マインオブザデッド   作:dorodoro

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51話 図書館の主

「お久しぶりです、ソランジュ先生。」

 

「ローゼマイン様、お久しぶりです。相変わらず、一人ですね。」

 

「今日は側近の方々は授業があるのでいないだけですわ。」

 

いてもまくけどね...。

 

「ひめさま ひさしぶり」

「ひめさま やっときた」

 

ええ、やっと図書館に来られましたよ。

 

「この子達のお陰で大変助かってますわ。」

 

ソランジュ先生にそういってもらえるなら魔力を供給した価値があるよね。

 

「ところで背中に背負われているシュバルツ、ヴァイスに良く似た小さいのはなんですか。」

 

「ええっと、これは秘密です。」

 

当然秘密です。ちょっと重いんですけどね。

 

「ひめさま まりょく」

「ひめさま ばてばて」

 

それは私が疲れきっているって言いたいの?この魔術具たちは。まあ、冗談ですけど。いちいちこの子達に反応してもしょうがないですね。

 

シュバルツ達は、いかにも疲れているといった感じで耳が下がっていますので、魔力を供給してあげます。

 

「ひめさま こっちだ」

「おいのりする」

 

魔力に満足したのか耳がぴんと立って、やけに元気になった魔術具に連れてこられたのは、図書館の根幹に関わりそうな大きな魔石です。

 

去年はこの魔石に魔力を奉納していたら、七色の色がついてきたので、後少しで全部貯まる前でやめていたんだよね。

 

「ひめさま ぜんぶためる」

 

シュバルツ、ヴァイスに言われると何だかなぁ。まあいっか。貯めろと言うなら貯めますよ。

 

「メスティオノーラ様に少しでも近づけるよう知識が増えますように。」

 

うん?なんかとんでもなく輝きだしているのだけど...。なんか頭に響いてくる。

 

「図書館の礎の主としてメスティオノーラの系譜として認定し、ビブリパラングの称号を与える。」

 

はい?え、礎だったのこれ?

 

なんでここに?本をいい状態で保存する為の物じゃないの?

 

根幹に関わりそうと言ってもさすがに礎とは思わないよ!えーと、私が図書館の主的な扱いになったということでいいのかな。

 

「じじさま おおよろこび」

 

いや、じじさまとか今はどうでもいいよ!そんなことよりも言うことあるでしょ。

 

「シュバルツ、ヴァイス、ビブリパラングって何ですか?」

 

「ビブリパラングはしょうごう」

「としょかん かんりしゃだいりけんげん」

 

図書館管理者代理権限!

 

もしかして図書館って一つの領地として登録されていて一人で礎を染めちゃったから私に権限が移ってしまったということ?

 

だとすると代理権限と言うのも良くわからないけど。うん、まあ、得てしまったものはしょうがない、きっとしょうがないよね。

 

反逆罪とかならないよね?試しに地下書庫へ行って試してみますか。

 

ソランジュ先生の目をかい潜って侵入します。

 

「あるじ いのりたりない。」

 

入れてしまいました。鍵もなにもなしです。鍵のところに手を当てて入りたいと願ったら入れました。

 

のおぉ!これは不味いですよね。

 

とりあえず、片っ端からここにある本を読もう。そうだ、きっとそうすればいい案が思い付くはずです。

 

片っ端からこの間読めなかった本を読みました。

 

本を読み込む魔法陣を使わないのかですか?ここの本は魔力をまとった本ばかりで既存の魔法陣では読み込めません。

 

帰りですが、扉の前に転移用魔法陣があって起動すると二階のメスティオノーラの像の前に移動できました。

 

現実逃避をしたかったこともありますが、あまりに夢中になりすぎて、気が付いた時には閉館時間を過ぎていたようです。

 

「ローゼマイン様、どこにいたのですか?」

 

ソランジュ先生の笑顔がとっても怖いです。謝り倒しました。でも後悔はありません。

 

素晴らしい本ばかりでした。

 

また来ますよっと。

 

 

 

 

次の日の朝になります。

 

今のところ妨害など全然ないのはありがたいのですが、何だか調子が狂いますね。共有フロアに行っても雰囲気が余り良くないのです。去年はこんなに空気が変に張りつめているなんてことはなかったはずなのですが。

 

側近たちの様子も少しおかしい気がしますし、何かあったのかな。私に何かできるとは思わないけど。

 

さて、本日の授業はディートリンデ様と奉納舞だね。

 

ディートリンデ様の相手方のレスティラウト様は普通にうまいですね。

 

ですが、美しさと技量の次元が違っていたエグランティーヌ様とアスタナージウス王子と比べると今年の方がバランスがいいですね。

 

「これは独り言なのだが聞いてくれぬか。」

 

ひっ!ヴィルフリート様。なんでしょうか。幸い指輪は余り反応していません。うなずきもなにもせず私は話を聞くことにしました。独り言で聞くも聞かないもないなんて不粋なことは言わないよ。

 

「半年近くも倒れていたそうだな。そなたが無事そうで良かった。」

 

何だか心配してくれたようです。こんな無礼ばかりしている娘にね。なにか目的があるのかな。

 

「アウレーリアの件なのだが、あの場では言えなかったが其方随分な物を贈ったそうだな。」

 

魔王様と取引できるなら妥当な対価だと思うけど。

 

「アウレーリアより、真たる主はそなたのみだから何かあれば必ず助けになると伝えてくれと。」

 

全く困ったものだ、こぼしています。指輪的に結構不味いかも、でも絶対に伝えてもらわないと。

 

「わたくしも独り言なのですが。」

 

うん、独り言だから反応しないでよ。お願い。

 

「あなたの今のゲドゥルリーヒはアーレンスバッハではないとだけ伝えて頂けますか。」

 

「分かった、伝えておこう。」

 

これ以上は良くないので離れさせてもらいました。どうせ伝えるなら元気だってだけ伝えてくれれば良いのに。

 

連絡不要と約束しておいたアウレーリアが、そんなことを伝えるために危険を冒すなんて何かあったのかな。

 

 

 

「ローゼマイン様」

 

ひゃう!今度はだれ!

 

後ろを見るとハンネローレ様ではないですか!

 

「ハンネローレ様ですか。驚かされてしまいました。」

 

「ローゼマイン様、どこか元気がないように見受けられますが。」

 

なんでか元気がでないんだよね。どうしたんだろう。

 

「ユレーヴェに浸かりすぎたのか疲れやすくなっているのかもしれません。」

 

「大変だったそうですね。ご無事で良かったです。」

 

ハンネローレ様まで心配してくれるとは!なんだかうれしいですね。

 

「ありがとう存じます!ハンネローレ様。」

 

「少し元気が出たようで良かったですわ。」

 

ようやく、ハンネローレ様と話せそうだなと思ったのですが...。

 

「さぁ、休憩は終わりですよ! 上級生はこちらで、下級生はこちらです」

 

ああ、お茶会とか図書館についてとかいろいろ話したかったのに。

 

 

 

 

さて、奉納舞の練習でも祝福が出てしまい残念でしたが、気をとりなおしてヒルシュール先生のオルドナンツを調合する授業です。

 

魔法陣と違ってシュタープを得た後でしか使えないので作ったことはありません。

 

基本的な魔法陣なので改良しようがありません。ウラノの世界でいう『あれんじ』は無理です。

 

やはりユレーヴェの後にきっちりと魔力制御を行う練習をしていないせいで少し魔力が乱れましたが修正するのには魔王様のお陰で慣れています。

 

「ローゼマイン様が魔力をわずかとはいえ乱すのは珍しいですね。」

 

「ヒルシュール先生、わたくしはついこの間まで、ユレーヴェの中だったのですわ。この製作はリハビリにちょうどいい作業でした。」

 

「みなさん、この程度の乱れでしたら全く問題ないので手順通り作ってくださいませ。」

 

あれ、いつの間にか教材にされてる!それならもっと集中して作ったのに。

 

この後にオルドナンツが機能するか確認してから合格をもらい帰りました。

 

本当に調子がまったく上がりません。どうしてしまったのでしょうか。

 

 

 

次の日の午前中は授業がないため寝ていました。

 

調子が悪いと言うのもあります。

 

とは言っても授業に行かないわけにはいかないので、午後の実技には出席します。

 

本日の課題は求婚の魔石だそうです。

 

求婚って領主候補生にもあるのかな?

 

基本的には親が決めて嫌だろうが何だろうが確定だったと思うのだけど。

 

せっかくお隣でハンネローレ様と授業を受けているので聞いてみます。

 

「ダンケルフェルガーでは、ディッターで結婚相手をかけたり、その...女性から相手を倒して相手に結婚の課題を出してもらって達成できると婚約が認められます。」

 

「それは、すごいですわ!ダンケルフェルガーでは男性も女性も情熱的なのですね!」

 

「やはりこの方法は一般的ではないのですね。」

 

ハンネローレ様の焦り顔もかわいい。

 

「私も神殿しか知らないのでわかりません。神殿の者はその、ほとんど結婚しないので。」

 

役に立たなくてごめんなさい。

 

練習用の魔石を金粉化しないように一気に染めてと。

 

「もう染まったのですか!」

 

「コツがあるのです。そうですね、ダンケルフェルガーの燃え上がる情熱のように一気に魔力を流して染めるといいですよ。」

 

「そのようなコツがあるのですね。ありがとう存じますローゼマイン様。さっそくやってみますね。」

 

私は一足先に調合をはじめようとしますが。

 

「ローゼマイン様はどのような言葉を入れるのですか?」

 

え、そんなもの適当じゃだめなの?ウラノの世界のあいうえお的な。

 

「だめです。そんな言葉なんてとんでもない!初めて作る求婚の魔石ですよ。」

 

「ヒルシュール先生、わたくしどうしたらいいのでしょうか。」

 

そんなこと言われても結婚する前に処分されそ...。

 

前向きにならなきゃダメだよね。

 

「あなたの身の上は正直同情もいたしますが、それとこれとは別です。」

 

先生は...まあ、エーレンフェストではもはや断定状態ですか。

 

「あなたと一緒にいさせてください。」

 

「直接的過ぎますね...。」

 

「あなたの大切にしている道具のようにそばにおります。」

 

「それもだめですわ。いい印象ではないですね。」

 

闇の神とかいろいろ言うも無理です。こっち来てから恋愛小説を読んだ記憶がありません。

 

いえ、たぶん恋愛小説なのだろうと言う話はあるのですが難解すぎてわからないのです。

 

えっと辛うじて分かったのが、こんな感じだったかな。

 

「あなたと一緒の色に染まりましょう。」

 

たぶんさあ、これは危険な表現なんだよね。ヒルシュール先生もちょっと興奮気味です。

 

成人までとか言っているから思った通りダメな言葉ですね。おそらく私が使うことはなさそうです。

 

私も終わるとハンネローレ様も言葉選びに苦戦してなかなか進まないようです。

 

言葉選びはさすがに手伝えません。

 

ヴィルフリート様の方が後から来たのに先に調合を始めるようです。

 

そこまで見届けてから私は先に戻らせてもらいました。

 

 

 

 


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