光の柱がたくさんたっていますが今は気にするところではありません。

 

呆けて何をしていたんだという表情になっている人に無理やり口から試験薬を飲ませます。

 

吐き出す、がは、げええぇという苦しそうな声が聞こえます。

 

「ローゼマイン様、何をなさっているのですか!」

 

ハンネローレ様が慌てて声をかけてきますが、それどころではありません。

 

この反応は...。アーレンスバッハは詰んだかもしれません...。

 

 

 

 


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