マインオブザデッド   作:dorodoro

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56話 一時帰宅、奉納式前編

英知の書(グルトリスハイト)に裏切られしょんぼりへにょんな状態で寮へ戻ります。

 

もともと大きめの服を着ていたので、魔石を鎧にしてカバーすればきついですがさほどひどい格好にはなりません。

 

「ローゼマイン様!ご無事でしたか!みんなローゼマイン様が戻ったぞ!」

 

なんで騒ぎみたいに驚かれているのでしょうか。先程までいた始まりの庭は、今まで巡って来た祠と同じって...。

 

もしかして、シュタープ取得と同じ場所なのですから時間がたっているのでしょうか!

 

頭の思考が完全に停止し私が混乱していると、パシンといい音がなります。ほっぺたを誰かに叩かれたようで痛いです。

 

お守りが発動しなくてよかった。一定以上の攻撃以外に反応しないように改造しておいたのです...なんて関係ないことを考えてしまいます。

 

「ローゼマイン、あなた、わたくしや皆さんに迷惑をかけていったいどこへ行っていたのですか。」

 

ディートリンデ様、顔が怒っていてとても怖いです。

 

少し見上げる高さが楽になったので私の身長も伸びたようです。

 

「申し訳ごさいません、ディートリンデお義姉様。わたくしがいなくなってからどのくらいたったのでしょうか?」

 

「すでに10日です。まず何よりも全員に謝りなさい!」

 

私がいないことで何かあったのでしょうか。でも心配してくれたのならお礼を言わないと。

 

「皆様、ご迷惑をお掛けしたようで申し訳ごさいません。また、ご心配をして下さったようでありがとうございます。」

 

「とりあえずこの場はこれでいいから休んでらっしゃい。顔色がよくないわ。後で何があったか話して貰いますからね。」

 

確かにもうふらふらです。戻って来る前に何度頭の魔術具が起動したか。

 

まあ、戻る前に無理やり契約を解除しようとして頑張りすぎたのが一番いけないのですが。

 

部屋に入り簡単にチェックして倒れ込みました。薬を身に付けておいたお陰でなんとか飲めて良かったです。

 

 

 

 

 

起きてから使用人に着替えを手伝ってもらい共有フロアへ行きます。

 

確認すると私は二日も寝ていたようです。

 

以前のいなくなっていたという話と合わせますと、エーレンフェストでも祈念式が始まる時期です。

 

早めに始めるアーレンスバッハではもう始まってしまっているでしょう。

 

ディートリンデ様と寮のいる方に説明が終わり次第早急に戻らなければなりません。

 

ディートリンデ様に予定の確認のオルドナイツを出すとすぐに会うとのことです。

 

「さて、ローゼマイン。あなたには緊急の帰還命令が出ています。わたくしとしては一度話をきっちり聞きたいと思っていますが戻ってきてからにしましょう。」

 

なんでそんなに怒っているのでしょうか。

 

「全員に説明できるよう、簡単に説明なさい。」

 

説明と言ってもどうしよう。神を名乗ると言うかもはや神そのものと思われる者に会ったなんて言っても通じないよね。

 

「図書館の魔術具を調べていたのですが、その後のことをおぼえていません。」

 

「身長が伸びたことについても、なぜ10日以上もいなくなったかもわからないと。」

 

どう説明したらいいのかわからないという点では一緒です。

 

「申し訳ございません、ディートリンデお義姉様。わたくしもなぜこのようなことになっているのか。気が付けば10日以上も過ぎていたなんて言われて驚いていますわ。」

 

一日どころか時間がたっていないと思っていたので本当に驚きました。

 

「わかったわ。ローゼマインは今臥せっていて、帰還したことになっているからすぐ帰りなさい。」

 

今寮にいる方々には探してくれていたお礼を言って、ヒルデブラント王子からも見舞いの手紙を頂いてしまっていたので、城から出したように装って少し良くなったと言う手紙を出し、他の手紙等の返信も書き貴族院を後にしました。

 

 

 

 

「ただいま戻りました。」

 

「ローゼマイン様、ご無事で何よりです。」

 

転移陣から出てくると転移陣の担当者に声をかけられました。

 

その後は、すぐに奉納式に向かうべきなのでしょうがアウブヘ連絡を入れてもらいます。

 

今は忙しいので、体調に問題がないのなら奉納式後に話をすると言うことになりました。すぐ対応してくれていた今までがおかしかったので特に気にせず神殿へ向かいます。

 

いつも通り神殿前で護衛と別れます。改めて神殿の中に入ろうとすると、入口に見たことのない像が増えています。先にオルドナイツで連絡を入れておいたので神官長達がお出迎えしてくれます。

 

「ローゼマイン様が、はるか高みに上ったという噂がこちらまで聞こえており本当に心配しました。ご無事で良かったです。」

 

「あら、わたくしがいなくてもなんとかなるよう、神殿を変えていかなくてはいけませんよ。」

 

契約の破棄さえうまくいっていたら、既にいなくなっていた可能性だってあったのにね。

 

「いずれはそうしないといけませんが、まだまだ青色神官が足りません。ただローゼマイン様のお陰で神殿への印象が劇的によくなっております。寄付等も今までにないほどになっております。」

 

一人が何かをしても今までが酷すぎたから簡単には変わらないと思うけど。

 

「以前にはなかった像が入口に置いてありましたものね。ずいぶん真剣に祈って行く方が多くて驚きました。あれは何の神の像なのですか。」

 

戻ってきてから、神殿の入口に新しく増えた像の前でわざわざ立ち止まり、ずいぶん熱心にお祈りしていく方を見かけます。

 

神殿の前に立ち止まってしげしげと見るだけでも変な目で見られることもあるのに、そんなことをすれば今まででしたら白い目で見られても仕方がないはずです。それなのに誰も気にもとめていません。

 

「...見てわかりませんか。」

 

「わからないから聞いているのですが。」

 

なんでわからないのと言われているようで少しショックです。

 

「とある貴族が持ってきた像です。寄付と一緒に是非とも入り口において欲しいとのことでした。」

 

「何の神なのでしょうか?わたくしが知らない神ならよほど珍しい神だと思うのですが。」

 

このような特徴的な神ならすぐわかりそうですが私の知識には該当する神がいません。

 

「...寄付していただいた貴族からは、何の神なのかお聞きしていないのでわかりません。」

 

なんだ、神官長達も知らないってことか。さっきのは、私の解釈が間違っていたってことかな。少しホッとしました。

 

「そうなのですか。聖典等を見直すか、寄付をしていただいた方に直接確認をしなければなりませんね。」

 

本当に何の神なのだろう。今の私の知識にないなんてよほど珍しい神なのでしょう。

 

シュミルのような風貌に羽をはやしてどこか子どもみたいな可愛らしい像なのですが。

 

ヴィーゲンミッヒェ様と同じく洗礼式前の子どもに関する神なのかな。

 

そのような珍しい神なら神殿長として私も熱心に祈らなければなりませんね。

 

 

 

 

さて新しくできた神の像に祈る決意をした後は体を清めてから祭壇へ移動し、奉納式をおこなうわけですが。

 

「青色神官の方々が増えているようなので紹介して頂けますか。」

 

そう、青色神官が増えています。

 

「実は奉納式を是非とも手伝いたいということで今だけ青色神官として手伝ってくださっている方々です。」

 

え、そこまで印象が変わっているの!?だって、正式な青色神官でもないのにきちんと青色神官の正装をしていますよ!エーレンフェストの時でもそこまでする人はなかなかいなかったよ!

 

驚きすぎて言葉になりません。

 

「ローゼマイン様、我々は貴族の義務がありますから今しか手伝えませんがお供させてください。」

 

改めて見回すと今だけ青色神官になった方々は若い人が多いですね。

 

「ありがとう存じます。皆様の行いは神々が必ず見ておられるでしょう。皆様の崇高な行動に神に感謝を!」

 

奉納式と関係なく神へお祈りして祝福を出してしまいました...。祝福で小聖杯一つがいっぱいになったのでよしとしましょう。

 

「こほん、それでは奉納の儀式を始めますので皆様、位置についてくださいませ。」

 

その後、手伝いに来てくれた方々は一部固まっている方もいましたがつつがなく儀式が進行します。

 

手伝いに来てくれた方のなかには上級貴族の方までおり、ほとんど一人でやっていた去年とは魔力の流れが大違いです。

 

去年とは比べ物にならないほど効率よく魔力が流れていきます。

 

「今まで2回ほど参加させてもらいましたが、まったく別物でした。この一体感と美しい魔力の奔流をローゼマイン様と体験できるとは」

 

「わたくしもここまで一体感のある儀式に出たのは本当に久しぶりです。皆様のご協力に感謝申し上げます。」

 

本当にすごいですね、前回はほとんど一人だったけど魔力を一緒に奉納できる方が増えるだけでこんなに効率よく魔力を供給できるんだね。

 

以前は魔王様に魔力の流れは全部お任せでやっていたから気がつかないことも多かったんだなぁ。

 

「我々の天使、ローゼマイン様からそのような言葉を賜るとは、本日はローゼマイン様と繋がれたように感じ感謝感激です。すべての業務を放り出してローゼマイン様のお側にありたいと改めて思ってしまいました。」

 

あれ、さっきまでものすごく真面目な感じだったのに急に雰囲気というかなんといえばいいの?

 

爽やかと気持ちの悪い中間の笑顔とはこういうことをいうのでしょうか。

 

「こやつが申し訳ございません。ローゼマイン様、ただ私も同感です。この程度のことベルケシュトック一同が受けた恩からすれば微々たるものです。改めて我々の天使に感謝申し上げます。」

 

ああ...そういうことだったのですか。この方たちはあの地方の出身の方々ですか。

 

でもそれにしてもとても勇気のある行動だと思いますよ。私も感激したのは事実ですし。

 

この後、臨時で来てくれた青色神官達は例の入口の像にお祈りし貴族街へ戻っていきました。

 

なんの神か今度機会があったら聞かなければいけませんね。

 

空いた時間で溜まっていた神殿関係の決裁や孤児院等確認しているとアウブから呼び出しです。

 

レティーツィアについて相談がしたいとのことなので次の日の奉納式を終えたところでアウブのところへ向かうことになりました。

 

 

 

 


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