マインオブザデッド   作:dorodoro

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57話 奉納式後編

奉納式の後に、約束の時間となりアウブのところへ向かいます。

 

報告等は奉納式の後と言う話だったのに何かあったのでしょうか。

 

扉の前の衛兵に来訪を伝えてもらい少し待ちます。しばらく待つと入れという声が聞こえてきました。

 

「待たせたな、ローゼマイン。ようやく時間がとれた。まず貴族院での報告から聞こう。」

 

授業が終わった後、図書館の魔術具を調べていたということを伝えます。

 

「なぜ、図書館の魔術具など調べていた。」

 

「純粋な好奇心ですわ、お父様。」

 

わけのわからない称号と得てしまったとか、いろいろありましたがその一言に尽きます。

 

「それで、いなくなった10日間に何があった?話せ命令だ。」

 

「正直にお話ししますとわたくし自身もよくわかっておりません。図書館の魔術具に魔力を注いだところ、気が付けばよくわからない建物の中におり、案内者と思われるシュミルに導かれ、なぜか始まりの庭、シュタープを取得したところに連れていかれました。」

 

「あそこは始まりの庭というのか。まあいい、そこで何があった。」

 

何があったって言われてもねぇ。知識をいっぱいもらっただけだよね。欲しい知識はなかったけど...。

 

「いきなり神を名乗る者に体の成長する祝福を賜り、昔の歴史などの知識を賜りました。」

 

「確かによくわからんな。昔の知識とはどういうものだ。」

 

アウブも神などという言葉が出てきたせいか、心がはるか高みに上がりそうになっているようです。

 

「昔の王族や豪族の暮らしですわ。穴ばかりでわからないところばかりですが。」

 

穴だらけなんですよね。変に期間が空いていたり。今度地下書庫の知識と合わせるのは楽しそうですね。

 

「とりあえず問題はないのだな。」

 

「問題は無いかと存じます。」

 

私自身の体調の問題はありません。強いて言うならツェントがどうとか領界線の変更権限とか図書館管理者代理権限とか問題になりそうですが、今のところ大丈夫そうだからわざわざ言わなくてもいいですよね。

 

領界線の引き直しとかなぜしないのだろう。ベルケシュトックの方々はやってあげるだけでだいぶ楽になるだろうに。最悪、ベルケシュトックの件は神殿にある仕掛けを利用して礎に魔力を注げばどうとでもなりそうだけど。今相談することじゃないしね。

 

「ならばいい。レティーツィアの件だ。」

 

「本日お招きいただいた本題ですね。レティーツィアになにかございましたか?」

 

レティーツィアの件で私に相談って何も思い付かないのだけど。

 

「実はできるだけ早く礎に魔力を供給できるよう早めに慣れさせたいと思っている。」

 

「お父様、さすがにレティーツィアにいきなり礎の魔力供給は難しいかと。」

 

「だか、ローゼマインもわかっているとおり私とあやつは無理な魔力供給の代償で魔力がなかなか戻らん。できるだけ早く次へ繋げる準備をしなければならん。」

 

そう言われると、まったくもってそうなのですが。

 

お父様とお母様は私が来るまで相当無理をして礎に魔力を供給していたようで、魔力の器官が相当弱まっていたところに加えて毒まで受けてしまっていたので、魔力の器官がいつ問題のないところまで回復するかわかりません。

 

礎の魔力供給は、ゲオルギーネ様はほとんど協力してくれないし、ディートリンデ様が多少協力してくれるくらいです。

 

客観的に見れば、ほとんど私が賄っている現状はお世辞にもよくありません。いえ、非常にまずいと言うべきでしょう。

 

「それでしたら、まず魔力の奉納に慣れさせるために奉納式へ参加させてはいかがですか。最近はこの時期だけ青色神官になってくださる方もいてとても助かってますわ。」

 

まあ、私がアウブなら後々の影響を考えて絶対に却下しますが。エーレンフェストならともかくアーレンスバッハの神殿への嫌悪感はお聞きする限りでは改善しているとはいえ、今後はどうなるかわかりません。

 

「ローゼマインは参加させるべきだと思うか。ローゼマインのお陰でだいぶ神殿への嫌悪感が薄れている。皆、なんだかんだ言いつつも神事の重要性を理解してきている。」

 

ほんとかなぁ、あれだけ嫌悪しててすぐに変わるなんて言われても信じられないよ。

 

「お忍びで行くのなら悪くないかと。わたくしは話に聞いているほど神殿への嫌悪感が減っているとは思えないのです。」

 

「なぜだ。ローゼマイン、お主自身が皆の神殿へ意識を変えてきたのではないのか。」

 

うん、私が変えてきた?さっきから私のお陰でとか言っているけど何を言っているのだろう。

 

「わたくしは神殿長としての業務をしてきただけであって、特に変えようとかしていませんわ。それにわたくしはここ半年も寝てましたのよ。その間で嫌悪感が大きく変わったなんて言われても信じられませんわ。」

 

「その話については後でよい。お忍びでも可能なら神殿の準備ができしだい参加させろ。」

 

「ご命令なれば従うのみです。」

 

神殿長の服もいい加減新しくしないといけないし。一番外側の羽織でなんとか誤魔化しているけどいい加減まずいですよね。

 

レティーツィアに、私のお古って大丈夫なのかな?

 

成長前なら身長はほとんど変わらないし、ほんの少しお直しするだけで使えるのだけど。

 

今回だけだから私のお古でいいか連絡ついでに確認してもらいました。

 

 

 

 

奉納式に参加するため最終日に城でお出迎えです。

 

「お姉様と一緒に行けてうれしいです。」

 

お姉様!何度聞いてもウラノの世界の『てんしょん』が上がるね。

 

「レティーツィアは神殿に思うところはないのですか。」

 

「私自身はあれほど素晴らしい祝福を与えて下さるお姉様の働いているところに思うところなどあるはずがございませんわ。」

 

ウラノの世界の『いえす!』だね。なんていい子なの!

 

「ロスヴィータとゼルギウスの意見も伺いたいわ。アーレンスバッハでは、最近は少し変わってきたようなのですが神殿への嫌悪感がすごくて。ドレヴァンヒェルでもやはり同じですか。」

 

「仮にローゼマイン様がドレヴァンヒェルの神殿におられたのなら違いますわ。」

 

つまり酷いってことでしょうか。エーレンフェスト以外ではきっとそんなものなのでしょう。

 

「やはりまともに神殿文化が機能しているのはエーレンフェストくらいということですね。アーレンスバッハも少しはよくなってきたと思いますが、かの領地とは比べものになりません。」

 

「お姉様、エーレンフェストの神殿に詳しいようですが、エーレンフェストとは仲が悪いとお聞きしていますが違うのですか。」

 

「ここまで悪くなったのは最近ですわ。以前はアーレンスバッハの姫がエーレンフェストへ嫁いだ関係で両者の関係はそれなりに深かったのですわ。」

 

「また、以前のように良くなるといいですね。」

 

「ええ、本当に難しいけど仲良くなれればいいと思いますわ。」

 

最悪でも1、2年に1回くらいでいいから村に帰れるようになりたいなぁ。

 

距離だけでいけば騎獣を使えば2、3日位で行ける距離なのに、今ではその場所がはるか彼方になってしまっています。

 

 

 

 

神殿に付くと相変わらず不明な神の像が人気のようで祈っている人がそこそこいます。

 

ウラノの世界の『おまもり』として、ただの人形のストラップを売れば結構売れそうとか思ってはいけないですよね。

 

「あのようなかわいらしい像もあるのですね。」

 

私も初めて見たときに気になったのと同じように、レティーツィアも気になるようです。

 

「最近寄付してくれた方が設置していった像なのですが何の神かわたくしにはわからないのです。何度か他の人にも聞いたのですが誰もわからないらしくて...。いろいろ調べてもわからず困ってしまいました。」

 

その後、レティーツィアが像をしげしげと見てからぽんっと手を打つように納得したという表情になり、私の方に顔を向けてきました。

 

「お姉様の知らない神とはよほど珍しい神なのでしょうね。わかったらお教えしますわ。」

 

なんだかくすくす笑っているような感じで言ってくるのですが、もしかして何か知ってて隠しているのでしょうか。

 

「もしわかったら、必ず教えてくださいまし。」

 

来たばっかりで、わかるわけないよね。そもそも本当に神の像なのかから、検証するべきでしょうか。

 

でも神でないとなればお祈りしている人たち理由が説明できませんし。わからないのは気持ち悪いですが害はないようなので保留ですね。

 

 

 

 

今日は、さらに大所帯です。ウラノの世界でいう『くちこみ』が広がったのでしょうか。

 

ええ、奉納式は今までにないほどの一体感でした。いつもよりも魔力を大量の奉納した関係か祭壇が輝きだし、これは大丈夫なのか心配になりました。

 

知識を照らし合わせても貴族院以外でこのような現象は起こらないはずなのですが。

 

そういえば村にあった小神殿は常にこんな感じで光っていましたっけ。あの小神殿は私がいなくなった後どうなったのでしょうか。

 

残りの聖杯も多くなかったお陰で、レティーツィアの負担にもほとんどならなく無事に奉納式は終わりました。

 

「お姉様が、なぜ神殿での神事を大事にされているのがわかった気がします。」

 

神事は大事だよね。神のご加護を得るためにも。神のご加護を得られれば少しは状況が良くなるのでしょうか。

 

この状況を変えるために、もっと神殿を巡りながら奉納するのではなく、特定の神を狙って祈った方がいいのでしょうか。

 

「神事は大事ですが、レティーツィアはアウブになるのですから周りも見聞きして判断していった方がいいですよ。ここでのことは今はまだ信頼できる者に留めておくべきです。信頼できる側近がいるようなので心配はしていませんが。」

 

「今の神殿を見る限り心配はしていませんが、お姉様の言う通り気を付けますね。」

 

さて、お手伝いが来てくれたお陰で奉納式は早く終わりました。

 

奉納式で空いていた時間は、ダンケルフェルガーの本を現代語訳したり、レッサー君の生産やお手伝い専用のシュミルを作っていました。

 

今年は薬については前回の反省もあって余分に準備していたので余りすぎです。

 

結局去年と同じくおかわりが来て少しだけ奉納式が続行になりましたが、数は少なかったためすぐに終わりました。

 

今年は戻るのが遅かったので、特に冬の社交界に出る時間もなく貴族院に戻りました。

 

 

 

 


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