50話 貴族院二年目 授業大半
「ローゼマイン様、ようこそいらっしゃいました。」
去年と同じく挨拶を受けます。
皆さん、結構心配してくれていたようで、半年も倒れるなんてなんて言われます。
そのたびに以前から予定していたとか説明するのに疲れて来たところで、ディートリンデ様にようやく会うことができました。
お久しぶりの挨拶をし、去年と同様に貴族院でもお世話になりますというと、ディートリンデ様のどこか歯切れが悪いです。
「ええ、よろしくお願いしますわ。」
なんと言うのでしょうか、侮蔑だけや同情だけとも違ういろいろ混じった何かが見え隠れしています。ディートリンデ様に何かあったのでしょうか。
気にはなりますが、部屋の改造をしないといけませんし、予習も一応しなければならないので部屋にいきました。
側近たちにせめて共有フロアに出てきて欲しいと言われ、全学年集まって寮での注意説明がうちの寮監より行われました。
次の日は進級式と親睦会です。
ディートリンデ様の昨日の反応が気になり、どう動いてよいかわかりません。
進級式ではエーレンフェストが12位に伸ばし一部の女性が村で作られていたのと似た髪飾りをしていて、新しい領主候補生であるシャルロッテ様が可愛らしく着飾っていました。
トゥーリの作品もいくつかあるのかなと思うと羨ましくなります。
ちなみに私も頭の魔術具は魔石を入れたりして改良し、いろいろ試しました。虹色の魔石は目立つので糸で完全に包み込み魔石を中心に魔力糸で魔法陣を書いてあります。
去年と同様の話しが終わると親睦会です。
去年は散々でしたが、今年はどうでしょうか。
相変わらず、ディートリンデ様は機嫌が悪く、目を合わせてくれません。
6位アーレンスバッハのご入場です。と言われ部屋に入ります。
席に案内されます。順位は去年と変わっていないので座る席も一緒です。
今年の前に座っている王族は初めて見る王子です。ヒルデブラント王子と言うそうです。
はじめましての挨拶をして特に何事もなく終わりました。
ハンネローレ様とも、挨拶とお茶会で会いましょうと言うことを話して離れます。
個人的にはもっと話したかったのですが、ダンケルフェルガー嫌いのディートリンデ様が不機嫌すぎてなにもできません。
その後、エーレンフェストとです。
「夏の終わりの儀式以来ですわね。皆様、お元気そうですこと。エーレンフェストに嫁いだアウレーリアはどのように過ごしていて? 肩身の狭い思いをしているのではないか、と心配していましたのよ。」
と言って、アウレーリアの妹に話を振ります。
「ええ、もう一人の側近からしか連絡が来なくてお姉さまに心配していますと伝えてくださる。」
心配とか言っているけど聞いていた話だと仲が悪いらしいから情報寄越せって催促だね。
元々側近だったのに私には連絡が来ないのかって、情勢が良くなるまで連絡しないことを約束させてますから来ませんよ。
あくまで彼女の幸せが一番ですからね。
「ローゼマイン様に一言お礼をいっておいてほしいとしか伝えられていないな。」
「一度お茶会をしましたがおっとりっとした方ですね。」
シャルロッテ様の話だと馴染めているようで良かった。
ディートリンデ様たちはおっとりですってとか驚いているけど彼女は気を張り詰めていないときは結構おっとりとしているよ。
騎士としてのキリッとした顔もかっこいいけど、リラックスしているときのおっとりしている方がいいよね。アウレーリアを捕まえるだなんて、ランプレヒト様は人を見る目があると思います。
とりあえず、幸せそうで良かった。
無事に今年は挨拶だけで済み、フレーベルタークとかの挨拶も終わり無難に終わりました。
ハンネローレ様とほとんど話せなかった以外は順調な滑り出しです。
さて、次の日から授業です。
多少聞きに来る方もいますが、特に勉強を妨げられることなく順調です。
歴史と法律はあっさり終わります。
法律はひどすぎると思うのですが、結局王のお心次第というものが多く、支配者有利の法律ですよね。
午後はみんなで呪文でシュタープを変形させる復習です。
ペンとか混ぜ棒は最高ですよね。
次の授業の課題が言われこの日は終わりました。
次の日の、算術と神学も、午後の音楽も、ええ少しだけ制御が甘くなってしまい神に魔力を奉納するつもりはなかったのですが、奉納することになってしまいましたが、特に問題なく終わります。
ハンネローレ様と少しだけ話せて良かったです。
結局彼女には相談したかったことがありましたが、できていないのです。
今年は去年と違ってアーレンスバッハの皆様からの余り質問もありませんし、最初の挨拶時に皆さん心配してくれたという関わりくらいしかありませんが、今後のことを考えると聞いておいて損はないでしょう。
ここまで特にディートリンデ様と関わることなく次の日の午前の講義も終わります。
ディートリンデ様は私から行っても冷たい目を向けてきてろくに話してくれませんし、もう諦めています。
午後は武器を変える授業なのですが、なぜかハンネローレ様とも話すタイミングはないし、困ります。
盾を作る授業とのことですが、もう、何度も作っているので問題ありません。
ゲッティルト
まわりは神具だとかなんとかいっていますが別に防げればなんでもいいですよね。
「長方形の盾を作るように言ったのだが聞いていなかったのか?」
え、ルーフェン先生はそんなことを言ってたの。めんどくさいですね。
「素晴らしい神具です。ローゼマイン様は騎士科を取るわけではないのでいいではありませんか。」
プリムヴェール先生がそう言ってフォローしてくれます。ありがとう存じます!
「なに!聞いていないぞ。」
聞いてないも何も、領主候補生でしかない私がなんで騎士科を取るなんて思ったのでしょうか。
押し問答が少し続きましたがテストをしてもらって終了です。
なんだか変に目立ったようなので合格をもらったら退散しようとしますが引き留められます。
え、まだあるの?
次は武器に変える授業だそうです。剣とか槍とかなんでもいいようです。
それなら、旧ベルケシュトックでアウレーリアと狩りをたくさんしたときにいろいろ試しましたので簡単です。
ランツェ
「これはなんですか?」
「ライデンシャフトの槍ですわ。」
ライデンシャフトの槍は便利だよね。属性とかも簡単に操作できるし、シュタープ持ってから一人でも以前より魔獣を狩れるようになったんだよ。
さっさと性能テストやってと。
「やめなさい!それほどの魔力をまとった武器を使えばどうなるか。」
ええ、魔王様が作ったやつと比べればたいした被害でないと思うよ。
あっさり合格をもらえたので終わり帰ろうとしますが、帰してもらえません。
仕方がないので目立たないところに行って適当に『りぼるばー』と唱えてみます。
そこそこイメージできればウラノの世界の『けんじゅう』も簡単に作れるんだね。
試しに『けんじゅう』を撃ってみますが、すごい音が鳴ってとんでもない反動が腕にきます。
これでは撃った後に手が痛くなりすぎて使い物にならないようです。
他の物も試します。『水鉄砲』ほうほう、本来水を貯めるところに魔力がたまるのですね。ウラノの世界の『うぉーたーかったー』イメージしてと、結構いけるね。盾で防がれそうだけど魔獣にはつかえるかな。
メスティオノーラの書、うん、原理を知らないからやっぱり無理なんだね。シュタープに戻ってしまいました。
「そなた何をした!」
うん、また『水鉄砲』にしてと、この水は魔力のかたまりなのだから火でもイメージしてみる?
おお、ウラノの世界の『かえんほうしゃき』っぽい。いい感じですね。『水鉄砲』はイメージ次第で万能だね。神具より使いやすいかも。
「だから、やめないか!」
うん、ルーフェン先生、さっきから耳元でうるさいのですがなんですか?既に合格をもらえたのだから放っておいていただきたいのですが。
え、目の前を見ろ?
雪が溶けて多少草木が燃えたくらいで大したことないですよね?
魔王様のそこそこ全力戦闘後なんて文字通りなにも残りませんし。後で土地を癒すのがとっても大変だったんですよ。
なんでかわかりませんが怒られました。
合格は既にもらっていたからいいのですが。さっさと帰るっていったのに無理やり残らされていろいろ試していたら怒るなんて酷いよね。
次の日の午前の授業は優秀すぎるエーレンフェストにしびれを切らしたうちの寮監がかなり昔の範囲をテストで出してきました。
ふーん、まあ、そこまで難しくないよね。今までの範囲でも少し応用すれば十分とける内容ですし。
ドレヴァンヒェルの生徒が怒っていましたが、エーレンフェストは涼しい顔をして全員合格をとってました。
エーレンフェストは本当にすごいなぁ。一致団結ぶりが他の上位領地と比べても段違いです。
この日の試験はエーレンフェストを除くとアーレンスバッハで少しの合格者を出しましたが他は全滅だったようです。
午後はヒルシュール先生の講義です。
ヒルシュール先生は説明が面倒だったのか、魔術具で調合の手順を映しています。去年壊れていたのを私が直したやつです。
あの魔術具も魔力の無駄を少し省けたから満足でした。いい経験をさせてもらった上に、早速直した魔術具が使われているところを見るのはうれしいですね。
さてそんな余計なことを考えていないで今回の調合の材料を...一応量りますか。
もう作りすぎて重さなんて量らなくても正確にわかるので秤がなくても簡単に作れるわけですが。
重さを量り終えれば、さっさと材料を刻みます。その後は調合するだけなので鍋を借りるために作業場を移動します。
「ヒルシュール先生、調合鍋をお借りしますね。」
「ローゼマイン様は相変わらずですね。」
さてと、シュタープの混ぜ棒でやってもいいけどたまには木の棒でっと。
「シュタープを使わないのですか?」
「このぐらいの調合ですと木の棒の方が魔力を込められるので回復効果が増幅する場合があるのですわ。」
材料は安く品質の低いものばかりですからね。魔力をギリギリまで込めるときに木の棒ですと程よく魔力が拡散するためか少し高性能になるんだよね。
まあ、他にもユレーヴェのせいで今は細かい魔力操作が難しいというもあるのだけど。
私はシュタープで高速化の魔法陣を二個描いてあっという間に終わらせます。
「これは参りました。皆様の参考にさせようと思ったのですが、これでは参考になりませんね。」
慣れれば、このくらいの作業なら簡単なんだけどね。魔王様は高速化の魔法陣をもっとたくさん書いてるし。
一応薬の状態を調べる魔術具で調べますが、調べるまでもなく合格とのことです。
次の日の午前は、魔石の鎧を作る授業です。
ようやくハンネローレ様と少しだけ話せました。ですが、今度はハンネローレ様があっという間に合格してしまい終わってしまいました。
またすぐに一人になってしまったので、ウラノの世界の『ぜんしんたいつ』を作ろうかと思ったのですが止めました。普通に簡単な鎧を作ります。
全身タイツも体全体守れるし結構ありだと思います。全身包んで背景と同化させれば隠れるのに利用できそうです。見た目がよろしくないのでわざわざ授業で作る必要はありません。
まあ、鎧なんてお守りがあれば役に立たないですし、今回の講義ではなんでもいいですね。
さて、午後はようやく時間が空いたので、久しぶりに図書館へ行きましょう。