マインオブザデッド   作:dorodoro

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52話 図書館で王子に会う

さて、まずは図書館です。

 

「ソランジュ先生、おはようございます。」

 

「ええ、今日はお早いですね。」

 

ソランジュ先生は普段とお変わりなく見ているこちらが温かくなるような笑顔です。もう怒らせたくはないですね...。

 

「ええ、講義もようやく終わりましたので後は呼び出しが来るまでやりたいことをやる予定です。」

 

「噂には聞いていましたが、ずいぶん早いのですね。」

 

昔のシュタープ卒業時取得のカリキュラムも含めて当然知ってますからね。

 

まあ、上級貴族として教わっていたので領主候補生として網羅できているかはわかりませんが。

 

「今年の最優秀候補はローゼマイン様かヴィルフリート様のどちらかで早くも決まりかと言う話も出てますわ。」

 

「優秀なヴィルフリート様と比較されるとは光栄ですわ。そうだ、先生。最近図書館で変わったことはないですか。」

 

心配で気になっていました。良くわからない称号のせいで変わってしまったとか言われたらどうしよう。

 

「特に変わったことはございませんよ。」

 

良かった。問題ないようだから良かったけど、ちょっとドキドキするよね。その後、魔石とか返してもらっています。他にもソランジュ先生と話しているとシュバルツ達が寄ってきました。

 

「あるじ あるじ」

「ふく できたの」

 

何ということでしょう、服を着替えさせてあげるなんて、すっかり忘れてましたよ。そんなものもありましたね。

 

この魔術具達は、まるで心を読む機能がついているかのように言ってきます。やはり初期の設計図にはない特別な機能があるのでしょうね。

 

「あるじという言い方は初めて聞きました。」

 

ソランジュ先生が知らないと言うことはやっぱりなかなかない現象ってことだよね。

 

「先ほど先生にお聞きしたのは、何故か呼び方が変わってしまったのでわたくし不安で不安で。」

 

ものすごく不安だったんですよ。

 

「ひめさま以外呼べないはずなのですが、こちらでも調べてみますね。」

 

お願いするも、原因はほとんどわかってますけどね。

 

「お着替えの日付は決まり次第また報告しますね。」

 

「あるじ はやくおねがい」

「まちくたびれた」

 

おかしいです。時間制限はなかったはずでは?

 

 

 

 

さて、では以前から実行しようと考えていた...。

 

そこで、ふと先ほどまで私しかいなかったはずなのに図書館にやけに人が増えているのが目につきます。さきほどまでいなかった護衛騎士の方がこんなところに十名もいます。

 

私には関係ないというか関わり合いにならない方が良さそうですね。

 

彼らは1階に用があるようですし、私は2階にしか用がないので関わらないで済みそうです。

 

「貴女は講義に出席しなくても良いのですか?確か領主候補生でしたよね?」

 

うん、王子様ではないですか。むこうから話しかけられてしまいました。王子がいるということは先ほどの護衛騎士たちは王子の騎士なのでしょう。

 

「アウブアーレンスバッハの養女のローゼマインと申します。講義の履修は終わりました。ヒルデブラント王子のお邪魔をするつもりはございませんから、わたくしのことはお気になさらず読書をお楽しみくださいませ。」

 

王族に関わるとろくなことがないからね。話したいこともないし。

 

「シュバルツ、ヴァイス。ヒルデブラント王子の案内をお願いしますね。」

 

背中の子達を少し重くてもつれてきて良かった。

 

さて、メスティオノーラの像に魔力を奉納し、回りに誰もいないことを確認してから足元の魔法陣を起動します。

 

まあ、この像自体結構死角にあるので警戒はそこまで必要がないのですが。

 

さて、この背中のウサギですが物を運んだり戦闘に特化しているシュミルです。

 

アインとツヴァイと暫定的に名付けています。

 

まあ、あの魔術具のウラノの世界でいう『でっとこぴー』です。

 

でっとこぴー、下位互換いい言葉ですね。

 

レッサー君タイプでないので十分です。

 

小型化して半分以下の大きさにまとめたんだよ。背負っても魔力流してやれば重さも軽減できるようにしたし、みんなきっと変な背負い袋(リュック)とか飾りだと思ってくれるよね。

 

さて、暫くしたらシュバルツ、ヴァイスのどちらかは来てくれるでしょうし、それまでは調べものですね。

 

歴史書から図書館の魔術具の昔の管理表等いろいろ出てきます。さて、ヴァイスが暇になったのか来てくれたので。

 

「ヴァイス、ここの本は貸し出し可能ですか?」

 

「あるじ もちだしきんし」

 

やっぱりだめなのかな。

 

「ヴァイス、管理者代理権限の範囲でもだめでしょうか」

 

「当日返却なら可能。」

 

やったね。うふふん。なにするをする気って?

 

もうすることは決まっていますよね。

 

「ヴァイス、アインとツヴァイに乗せている十冊の本の貸出をお願いね。」

 

「わかった あるじ」

 

さてさて戻りますか。

 

少し転移陣で戻るところを見つかってしまわないか緊張しながら二階に戻ると回りに人はいませんでした。良かった。胸をなでおろしてからゆっくり階段を下りていくと...。

 

「おや、ローゼマインはまだ二階にいたのですか?」

 

あら、ヒルデブラント王子こそまだいたんですか。本を借りてすぐ帰ると思っていたのですが、もしかしたらヒルデブラント王子も図書館がお好きなのかもしれません。

 

「ええ、2階で調べものです。」

 

「その後ろの小さなシュミルは何ですか?」

 

まずい、5冊ずつ手を頭の上にあげて本を乗せているから目立っています。

 

「ヒルデブラント王子、この子達はわたくしがお遊びで作った物を運ぶのを手伝ってくれる魔術具ですわ。」

 

「ローゼマインは魔術具も作るのですね。」

 

ヒルデブラント王子が感心したかのように言ってきますが、余りこの子達を見せたくないのですがどうしよう。借りるだけしたらまた魔法陣で地下書庫へ行って裏口へ向かおうと思ったのにまさかここで捕まってしまうとは想定外の事態です。

 

「趣味の範囲ですわ。」

 

戦闘用ですなんて口が避けても言えないし。

 

「ローゼマイン様、失礼ですがお付きの方はどうなさっているのですか。領主候補生に加えて女性で護衛騎士ですら一人もいないというのは非常に珍しいですよね。」

 

王子の騎士なら黙っていてくれればいいのに、めんどくさい質問が来ちゃった。

 

「わたくしの側近連中は図書館に全く興味がなく空いているものがいなかったので一人できただけですわ。」

 

「領主候補生としてそれはいかがなものか。」

 

そんなこと言われても、まあ、私が悪いのでしょうが。

 

「将来アウブになるのならともかくあくまで予備としてのわたくしには関係のない話ですわ。」

 

「まあ、あのアーレンスバッハですからなぁ。苦労されているようですな。」

 

あれ、何か同情するような感じで納得されてしまいました。アーレンスバッハだからで済む話なんだ。なんだか逆にそう言われると釈然としないものを感じますが今は余計な感情を飲み込みます。

 

「それではわたくしはこれにて失礼しますわ。」

 

はぁ、裏口が使えないとは想定外です。できるだけ目立たないように表から外にでなきゃ。

 

その後、余り目立たないように外に出て、ネコ君から途中レッサー君に乗り換えて替えて外へ行きます。

 

木々が所々生い茂る、真っ白できれいな雪の中を移動します。貴族院の中の祠や像はだいたい回ったかと思うので、外にある祠巡りですね。

 

最初の目的地は、何か違うなぁ。

 

去年のライデンシャフトの小屋とは比較にならないくらい小さいです。

 

まあ、新しそうな資料に載っていた祠で一応通り道だから寄ってみましたが必要なかったですね。きれいにしてあげて魔力を奉納したら次へいきます。

 

次に向かうところは本命の一つでまだ少し離れていますが、他よりも少し大きめの祠が見えてきます。

 

近づいて来ると祠の全体像が徐々に見えてきます。うれしくなって少し急いで進みました。

 

改めて目の前に来てみてみると...それっぽいです。同じくらいの大きさです!

 

今日の読書はここですね。

 

同じような施設がたくさんあれば、読書し放題です。

 

広域魔術の魔法陣描いてっとヴァッシェン!

 

汚れてコケに埋もれていた祠がキレイになり、前回と同じように扉に手を当てると入れました!

 

中に入ると、風の女神と風の眷属神の像が並んでいます。

 

今回は風の女神シュツェーリアと風の眷属神に祈りを捧げろですかね。

 

前回と同じく風の女神の貴色である黄色が鈍く光っています。

 

明るさがもう少しほしいですね。

 

「神に祈りを!」

 

魔力を奉納すると、いい感じです。鈍かった黄色い光が美しく暖かい光に変わります。

 

今日はここで読書ですね。

 

やはりこの神の像のある領域は神域に近いのか、いくらいても疲れません。

 

ようやく半分の5冊読めました。

 

契約も弱まっている感じで心安らぐ空間とは、まさに神にかん...。

 

おっとだめです。万が一奉納が終わったと見なされたら出されてしまいます。

 

まだ半分も読む本が残っているのです。

 

 

 

 

後、読んでいない本の残りが一冊まで来ました。

 

下に何か魔法陣が浮いてきましたが気にしません。そんなことより本です。

 

黄色い文字の出る石板の輝きが増している気がしますが気にしません。流石にここまで来ると何か嫌な予感がしてきましたが気のせいでしょう。ええ、きっと気のせいです。

 

 

 

はぁ、幸せな時間でした。

 

レッサー君出して横になったら気持ち良さそうです。

 

あうち! え、なに!?あれ、石板が目の前にあります。

 

なになに。何か書いてあります。

 

祈りが足らぬ、信心が足りぬ、真剣さが足りぬ。

 

去年のライデンシャフト様とまったく一緒ですね。神様はみんな違う特徴を持っているはずなのに私に対して言うことは一緒なんだね。

 

『早く祈りなさい!』

 

まあ、満足しましたので感謝を込めて全力で祈らせて頂きましょう。

 

「風の女神 シュツェーリア及び眷属たる英知の女神 メスティオノーラ、芸術の女神 キュントズィール、時の女神 ドレッファングーア...。」

 

特に時の女神 ドレッファングーアより幸運を!

 

全力で祈ったおかげか、これはすごいです。前回と違う反応を起こしています。祠の中が黄色というより金色ですね。何か光の柱のようなものが建物内にもたくさん立っているように見えます。

 

余りの見事さに、神に祈りを!

 

最後に祈りをおまけしてあげたけど、これだけやってもまだ足りないのかなぁ。さすがにもう一回最初から祈り直す元気はないのですが。

 

 

 

あの、反応は?石板に出ていた文字が消え何も文字がない状態です。

 

だめならだめと言ってもらわないと、出してくれればそれで良いのですが。

 

其方の祈りは我にとど...。

 

え、そこで止まらないで。もう少し待ちます。

 

その後に、祈りは届いたから、この石板と、御言葉くれるって。

 

相変わらずツェントがどうとか言っているけどそこはいいや。祠から放り出された後に図書館へまっすぐ戻ります。

 

「あるじ もどった」

「ほん かえす」

 

はいはい、返しますよ。

 

「あら、ローゼマイン様戻って来られましたの?」

 

「ソランジュ先生、本を返していたのですわ。」

 

「ずいぶん古い本ですわね。わたくしも見た記憶のない本ですね...。」

 

ま、まずい。あそこの本だなんて言えない。

 

「ヴァイス、今すぐ戻してらっしゃい。」

 

「わかった もどしてくる」

 

器用ですね。十冊もまとめて持っていけるのですから。

 

「それではソランジュ先生、私は戻りますね。」

 

「ええ、ローゼマイン様の本を運ぶシュミルも気になりますが、今はお聞きするのを止めておきますね。」

 

別にさっきの本のことをごまかせるのなら、ソランジュ先生にならば、この子達のことを少し話してもいいかな。

 

「ただのシュバルツ、ヴァイスの下位互換機ですわ。」

 

「やはりそうなのですね。ローゼマイン様は何でも作られるのですね...。」

 

何でもはできません。材料もないですし。

 

 

 

 

この夜にディートリンデ様に相談しにいきました。

 

「ディートリンデお義姉様、ディートリンデお義姉様!」

 

何度か言わないと反応してくれません。本当にどうされてしまったのでしょうか。心なしか顔色も悪い気がします。

 

「...なにかしら?」

 

去年とは違って反応が返ってきても、ものすごく冷たいのです。

 

私が何かしたのか原因がさっぱりわかりませんのでどうして良いかも分かりません。

 

「ヴァイス、シュバルツの着替えの件はどうしますか。」

 

まるで、私と話したくないとでも言うかのように、側近を介して返事すると言い取り付く島もありません。

 

着替えは3日後で図書館で行い、エーレンフェストも呼ぶとのことです。

 

すぐに着替えさせるだけですしソランジュ先生に両者の護衛騎士を入口に立たせると言うことで許可を貰いました。

 

この後2日はモヤモヤしたものを吹っ飛ばすため同じように祠巡りを行い、命の神エーヴィリーベ様の関係の祠と水の女神フリュートレーネ様の関係の祠を同様に回りました。

 

他の問題と言えば...毎日ヒルデブラント王子が図書館へ来て話しかけてくるのですがどうやって逃げたらいいのでしょうか。

 

 

 


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