うーん、ここはどこ?
魔力が完全に無くなるとはるか高みに上ると言う話も聞いたことがあります。
真っ暗で何もないこの空間はまさにそのような空間に見えます。
ということは、メステァオノーラの像へ魔力を強制的に奉納させられて魔力が切れたということでしょうか。
すなわちあの危険な魔術具によって私ははるか高みに上ってしまったということでしょうか。
とりあえず体は動くようです。ほっぺたをつねってみましたが痛いです。
ウラノの世界の『しごのせかい』とは寂しいところなのですね。
ウラノの世界では天国と言う概念があり善行を積めば天国へ行けて幸せになれると。
つまり、私は善行を積めなかったために地獄に落ちたと言う解釈でいいのでしょうか。そこまで悪いことをしたつもりはありませんが、ここが天国とはとても思えませんし。
あれはウラノの世界の概念なのでこちらとは違うと信じたいですが...。
しばらくふらふらと歩いてみますが何もありません。
出口とかが見つかるわけでもなく、見つかる気もしません。遠くを見渡しても暗闇が広がっているだけです。
もう、何もかもがどうでもよくなって横にでもなろうかと、視線を落とし地面を見るも黒いだけで何もなく埃一つ見当たりません。手で触ったらどんな感触なのだろうと確認しようとしゃがみこみます。
ゆっくりと地面に手を近づけ触れてみると、魔力が一気に吸われ景色が一変します。
景色が変わってまず目につくのは螺旋階段です。その周りに文字列が大量に浮いている本がたくさん置いてあるので図書館でしょうか?文字列の隙間から外が見えるようで田園風景が広がっているように見えます。
「汝、ここにある知識を求める者か?」
知識!?知識なら何でもほしいです。特に今はお米、美味しいジャポニカ種のウルチ米を作る知識がほしいです!
「お米とやらの知識はないが、知識を求めるものよ奥へ来るがいい。」
うん、このシュバルツ達を金色にしたようなシュミルは何でしょうか。
私のことなど気にしないとでもいうかのように、勝手に螺旋階段を降りて行ってしまいます。
自分勝手なところといいシュバルツ達に似ていますね。もしこれが魔術具なら作った方が同じなのかもしれません。
ついてこいと言う感じなので今ここにいてもできることもないですし、頑張ってついていくだけですが。
「ここは来訪者の望みを映す場所。其方に知識を求める意思と資格があるかを確認した。」
合格かどうかは、この連れて来られた建物の出入り口のような扉を開けられるかということでわかるということでしょうか。
「行くがよい、知識を求める者よ」
そんなこと言っているからきっと大丈夫だよね。
「ええ、あなたがどなたか、魔術具なのかも知りませんがここにいるわけにもいかないので行ってきますわ。」
私は覚悟を決めて扉を開きました。
うん、去年来たウラノの世界の『ゆぐどらしるの木』らしきものがあった場所だよね。
そういえば起きてから契約の制約も感じないし...。
「誰かそこ...にいるのか?」
はい?
どこからか声が聞こえます。
「どこに...いる?」
私が聞きたいのですが。やっぱり死後の世界すなわち『あの世』なのでしょうか。
ゆぐどらしるの木のようなものがうっすらと人のような形にかわっていくように見えます。
はたして夢か幻か、はたまた『あの世』でしょうか。
ほっぺたを再度つねってみますがやっぱり痛いです。訳がわかりません。
「何者だ。どこかの...神の眷属が紛れ込んだのか?」
私はただの人で平民ですが。
「そこにいたのか、全く...見えにくい。まあよい、うむ、マイン...と言うのか。そなたのそれではうつわが...足りぬ。仕方がない、アーンバックスよろしく頼む。」
育成の神の名前を語るとはさすがはあの世ですね。なんだかウラノの世界のラジオの周波数が合わないかのような雑音が響いて聞こえにくいですが言いたいことはわかります。
そのあと、私に魔力が流れ込んできてかなり痛い思いをしました。ですが、以前に刺された時の痛みと比べれば大したことはありませんでした。
「そなた、マインは...神の干渉を...受けにくくなっておる。どうなっている?」
干渉しにくいのは、大量のお守りを身に着けているせいでしょうか。
「まあ、最低限は大きくなったので...大丈夫であろう。マインはあまりに透明...すぎてよく見えないのでわからんが。」
透明に見えるそうです。私も目の前の人はうっすらとしか見えないのですが、どういうことでしょうか?この聞こえにくい雑音とも何か関係があるのでしょうか。
「では、最高神に祈れ...。なぜマインはここにいる!?闇の神と光の神...の名を受けていないではないか!」
どこで受けるのでしょうか?
「だが、一定以上の...神から加護を受ける条件を満たし名前...以外は問題がない。」
目の前の人が考え込んでいるように見えます。あの世について考えるだけ無駄なので流されるしかわかりません。
「資格も一応...は問題ない。正規のルート...を通ってきている。少なくとも...以前に来たあやつよりは資格も十分であろう。マインよ、緊急事態ゆえ...私の後から復唱せよ」
言われるがままに復唱します。雑音が響いて正確に正しく発音するのはかなり大変でしたが何とかなりました。
そうすると、七色の光がヒュンと上に上がっていって綺麗だなと見上げていると、その直後、どっと光が降り注いで来ました。
わぁ!知識!知識がたくさん入ってくる!じゃんじゃん来ていいよ!全部受け入れるよ!
「全てを受け...入れよ。マインには...な言葉は不要だな。メスティオノーラの英知を受け取るが...良い」
うん、終わったのかな。受け入れるだけって楽でいいね。自分から動かなきゃ情報って得られないものね。
知識としては、知っているものもたくさんあってそれに色付けされた感じかな。その色付けがものすごく大切なんだけど。
ちなみに、雑音のせいで変な知識が入っても困ると思いましたが、歴史に穴抜け等はありますが、魔法陣の描く方法の一部が抜けているというような穴抜けはないので問題はなさそうです。
目の前の非常に見えにくい方がじじさまで元命の神 エアヴェルミーン様のようですね。
「マインよ、そなた...本当に人間か?」
どういう意味でしょうか。
「今まで来たものはこれほど...すんなり受け入れるなどということはあり得なかった。知識に対する雑念が全くない...者など見たことがない。」
知識に良し悪しなんてないしね。受け入れるのは大得意ですよ。新しい知識がたくさん手に入って満足ですね。
「まあよい、マインにはグルトリスハイト...を授けた。さっさとツェント...となってユルゲンシュミットを救うがよい。」
何で私が?まあいいです。
そこまで言うと、神を名乗った目の前の方は空気に溶けるかのように消えてしまい以前のゆぐどらしるの木と思われるものが再度姿を表します。前よりも透明になっている気がするのは気になりますが...。頭に響くような雑音も同時に消えました。
帰り方も今得た知識で分かりましたし元の所へ戻りましょう。
今さらですが、ここはあの世とやらではなかったのですね。
うふふん。シュタープを取得したときの祭壇の入口まで戻ってきましたよ。
さてさてさっそく
『グルトリスハイト!』
なにするかって?やることは一つしかないですよね。
『
あれ、これではないのかな。他には...。
何種類も試しましたが、全部だめでした。
原因をざっと調べてみますと、まずこの従属の指輪が原因の一つで、もともと王になれなかった王族が、次期王になれるよう忠誠を誓うために使われていたものを下寵されたものだとのことです。
王族の古代遺産、ウラノの世界でいう『あーてぃふぁくと』ですね。
加えて私自身が血で契約内容を変えているため、契約がより強固となり解除できないようです。
のおおおぉ!指輪で契約が強固となり、後半の血のせいで契約の強制解除は絶望的とのこと。
そんな、ひどいよ!英知の書って何でも書いてあるんじゃなかったの!
しかも王族とかお偉いさんの知識しかないからお米の知識もなし!
英知の書、期待させておいて落とすとか君はなんてひどい本なんだ!
しょんぼりへにょんです。
原作だと、祠めぐりは省略されすぎて光と闇の祠に関して明言されていないようなんですよね。
授業で光と闇の神の名を得たときにシュタープに吸い込まれたというのが恐らくそれに当たるのかと思うのですが、魔力が調整しやすくなったという記載もありませんし。
こっそり光の神は、誤解させるような記述を盛り込んでます。闇の神は黒光りなので表現していません。それ以前にそもそも加護を受ける儀式をまだ受けていないとか...。余計なことはこれ以上書きません。